冷泉麻子、行きまーす!!   作:わんたんめん

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エピローグ

大学選抜との試合が終わった後、病院に担ぎ込まれた俺だが診断の結果、大腸の傷が開き、再度出血していることが明らかになった。

量や傷の開き具合はそれほどではなかったものの、医師の判断で緊急手術。

その結果、大事には至らなかった。しかし、入院したことに変わりない上、病院を脱走した前科が明らかになったため、看護師による巡回が俺だけ特別厳しくなった。

気分は軽い軟禁生活をしている気分だった。みほたちがちょくちょく見舞いに来てくれるからそれほど精神的に参ることはなかったがな。

彼女たちの話を聞いていると試合のあと、約束はしっかりと履行されたとのことだ。大洗女子学園艦の廃校は撤回され、みんな今までの日々を取り戻すように楽しく過ごしているとのことだ。

で、今はシャアが一人で病室に来ていた。

 

「へぇ・・・華が生徒会長になったのか。となると、もうお前は表舞台から降りるのか。」

「ああ。私のやるべきことはもうない。あとは未来ある若者に任せるつもりだ。」

 

シャアは病室の丸椅子で器用に足を交差しながら腕を組んでいた。

一応、シャアに見舞いに来た理由を聞いてみたところ『仲間なのだから当然だろう』とのことだった。

仲間か・・・・。そう言われて自然と笑みがこぼれてしまった。

 

「しかし、秋山が副会長になるとはな・・・。予想外だ。沙織が書記を務めるのはまだ分かるが・・・。」

「私も大方西住君辺りがやると思ったが、まさかの五十鈴君から直々の指名だった。まぁ、西住君には戦車道の隊長の役目がある。こうも役職を押し付けてしまうのは流石に西住君に申し訳なかったからちょうどよかったがな。」

 

それもそうだな。これ以上、みほに様々な重役を押し付ける訳にはいかないからな。

俺はシャアの言葉に納得の意志を示しながら頷いた。

 

「あとは島田愛里寿の短期転校だったか?確か飛び級して大学に通っているんだろう?彼女は。そう簡単に転校とか許されるのか?」

「そこまで詳しいわけではないからな。あまり言うことはできないが・・・。いくつもの学園艦を巡るそうだ。」

「そうなのか。」

 

一度話題を切るとシャアが唐突に別の話題を切り出した。

 

「そういえば、お前は最近ニュースなどは見れているのか?」

「・・・・いや、毎日毎日誰かしら見舞いに来てくれるからからっきしだな。島田愛里寿まで来る始末だったからな。」

「お前の元にも来たのか?まぁ、それはそれとして、そうであれば土産話にもなるか。大洗女子学園に廃校を告げに来た男、辻廉太と言うらしいのだが、その人物が現在のポストである『学園艦教育局長』から引きずり降ろされたらしい。」

 

俺は大方シャアが何かしらやったのではないかと思ったが、どうやらそうではないらしい。

奴の表情にしたり顔のようなものはなかったからな。

 

「大学選抜の試合のあと、試合の内容の件でネットで文科省にバッシングが集中してな。その結果、文科省のサーバーが一度落ちかけたらしい。」

 

まぁ・・・・聞く話によれば試合で使われていたカール自走臼砲は本来戦車道の試合で使えるものではないらしいからな。さらにまほたちの手助けがなければ30対8という勝ち目のない戦いをやらされるところだったのだ。明らかになれば批判が起こるのも分からなくはないが・・・。

文科省のサーバーが落ちかけるとは、それほどのことだったのか?

 

「まぁ、一番の原因になったのは、お前だったがな。アムロ。」

「は?俺がか?俺が何かしたのか?精々途中乱入したり、12輌ほど倒したくらいだが・・・。」

 

素っ頓狂な表情を浮かべながらそう言うとシャアは乾いた笑いをあげながら説明を始めた。

 

「お前、怪我をおしてでも試合に出てきただろう?その様子が一般の人々に共感を呼んだらしくてな・・・。まぁ、お前に対しての批判もあるにはあるのだが、それも怪我人なのだから安静にしておけぐらいのレベルでな。とりあえず怪我人が立ち上がったことに触発されたのか一般市民が目の敵にしたのが文科省でな。」

