冷泉麻子、行きまーす!!   作:わんたんめん

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ヴォイテクが機能しなかった・・・・・。動いてくれなかったんじゃあ・・・。




第46話

「・・・・みほ達は中央広場に集まりつつある、か。」

「大方、決戦場はそこであろうな。桃、休める時に休んでおけ。そろそろ限界も見えてきているだろう。」

「うう・・・すみません。結局、私が足手まといになって・・・。」

「いいや、君はよくやっている。私達についてきているだけでも十字勲章ものだ。だが、過度な疲労は判断を鈍らせる。だから今は休め。表情はおろか、佇まいにも疲労の色が見えている。」

「・・・分かりました・・・。」

 

シャアから労いの言葉をかけられた河嶋は気休めにしかならないが、表情から緊張したものを抜く。いつまでも張り詰めた気でいると余計に疲れるだけだからな。

そして、遊園地の街中を進みながらシャアと状況の確認を行う。戦局は3対4と車輌数ではまだ向こうが優っている。

 

「・・・さて、お前はどう思う?相手の出方。」

「フラッグ戦であれば真っ先にフラッグ車を狙うのが定石だろうが今回のルールは殲滅戦だ。現在の我々の位置関係から鑑みるに各個撃破が考えられる。」

「だろうな。みほにも言ったがこちらは合流は考えずに向こうの合流を阻止を最優先としている。できれば1輌でも削いでおきたいのが本音だが・・・。」

「一応、気配のする方向には向かっているのだろう?」

 

シャアの確認とも取れる発言に俺は軽く頷く。

 

「一応な。そろそろポイントに着くはずなのだが・・・。」

 

そう思っていると向こうから向かってくる気配を感じた。その数、およそ三つ。

 

「・・・・向こうもこちらの合流を防ぐつもりだったようだな。どうりで中央広場に向かわないと思っていたが、私達を探していたのか。」

「どうやらそのようだな。まったく、ご苦労なことだ。それだけの価値が我々にあるものか・・・?」

「普通であれば、こちらには目にもくれないと思うんだが・・・・。」

「いやいや、単騎で9輌も撃破していたら真っ先に最優先目標になるはずだろ、普通っ!?」

 

視線を向けると河嶋が驚いた様子でこちらに視線を向けていた。

疲れは大丈夫なのかと聞くべきなのだろうが、もうそうは言っていられない。

 

「桃、英気は十分に養えたか?」

「どうせ、まだですって言ったところで・・・。相手は目の前にいるんですよね?」

「ふっ、言うではないか。最後の一踏ん張りだ。気張れよ。」

「了解です!!」

 

河嶋の表情には疲れはまだ見えるものの先ほどよりはマシになっている。

これならまだ行けるか。

 

 

 

「さて、隊長から例のコメットの相手を任されたけど・・・。あのコメット、隊長からの許可はあったとはいえ、突然乱入してきて、音楽堂の包囲をたった1輌で切り崩しーー」

「カールとパーシングを3輌、それにチャーフィーを合計5輌撃破、その内の3輌は格闘戦で破壊・・・。あれからかなり時間経っているけど未だに格闘戦で仕留めたっていうの呑み込めないわー・・・・。」

「それにチャーチルを仕留めた遊園地の入り口付近にいたチャーフィーの4輌。あれに至ってはたったの10秒で撃破されたんでしょう?」

 

3輌のパーシングの車長である『アズミ』『ルミ』『メグミ』の三人が、コメットの戦績に顔を引きつられせる。

そのメグミの確認にルミは苦々しい表情を浮かべながら頰をかいた。

 

「いやー、どうなんだろうね。でも撃破報告の時、そのチャーフィーの人達、涙声だったよ?」

「そうよねぇ・・・。なんだっけ、空中で砲撃されて、コメットの車体後部を回転つけて人間でいう蹴りをしてーー」

「あとは・・・橋を跨いで空中にジャンプ。そしてボディプレスだったかしら?」

 

