冷泉麻子、行きまーす!!   作:わんたんめん

54 / 65
待たせたな!!!(某蛇風)

あ、それと感想返せなくて申し訳ないです。
しかし、感想は送っていただけると励みになるので嬉しいです^_^


最終章 第3話

「暇だ…………。」

「仕方あるまい。我々は瓜二つの人間がいるとはいえ、戸籍上はいない人間なのだ。下手に外を出歩いて妙な噂を立てるわけには行かないだろう。」

 

俺が生徒会室のソファにもたれかかりながら愚痴を零すと同じソファで本を読んでいたシャアからそんな言葉が返ってくる。

その言葉になんら言い返せそうなところはなかったため俺はため息を吐くだけに留めた。

 

「でしたら、少し二人にも考えてもらいたいことがあるのですが………。」

「ん?河嶋、どうした?」

 

河嶋の言葉にシャアが読んでいた本を閉じながら内容を尋ねる。

 

「実は、向こうの私が隊長をするそうなので試合中に自分との区別をつけるために別の名称が欲しいのですが…………。」

「………ああ、そう言うことか。」

 

河嶋の言葉に俺は納得したような声を上げる。彼女の言うことはもっともとであったからだ。俺とシャアはまぁ、そのままお互いが呼び合っている名前を使えばいいが、河嶋にはそう言うのがない。

決めておかねば、そのうちどちらの河嶋のことを指しているのか混乱してくるからな。

 

「…………ならどうする?無難にピーチにでもしておくか?」

「それだと私、飽きるほどの回数拉致られますよね?」

 

シャアが試しに彼女の名前を適当に英訳したものを提案するも彼女から渋い顔が返ってくる。まぁ、奴自身も冗談半分で言ったのかすぐさまそれを取り下げたが。

 

「…………ハヤテ。」

「…………ディアーチェとかはどうだ?」

 

「なんか悪魔だか騎士でもいそうな名前ですね。」

 

そうか。まぁ、適当に脳内に浮かんだものを羅列しているだけだから受けがいいとは到底思っていないが。

 

「イシュタル。」

「奇遇だな。私も神話の神が思い浮かんだ。エレシュキガル。」

 

「二人とも完全に遊んでいますよね?」

 

ジトッとした目を浮かべた河嶋からそう言われてしまい、思わずシャアと揃って苦笑いを浮かべてしまう。

 

「そうだな。流石に茶化しすぎた。だが、名前と言っても今回の無限軌道杯ではあくまで向こうの河嶋が隊長に据えられる。ならば無理に名前など決めずに、基本君が西住君達の言葉に耳を傾けなければいいのではないのか?」

「うーん…………それもそうですね。」

「とは言うが、流石に試合中は何かしらの変装はした方がいいだろうな。お前は適当に仮面でも被っていればいいと思うが………。」

 

そう言ってシャアの方に目線を向けると奴から細められた鋭い視線を向けられる。仮面被ったり、名前も変えていたんだから今更だろ。

 

「………戯言は置いておいて、確かに何かしらの変装はした方がいいのは確かだろう。秋山君あたりに頼んでみるか?ここでも同じように偵察を行なっているのであれば、変装道具の一つや二つもあるだろう。」

「それもいいかもしれないな。だが…………。」

 

シャアの秋山の力を利用すること自体はいい提案だと思っている。しかし、彼女の偵察映像を頻繁に見ていたからこそわかることが一つあった。

 

「…………彼女、服装こそ数は多いが、変装……主に顔周りを隠すようなアイテムは偵察するときには使っていなかったな………。」

「む………そうか。それはそれで問題があるような気がするが………。他校の情報を仕入れてくるのはいつも彼女だろう。顔が割れている可能性も否定しきれんと思うが。」

「………そうだな。元の大洗女子学園に戻ったら、秋山に言っておくか。」

 

シャアとそんなことを話していると、隠れ蓑がわりにしている生徒会室の扉が開く音が響いた。そちらに俺達三人が扉の方向に目線を向けると、そこにはみほの姿があった。

 

