冷泉麻子、行きまーす!!   作:わんたんめん

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また一ヶ月くらいかかると思った?

一週間で出しちゃうんだなぁ!!これが!!

ハーメルンよ、私は帰ってきたぁ!!(一週間ぶり)


あ、それと…………やっぱり今回も原作を変えることは出来なかったよ(白目)


最終章 第6話

試合の始まりが近づいていることを告げる花火のような破裂音が戦車の外から響く。

コメットの操縦席に座っていた俺はその音を耳にすると姿勢を正し、軽い慣らしついでに肩を回しながら操縦桿を握りしめる。

 

『試合開始!!』

『全車輌前進してください!!パンツァー・フォー!!』

 

外からコメットの装甲を通してくぐもった声で届いてくる試合会場全体に響くような始まりを告げる合図とともに、西住の号令が通信機から耳朶を打つ。

その声と共に俺は操縦桿を前へ押し出し、ペダルを踏み込み、コメットを前へ進ませる。

 

「シャア、この試合ではどうする?」

「危ないところを手助けする形に抑えてさえすればいいだろう。基本は不干渉を貫くつもりだ。付け焼き刃程度の連携で彼女らがごたつくとは思えんからな。桃も今は力を抜いてもらってもかまわん。」

「わかりました。まぁ、流石に二人が最初から全力を出してもこの大洗のためになりませんもんね。何より、私自身のためにも。」

 

シャアの言葉に河嶋が頷くような素振りを見せながら空いている席に腰を掛ける。

なんだ、意外と先々のことを考えているじゃないか。

 

「そういうことだ。油断するつもりはサラサラないが、少なくとも大学選抜戦のような状況になることはないだろう。」

「仮になったとすれば、どちらかといえばお前の出番のような気もするがな。」

「フッ、そうかもしれんな。」

 

そんなたわいもないことを話しながら、コメット搭乗の俺たちを含めた大洗は西住の指示で足の遅いサメさんチームこと船舶科のお銀たちが乗っている旧式戦車、『マークⅣ』を中心として、その前方を矢印のように囲む陣形を組み、俺が動かすコメットはその矢印の左端を担当しながら緑が生茂る草原を進んでいく。

 

 

 

「……………マークⅣ、そしてコメット。どちらもイギリスの戦車ね。」

「マークⅣ…………ある意味大洗らしい戦車だとは思いますけど…………。」

「コメットは性能的には黒森峰の戦車と引けを取らない代物です。廃校危機にあっていた大洗がコメットを所有できるほどの資金があるとは思えませんが。」

 

イギリス王室のような豪華な内装をした学園艦の一室で大洗女子学園とBC自由学園の試合が中継されているテレビを見ながら紅茶を優雅に嗜んでいるのは、聖グロリアーナ女学院の隊長を務めているダージリンだ。試合の映像に写っているマークⅣとコメットに興味が湧いたのか、物珍しそうな目線を向けている。

その隣でマークⅣというかなり旧式の戦車を引っ張りだしてきたのを大洗らしいと評しているのがオレンジペコ。反面、イギリス戦車の中ではかなりの高性能を有し、なおかつイギリス戦車を主に編成している聖グロでも未だ導入が叶っていないコメットを使用する大洗を見て、資金的に難があるのでは、と怪訝な表情を浮かべているのがアッサムだ。

 

「それもそうね。でも、アッサム。こんな格言を知っているかしら、『尊厳を保つためには、金は必ずしも必要ではない。』

「インドの政治指導者、ガンジーの言葉ですね。」

 

こちらでもダージリンの格言を用いた会話は相変わらずなのか、オレンジペコが引用元の人物の名前を間髪入れずに言い当てる。その様子にダージリンは満足気に、アッサムは呆れたように肩を竦めた。

 

「つまりはそういうことよ。大洗女子学園が成し遂げた逆転劇に感動して、物好きな資産家が無償でくれたとか、考えてみればキリがないわ。」

「……………それもそうですねー。」

「でも、みほさんがイギリス戦車の魅力に気づいてくれたのでしたら、喜ばしいことこの上ありませんわ。」

(それだけは絶対にないと思います。)

 

ダージリンの得意げな語りにアッサムは疲れたような目線を向け、その後のみほがイギリス戦車の魅力うんぬんはオレンジペコが表面上は笑顔をとりつくろいながらも心の中で否定する。

 

 

 

「あれ?ねぇーミカー。大洗の戦車に見慣れないメンツがいるよ。」

 