 

この手のクレームは面倒極まりないからな・・・。匿名で言えるのも相まって割と気軽に言えてしまうのが現代社会だからな・・・。

 

「で、その結果、責任を取る形で辻廉太は現在の役職を辞任。さらに文部科学大臣も任命責任としてかなり追及されているらしい。」

「そ、そんな大ごとになっているのか・・・・。」

 

思わず引きつった表情を浮かべてしまう。その表情をしながら言った言葉にシャアは黙って頷いた。

 

「本当にお前は絡んでいないのか?」

「絡んでおらんさ。精々が局長の恐喝とも取れる発言を録音したボイスレコーダーを日本戦車道理事長に渡したくらいだ。」

「お前もやることやっているじゃないか!」

 

声を少々荒げながら言ったが肝心のシャアはどこ吹く風といった様子だ。

まったく・・・絡んでいないとどの口が言っているのか・・・。

 

「それで、話は変わるが退院の目処は立っているのか?」

「・・・・そうだな・・・。一応大人しくはしているからな。あと半月ほどしたら退院は可能だとのことだ。」

「ふむ、そうか。」

「そういえば、なぜ俺の退院日なんかを聞いたんだ?」

「気になっただけだ。」

「そ、そうか。ならお前にも聞くが、進路とかどうしているんだ?」

 

シャアの言葉に違和感を覚えたが追及することはしなかった。そのかわり聞いた質問にシャアは特にこれといった表情をすることはなくーー

 

「シンプルにいい大学の推薦で、な。あとは有意義に学生生活の余生を過ごすだけだ。今は桃の勉強の面倒を見ているところだ。」

「河嶋の・・・?一体どうしてなんだ?」

「あの試合のあと、彼女の元にもそれなりの数の大学からの推薦が来ていてな。

で、そのうちの一つを選んだのだが、いかんせん彼女は学力がな・・・・。」

「ああ・・・・。それでお前が教えているのか・・・・。」

「そう言うことだ・・・・。」

 

そう言った奴の顔は妙に遠い目をしていた。かなり大変なのだろうな・・・・。

その日はシャアは学園艦へと戻っていった。

奴も奴で大変なのだろうな・・・・。

 

 

 

 

そして月日は早いもので、気づけば退院予定日の当日となっていた。

傷痕は残ったままだが、内臓の経過は良かったらしく問題ないとの医師のお墨付きを受けて、予定通りの日に退院することができた。

世話になった医師や看護師にお礼を述べながら、祖母とともに病院を後にすると、人だかりがあった。しかもとてもよく見慣れた人々で形成されたものだった。

みんな学生服を着ているため学生なのだろうが、紅茶片手にしている藍色、灰色や濃い緑色で形成された色とりどりの制服を着ている学生の集団は俺と祖母を見つけるやいなや花束などを手にしながら駆け寄ってきた。

 

『退院、おめでとう!!』

 

その掛け声と共に、持っていた花束などを俺に差し出した。

俺自身は退院の日をシャア以外に教えたつもりはなかったため、大方の流出源であろうシャアに視線を送る。

 

(・・・・みほたちに教えただろ。それもダージリンやケイにアンチョビ、挙げ句の果てにカチューシャやまほ達もいるじゃないか。)

(私はあくまで聞かれただけだ。)

 

シャアに素知らぬ顔をされてしまった。どうしようもなさにため息をつきながら、俺はしばらくもみくちゃにされるのであった。

で、退院直後にアンチョビ主導で大洗学園艦で祖母を巻き込んだ俺の退院パーティーが執り行われた。

 

「そう言う訳で、冷泉の退院を祝って、カンパーイっ!!!」

『イエーーーイっ!!!』

 

アンチョビの音頭で始まったソレは主役になってしまった俺を中心に夜まで続いた。

祖母には流石に途中で帰ってもらったが、その時に『楽しみなさい。』との一言があったが、すでに胃に穴が開きそうだ。

 

「はぁ〜・・・・。」

「コラァっ!!主役がそんな顔してたらダメだろうっ!!もっと楽しめっ!!」

 

思わずため息をついてしまうが、アンチョビに見つかってしまい、小言を受けてしまう。

楽しめと言われてもな・・・。

 

