冷泉麻子、行きまーす!!   作:わんたんめん

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皆さん、新年明けましておめでとうございますm(__)m
自分は年末はコミケに行っていました^_^

本作は残りわずかですが、今年もよろしくお願いします。

多分、そろそろ『Main Title』流してもいいと思います・・・・。


第45話

「みほ、敵の残存車輌は幾つだっ!?」

『カチューシャさんとレオポンさんチームがパーシングを三輌撃破してくれたので残りは19輌です!!』

「対してこちらは残り15輌か・・・!!」

 

未だこちらが車輌総数で劣っていて思わず歯噛みをしてしまう。さらに相手の車輌はパーシングやチャーフィーと比較的高性能の車輌を取り扱っているのも相まって、車輌の差以上に戦況は大学選抜チームに傾いている。

 

『麻子さん、知波単さんの援護に向かってください。』

「場所は?」

『ラーテを模した遊具の中にいるそうです。』

「ラーテ、だと?」

「シャルンホルスト級巡洋戦艦の二連装主砲を積んだドイツが作ろうとした超巨大戦車だ。単純なスケールではマウスの倍以上を誇る代物だ。」

 

みほの言葉に疑問符を上げるがシャアが説明をつけながら地図で場所を示してくれる。

なるほど、場所は大方わかった。

 

「了解した!!すぐさまそちらに急行する!!」

 

地図を見ながら例のラーテを模した遊具の近くまで移動する。

確かに黒森峰の出してきたマウスより一回り以上大きい。

 

「こちら、コメットだ。西、聞こえるか?状況を教えてほしい。」

『あ!!はい!!これは角谷殿!!えっとですねぇ、パーシング二輌の内、一輌は撃破したのですが、今はもう一輌と戦闘を行っているところです!!』

「その中に二階に上がる階段か何かあるか?」

『階段階段・・・・。あ、ありました!螺旋階段が中心に!!』

「そこを上がると滑り台に通じるはずだ。そこから降りてこれるか?」

『了解です!!』

 

シャアの指示のもとで知波単勢がラーテの遊具に取り付けられている滑り台から地波単学園の九七式中戦車三輌が降りてくる。

 

「どうする?こちらでパーシングを仕留めるか?」

「いや、少しばかり彼女らに花を持たせるとしよう。」

 

そういうとシャアは再度通信機を手にかかる。

 

「パーシングは砲身が長い。そのため、どうやっても砲身を左右のどちらかに向けながら降りてくる。そこを二輌で突き出た砲身を挟んで拘束しろ。」

『分かりました!!』

 

・・・・えらく素直だな、知波単の隊長は。

いつのまにか完全にシャアの指揮下に入っているではないか。

一応周囲を警戒しながら様子を伺っているとパーシングが遊具の滑り台から姿をあらわす。

そして、シャアの予測通りに砲身を傷つけないように右に向けながら降りてくる。

 

「やはりそう来るか。各車輌、今だ!!」

『よぉし、行けぇ!!』

 

パーシングが土煙を上げながら滑り台から降りた瞬間、九七式中戦車二輌でパーシングの砲身を挟み込む。

 

「もう一輌、パーシングの背後に回り込め。」

『不肖、細美、参ります!!』

 

そして、パーシングの後ろに回り込んだ一輌が至近距離でパーシングに砲撃を叩き込む。

いくら九七式の砲撃とはいえ、至近距離ではさすがに持たなかったのか、パーシングはそのまま白旗を上げた。

 

『や、やりましたぁ!!』

『パーシングを二輌も・・・!!これは知波単史上、またとない大戦果ですぞ!!』

 

パーシングの二輌撃破したことに感激しているのか、通信機に万歳三唱の声が入り込んでくる。

それほど嬉しいことだったのだろうか・・・・。

 

「九七式とて、それほど悪い車輌という訳ではない。だが、彼女らはどうにも突撃しか頭に無いようでな・・・。」

「・・・・・突撃は普通最終手段じゃないか?」

「そうなんだが・・・。彼女らは突撃を・・・なんと言えばいいのだろうな、一種の美徳と考えているようでな・・・。」

「それでは、勝てる試合も勝てなくならないか・・・?」

「まったくもってその通りだ。これで少しばかり意識改革が起こるといいんだが・・・。」

『角谷殿!!ありがとうございました!!』

 

知波単勢についての論評を述べていると知波単の隊長てある西からお礼の通信が入ってくる。

 