「あ、あの…………皆さんへの紹介のために来てもらいたいのですけど…………。」

「ああ、もちろんだ。彼女らにちゃんとした自己紹介はまだだったな。要するに我々は君の知り合いにそっくりな赤の他人なのだからな。」

 

みほの言葉にシャアはそんなことを口にしながら座っていたソファから立ち上がる。

俺と河嶋もシャアに続くように立ち上がり、部屋から出て行こうする。そんなときたまたますれ違い様にみほと目線が合ったのだが、なんというかびっくりしているような目をしていた。

 

「…………すまない、そんなにじろじろ見られるのは慣れていないのだが。」

「ふぇ!?ご、ごめんなさい!?」

「い、いや…………別段私は気にしていないからいいのだが。」

 

見ていたことを指摘された瞬間に慌てた様子を見せながら頭を下げた彼女に向こうのみほとなんら変わらないことを察した俺は思わず表情を綻ばせる。

 

「…………やはり、世界線が違うとはいえ、君は君のままのようだな。」

「…………そういう麻子さんはこちらの麻子さんとは全然違いますよね?身長とか………背筋もまっすぐですし。前会長も言わずもながですが。」

 

みほから微妙な顔をされて思わず渋い表情を浮かべてしまう。やはり言えない…………中身は精神年齢が50近い大人が入っているなど口が裂けても言える訳がない。

 

「そういえば、麻子さんのパンツァージャケットは特注なんですか?私達が夏の大会で着ていたものや冬用のものとも違うみたいなんですが………。」

 

ふとみほは俺が着ているロンド・ベルの制服風のパンツァージャケットについて尋ねてくる。これはシャアが俺用に特注で作ってくれたものなのだが、いかんせんこれを着るに至った経歴は文字通りかなり血生臭い。パンツァージャケットどころか制服すらダメにしてしまうほどだったのだからな。

 

「ん…………まぁ、私が汚したのをアイツが代わりに用意してくれたものだ。」

「よ、汚したんですか………。」

 

それも泥などではなく、自分の血でだがな。

 

 

まぁ、それは置いておいて、みほについていった俺達三人は戦車倉庫の前に連れてこられた。そこでは雪が降っている中、集合している戦車道履修者達がいた。

 

………バレー部の彼女ら、ちゃんと袖と丈の長いジャージを持っていたのか。プラウダ戦の時の雪原でもバレーのユニフォーム姿のままだった彼女らにはある種の戦慄を覚えたが………なにはともあれ防寒具を持っていることに安心した。

 

「えっと、皆さんに集まってもらったのは新しい仲間の紹介なんですが…………。」

 

「一応名乗りはしたから知っている人間は知ってると思うが、コメット車長兼砲手の角谷杏だ。色々面倒な事情を抱えてはいるが、よろしく頼む。」

「コメット通信手兼操縦手の冷泉麻子だ。よろしく。」

「…………装填手の河嶋桃……………なのだが、前の二人と違って、私には完全に瓜二つの同一人物がいるから……。」

 

大洗女子学園の面々に自己紹介を行なっている中、河嶋はかけていた片縁メガネを外し、懐にしまった。

 

「…………断腸の思いだが、みんなには柚子ちゃんがたまに使っている桃ちゃんという愛称で呼んでくれて構わない。これならそれなりに差別化は出来るはずだが………。」

「…………その愛称、使われるのはあまり好ましくなかったのではないのか?」

「断腸の思いだと言ったはずです。恥ずかしいのは変わりませんけどね。」

 

シャアが意外そうな表情で河嶋に尋ねると苦笑いを浮かべる。まぁ、向こうの河嶋も嫌がっていたし言っていた通り断腸の思いなのだろう。

 

「なら、我々もあやかるとするか。別に普通に呼んでくれてもこちらとしては構わないが、そちらで混乱をきたすようなら私のことはシャアと呼ぶといい。」

「…………まぁ、別にこだわることでもないか。私のこともそちらの寝坊助な彼女と分別を付けたいならアムロと呼んでくれ。」

「あれぇ………河嶋殿は分かりますけど、お二人は一体どこからその名前が………?」

「昔、というか最近では今もだが、コイツと呼び合っていた名前だ。」

「なるほど………やはり外見はともかくそちらはこちらの前会長と冷泉殿とは違う人生を渡っておられるようですね………。」

 