ところ変わって、試合が行われている会場からさほど離れていない森の中、トラックを改造したのか、高い位置から周囲を見渡すことのできる展望台のようなものが付けられていた。そしてその車体の横には青と灰色の二色の盾に『継』の一文字が施されたエンブレムがプリントされていた。

 

「そうだね。でも、戦車が増えたことをとやかく言うことに意味はあるのかい?」

 

展望台から試合の様子を眺めていた継続高校のミッコが真下でトレードマークであるカンテレを弾いているミカに声をかけるも、その反応はひどく淡白なものであった。

相変わらずなその反応に慣れたのかミッコはそれ以上は大洗の増えた二輌に関してとやかく聞かないことにした。

 

「だけど、その増えた二輌のうち、片方には彼女らが乗っているのだろうね。」

「あれ?ミカが他人に興味を見せるって珍しい。そんなこともあるんだ。それで、その彼女らって、誰のこと?」

 

ミカがカンテレを鳴らしながら語った言葉にミッコと同じように展望台から試合の様子を見ていたアキが驚いたような顔を見せミカの言う彼女らについてを尋ねた。

 

「さぁ?抽選会場で見かけただけだったからね。名前も知らないよ。」

「それだけ?なんかもっとないの?」

「そうだね……………強いていうなら、風を感じた。それも今まで感じたことのないとっても不思議なものだったね。」

 

ミカの妙に周りくどい言い回しにアキは説明を求めるも、返ってきたのはミカ自身でもわからない不思議な風という抽象的な言い回しだった。

 

「うん、全くわからない。」

「そうかい、ミッコ。私もさ。」

 

まるでわからないと考えるのを放棄したように頷くミッコにミカも薄い笑みを浮かべながら自分自身でもよくわかっていないと返す。

 

「た、ただでさえよくわからないミカがわからないって言う人って一体何者………!?」

「何者なんだろうね。あとアキ、君は何気に失礼じゃないかな?」

 

結局分からずじまいに終わってしまったミカの説明にずっこけるアキにミカはまるで人ごとのようにカンテレを鳴らすのだった。

 

 

 

 

 

 

「さてと、偵察に向かったポルシェティーガーと八九式からの報告によれば、両翼に4輌ずつに部隊を分けて広げている、か。」

 

ある程度草原を進んだところで西住が偵察に向かわせたレオポンさんチームとアヒルさんチームからの報告を耳にしたシャアは地図を広げ、睨み合いをしていた。

 

「報告によれば、その両翼は未だ羽を広げ続けているらしいぞ。」

「そうであるなら、向こうのフラッグ車は大方両翼の中心にあたるような位置にいるのが定石だろうさ。」

 

俺が一言付け加えるとシャアは広がった両翼のちょうど中間地点に位置する地図上の高台を指でつつく。

 

「しかし、敵がある程度の連携を可能としているのであるならば、これは誘い込みだろう。どこかで翻してくるはずだ。」

「フラッグ車自ら囮か。決して前例がない訳じゃないな。実際お前がやったことだしな。」

「…………あれか………アレも中々肝が冷えたな…………ところでBC自由学園は生徒の間で派閥争いが凄惨で連携どころではないのでは?実際にここに来る直前にも互い砲撃しあってましたし…………ただ単に成果を求めて我先に、と勇んでいるという可能性は?」

 

シャアとそう話している時に河嶋が乾いた笑いを見せたのちに不思議そうな表情に変えながらシャアに話しかけてきた。実のところ、BC自由学園が連携を取れるという可能性を認識しているのは秋山がとってきたビデオを閲覧していた人間の間でしか共有していない。つまりところ、知っているのはフラッグ車であるカメさんチームと西住たちあんこうチームしか知らない。

 

「それも可能性としてはある。だが、試合にやってきた時に砲撃を交わしていたのは先頭の2輌だけだ。後ろはただ平然とその様子を眺めているだけ。何かおかしいと感じないか?」

 

「おかしい、とは?」

 

「…………例えば、仲の悪いグループが睨み合っていたとしよう。一歩間違えれば両者が入り混じる泥仕合になってしまうほどの規模だ。そのグループの誰かが痺れを切らして攻撃を始めたとすると、残りの全員は火蓋を切ったようにその攻撃に続く…………()()()()()()()()()()()()()。戦争でも最初から軍勢同士の戦いが行われるのではなく、あのように小競り合いのような小さな火種から大きくなるのだからな。」

 