コメットの詳しい動きを聞いたバミューダ三姉妹はそのあり得ない戦法、そしてそれを成し遂げられる技量に舌を巻く。まさに開いた口が塞がらないと言った感じである。

 

「・・・・いやいや、私ら相手にしてるのって高校生だよね?どう見たってやっていることが島田流の師範、いや家元クラスを優に越してそうなんだけど・・・。」

「ねぇ、ルミ。あのコメットに乗っているの、メグミみたいな赤みがかった茶髪と黒髪のストレートの子だったわよね?」

「えっと、確かそうだったはずだね。キューポラから顔を出していたし。というよりあのコメットがやばいのは確かだね。だって迷路のところでこっちも仕留められかけたもん。」

 

アズミにそう問われたルミは記憶を振り絞りながら頷いた。その様子を見たアズミは表情を曇らせる。

 

「・・・・どうかしたの?」

「・・・あのコメットがあそこまでの戦績を挙げれるのも納得が行くわね・・・。」

「・・・・その様子だと、ある程度は知っているようね。」

 

メグミの確認に彼女は無言で頷いた。

 

「乗っているのは確実に角谷 杏と冷泉 麻子の二人よ。前者はともかく、後者は聞いたことはあるんじゃないかしら?」

「・・・・もしかして、この間の全国大会で大怪我を負ったやつ?」

「ええ。そうよ。怪我の度合いは詳しくは知らないけど、少なくともここに出てこれる容態じゃないわ。まだ決勝が終わってからそれほど月日は経っていないし。」

「・・・・つまり怪我人ってこと?」

「・・・そう思っているとこっちが足元掬われるーーーー」

 

言葉はそれ以上続かなかった。なぜなら感じたことのない感覚に襲われたからだ。

その感覚は思わず自身の肌を確認して、鳥肌が立っているかどうかを見てしまうほどだ。

結果としてははっきりと立っていた。

そして、その感覚が飛んできた先には件のコメットがいる。ただ、視線を向けられただけのはずなのに身がすくみかけている。額からは冷や汗が流れ落ち、本能が警告する。

あのコメットはやばいとーー

 

「なん、なのよ?この・・・プレッシャーって奴だっけ?って、あれ?なんか背後にモノアイの赤い巨人見たいなのが・・・?」

「うっそでしょ・・・?初めてだわ、相対した敵に気圧されるなんて・・・。え、な、なんだがオーラみたいなのが形になって・・・?あれは白い・・・巨人?いやロボット?あの背中の放熱板みたいなの・・なに?」

「・・・・私たち、一体何を相手にしているの・・・?」

 

心が自然とネガティブな方向に持っていかれる。さながら悪魔による魔法を受けているような感覚だ。

その感覚をいち早く打ち払ったのはーー

 

「っ!!?メグミ、アズミ、さっさとバミューダアタックを仕掛けるよ!!手加減なしで!!コイツを隊長のところへ向かわせたら、絶対にヤバイ!!」

 

一度、迷路越しという間接的とはいえコメットと相対したことがあるルミであった。

彼女が声をかけたことでなんとか平静を保った二人は目の前の強敵に厳しい目を向ける。

 

「ごめんなさい・・・・完全に相手に呑まれていたわ・・・。」

「そうね・・・。戦車道の試合で冷や汗かいたのなんていつぶりかしら・・・?」

「いや、あれはしゃーないよ。一度間接的とはいえ会敵した私でさえ結構やばかったんだから。ていうか、プレッシャーだけで相手に戦意喪失させるとかマジで何者?」

 

 

 

向こうから3輌のパーシングが向かってくるのが視界に入った。それぞれの車輌にはパーソナルマークなのか、赤い四角形、黄色い菱形、青い三角形のエンブレムがあった。

三つの同じ車輌か・・・・・まるでーー

 

『黒い三連星だな。』

 