名前の出所に疑問を思ったのか、そう尋ねてきた秋山に俺は決して嘘は含まれていない当たり障りのないことを返答として返した。

 

「…………そうだな。色々と、だな。」

「アムロ、少しいいか?」

 

秋山の言葉に軽く笑みを浮かべていると、シャアから声がかかった。

 

「なんだ?」

「これからソナーで見つけた戦車と思しき反応の調査を行うみたいなのだが、お前も来てくれるか?」

「別に構わないが………具体的な場所はわかるのか?」

「学園艦の艦底部だ。」

「ん………コメットでも見つけたのか?あれも学園艦の最深部付近で見つけたとか聞いていたが。」

「あれの時とは場所が異なる。しかし、その場所が場所なのだよ。」

「…………素行の悪い生徒がわんさかいる場所か?」

「そうだな。通称『大洗のヨハネスブルク』と呼ばれている場所だ。」

 

ヨハネスブルク………治安の悪い街の代名詞でも用いられるほどの知名度を誇る場所か………。つまりガラの悪い奴らが盛り沢山ということか。

 

「もしものことが彼女らにあっては困る。荒ごとにならないことが一番いいのだが、念のために私達も同行しようと言うのだ。」

「…………わかった。私も同行させてもらう。河嶋はどうするんだ?」

「私はちょっと遠慮させてもらいます。その、見知った顔がいないわけではないので。」

 

河嶋の様子が少し気になったが、シャアから別に気にすることはないと言うので、特に追及はしないことした。

 

そして俺達が同行を願い出たことに最初こそ不安そうな顔を浮かべていたが、案内を請け負っているそど子から人数は多い方がいいかもしれないという言葉をかけられ、それに背中を押される形で俺達の同行を承認してくれた。

 

そして、あんこうチームの五人と案内役のそど子に俺達二人の計八人で『大洗のヨハネスブルク』なる場所に足を踏み入れることとなった。

 

「……………荒れているな。」

 

そのヨハネスブルクなる大洗学園艦の艦底部の入り口に差し掛かったところで開口一番に出てきたのがその言葉だった。有刺鉄線が張られたバリケードの先には壁には落書き、地面に食い散らかしたゴミが散乱しており、明らかに不衛生な場所であると判断できる場所であった。

 

「この前撤去したばかりなのにー!!!」

 

そのバリケードがわりに張られている有刺鉄線を最近撤去したらしいが、その鉄線がまた張られていることにそど子は憤慨している様子を露わにする。

 

「切断してこの先に行こうにも用具がいるな。一度上へ戻るか?」

「………斬りましょうか?」

 

どうやってもリッパーかそのあたりに工具が必要だと判断した俺はみほにそう提案したが、彼女が答えるより先に徐に華が有刺鉄線の前に立った。

一瞬、彼女が有刺鉄線を切断できるようなものを持っているかと思ったが、彼女が懐から取り出したのは生花で使う剪定バサミだった。

そして、何やらかなり手慣れた手つきでナイフさばきならぬ剪定バサミさばきを見せたかと思うと有刺鉄線に向かって一閃。

 

次の瞬間には張られてあった有刺鉄線が切れていく音があたりに響いた。

 

「…………剪定バサミってあんな切れ味があるものだったか?少なくとも有刺鉄線が切断できるほどは…………。」

「まぁ…………極限まで刃を砥げば、可能性がないわけではないだろうが………むしろ華君の技能を褒めるべきか………。」

 

思わずシャアにそう尋ねてしまったが、奴も微妙な表情を崩さないでいた。

まぁ、ともかく道は開けたため、俺達は『大洗のヨハネスブルク』の領域に足を踏み入れた。

有刺鉄線を超えた先はまさに無法地帯そのものであり、ところ狭しと落書きが施され、見かける人間も目つきや態度から擦れている者が多く見受けられた。

 