「なぜこんな大ごとにするんだ?なんかいつのまにか、感想戦だったか?選抜チームの人たちまで巻き込んで試合の振り返りをしているのだが・・・。」

 

今、特設ステージではエキシビションの写真とともに一枚一枚、その写真に写っている戦車の搭乗員が説明を始めるという『感想戦』とやらが行われていた。

司会はみほ達プラス小山のあんこうチームが務めていた。

疲れた表情しながらそう言うと、アンチョビは呆れながら俺の席の隣に座った。

 

「なんでって、そんなのお前がみんなから好かれているに決まっているからだろ?まぁ、感想戦はともかくだけどな。」

「好かれている、か。私はそんなことをした覚えはないのだが・・・。」

 

アンチョビの言葉を疑問に感じながらも豪華絢爛な料理に手をつけていると視界の端に紅茶のカップを手にしたある意味見慣れた人物がいつのまにかいた。

 

「少々長いですけど、こんな言葉を知っているかしら?『友達に好かれようなどと思わず、友達から孤立してもいいと腹をきめて、自分を貫いていけば、本当の意味でみんなに喜ばれる人間になれる。』」

「・・・・また得意の格言か。私はそっちには疎いのだが・・・。」

 

誰の言葉かわからなかったため、発言した張本人であるダージリンに聞き返すと、勝ち誇った表情をしながら言葉を続ける。

 

「ある日本人の言葉ですわ。意味は、言葉の通り。貴方は好かれようとすることはせず、いつも自分を貫きましたわ。立ちはだかる壁にも決して屈することはなく、ご自分の意志を貫いた。これはその結果。むしろ誇りに思ってもよろしいのでは?」

「・・・・・誇り、か。悪いがそうは思えないな。私は自分にできることをやっただけだ。」

「・・・・それでこそ、貴方ですわ。」

 

それだけ言うとダージリンは手にしていた紅茶を口にする。

俺はその様子を見ながらあることを思いつく。

 

「ダージリン、私もその紅茶をもらってもいいか?」

「あら、中々唐突ですこと。理由をお聞かせ願えるかしら?」

 

ダージリンは特に驚きといった表情を挙げることはなかったが、理由を尋ねられた。

理由としては大学選抜のメンバーがいるからだな。

 

「この感想戦、大学選抜の人達もいるから、殲滅戦の部分もやるんじゃないのか?そうなると私も駆り出されるだろうから口直しにな。」

「それであれば、ペコをお呼びしますわ。ペコ?少しいいかしら?」

「はい、なんでしょうか?」

 

ダージリンはオレンジペコを呼び寄せると彼女はパーティーの最中であったにもかかわらず来てくれた。

 

「冷泉さんに紅茶を一杯淹れてくれるかしら?」

「はい。ただいまお持ちしますね。銘柄はどちらにしますか?」

 

オレンジペコは俺にそう尋ねてくる。しかし、紅茶の銘柄の知識などサラサラだった俺は答えようがなかった。とりあえずーー

 

「・・・・ダージリンでいい。」

「分かりました。少々お待ちください。」

 

そう答えると彼女は紅茶を淹れに行った。すると、ダージリンの妙な笑顔が視界に入った。

 

「なんというか、嬉しそうだな。」

「フフッ、貴方がまさか私の名前の紅茶をご所望なさるとは思わなかったので。」

「任せると言うと彼女にいらぬ気苦労をかけると思ったからな。」

 

ダージリンにそう言うと彼女は微笑みを浮かべながら再び紅茶に口をつける。

程なくして紅茶の入ったティーカップをトレーに乗せてオレンジペコが戻ってきた。

 

「どうぞ。ダージリンです。」

「すまない。ありがとう。」

 

俺が持ってきてくれた彼女に対してお礼を述べると、ダージリン達を呼ぶみほの声が会場に響いた。

 

「あら、出番ね。それでは冷泉さん、また後で。」

 

そう言うとダージリンはオレンジペコを連れ添って特設ステージへと向かっていった。

それを見送ると、俺はオレンジペコが淹れてくれた紅茶を口に含む。

・・・・あまり味がしないな・・・。香りはいいことから察するに、どうやら味ではなく匂いを楽しむタイプのようだ。

 

「やっぱり大学選抜との試合までやるみたいだな。」

「そうらしいな。」

 

