番外編というわけですが、一番やばい回かもしれないっす。
大晦日特別編
「今日は大晦日。そういう訳で。忘年会、始めちゃいましょー!!」
『おーっ!!』
沙織の音頭で集まった人達が飲み物の注がれたコップを軽くぶつけて乾杯をする。メンバーはあんこうチームの面々の俺を含めた五人だ。
そして、飲み物を口に含んで沙織の発案で始まった忘年会が始まる。
そんな中で俺は唯一不機嫌な顔をしていた。
「もうー、麻子ったらそんな顔でいたらせっかくの忘年会なのに雰囲気悪くなっちゃうよ。」
沙織の言葉に俺はわずかにこみかみに怒りのマークを浮かべながら睨む。
「誰のせいでこんな顔になっていると思っているんだ。」
そうは言うものの当の本人はどこ吹く風といった様子で聞く耳を持ってくれることはなかった。
俺が不機嫌な顔をしている理由はその忘年会の会場がーー
「なんで私の家なんだ!ほかにもっといい場所があっただろうになぜ私の家で敢行したんだ!」
「だって、一番広いし?というよりもうやっちゃっているから後の祭りじゃない?」
「・・・・はぁ。」
「アハハハ・・・・・。」
そう、なぜかこの忘年会の開かれている場所が俺の家なのだ。
一応、抗議の声は挙げたが、沙織の言う通り、後の祭りなのは確かなため、俺は項垂れる表情をするだけに留まってしまう。
その様子にみほは乾いた笑い声を挙げながら見ていた。
「いやー、それはそれとして、今年は本当に色々ありましたねー。」
「ええ。全くですね。一年にも満たないですが、この数ヶ月は毎日が本当に濃い日々でした。」
秋山の今年を振り返るような言葉に華が頷く。
まぁ、華の言う通り、この数ヶ月が本当に濃い日々だったのは確かだ。たった数ヶ月だけだったにもかかわらず、数年を過ごしたような気分だった。
「思えば本当にどんどんスケールの大きい話になっていったよね。みぽりんが黒森峰から大洗に転校してきて、会長がーーあ、今は華が会長だったね。まぁ、前会長が戦車道を復活させて、聖グロと親善試合をして、あの時は本当に右も左もわからないって感じだったよね。」
「聖グロとの試合は負けはしましたが、そこからの全国大会はまさに破竹の勢いでしたね。サンダースやアンツィオはもちろんプラウダといった強豪校との試合。
とくにプラウダの時の麻子殿と会長が乗り込んだⅣ号の活躍振りにはこの秋山優花里、情けないことにおふたりが動かしていたのは本当に戦車なのかと疑ってしまうほどでした。」
「えっと、確か最終的にプラウダの車輌の半数近くを倒したのでしたよね。その結果に至った過程も素晴らしいの一言に尽きる内容だったらしいのですが・・・・どのようなことをしていましたのでしょう?」
おい、河嶋のことも忘れないでやってくれ。一番頑張っていたのは彼女だからな。
そう思うだけで、口には出さんがな。
今に思えば、プラウダ戦から割と本気でやりはじめたな。
飲み物を口に含んで軽い笑みを浮かべていると考える素ぶりをしていたみほが口を開いた。
「えっと、包囲網を抜けたあとクラーラさんのT-34/85を含めた4輌をそれぞれ一発で撃破。クラーラさんの時に至っては目の前でドリフトをされたって本人が流暢な日本語で言ってましたね。」
「うへー、つくづく麻子ってとんでもない動かし方するよねー。他にはどんなことしてたの?」
沙織の視線がこちらに向いたため、俺はプラウダ戦の記憶を呼び起こしながら説明を始める。
「そうだな・・・。クラーラ達の包囲を突破した後はフラッグ車のアヒルさんチームの援護に向かったな。」
「うんうん、それからそれから?」
「ちょうどIS-2が撃つ直前だったな、駆けつけた時は。まぁ、謂わゆる万事休すといったところだった。」
「えっ!?それではどうやってIS-2を止めたのですかっ!?」
「IS-2自体は止めようとは思わなかった。火力が足りなかったからな。」
秋山の驚きにたいして俺がそういうと沙織は何やら不味いものでも思い出したかなような表情をしだした。
「あー、なんか思い出してきた・・・。確か試合が終わった後ノンナさんが砲弾を砲弾で撃ち落としたとか言っていた気がする・・・。」
「あれは会長がやったことだ。私がやったことじゃない。」
「いやいやいや、そのあとの無限軌道の片側だけで運転したっていうのはどうみても麻子だよねっ!?」
沙織が驚きの表情を挙げながら、顔の前で手を横に振り、否定の意を表す。
俺は特にこれといった反応をせずに頷いた。
「ああ。やったな。砲撃の衝撃を利用して車体の片側を浮かせた。」