「…………これは確かに少人数では絡まれてしまうな。」

 

少し辺りを見回しただけだが、すでにかなりの生徒からガンを飛ばされていた。

苦笑いを浮かべながらも少々警戒心を持って進んでいくと、突然前を歩いていたそど子が立ち止まった。

適当に辺りを見回していた目線を前方に戻すと、二人組の生徒に立ち塞がれたのが目に入った。

 

「断りもなく通るつもりかい?」

「学校の中を通るのに誰の許可がいるのよ!!通行は自由よ!!」

「………誰コイツ?何様?」

「ッ…………元風紀委員長、現在は相談役の園みどり子よ!!貴方達、スカート短すぎ!!それにこの辺りゴミ多すぎ!!掃除しなさい!!」

 

そういってそど子は腕についた風紀委員の腕章を見せつけながら自身の身分と名前を告げると、元風紀委員長のプライドが許さなかったのか、彼女らの服装、特に膝下まで伸ばした裾やここら一帯の有様に関して彼女らに注意を行った。

そのそど子の注意に対し、向こうの反応はというと、すごくめんどくさそうだった。

 

「ええ………じゃあアンタが掃除してよ。」

「なんで私が掃除しなきゃならないよ!!自分達でしなさいよ!!」

 

絡んできた生徒にそど子がそう言い放った瞬間、二人の生徒の表情がイラついたようなものに変わった。

次の瞬間、その二人の生徒ははそど子を担ぎ上げると彼女を連れ去ってしまった。

 

「…………追うぞ!!」

「彼女らを決して見失うな!!ここで姿を眩まされたら後が面倒になる!!」

 

いち早く反応した俺とシャアは呆気に取られているみほ達の背中をたたきながら逃走を始めた二人の後を追う。

叫んでいるそど子の声を頼りに薄暗い通路を進むと、ちょうど生徒達が梯子を登っている様子が目に入った。

 

「…………律儀に一段一段昇っている暇はない!!先に行くぞ!!」

「了解した!」

 

隣を走っていたシャアにそれだけ伝えると走るスピードを上げ、助走をつけた状態で思い切り床を踏み込むと、走り幅跳びの要領で梯子に飛びかかる。

そして、梯子の足場にかけた足に再度力を込めるとそこから一気にジャンプし、そど子を連れ去った生徒達に接近する。

あとは手を伸ばせばその生徒達の足を掴めると思ったが、寸前で躱されてしまい俺の手は空を切った。

 

「逃すものかよ!!」

 

しかし、そこから空を切った手を代わりに梯子の足場を掴むことでリカバリーを行い、一気に体を持ち上げ、梯子を登り切る。

 

「うぇぇ!?梯子を一気に登っちゃったよ!!」

 

階下から沙織のそんな驚いた声が聞こえたが、そんなものに構っていられる状況ではないためさっさと追跡を再開した。生徒達の姿はまだ視界にはあったが、何というか、曲がり角を曲がる時などの時に迷いのようなものが見受けられないのが気にかかった。

 

(…………コイツら、ただガムシャラに逃げているわけじゃない!!確実に目的地があるな!!)

 

そう思いたったが、そど子を連れた生徒達は鉄棒を伝って一気に下の階層へ降りていった。

 

「ちっ!!消防署じゃないんだぞ、ここは!!」

 

シャアの言っていた通り、見失う訳には行かなかったため、後を追うように俺もその鉄棒に跨り、下の階層に降りていく。

落下している時の風に煽られながらも下の方を見るとそど子の声と共に生徒達の姿がかろうじて見えた。

しかし、落下するスピード上げたのか、程なくして生徒達の姿は眼下に広がる闇に消えていってしまった。

 

(………落下スピードから換算するにこの高さと速さで落下すれば死は免れない………!!ならば!!)