俺とシャアの声が重なる。どうやらまったく同じことを考えていたようだ。

 

「・・・・やはりお前も一緒のことを考えるか。」

「まぁな。三つの同じ機体に乗っているトリオなどソレしか思いつかない。」

 

そう話しているとパーシングがこちらに勢いよく向かってくるのが見えた。

俺の視界からはパーシングが1輌までしか見えないが奥に残りの2輌がいるのははっきりとわかる。

 

「どう対処する?」

「大方仕掛けてくるのは奥の2輌が両翼からドリフトでこちらを囲うように突っ込んできて集中砲火だろうな。そして、こちらは体良く止まってしまっているが・・・。」

 

俺はそういいながら片足でアクセルとブレーキの両方を踏む。エンジンが唸る音が響くがブレーキを踏んでいるため前に進むことはなく、辺りに音を撒き散らかすだけとなる。

 

「シャア、後ろに砲塔を回せ。」

「ふむ、分かった。いいだろう。」

 

人差し指を上に向けながらクルリと一回だけ回すジェスチャーをしながらシャアにそういうとわかってくれたのか面白そうな顔をしながら頷いた。

 

 

 

「・・・・あのコメット、動かないわね。」

「どうする?このまま行っちゃう?」

 

ルミとアズミから問われたメグミは指を顎に添えて思案に入る。

現在、先頭からメグミ、ルミ、そしてアズミの順で一直線に並んでいる。このままうまく行けばさっさと囲んであのコメットを倒せるはずだ。

 

「なんか引っかかるのよね・・・。砲塔を後ろに回してるし・・・。抵抗する気がないのかしら?」

「なんにもないならそれに越したことはないんだよねー。」

 

いや、それだけはありえない。そうは思うものの、事実として、未だにあのコメットからの砲撃はない。

 

「なら、いつも通り、決めちゃいましょ!!」

 

メグミに言われるまま、コメットを囲うように包囲しようとする。

そこで初めて耳にするのはエンジンが唸るような音。さながら今か今かと待っているような音だった。

 

「しまった!!メグミ!!気をつけて、突っ込んでくるっ!!」

「っ!?」

 

アズミがそう呼びかけた瞬間、爆発するような音と共にコメットが車体前部を空中に浮き上がらせながら急発進をした。

あのコメットはロケットスタートをするためにアクセルとブレーキを両踏みしていたのだ。

 

(まさか、このままコメットの車体で押しつぶす気?でも、なんとかアズミがとっさに声をかけてくれたからこっちはトリガーを引くだけ、確実に仕留められる!!)

 

 

確実にあのコメットを取ったと感じた。それはこれまでの経験談を賭けてもいいという自信もあった。

がら空きになった車体下部に砲弾を叩き込んでこのコメットは終わり。

99%、その光景で頭がいっぱいだった。そう9()9()%()である。

 

ドゥンっ!!

 

 

故に、コメットの行動に一瞬理解が及ばなかったのだろう。

僅かにこちら撃つよりより早くコメットの砲塔が火を吹いた。車体前部が浮いているため、自然と砲塔が下を向く形となった結果、放たれた砲弾は地面に叩きつけられる。

そして、その時生まれた風圧と衝撃波は前進していた力も相まってコメットを空中へと羽ばたかせる。

さながらカタパルトから射出されるモビルスーツのごとく。

 

「えーーー」

 

ドゥンっ!!

 

呆けたのもつかの間、こちらからの砲弾も放たれる。しかし、車体下部を狙っていたのも相まって、砲弾は空中を飛んでいるコメットの下を、紙一重で通り抜ける。

 

そして、こちらに一直線に向かってくるコメットはーーパーシングの車体に乗り上げた後、一発、砲撃を鳴らしながらまた飛んで行った。

こちらの撃破判定が上がっていない以上、おそらく先ほどの砲撃は空砲であることは確か。

 

(ふ、踏み台にしたの・・・!?私のパーシングを・・・?)