「九七式でも工夫を凝らせば性能の上の戦車にも勝てるようになる。突撃をするのは構わないが、大局を見据えるようにな。」

『はい!!わかりました!!』

 

返事はいいんだよな・・・・。返事は。

そう思いながらも俺たちはラーテの遊具を後にした。

ダージリン達の方にいるT28重戦車が気がかりだったからだ。

なるべく急ぎたかったが、商店街のような外見を持った場所ーー確か名前を『なつかし横丁』だったかーーを走行していると大学選抜チームの車輌と鉢合わせる。

その数、およそ二輌。

 

「アムロ。次のT字路で車体を回せ。」

 

狭い路地の中で追われる形でチェイスを繰り広げていると、シャアからそんな要望を飛んでくる。

 

「恨み言は無しだからな!!」

 

俺はシャアにそれだけ伝えるとT字路を右に曲がった瞬間、操縦桿を操作し、狭い路地の中でスピンを行う。

多少、建物を破壊しながらという無理やりもあったが問題なく車体を回転させる。

そして、俺たちを追ってT字路に右折してきたパーシングが視界に入った瞬間ーー

 

「そこかっ!!」

 

一気にコメットのアクセルを吹かし、パーシングに側面からぶつかる。

追突されたパーシングは建物とコメットに挟まれ、身動きが取れなくなる。

 

「外さん!!」

 

シャアがT字路に入ってきた道へあらかじめ回しておいた砲塔が追ってきたもう一輌のパーシングに向けて火を吹いた。

放たれた砲弾はパーシングの砲塔と車体の間に叩き込まれ、撃破判定を告げる白旗が上がる。

そして、コメットで押さえ込んでいるパーシングは砲塔をこちらに向けようとしていた。

だがーー

 

「遅いな。戦いとはいつも二手三手先を考えて行うものだ。ノンナの方がまだマシな反応を行えるであろうな。」

 

まだ装填の済んでいないコメットの砲身で回そうとしていたパーシングの砲身を押さえつけ、それ以上こちらに向かないようにする。

 

ガコンッ!!

 

河嶋が汗をかきながら砲弾を装填する音が響く。

それを聞き届けた瞬間、シャアがトリガーを引く。

至近距離で砲弾を受けたパーシングは横転しながら撃破判定の白旗を上げる。

 

「あらかた片付いたか。ダージリン。そちらはどうなっている?」

『そうね・・・。アッサムのデータ主義に乗っかってみるのもいいものですわね。』

 

一瞬、どういう意味だと思った。だがーー直後に通信機から響いてきた砲撃音と衝撃に否応に察してしまう。

 

「まさか、やられたのかっ!?」

『ええ。そうですわね。T28は奇策を講じ、真下に砲撃を撃ち込むことで倒しましたが、後先を考えない戦法でしたので。チャーフィー4輌に囲まれて、一斉砲撃でしたわ。』

 

ダージリンの言葉に苦しい表情をしながら押し黙ってしまう。

ダージリンは各校の隊長の中で一番思慮の深い人物だ。その彼女がやられるとこの後、相手が仕掛けてくる作戦を見切れなくなってくる可能性が出てくる。

状況に歯噛みしているとーー

 

『どうやら状況はかなり厳しい。そんなところかしら?貴方の今の心境は。』

「・・・・よく分かったな。」

 

包み隠す必要がないから素直に白状する。すると、通信機からちょっとした笑い声が聞こえてくる。

 

『戦いは最後の5分間にあるものよ。確かに私達はあちらに数でも戦車の性能でも劣っていますわ。ですが、その程度で前へ進むのをたじろぐ貴方ではありませんわよね?事実として、貴方がたはかの準決勝でプラウダの半数をたった一輌で蹴散らしたのではなかったかしら?』

「・・・・諦めるにはまだ早いことは分かっている。みほにもそう伝えた手前、私が先に折れるわけにはいくまい。」

『おや、どうやらいらぬ心配をかけてしまったようですわね。この事のおつりはどうなさいますこと?』

 

ダージリンの突然の請求に苦笑いを浮かべながら対価となりそうなことを考える。

そうだなーー

 

「まだ周りにチャーフィーはいるのか?」

『ええ。まだいらっしゃいますわね、しっかりと四輌。向こうの隊長から指示待ちをしてらっしゃるようですわ。』

「質問をもう一つ、貴方のカップに入っている紅茶の残量、どれほどで飲み干せる?」

 