そういうとみほと華は苦笑いを浮かべ、秋山は目を輝かせ、沙織は頭を抱えるかのような色とりどりの反応を見せた。
「・・・・ねぇ、時々思うんだけど。麻子が動かしてるのって私たちが動かしているのと同じ戦車だよね?」
「乗っているのが戦車なんだから戦車に決まっているだろ。」
「いや、そうなんだけどねっ!?何というか、次元というか世界が違うというか。」
「でも、麻子さんの操縦技術には本当にお世話になったよね。何回もダメかなって思った時があったけど、いつも麻子さんが切り抜けてくれていたから。」
みほの鶴の一声といった声が上がるとほかの三人もうんうんと頷きながら俺に視線を向ける。
「確かにそうですわね。サンダース戦の時、麻子さんが咄嗟に動かしてくれなければ試合が長引いていましたし。」
「アンツィオ戦の時も前会長殿との息ぴったりな掛け合いのおかげでなんとかなりました!!」
「まぁ・・・本当にプラウダ戦の時はありがたかったかな。沈んでいたみんなの気持ちも元に戻して、何より麻子と前会長が頑張ってくれたおかげで勝てたんだもん。」
華が純粋、秋山が尊敬、沙織は照れながらもそれぞれ思い思いの表情を浮かべながら、俺に感謝の気持ちを向けてくる。
・・・・今更ながら少しばかり恥ずかしいな・・・・。
「・・・・ところで、プラウダ戦の時はほかになにかしたの?」
表情を微妙なものに変えた沙織がそんなことを聞いてくる。
他に、か。どうだったかな・・・・。
「確か、片方のキャタピラだけで砲撃を避けたあと、カチューシャの乗る車輌を倒したな・・・。それでそのあと、ああ。思い出した。ノンナの乗るIS-2と1対1になった時、正面衝突したな。」
「あ、IS-2とですかっ!?」
秋山の驚く声に俺は頷くだけして、話を続ける。
「その時になんだが普通に正面衝突してもやられるのは目に見えていたから前会長が砲身を振り回してIS-2の砲身をかっ飛ばした。さながら野球のバットのようにな。」
「・・・・砲身で相手の砲身をかっ飛ばしたんですか。」
「まぁ、かっ飛ばすというより砲身に砲身をぶつけて逸らしたといったほうがいいか。」
秋山の言葉に一応、補足として入れた言葉も意味を成さず、みほたちはしばらく言葉を失っていた。
「本当にやることなすこととんでもないよねー。麻子は。」
沙織が若干呆れた表情でこちらをみてくる。あれはシャアがやったことなんだがな・・・・。
「その正面衝突が祟って黒森峰戦ではあんなことになったがな。」
「ちょっと!!本当にあの時は心配したんだからね!!しかも私に結構辛いポジション押し付けて!!かなり辛かったんだからね!!」
ジュースを飲みながら何気なくそういうと沙織が顔を真っ赤にしながらそういってくる。
確かに沙織にはかなり辛い立ち位置に立たせてしまったからな。
こういう表情をするのは当然か。
「改めて、すまなかったな。まぁ、最終的には生きていたのだから別にーー」
「むー」
そのまま話を流そうとしたらみほにふくれっ面をされて止められてしまう。
俺は気にかけないように目を閉じながらジュースを口に含む。だがーー
「むー」(ジトー)
・・・・さらにジト目までされてしまう。さらに不機嫌さも目に見えるようになってしまった。
俺はしばらくみほのその目を見ていたが・・・・
「・・・・はぁ、悪かったよ。今度から怪我を負ったら素直に言うから・・・・。」
最終的に俺が折れる。ため息をつきながらそう言うとみほは笑顔を浮かべながら料理に手をつけ始めた。
・・・・大洗のみんなが見舞いに来てくれた時に一番心配していたのは彼女のようだからな。
「あの・・・やっぱり傷跡とかは残ったままなんですか?」
秋山の質問に俺は少しばかりジュースを飲みながら考える。
少し自分の中で思案した後コップを置いて、話し出す。
「・・・・残ってるな。まぁ、この場で出すようなものではないから見せないけどな。」
「そう、ですか・・・。」
秋山の沈んだ表情を見てなんとなくいたたまれない感情を抱いた俺はすぐさま笑顔を浮かべて安心させようとする。
「まぁ、私はこの通り普段通りの生活を送れている。そこまで秋山が気にすることはない。下手な同情は逆に相手を不快にさせるときもあるからな。」
「・・・・そうですね。何よりの怪我の張本人である麻子さんがいいのであれば、私たちが心配するのは不粋ですね。」
「そういうことだ。さて、料理が冷める前に食べてしまおうか。」
華の納得といった表情をしながら言った言葉に便乗する形で俺は傷口の話を止めさせる。その後は沙織の作った料理を他愛ない話をしながら着々と減らしていった。