 

踏み台にされたことに怒りを覚えつつもまだやられたわけではない。

ならば、まだ反撃の機会はある。そう思ったのもつかの間ーー

 

ズドンっ!!

 

何かがぶつかった衝撃音と振動がパーシングの車体を大きく揺らす。

何かぶつかった?決まっている。砲弾だ。だが、空砲を撃ってからの間隔が狭すぎる。思わずキューポラから顔を出すと、メグミは目を見開いた。

決して自分の車輌が白旗をあげていることに驚いているわけではない。

彼女の視界にはちょうどコメットが地面へ降り立っている様子が映っていた。

 

一見すると何気ない光景に見えるが、彼女はその異常性に気づいた、否、気づいてしまった。

砲撃は数秒前に行われた。コメットが地上に降り立った時に撃った訳ではない。つまり、その少し前に砲撃をした。

これが意味していることはーー

 

(あのコメット、()()()()()()()()・・・・!?)

 

空中では安定性が著しく低下する。本来では砲撃はおろか、そんな状況に持ち込もうとすらしない。

でも、あのコメットは平然とやってのけた。

操縦手はともかく、その不安定極まりない状況でありながら砲弾を装填する装填手、そして、目標に直撃させる砲手、全員のレベルが頭一つどころの話ではない。

 

「メグミ!!うっそでしょ本当に・・・!!」

「ルミ、メグミには悪いけど彼女のパーシングを盾にしましょう。」

「っ・・・そういうことね・・・。」

 

2輌のパーシングは撃破されたアズミのパーシングをコメットから身を隠す簑のようにしながら左右両方を警戒する。

そして、少しの間コメットとの間に沈黙が走る。それは長くも感じたし、短くも感じた。

とにかく冷や汗が止まらなかったのだけはわかる。

ルミとアズミの二人はコメットの動向を一瞬たりとも見逃さないように目くじらを立てていた。

その沈黙を破ったのはコメットであった。その証拠にパーシングの向こう側からエンジンの音が響いてきた。

左右どちらから来るかと気を張ってきたが、一発の砲撃音とともにコメットが出てきたのはまたしても真正面であった。

それもただ真正面を突っ切ってきたわけではない。コメットはパーシングの車体後部に乗り上げながら、空砲を一発撃つことで推進力を得て、上空から突っ込んできた。

 

(くっそ!!私は馬鹿か!!さっきあのコメットが空中使っていたのを見て、普通の手段で来ないとは思わなかったのかっ!?)

 

心の中で悪態を吐くも出遅れたのは事実。だが、相方のアズミはある程度予想していたのか砲塔を空に浮かぶコメット(彗星)へと向けていた。

空中という手段を使うのは驚いたが相手は動くことは叶わない。

そう安堵したのもつかの間、先手を取ったのはまたしてコメットであった。

放たれた砲弾は寸分狂いなく、アズミの乗るパーシングへ向かっていった。

そして何より驚いたのはその砲撃の直後、アズミのパーシングの砲塔に決して枯れることのない、三つの花弁を持った鉄の華が咲いたことだ。

それが向けられていたパーシングの砲身だったものと気づくのに、それほど時間はかからなかった。

 

(せ、先端から根本まで裂けてる・・・・。)

 

そして、その砲塔は爆発を起こし、アズミのパーシングは白旗を上げる。

それと同時に背後から無限軌道の音がしたため、後ろを振り向いてみると、悠然とした足取りでコメットが迫ってきていた。

こちらは全力でやったにも関わらず、向こうは無傷。もはや引き笑いしか出てこなかった。

 

「あ、あはは・・・・。こりゃ無理だわ。ってもせめて一矢ぐらいは報いてーー」

 

乾いた笑いを浮かべ、動こうとした時には既に砲弾を撃ち込まれていた。

出鼻を挫かれる形となったルミはキューポラから項垂れるように体を出す。

撃破確認をしたコメットは悠然と彼女らの隊長がいる中央広場へと向かっていった。

 