 

落下の速さと高さから見積もって、確実に真下にクッションかその類のものがあると確信した俺は少しでも落下スピードを早めるために鉄棒から手を離し、自由落下を始める。

体が浮遊感を襲うがそれも長くは続かず、俺はクッションにその身を埋めた。

 

「ッ………予想通りクッションがあったとはいえ、衝撃はそれなりにあったか………。」

 

まぁ、別段怪我はなかったのだから良しとしよう。そう思いながら埋もれたクッションを退かし、生徒達を追おうとするが、その先に通路などはなく、行き止まりが広がっているだけだった。

 

「何…………!?途中に別の通路に行けそうな穴はなかったはずだが………!!」

 

そう思いながらも上から反響してくぐもった声だったが、みほたちの(主に沙織の泣き声的な)声が響いてきたのを耳にした俺は急いでクッションの山からどいた。

 

次の瞬間、泣き叫ぶような声と共にあんこうチームが落ちてきた。先に墜落した四人とは違い、後から降りてきたシャアと秋山は然程焦ってなかったのか、鉄棒からすんなりと着地した。で、墜落した四人は幸いクッションがあったから大したことは無いと思うが、一応心配なのもあったため、声をかけておく。

 

「大丈夫か?」

「うう…………びっくりしたぁ………。」

 

沙織の唸る声が上がるが、まぁ、大丈夫だろう。

一通り無事を確認した後、クッションの山から降りて、シャアに目線を向ける。

 

「…………行き止まりか?」

「いや、違うな。」

「やはりか。」

 

シャアに聞いてみると案の定この袋小路が行き止まりではないという答えが返ってくる。徐に歩き出したシャアの後を秋山と共についていくと突然壁の前で止まった。その目線は一直線に壁に向かっていたものだから否応にも察した。

 

「隠し扉か。」

「ああ、なるほど。」

 

俺がそういうと秋山から納得と言った声が上がる。シャアが壁を叩いてみそていると、少しばかり音が違う範囲があった。そこが隠し扉になっている部分なのだろう。

 

「こういうのは衝撃を与えれば大抵は開く。」

「ふと気になったのだが。お前、ここに来たことがないか?」

「…………否定はせんよ。」

 

そのシャアの言葉に秋山がびっくりしたような顔を浮かべるが、別の世界とはいえ大洗女子学園の会長だったことを思い出したのか、頷きながら納得している様子を出した。

 

「まぁいい。それで軸は縦か?横か?」

「横だ。」

 

そういいながらシャアが壁を押すと、横軸を基点にして壁が縦に回転し、奥の空間が存在していることを示した。

 

「では、行こうか。」

 

シャアの先導で隠し扉を潜り抜け、その先の扉を開けるとそこは充満する酒の匂いと、誰かの歌声が響きわたるバーのような空間が広がっていた。

 

「…………店に入ったら、まずは注文しな。」

「そうだな。ではエル・プレジデンテでも頼もうか。」

「…………どっちのだい?」

「………メキシコ、と言えば伝わるかな?」

「アンタ、ここいらじゃ見ない顔だけど通みたいだね。」

「アムロ、お前はどうする?」

 

多分雰囲気的に店と思われる部屋でカウンターに立っている、格好からみてバーテンダーの少女とシャアがそんなやりとりをした後、俺に話を振ってくる。

俺はカクテルとかはあまり詳しくないのだが………。

 

「マルガリータでいい。」

「お二人の頼んだものはよくわかりませんが………ミルクティーで。」

「じゃ、じゃあ私もそれで!!」

「ミルクココアー。」

「でしたら私はカフェオレで。」

「…………ミルクセーキ。」

 

各々が飲みたいものをバーテンダーの少女に伝えると彼女はムッとした表情を浮かべる。まぁ、仮にここがバーだとしたら無理もない反応か………。

 

「………なにそれ、おこちゃま?」

「前の二人はともかく後のお嬢ちゃん達は地上でママのお乳でも吸っていなさいよ。」

 

主にみほたちの注文がバーの場では検討違いもいいところなものだったのか、カウンターの席で酒瓶を抱えた赤髪の爆発頭の奴と女生徒にしては筋肉隆々のソファに腰掛けていた人物がこちらを茶化すような目線で見つめる。