「つまるところ、やってきた時に周囲が無反応のようなものを見せていたのは、明らかにアレが演技であり、本当はそこまで劣悪な関係ではない、もしくはあの車体をぶつけ合っていた車輌の人員だけ致命的に仲が悪い、その二択に絞られてくるという訳だ。」

 

「おそらく、こちらに仲が悪いことを印象つけるためのものだったのであろうが、少々規模が小さすぎたな。BC自由学園という派閥で分かれているという第一印象のある学校であるなら、尚更のことだ。」

 

俺とシャアで河嶋に説明するついでにやるならもっと大規模でやれ、と言わんばかりの悪どい笑みを浮かべるシャアに河嶋はすごいものを見たというような表情を見せていた。

 

「ですけど、一応しばらくは静観するつもりなんですよね?」

「そうなるな。今は向こうのフラッグ車を探すのが先決だ。」

『皆さん、ポイント782へ向かってください。広がった両翼の中心部分に位置する地点に敵のフラッグ車があると思われます。』

 

シャアが河嶋にそう告げるのと同時に、西住から指定ポイントへ向かうように指示が伝えられる。やはり、西住もシャアと同じ考えだったか。

そう思いながら俺は西住の指示通りに動く隊列に合わせてコメットを動かす。

しばらく戦車を進めていくと、おおよその位置だとあたりをつけていた小高い草原にフラッグ車を含めた2輌の姿を見つけることができた。

 

のだがーーーーーー

 

 

「なんか遊んでいないか?」

「あれはペタンクと呼ばれる遊戯だ。外でやるカーリングのようなものと思っておけばいいだろう。」

「…………あ、明らかに隙だらけですけど、気づいていないんでしょうか?」

 

見つけたはいいもののBC自由学園の生徒は車輌から降りて、何やら金属球をぶつけ合う遊びのようなものをやっていた。戦車道の規約には試合中に戦車から全乗員が降りてしまったら撃破扱いとする、みたいなものもあったはずだから全員が全員降りたわけではないのだろうがーーーーーー

 

「……………ここで撃ってもいいのだがな。全く、絶好の好機をわざわざ見逃すというのも中々歯痒いものがある。」

「向こうの河嶋のためにならないと言ったのはお前だろう。少しは自重しろよ。」

 

ため息を吐きながら座席に軽く背をもたれかかるシャアに思わず俺も愚痴のようなものを溢す。だが、ここで撃ってもいいというのははっきり言って賛成だ。シャアなら外すことはないだろうからな。

 

だがどういうわけか、妙に信頼できていない俺がいることに目を逸らしているがな。コイツはどこか確定どころで外した前科でもあるというのか?

 

ひとまず西住達は外したあとの追跡劇に移行されるのを躊躇っているのか、ここで攻撃を仕掛けるつもりはなく、より確実性を高めるためにさらに接近するらしい。

もどかしい思いを抱きながらも西住の指示に従って地図上で敵のフラッグ車が陣取っている高台の背後から強襲をかけるらしい。途中、偵察に出ていたレオポン、アヒルの両チームから敵に見つかたとの報告があった。西住は足止めを指示していたが、それで足止めはできるのか?できて一輌、よくてポルシェティーガーで2輌だろう。それにーーーー

 

「おいシャア。この地形、まずくないか?」

「半包囲される可能性があるな。」

「えっ!?ですが、逃げ道自体は後ろにありますし………フラッグ車を仕留め損なってもそれだけで済むのでは………?」

 

先ほどの報告と地図上の地形図、そして実際の風景を見て、焦燥感のようなものがふつふつと浮かび上がる。

何事もないまま高台の背後にやってきた俺たちだが、そこから高台へ侵入するには河を渡る必要があり、中々切り立った崖で河岸が形成されているため、事実上この目の前にある木製の橋しか安全に渡れる手段がない。

 

「下がれないことはないが、生憎この橋は木製だ。砲弾が橋の両端に当たれば瞬時に粉々。そうなってしまえばこちらは孤立し、逃げ場はなくなる。そこから橋の骨格を破壊すれば我々は一網打尽だ。全く、優勝校が予選敗退とは笑い話もいいところだ。」

 

そういうシャアを尻目におきながら俺は外の様子に視線を向ける。隊列の最後尾にいる俺たちのコメットは西住の指示で橋をゆっくりと音を立てないように進んでいく隊列から外れて事態を少しだけ静観していた。