「あーもう。油断も隙もないったらありゃしないねー。軍人かっつーの。」

「ちょっと、もう少しくらい頑張りなさいよ。」

 

項垂れていると少々怒り顔のアズミが目に入った。

 

「そうは言ってもさー。あれ、どう見ても家元クラスだよ?」

 

ルミの乾いた表情で言った言葉にアズミは困惑顔をしながらも頷いた。

 

「そうなのよね・・・。レベルが違いすぎるわ。」

「ねぇ・・・。そういえば、メグミは?あのコメットに二回くらい踏み台にされていたけど・・・。」

「・・・・し、死ぬかと思ったわよ・・・。」

 

二人が視線を向けた先には表情を真っ青にしたメグミがキューポラから顔を覗かせていた。

彼女らはメグミのその様子に苦笑いを浮かべるしかなかった。

 

 

 

 

「残りの相手はセンチュリオン1輌だけか。」

「そうだな。だが、そのセンチュリオンに乗っている島田愛里寿は子供だがかなりの強敵だ。かなりの苦戦が考えられる。」

「子供なのか?・・・・わかった。他でないお前の言うことだ。肝に命じておく。」

 

シャアと共に最後に残った車輌について話し合っているとーー

 

ゴトンっ

 

何かを落としたような音が響いた。何事かと思って音源の方を振り向くと河嶋が呆けた顔しながら落としたのであろう砲弾を見つめていた。

 

「桃、大丈夫か?」

「だ、大丈夫です。まだ私は・・・。」

 

シャアにそう聞かれた河嶋は焦った顔をしながら落とした砲弾を持とうとする。しかし、辛うじて持った砲弾は河嶋の腕をすり抜け、再度コメットの中で虚しい音を響かせる。

 

「あ、あれ・・・?おかしいな・・・?」

 

そう言いながらもう一度砲弾を持とうとするが、やはり、持てない。持てたとしても直ぐに腕から落としてしまう。

それ以上、見ていられなかったと同時に申し訳なさが滲み出てしまう。

おそらく、河嶋の腕は、もうーー

 

「桃。もうよせ。君は頑張った。」

「か、会長、何いっているんですか、まだ試合は終わっていないのに・・・。」

 

遠慮する河嶋にシャアは彼女の手首を掴みながら無言で首を横に振った。

それを見た河嶋は一度表情を俯かせると目に涙を浮かばせながら、嗚咽をこぼし始めた。

 

「ううっ、グスっ、ごめん、なさい・・・・!!腕が、もう・・・!!」

 

河嶋の腕は限界を迎えてしまったようだ。チラリと河嶋の腕を見やるが、それだけでも彼女の腕が痙攣を起こしているのは明らかだった。

河嶋は謝罪の言葉を口にしながら、涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにする。

 

「まだ、西住達が戦っているのに・・・!!これじゃあ、準決勝の時と同じ・・・!!」

 

おそらく、河嶋はプラウダの時のことを言っているのだろう。彼女はあの時も吐き気に襲われて、最後まで戦いきることができなかった。

 

「私は、結局どうしようもないーー」

「桃、それ以上はよせ。」

 

泣きわめく河嶋にシャアが彼女の肩に手を乗せながら呟く。

 

「準決勝の時、確かに君は途中で脱落した。だが、そのあとはなんとかなったではないか。」

「で、ですが、私がもっとちゃんと冷泉の運転に着いていければーー」

「桃。ここでイフの話はよせ。先も言ったが君はよく頑張った。あとは、我々二人に任せろ。君の意志、受け取った。」

 

シャアからそう言われた彼女は再度、顔をうつむかせた。

それを見届けた俺はコメットを発進させようとするがーー

 

「待ってください!!最後、これだけ、やらせてください!!」

 