アンチョビの言葉にそう軽く返答しておく。特設ステージではダージリンやみほ、それに大学選抜の小隊長の一人、『ルミ』が上がっていた。

 

「へぇー、湿原の方だとそんな感じなっていたのかー。」

 

湿原での戦闘写真とダージリンやみほの説明にアンチョビがそんな声を零した。

その時の状況を知らない俺などにとっては知るのにいい機会だろうな。

 

「そういえば冷泉も上がるんだろ?少しだけ内容教えてくれるとか、ないか?」

「ん?そうだな・・・。詳しくは言えないが、合計で12輌は倒したな。」

「・・・・マジで?」

 

アンチョビのひくついた表情に俺は無言で頷いた。

 

「なぁ、常々思うんだけどさ。本当に初心者か?お前。杏もそうだけどさ。」

「いろんな人物から言われているが、戦車道に関しては初心者だ。」

「ふーん、戦車道に関してはねぇ・・・・。」

「・・・まぁ、戦車の内部構造に知識がないわけではなかったからな。」

「・・・・なら、そういうことにしておくよ。」

 

アンチョビの言葉に俺は乾いた表情を浮かべるしかなかった。

モビルスーツに乗って、戦争をしていましたと言ったところでなぁ・・・・。

信じてくれる確証がこれっぽちもない。

 

「そういえば、アンチョビはどの小隊にいたんだ?聞いた話によると三つほどに部隊を分けていたそうだが・・・。」

「私はひまわり中隊にいたぞ。乗ってきたのがP40で重戦車だったからな。中央高地の占領を目標とした分隊だったんだけど、まぁー自走臼砲のせいでそれすらままならなかったけどな。いやー、あの時は真面目に寿命が縮むかと思ったさ。」

 

ふむ、彼女は彼女で大変だったのだろうな・・・。

そのあたりでみほのアナウンスで話題になっていたひまわり中隊の招集がかかった。

メンバーを見る限り、アンチョビのほかにまほやカチューシャといった黒森峰とプラウダの面々で形成されていたようだ。

感想戦は笑いに満ち溢れたとても素晴らしいものへとなっていた。大学選抜チームの面々も笑顔があった。

その様子に見入っているとシャアと河嶋の二人が近づいているのが見えた。

 

「どうだ?楽しめているか?」

「ん、まぁな。」

「ならいい。」

 

軽いやりとりをするとシャアも席に腰掛けて料理に手をつけ始めた。

 

「そろそろ我々の出番だぞ。」

 

シャアにそう言われ、画面を見ると映像は遊園地のものへと変わっていた。

ちょうど大学選抜チームに追われている画像が多いため、おそらく野外音楽堂に追い詰められる直前のところなのだろう。

 

「・・・・そうらしいな。」

 

そして、画像がちょうど野外音楽堂に追い詰められたものに変わった。

 

『そして、野外音楽堂に追い詰められた大洗連合。この時点で私ははっきり言って半ば諦めかけていました。』

 

みほの優しげな口調のアナウンスが響く。観衆の歓声も彼女の神妙な声色に気を使ったのか今は鳴りを潜めている。

まるで、テンションが最高潮になる直前の静寂のようだ。

 

『ですが、その包囲網を破ってくれたのはたった一つの彗星、もしくは流星でした。野外音楽堂の壁を破って現れたのはイギリスの巡航戦車、コメット。』

 

画像が壁を破砕しながら現れたコメットに切り替わる。しかし、観客の歓声は未だ起こらない。

 

『ここから先はこの人たち抜きで語れません。そういうことで、お願いします!!コメット砲手兼車長、角谷 杏さん!!装填手、河嶋 桃さん!!そして、全国大会で大怪我をしたにも関わらず、みんなのために来てくれた《大洗の白き流星》、操縦手、冷泉 麻子さん!!お願いします!!』

 

みほのアナウンスが俺の名前を呼んだ瞬間、観客の歓声は一気に湧き上がった。

まさに大歓声といっても過言ではないだろう。肝心の俺は苦笑いを浮かべていたがな。

 

「行くか。おそらく、かなり長くなるぞ。」

「まぁ、やったことがやったことですが、主にそれは冷泉に向かうと思いますけどね。」

 