関係ないように思う質問だが、俺が伝えたかったことはダージリンには伝わっていたようで、再度口元を抑えているような笑い声が通信機から飛んでくる。

 

『なるほど・・・・。それでしたら、10秒ほどで飲み干せますわ。』

「わかった。ならちょっとした競争だ。私達はこれから10秒でチャーフィー4輌を仕留める。貴方はそれまでに紅茶を飲み干せばそちらの勝ちだ。どうする?貴方にだいぶ有利だが、乗るか?」

『もちろんですわ。わたくし、受けた勝負は断らないので。期待して待っていますわ《大洗の白き旋風》さん?』

「ん?なんか聞きなれない言葉が聞こえたんだが・・・?」

 

大洗の白き旋風だと・・・・?まさか、俺のことなのか?

そう思っているとダージリンからその内容と思われる言葉が紡がれた。

 

『貴方の二つ名のようなものですわ。プラウダでの貴方の操縦の様をそのようにおっしゃられているようなので。』

「私はそういうのはいらないんだがな・・・・。」

『こういうのは貴方ではなく周りがつけるものですわ。それでですが、今の貴方はⅣ号戦車ではなく、コメット、彗星に乗っていますわ。ですので本来であれば《大洗の白き彗星》と呼ぶのがもっともなのでしょうが、個人的に思うに貴方の操縦技術や綺羅星のごとく現れたことから鑑みるのは《流星》ですわね。

流星のごとく戦車道の舞台に現れた貴方にはお似合いではなくて?』

 

流星か・・・・。名前とかは特に気にはしないが、彗星だけは御免被る。

シャアと被るからな。もしダージリンがそれをつけたら嫌悪感をあらわにしてやろうと思っていたところだ。

 

「彗星よりはマシだな。」

『ではそのように。あとは頼みますわね。《大洗の白き流星》さん。わたくし、あの準決勝の貴方がたの無双劇、結構好みでしてよ。今回も見せてくれることを願いますわ。』

 

ダージリンから期待の声が届くと俺は一気にコメットのアクセルを踏み、ダージリン達のいる遊園地の入り口付近へと向かう。

 

「シャア!!10秒で仕留める!!やれるな!!」

「まったく。無茶なことをする!!」

 

俺の言葉にシャアは呆れ顔といった表情を浮かべる。

まぁ、確かにそうだろうな、普通なら。誰でもそういう無茶だとか無理だというだろう。

だがーー

 

「無理だとは言わないんだな。」

「無論だとも。私を誰だと思っているんだ。」

 

シャアからの返答に俺は軽く笑みを浮かべながら入り口付近の堀に突っ込む。一瞬だけ外の様子を見ると橋の上にT28が炎を上げながら鎮座している。

そして、橋の柱と柱の間に挟まれるように砲身をT28の真下に向けているチャーチルが見えた。

 

「まずは1輌!!」

 

シャアがコメットのトリガーを引き、チャーフィーの部隊に奇襲を仕掛ける。

強襲とも取れるそれに狙われたチャーフィーは動くことが出来ずに直撃を受ける。

俺はシャアがチャーフィーを攻撃している間にもう1輌のチャーフィーに近づき、急ブレーキからの回転蹴りを喰らわせる。

橋の柱に思い切りぶつかったチャーフィーはそのまま白旗の撃破判定を上げる。

 

「一気に飛ばすぞ!!河嶋、装填はっ!?」

 

確認を取りながら後ろを見るとガコンっと音を鳴らしながら砲弾が装填される音が響く。

その先には肩で息をしている河嶋の姿があった。

 

「私に、構わなくていい!!だからーー」

 

お前の全力を出せ。そういうことだと受け取った俺は再度アクセルを踏んでトップスピードまで上げる。

目の前には堀の斜面が迫っていた。俺はコメットをその斜面に斜めに侵入角度を取りながら駆け上がらせる。

 

「行けぇぇぇぇぇ!!!」

 

最後に軽いドリフトをかけながら曲がるとコメットが地上から車体を浮かせて、飛んだ。

その様子はスノーボードの競技の一種であるハーフパイプのジャンプのように車体を橋の反対側にいるチャーフィーに向かせながらだ。

 

シャアは迅速に標準を合わせてトリガーを引く。放たれた砲弾は寸分の狂いなくチャーフィーに撃ち込まれる。

そして、もう1輌は、コメットの車体でボディプレスをかけることで倒すことにした。

コメットの重量はおよそ33tだ。それに対し、チャーフィーは軽戦車に部類される。

さらに高度をつけ、重力に従って落ちた時のGのかかり具合もある。その結果、車体後部にコメットの重量などがかかったチャーフィーは空中できりもみ回転をしながら吹っ飛んだ。