料理を完食した後はだんだんとお開き状態になっていき、家族のいる沙織と秋山が年越しは家族と過ごすらしく先に帰っていった。
「それじゃあ私は帰るねー。みんな今年はありがとうね!!」
「私もキリがいいので帰りますね。・・・皆さんのおかげでこの一年は本当に楽しい毎日でした!!ありがとうございましたっ!!」
沙織は手を振りながら、秋山は敬礼の構えをして俺の家を後にした。
華は一人暮らしだそうだが、母親が心配性らしく年を越す前に家に戻るようだ。
「それじゃあみほさん、麻子さん、良いお年を。」
「ああ。そちらもな。」
「華さん、良いお年を。」
最後に一礼、お辞儀をして、華は俺の家を後にした。
さて、これであとはみほだけだが・・・・。
「本来であればどうすると確認を取るべきなのだろうが、お互い家に誰もいないからな。年越しまで家にいても構わない。」
「・・・いいんですか?」
「一人で寂しく年越しを迎えるよりはマシだろう。」
「ありがとう。」
適当にあっためたココアを持ってくると二人でこたつに入ってテレビを見る。
テレビには年末によくやっている歌番組やら24時間で出演者の尻がしばかれるやつがやっていた。
みほは歌に聞き入ったり、出演者に起こるハプニングで笑ったりしていた。
俺はその様子を見ながら静かにココアを飲んでいた。
(・・・・平和だな。とても、二十年前までモビルスーツに乗って、戦争をしていたとは思えんな。)
これが本来の高校生の生活ぶりなのだろうな。
俺のようにひょんなことからガンダムに乗り込み、戦争に振り回されて、戦いというメビウスの輪に呑まれていった者の生活ぶりとは思えない。
「麻子さん?どうかしましたか?」
俺の表情が気になったのかみほが覗き込むような感じでみてくる。
俺はそれに笑顔を向けながら微笑む。
「いや、平和とはこういうものなのかと思ってな。」
そういうとみほはクスクスと笑い始めた。俺はそれにキョトンとした表情をしてしまう。
「おいおい、何も笑うことはないだろう。」
「だっていきなり平和とか言われたら・・・。」
・・・・それもそうか。彼女は戦車という戦争の道具に乗ってはいるが、実際に戦争を切り抜けたわけではない。
むしろ、当然か。
そのあとはお互い特に会話はせずにテレビ番組を見ていると不意にみほが話し始めた。
「麻子さん、傷口、見せてもらっても良いですか?」
突然の要望に俺は少しかける言葉を失っていた。まさかみほが見たがるとは思わなかったからだ。
「あまり、見ても気分のいいものではないのだが・・・。」
「私が見たいんです。・・・・駄目ですか?」
・・・・どうするべきか・・・・。
そう思いながらみほの顔を軽く見る。彼女の表情は戦車に乗っているときのそれと遜色なかった。
つまり、テコでも動かないという意思表示でもある。
「・・・・少しだけだぞ。」
俺は服を捲り上げ、もう見せる機会はないと思っていた傷跡を晒す。
「・・・・痛々しいですね。」
「傷跡とはそういうものだ。」
そっけない言葉を言ってココアを飲んでいると、若干こそばゆい感覚が腹の、具体的に言うと傷口あたりから走った。
何事かと思って視線を向けると、みほが傷口を触っていた。
「・・・・聞くほどのことではないが敢えて聞く。何をやっているんだ?」
「傷口を触っていますよ?」
至極当たり前のように言ってきたみほに俺は困り果てた顔を浮かべる。
説教をする気も失せた俺はそのままテレビに視線を向ける。
「程々にしてくれよ。」
「はーい。」
ただそれだけを言うのであった。少しするとみほは傷口を触るのをやめ、俺と同じようにテレビに視線を戻した。
そのまましばらくテレビを見ていた。ふと、番組に終わりが見え始めたため、時計に視線を移すと時刻は12時間近、つまるところ年を跨ごうとしていた。
「まさに今年もあと少し、か。」
そう呟くことで感慨深いものに浸っているとこたつの中でもぞもぞと動くものがあった。
ちなみに隣にいるはずのみほはなぜか姿が見えなかった。
「はぁ・・・・。」
と一つため息をついた瞬間、みほがコタツの中からぬるっと出てきた。
出てきた場所は俺がコタツに足をいれているところからだ。みほはそのまま俺の足の間に収まるように入ってくると、背中を俺に預けるように乗せてくる。
「えへへ・・・・。」
呆れるような視線を向けるとみほは照れ臭そうに表情を緩みきったものに変える。
「・・・・もう何も言わん。」
「わーい♪」
再度テレビに視線を向けるとまさに年越しのカウントダウンをしている真っ最中であった。