シャアと河嶋に着いて行く形で特設ステージへと登った。

ステージから見る観客の表情はどれも期待に満ち溢れていた。

俺はみんなのその様子に難しい顔を浮かべていると視界にマイクが写り込んだことに気づく。

誰が渡してきているのかと思えばシャアだった。

 

「主役はお前だ。であれば先陣を切るのはお前が一番いいだろう。」

「・・・・できれば勘弁してほしいのだが・・・」

「そうも言ってられんだろう。覚悟を決めろ。」

 

シャアからそう諭され、観念した俺はシャアからマイクを受け取る。

 

「・・・・掛け声はみんな『パンツァー・フォー』だったが、私も合わせた方がいいよな?」

「え?それは麻子さんに任せますよ?」

 

一応、みほに確認を取るとそんな返事が返ってくる。

どうするべきか・・・・。せっかくの機会なのだから、少しばかり歯止めを緩めてみるのもいいか。

 

「それじゃあ、皆に確認代わりなのだが、着いてこれる奴だけ、着いてきてくれ。色々やらかしているという自覚はあるからな。」

 

そういうと観客の表情がやる気に満ちた表情に変わった。まぁ、掴みとしてはいいのか?よくわからないが。

俺は一つ、大きく息を吸い込むとーー

 

「冷泉麻子、コメット、行きまーすっ!!!」

『イェーイっ!!!』

 

力一杯そう叫んでみると思いのほかウケが良かった。何事もやってみるものだな。

そこから先は本当に疲れる事ばかりだった。俺のコメットによるやらかしが出てくるたびに歓声が巻き起こり、さらに質問の嵐に巻き込まれて、本当に疲労困憊になるまでやったものだ。だが、その状況を楽しいと思っている自分もいた。

 

 

これから先も戦車道に関わって行くかは分からない。俺が戦車道をやっていた理由は最初こそは遅刻回数の免除だったが、シャアの話を聞いたりして、気づいたら大洗の廃校をなくすために動いていた。そのため理由なき今、このまま戦車道を続けていくかどうかは悩んでいる。

しかし、秋山や華、沙織、そして、みほのあんこうチームとの出会いは心の底から良かったと思っている。

 

何の因果かは分からなかったがアクシズを押し返そうとしたら、気づけば記憶はそのままで赤ん坊の姿へと変貌していた。

その時は本当に理解が追いつかなかった。だが、沙織との出会いから最終的には様々な人との出会いがあった。

 

「麻子さん!」

 

声がした方向へ振り向くとみほが笑みを浮かべながら立っていた。

 

「これからもよろしくお願いします!!」

「・・・これから、というのは卒業までか?」

 

まぁ、そこまでだったら続けていくつもりだが・・・。

しかし、みほの答えはどうやら違ったようだった。

 

「ううん、卒業してからも貴方と一緒に戦車道を続けていきたいんです。ダメですか?」

 

俺は返答に困ってしまった。そう言われて仕舞えば、冥利につきる。

だが、それとは別に問題があった。

 

「・・・・私の答えはここでは保留させてくれ。」

「そ、そうですか・・・。」

 

私がそう答えるとみほは少しばかり悲しそうな表情をする。

 

「まぁ、また後で答えるよ。今は、状況が状況だ。」

 

マイクに声が入らないようにみほにそういうと彼女は自分がどういう状況下で言っていたのかを思い出したのか、顔を真っ赤にしだした。俺はそれの様子に微笑みながらパーティーの司会を続けた。

 

なんとか場を繋ぎ続けた結果、その日のパーティーは大盛況だった。

無事終わったようで何よりだ。

そして、つい一時間前までたくさんの生徒の盛況に包まれていた会場は徐々に片付けられ、最終的には夜空の浮かび上がっている星空の光に薄く照らされるだけとなっていた。

 

俺はそこでただ一人上を茫然と見上げていた。

 

思い返してみれば、たくさんの出来事があった。大洗女子学園が廃校の危機に晒されたことから始まった戦車道。サンダースやアンツィオ、さらにプラウダや黒森峰との戦いは経て、俺たちは一度は廃校を取り消したはずだった。