 

「まぁ、すまないが前者二人も別にカクテルが目的ではないのだがな。」

「へぇ?じゃあ何用ってのいうのさ?」

 

筋肉隆々の女生徒から目線を向けられたシャアは特に慌てるような様子を微塵も見せずに淡々とこちらの目的を伝える。

 

「こちらに園みどり子というおかっぱ頭の風紀委員が連れ込まれたはずなのだが、居場所を教えてもらおうか。」

「んー…………おかっぱならそこにいるよー。」

 

そう言って爆弾頭の髪型の奴がスナップを響かせると部屋の扉が一箇所一人でに動き、そこでデッキブラシを持って掃除をしているそど子の姿があった。

 

「ちょっと!!早く助けなさいよ!!」

 

そういうそど子に対して苦笑いを浮かべながら俺たちは彼女を連れ出す。しかし、彼女の足につけられている奴隷用の鉄球がすごく邪魔だ。

まぁ、後で自動車部に取り外してもらうか。

 

とそんなことを考えていると先ほどみほたちを子供と茶化した二人とステージで歌っていた奴が立ち塞がった。

 

「ちょい待ち〜………ただで帰すと思っている訳〜?」

「だいたいアンタたち、何用でアタイらのナワバリに入ってきたのさ。」

「あ、あのー、戦車を探してーーー」

「戦車ぁ?そもそもアンタら人に物を頼む時は自分から名乗りなさいよ。」

 

そうステージで歌っていた奴から言われてしまったため俺たちはそれぞれ自己紹介をした。無論、俺とシャアはややこしくなるのは目に見えていたため、それぞれ『アムロ』と『シャア』で済ませておいた。

 

「しかし、戦車ねぇ………あのドンガメみたいな。」

「うぇぇ!?」

 

ステージで歌っていた奴の戦車はドンガメみたいという発言に変な声を上げるが、それは置いておいて、なにやら戦車の情報とそど子の身柄を賭けて彼女らと勝負することが決まってしまった。

 

心底から言ってしまえば面倒くさいが、こういう輩とはさっさと打ち負かした方があとぐされがないため、その勝負に応じることとなった。

 

 

 

最初にステージの奴が仕掛けてきたがその内容はしばった縄を解けという趣旨の勝負だったが、ミリタリー方面に滅法強い秋山が一瞬で解いてこちらの勝利。

 

二回戦目は爆弾頭の髪型の奴が手旗信号の解読を仕掛けてきた。中々高速な旗揚げで覚えるので手一杯だったがーーー

 

「イカのこうより年の功。」

「せ、正解………!!」

 

沙織が見事に解読に成功し、これまたこちらの勝利。まさか読み解かれるとは思っていなかったのか、ステージで歌っていた奴含めて心底から驚いたような表情を浮かべていた。

 

 

三回戦はバーテンダーの女子が指相撲を仕掛けてきたが、俺じゃない冷泉麻子が戦車を操縦しているうちに強くなった指で相手を完封し、三回戦目もこちらの勝利でおさまった。

 

まぁ、これで終わればよかったのだが…………。

 

 

「ッ………ええい、面倒ね!!こうなりゃあ腕っぷしで勝負よ!!」

 

そう声を張り上げ、最後に残っていた筋肉隆々の女生徒が拳を握りしめてこちらに襲いかかってきた。その女生徒の目線の矛先はみほだった。

 

「みほ、下がれ!!奴の相手は私がする!!荒事は私かシャアに任せろ!!」

「ア、アムロさん!?」

 

咄嗟にみほの服の首元を引っ張り、無理やり後ろに下げるとかわりに奴の前に踊り出た。

奴の体格から考えてまともに食らえばただでは済まない………!!まぁ、やってみせるさ!!




さてさて、今年ももう終わりを迎えそうですねぇ………コミケ楽しみだなぁ………

最終章、見たいですか?(モモチャンズリポートのあとがき要参照)

  • 見たいです
  • 見たくないです

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。