すると何やら不穏な気配を感じ取ったのか、コメットの一つ前を進んでいたルノーのキューポラからそど子が顔を覗かせる。

 

『ちょっと!!貴方たち!!遅れているわよ!!ちゃんとついてきなさいよ!!』

 

ついてこないコメットに気づいたのか、そど子の声が通信機から響いてくる。困った俺はシャアに視線を向けようとした瞬間ーーーーーー敵意が体全体を過った。

 

 

「西住!!二時と十時の方角に敵戦車だ!!そど子、ルノーを後ろに下げろ!!そこにいると落とされるぞ!!」

「まぁ、仕掛けるならここだろうな。」

 

さも当然というような落ち着いた口ぶりのシャアを放置して、通信機に大声で呼びかけていると視線の先で木片のようなものが弾け飛んだのが目につく。おそらく前方の方の橋が砲撃によって破壊されたのだろう。

 

「クッ、意外に当ててくる!!手荒になるが恨むなよ、そど子!!」

『えっ!?ちょっと待って!?アンタなにするつもりよー!!ていうかアンタもそど子呼びなのねー!?』

 

通信機から聞こえるそど子の喚き声を無視して俺はコメットを前進させ、ルノーに追突させる。中々派手な音が辺りに響いたが、それなりの速度をもった追突はルノーを前へ押し出した。

ルノーが前へ行ったことを確認した俺は橋にコメットが入るほどの広さがないことを察すると、すぐさま履帯のレバーを操作してコメットを後退させ、橋から離脱させる。

コメットを橋からどかした直後、数秒前にいたところに砲弾が着弾し、木製の橋を抉り取っていった。

さて、これで大洗の車輌は完全に孤立してしまったが、まだ自由に動ける俺たちがいる。なら、いくらでもやりようはある。

 

「我々も動くとしようか。向こうの河嶋にいい経験となってくれればそれで良いからな。」

 

シャアも動きどころを理解していたのか、既に砲塔に手を携えており、いつでも発射の態勢を整えていたようだ。その間にもフラッグ車を、もしくは橋を破壊するつもりなのかのどちらかであるだろうが、橋に取り残された他の大洗の車輌はBC自由学園の戦車から、砲弾の雨が浴びせられる。

 

「シャア!!早くできないのか!?」

「まぁ待て。砲塔を覗いていると中々滑稽な光景が広がっていたものだからな。向こうの隊長がのんきに皿に乗せたケーキを頬張っている。」

「か、会長!!じゃなかった、杏さん!!装填完了しました!!」

 

悠長に向こうの隊長の様子を見ているシャアに対照的に状況が切迫したのを察したのか上ずった声を上げながら河嶋が砲弾を装填したことを告げる。シャアがそれに顔を向けて無言で頷くと再び砲塔を覗く。

 

「悪くない連携だ。それだけ君がチームの一員から信頼されていることの現れであるのだろう。実際、我々を包囲しかけているのだからな。しかし、さながらこちらがいつまでもつのかレース感覚で楽しんでいるところ悪いのだが、そのレースに君自身が加わっていることを忘れないでもらおうか。」

 

「もっとも………今ここで君を撃つつもりはサラサラないのだが、一つだけ言っておこう。」

 

 

「戦場に置いて、絶対的に安全な場所というのはないのだよ。君がそこで撃っているということはーーーー」

 

シャアがトリガーを引いたのか、車体が轟音を鳴り響かせながら揺れる。放たれた砲弾は空高く上昇していき、敵隊長の乗るフラッグ車ーーーーではなく、隣にいた戦車を一発で射抜き、白旗を上げさせる。

 

「君もまた狙われる位置に、少なからずあるということだ。その点、よく理解しておくといい。」

 

そういって、砲塔から目線を外したシャアに気の張り詰めたようなものもなく、余裕淡々といった立ち振る舞いだ。その瞬間、戦場の空気も変わった。自軍のフラッグ車の近辺にいた車輌が撃破されたこと、またもう一方は遠距離から、それも一撃で車輌を射抜いたことに驚愕したのかーーーー

 

理由はどうであれ、時間にして数秒、さっきまで砲弾が飛び交っていた戦場はたった一発の砲弾で静寂の空気に包まれた。

 

「さて、次はお前の番だ。アムロ。」

 

そう挑戦的な笑みを浮かべるシャアに俺は思わず呆れたようにため息をついた。

 

 

 




Hi-νの横特強い……………強くない?

最終章、見たいですか?(モモチャンズリポートのあとがき要参照)

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