しかし、文科省の横暴で半ば無理やり廃校が決定され、それに異議を申し立てたシャアが取り付けた大学選抜との試合。

結果としては見事、勝利を収め、俺たちは今度こそ廃校の危機を免れたんだ。

 

「・・・・麻子さん。」

 

声が聞こえてきた。誰の声かは見当はすでについていた。

聞こえてきた方角である後ろを振り向くとみほが立っていた。

 

「・・・どうしてここに?」

「えっと、会長が・・・あ、違った・・角谷先輩が麻子さんはそこにいるって言ってたので・・・。」

「・・・・そうか。杏がか」

 

それだけ言うとみほは俺のそばに来ると同じように星空を見つめる。

 

「星が、綺麗ですね。」

「・・・・そうだな。」

(なんか微妙に違う・・・・)

 

普通に答えたつもりだったんだが、微妙に膨れっ面をされているように感じるのはどうしてだ・・・・?

 

「・・・・麻子さんは卒業しても戦車道を続けてくれますか?」

 

膨れっ面をやめるとみほはパーティーで話していた俺が卒業した後も戦車道を続けてくれかどうかの質問をしてきた。

 

「そうだな・・・・。元々戦車道をし始めたのも遅刻回数が免除されるという邪な理由だったしな・・・・。」

「ふぇぇっ!?そんな理由で戦車道をやっていたんですかっ!?」

「まぁ・・・・恥ずかしながらな。」

 

少々照れ臭いものもあったため、軽く頰をかいていると、みほから驚きの混ざったままの声が掛けられる。

 

「えっと、結局、遅刻の回数は・・・?」

「そど子達に消してもらったはずだ。多分・・・。」

「た、多分ですか・・・・。」

 

さて、そろそろ本題に入るか。

 

「それで、続けるかどうかだが・・・・。私の答えはーーー」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「やれやれ、みほにああ言ってから早くも一年経ちそうだ。」

 

あれから数年経ち、俺は大洗女子学園を卒業した。卒業したあとは推薦を使って、本土の大学に通い始めた。

あいにくだったがみほとは別の大学に通うことになった。

それで俺が戦車道を続けているかどうかだが、それは少し置いておくとしよう。

 

現在大学で着ている私服とは打って変わって制服のような服を着こなしている俺はベレー帽のような帽子をつける。その帽子にはいつかの日に大洗女子学園の廃校を巡って戦った『大学選抜』のマークが記されていた。

結論を言うと俺は戦車道を続けていた。

 

それもーー

 

「準備はいいようだな?アムロ。」

「ああ。・・・・結局お前もなんだかんだで続けているんだな。」

「・・・一応、手は引くつもりだったのだがな・・・。」

 

シャアも戦車道を続けていたのだ。それも何の因果かは知らないが、同じ車輌の砲手と操縦手としてだ。

で、俺とシャアの乗る戦車の車長はと言うとーーー

 

「麻子さん!!杏さん!!」

 

聞き慣れた声のした方へ振り向くと同じように大学選抜の制服を身につけたみほがいた。

そう、彼女が俺たちの乗る戦車の車長なのだ。

 

「今回もよろしくお願いしますっ!!」

「ああ。よろしく。」

 

笑みを浮かべて挨拶してくる彼女に対して、手を振って挨拶を返すと若干、急いでいたのか、息を少しばかり切らしながら言葉を続ける。

 

「今回は初めての世界大会ですね。」

「そうだな。まさか、自分みたいな奴がこんな大それた舞台に立てるとは思ってもいなかったがな。」

「まぁ、仮に世界が相手でもやることは変わらんよ。」

 

シャアがそう言うとみほもそうですね、と同意の姿勢を示した。

 

「それじゃあ、行きましょう!!パンツァー・フォーっ!!」

 

みほに続く形で待機室から出ると既にこちらのチームの準備は完了していた。

中には見知った顔もいたり、その逆もまた然りだが、シャアの言う通り、やることはいつもと変わらない。

 

そして、試合開始の合図が上がった。

 

「麻子さん!!前進してください!!」

「了解したっ!!出るぞっ!!」

 

俺はアクセルを踏んで、搭乗車輌を前進させ始める。

大洗女子学園でⅣ号戦車を初めて動かした時のように。

 

最終章、見たいですか?(モモチャンズリポートのあとがき要参照)

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