そう言いながら砲弾を持とうとする河嶋。思わず、止めようとしたが、シャアから静止されてしまい、大人しく席に戻った。

河嶋は痙攣している腕で四苦八苦しながらも最後の装填をする。

ガコン、という音が響くと河嶋はやりきった顔をしながらその場にへたり込んだ。

 

「・・・・・あとは頼みます。」

 

俺とシャアは無言でそれに頷いた。河嶋、お前の気持ち、無駄にはしない。

 

「みほ、こちらコメットだ。敵の3輌の撃破、完遂した。そちらはどうなっている?」

『あ・・・・麻子さん・・・?』

 

返ってきたみほの声はひどく弱々しく感じた。俺はそれに嫌な予感を抱きながら通信を続ける。

 

「・・・・何があった?」

『・・・ごめん、なさい。私たち、撃破されちゃった。』

 

みほのその言葉に俺は苦々しい表情を浮かべるしかなかった。

俺はなんとか平静を保ちながら、みほに確認を取る。

 

「まほは・・・?彼女はどうしている?」

『お姉ちゃんはまだ、なんとか保たせているけど・・・。』

 

俺は通信を続けながらコメットを急発進させる。シャアが驚いた表情を浮かべているが、御構い無しだ。

 

「アムロ、何があった!?」

「みほ達がやられたっ!!」

「なんだとっ!?」

 

みほ達がやられたことはシャアも驚きの表情を浮かべていた。

 

『・・・・お願い、麻子さん・・・。助けて・・・・。』

「・・・・・みほ。」

 

通信機の先からみほの涙をすする声が僅かに聞こえる。万事休すなのはお互い分かっている。

故に、この言葉を使うしかあるまい。

 

「あとはこちらに任せろっ!!」

 

みほにそれだけ伝えて、目の前のことに集中する。

俺達のコメットは既に中央広場へと差し掛かっていた。

 

「シャア!!突入するぞ!!」

「わかった!!操縦は任せるぞ!!」

 

そう言いながら、中央広場へと突入を行う。

視界に見えてきたのは、激戦を繰り広げている大学選抜チームの隊長、『島田愛里寿』の駆るセンチュリオンとまほのティーガーⅠであった。

見たところ、実力は拮抗しているように見えるがわずかにまほのティーガーⅠの方が損傷具合的に押されているように感じた。

 

「機銃掃射でセンチュリオンの気を惹きつける!」

 

シャアがコメットの機銃をセンチュリオンに向け、発射する。戦車の装甲を抜くのは不可能だが、センチュリオンは一度仕切り直すように離れた。

俺達はその間にまほのティーガーⅠに駆け寄るように接近する。

 

『・・・すまない。助かった。』

「まだ無事なようで何よりだ・・・。」

 

まほに通信でそう投げかけながら俺はⅣ号の所在を確認する。

すると、崩れかけたメリーゴーランドのそばで白旗を上げているⅣ号の姿があった。

おそらくメリーゴーランドを無理やり突っ切ってきたセンチュリオンに不意をつかれた形でやられたのだろう。

 

一度目を閉じ、気持ちを切り替えながら開き、再度センチュリオンと対峙する。

感覚だけでわかる。コイツ、かなりやる・・・!!

 

そして残弾は残り1といっても過言ではない。性能も向こうの方が上だ。状況は厳しい。

だが、それは向こうも同じだ。

俺は通信機を口元に持ってきながらまほに確認を取る。

 

「まだやれるなっ!?」

『当たり前だっ!!西住流に逃げるという道はないっ!!』

 

一応確認は取ってみたが、まだ気持ちは十分なようだ。声にも落ち込みといった色は見えない。

 

「やるぞ、シャアっ!!ここで勝負をつける!!」

「了解だ!!」

 

ここで奴を仕留める!そうでなければ、死んでも死にきれんからな!!




さってと最終決戦、始めますかっ!!
どこまでやれるかなぁ・・・(白目)

最終章、見たいですか?(モモチャンズリポートのあとがき要参照)

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