画面の中のカウントは1秒ずつ減っていき、最終的にゼロを示した瞬間、テレビの画面に煌びやかなテロップとともに『HAPPY NEW YEAR』の文字が映される。
「あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。」
「今年もよろしく。」
あまりこういったことには慣れていないから端的にみほにそう伝える。
「ふふっ、こうやって誰かと一緒に年越しを迎えるのは初めてかも。」
「そうなのか?」
「・・・・今度はお母さんやお姉ちゃんと一緒に年越しを祝えるといいな・・・。」
姉であるまほは今ドイツに留学しているとのことだ。なぜ知っているかと言うと彼女から手紙が来た。
内容は一緒に留学でもしてみないかという催促文だった。思ってもいなかった内容だったが、俺には俺のやることがあるため遠慮しておいた。
「まほはともかく、母親であるあの人なら大丈夫だろう。」
俺の言葉にそうかな・・・と疑問げな声を挙げていたが、表情自体に暗いものはなかった。
「あの、麻子さん。」
みほに名前を呼ばれ、視線を向けると先ほどとは打って変わって顔をかなり紅潮させているものの何やら意を決したような顔立ちをした彼女がいた。
「どうかしたか?」
そう尋ねるとみほは何回か深呼吸をした。しかし、表情には赤みを残したままだったが、みほは俺の手を握るとーー
「私、麻子さんが好きです。友達としてでもあります。ですが、その、私が抱いているコレは、多分ほかの人が麻子さんに思っているものとは違くて、ええとその。ど、どうしよう考えがまとまらないよ・・・。
私は麻子さんが恋愛的に大好きです!!だから、私と付き合ってくれませんかっ!?」
みほの言葉に俺は目を見開いて聞いていた。みほは考えがまとまらず、ストレートに思いを伝えてしまったため恥ずかしかったのか、顔を真っ赤にして俯いている。
まさか、告白されるとは思っていなかったからだ。しかも男からならともかく一応外面は同性であるみほからされるとは。さらに先ほどのみほの言葉は根っからの本心だ。そのことも俺の返答が遅くなったことに拍車をかけていた。
「その・・・やっぱり変ですよね・・・。嫌なら嫌っていってもいいので・・・。」
反応がないことに不安になったのか、目に涙を溜めながら、わずかに上ずった声でそういった。
おい、まだこれといった返答もしていないのに向こうから白旗を降り始めたぞ。
「まぁ、そのなんだ。そういってくれるのはありがたい。だがーー」
「そ、そうですよね。やっぱり気持ち悪いですよね。」
「ちょっと待て、一回こちらの話を聞け。」
早とちりして、そそくさとコタツから出ようとしたみほの肩を抑えて、なんとかその場に押さえつける。
「付き合うにあたってだが、少しばかり私の秘密でも言っておこうか。」
「え?麻子さん、何か秘密があるんですか?」
「ああ。沙織にも言っていないことだ。」
そういうとみほはつばを飲み込むような様子を見せた。
別に大したことではーーいや結構あるか。
「俺は、男と付き合うのは真っ平ごめんだ。」
そういうとみほはしばらくキョトンとした表情を挙げていた。
「え・・・『俺』・・・・?それに男と付き合うのはごめんって・・・。」
「意味をどう捉えるかはみほの想像に任せる。その意味を自分なりに解釈した上でまたその言葉を聞かせてくれ。」
「・・・・・はいっ!!」
そう笑顔を浮かべるとみほは再度コタツの中に潜り込み始めた。
何をしているのかと思いながらもまったりとテレビを見ていると急にコタツの中に引きずり込まれそうになる。
何事かと思って咄嗟にコタツの中を見ると俺の足を掴んで引きずり込もうとしているみほの姿があった。
猛烈に嫌な予感がした俺はコタツから出ようとするが、みほの馬鹿にならない力に敢え無くコタツの中に引きずり込まれてしまう。
ちょっと待て、みほ。お前、なぜはだーーーーうわっ!?
その日の朝、みほは新年初日から風邪をひくという大失態をした。
俺は普通にコタツから這い出て布団を敷いて寝たからなんともなかった。起こすのも忍びなかったためコタツの電源は入れておいたがどうやらダメだったようだ。
無論、看病ぐらいはした。
何があったって・・・?察してくれ。
まぁ、俺から一言あるとしたら、みほの気持ちはもう決まっていると言ったところか。
本編も残りわずかですが、来年もよろしくお願いします^_^
最終章、見たいですか?(モモチャンズリポートのあとがき要参照)
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