地面に何回か叩きつけられたチャーフィーは装甲をぐちゃぐちゃにされながらもしっかりと撃破判定である白旗を上げるという最低限の仕事をこなしたあと、沈黙した。

 

『・・・・お見事。僅かに紅茶が残ってしまいましたわ。』

 

ダージリンから降参と取れるような反面、嬉しさが混じったような言葉が飛んでくる。まぁ、ざっとこんなものかと思っているとーー

 

『麻子さん!!聞こえますか?』

 

通信機にみほの声が飛び込んでくる。その声には僅かに苦しげなものが入っているように感じた。

 

「どうかしたか?」

『敵の指揮車輌であるセンチュリオンが動きました。その結果、地波単学園の4輌が全滅した上、レオポンさんチーム、ケイさんやアンチョビさんがやられました。』

 

その報告に思わず表情を歪めてしまう。7輌も撃破されたのか・・・!!

かなりやるようだな、向こうの指揮官は。

 

『さらに大学選抜の各小隊長が合流した後、ナオミさんとカチューシャさんーーー』

 

報告の途中でみほの声が途切れた。何事かと思っているとーー

 

『エリカさんが・・・。たった今、やられたとの報告が入りました・・・。』

「みほ、今の敵車輌の残存数はいくつだ?」

『・・・・確か、アンチョビさんがパーシングを倒してくれたので、残り4輌です。』

 

みほの苦しそうな表情が眼に浮かぶが俺は頭の中で今の報告を整理しながら状況を確認する。

これで残っているのはあんこうチームとまほ、そして俺たちの計三輌だけもなった。

それに対し、まだ向こうは4輌残っている。しかも全員かなりの手練れと思っていい。

 

「・・・・・みほ。」

『は、はい。なんですか?』

 

おそらく相手の指揮官はかなりの手練れだ。みほだけでは無理かもしれない。そこにまほをつけたとしてもようやく五分五分がいいところかもしれない。

だから、俺達がやることはーー

 

「大学選抜の各小隊長は私達が引き受ける。みほはまほと一緒に敵指揮官に当たってくれ。」

『え・・・・?』

 

これしか方法はない。一番最悪なのはその各小隊長が敵指揮官と合流することだ。

それが成されてしまえば、こちらに勝機は限りなく薄くなってしまう。それだけは絶対に避けなければならない。

 

『そ、そんなの無茶ですよ!!ここはやはり一度合流した方がーー』

『いや、それではダメだ。みほ。』

 

みほの通信が途中でまほに遮られる。

 

『ここでの一番最悪なパターンというのが敵の車輌に集合されることだ。』

 

流石は黒森峰の隊長。状況がよく見えているな。

 

『今は幸い、向こうは距離は離れているが同じようにこちらもお互いの距離が離れている。合流したとしても向こうがまだ合流していないとは限らない。そういうことだ。頼めるか?』

 

まほのその要求に俺は頷く。

それしか勝つ道が見えないからな。そうするしかあるまい。

 

「すまない。貴方にみほを頼むと言われたのに結局、貴方にその役目を戻してしまった。」

『気にしないでくれ。だが、私はまだ君がその役目は果たせるはずだと思っている。』

「・・・・理由を聞きたいな。」

『ただの勘だ。いつもなら不確定要素だから一蹴するところだが、貴方のことだ。きっとできるはずだと信じている。』

 

まほのその言葉に俺は軽く髪をいじった。

まったく。俺には過ぎたプレッシャーだよ・・・・。

勘弁してほしいところだが、そうも言ってはいられない。

 

「了解した。戻ってこれることを願うよ。」

『・・・・麻子さん。』

 

通信機に再びみほの声が入ってくる。先ほどまで感じていた苦しそうなものは感じられず、隊長としての面構えを戻したように思える。

 

『私達も最後まで諦めないで頑張ります。ですので、ご武運を!!』

「そちらもな。」

 

それを最後に俺は通信機のスイッチを切った。あとは通信をする必要がないと思ったからだ。

俺は意を決した顔をしながらコメットのアクセルを踏む。さて、最終決戦、もしくはそのあたりか。




最近、ダージリンルートも割とありなんじゃないかと思い始めたこの頃・・・

最終章、見たいですか?(モモチャンズリポートのあとがき要参照)

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