冷泉麻子、行きまーす!!   作:わんたんめん

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……………三ヶ月ぶり…………?


待たせたなッ!!!




P.S

感想、一件も返せていませんけど、全部見てます。時間を開けすぎた結果、まずは次話を出すことに集中させてもらうことにしました。申し訳ないです。


最終章 第7話

「撤退しなさいッ!!」

 

シャアがBC自由学園の隊長車である『ルノーFT』、その隣にいた『ARL44』を遠距離から一撃で抜いた直後、お嬢様風のブランド髪を激しく揺らしながら向こうの隊長である『マリー』は全車輌に撤退の指示を出した。

 

最初こそ困惑気味な様子を出していたBC自由学園の戦車だったが、やはりそれなりに練度が取れてはいたのか、意外とすんなりと彼女の指示に従って後退していった。

 

「…………痛み分け…………か?」

 

コメットの操縦桿を握りながら撤退していくBC自由学園を見ながら俺はそんなことを呟いた。

 

「どちらも部隊を整えるための時間を確保する代わりにフラッグ車への攻撃の機会を投げ打ったからな。だが、一輌撃破した我々が数的有利に立てた。」

 

「というか、私の出番が結局なかったな。まぁ、できればない方が目立たないから構わないのだが…………」

 

「……………フッ、それだけ彼女も引き際の良い優秀な隊長ということだ。」

 

確かにシャアの言う通りかもな。フラッグ車の近辺の車輌を一撃で撃破することで、向こうの隊長にもしかしたら次には撃破されるかもしれないという危険性を感じさせることによって自ら包囲を解かせた。

一見すると及び腰かもしれないが、相手はシャアだ。功を焦ってそのまま攻撃を続けるより、賢明だっただろうな。ある意味………運の良い人間なのかもしれないな。

 

「ともかく、まずは西住君たちと合流するとしよう。このままでは我々だけ単独行動をとる羽目になる。」

 

「了解した。河嶋、結構高い位置から降りるからそこら辺に捕まっていた方がいいと思うぞ。」

 

「ん…………わかった。」

 

シャアの言葉通り、両端が破壊され、身動きが取れなくなっている西住たちと合流するためにコメットのアクセルとブレーキを同時踏みしてエンジンの回転数を上げた状態にする。

 

結構な高さから無理やり降りるのため、河嶋にそう忠告だけすると、ブレーキから足を離し、コメットを急発進。スピードの乗った状態で崖から飛び降りる。

 

スピードの乗ったコメットは空中で姿勢を崩すことなく、河岸を飛び越え、大きく水しぶきを打ち上げながら水面に着水させると、そのまま河を横断して、偵察から戻ってきたレオポンチームとアヒルチームのいる対岸へと渡る。

 

「おー、そっちの冷泉さんは無茶するねー。試合終わったらあとで調整してあげようかー?」

 

特に何事もなく対岸を渡り切ると、ポルシェティーガーから顔を覗かせ、ニヒルな笑みを浮かべたナカジマからそんな声がかけられた。

 

「その時はよろしく頼むよ。まぁ、腕のいいメカニックがいたからそうそうボロが出るとは思ってはいないが。」

 

 

 

 

「マリー様…………何故あそこで撤退を?あのまま行けば押し切れていたはずですが…………」

 

「…………ごめんなさい。突然目の前の勝利を棒に振るようなことをして。でも確かにその通りだったわ。」

 

「ま、マリー様…………?」

 

撤退し、平原を走行している中、隊長であるマリーのお抱えのような立場にいるエスカレーター組のリーダー格である『押田』の質問に素直に頭を下げるマリー。いつもなら飄々としながらケーキを頬張っている彼女のらしくない様子に受験組のリーダー格である『安藤』も困惑気味に面を食らった反応を見せる。

 

「…………まさか、大洗にあんな隠し球がいたなんて…………」

 

「あのコメット巡航戦車のことですか?」

 

「確かに我々が包囲している中、こちらの車輌を一輌持っていったのは流石優勝校だとは思いましたが…………まぐれではありませんか?」

 

マリーの思い詰めた顔に押田と安藤はここにきて初めて顔を出したコメットのことを挙げるが、マリーはそのことを否定するように首を横に振る。

 

「……………まぁ、実際に矛を向けあってみないと分からないものなんてあるわ。」

 

ため息を吐きながら呟いた言葉に押田と安藤は揃って首を横にかしげる。

 

「まぁ、それは置いて、ケーキが食べたくなったわ。」

 

そう言うとマリーは突然懐から皿に乗せられたモンブランを取り出すと、器用に揺れる戦車の上でそれを食べ始めた。それをいつものマリーに戻ったと判断した二人はそのまま何も追及しないことにした。

 

(……………あの砲撃、ホントは私に向けられたものだった。)

 

モンブランを頬張りながらマリーは先ほどの反撃について思い起こす。彼女も包囲から外れたコメットを見てはいたのだ。直前で他の車輌を敢えて後ろから追突して橋から落とされないようにしていたのだから。

だが、たった一輌で戦局を変えられるほど、試合は簡単には進まない。ただ自分に手にしているモンブランのように甘さがあったのは事実だ。あの状況に追い込めば、いくら奇策が得意な大洗でも袋の鼠だと。

 

(…………その最中にあの砲撃…………しかも私より後ろにいた稜線に隠れていた車輌の車体を撃ち抜いていた。)

 

押田の言う通り、まぐれだと言われればそれまでだ。高台に陣取っていた車輌を遠くから、しかも下から稜線に隠れた車体を狙うなんて、普通ではありえない。まぐれと片付けてしまうのは仕方がない。

 

だが、遠距離とはいえ、コメット巡航戦車(歴戦のニュータイプ)と相対した彼女は感じ取っていた。

 

(…………確実に、次は私に当てられていた!!)

 

あのコメットはここで勝負をつけるつもりはなく、警告がわりに自身の隣にいた車輌を狙ったのだと。要するに、彼女は見逃されたのだ。

 

(……………中々舐めたことをしてくれるわね…………!!)

 

 

 

 

「すみません、シャアさん。助かりました。」

 

「結果としてそうなっただけにすぎんよ。私は君たちを助けるより先に向こうのフラッグ車を狙った方が手っ取り早いと思ったからあのようにしただけだ。」

 

BC自由学園をひとまず退けたあと、俺たちは部隊を整えるために橋の上に取り残されたみほ達の救出に動くことにした。やれ、二つある足場のうちの片方を敢えて崩して橋桁を滑り台がわりにしてみるなど考えてはみたが、途中でみほがMk.Ⅳ戦車を橋桁に立てかけるようにして、足場がわりにするという奇抜な発想で橋から降りる算段をつけたことにはとても驚いた。

 

「ただ砲弾は逸れて、隣の車輌に当たってしまったがな。」

 

嘘つけ。当てる気が微塵もなかった奴がどの口で戯言を言っているんだ。奴の笑みに思わず口を出しそうになったが、なんとか心の中で留めておくことにした。

 

「………ひとまず、どうするんだ?これでBC自由学園がある程度の連携が取れることは部隊全員の共通認識になったわけだが。」

 

「試合はほぼ振り出しに戻っただけです。もう一度偵察を出して、向こうの出方を見ましょう。」

 

みほに今後の動向を尋ねてみるとそんな返答が返ってくる。

まぁ、そんなところか。みほの言う通り、振り出しに戻っただけのこと。また手探りで相手の戦術を明らかにしていくのが先決か。

 

 

 

 

 

「この先のボガージュ………生垣地帯に敵が集結している、か。」

 

撤退したBC自由学園を追って、平原を進軍していた俺たちだが、偵察に出していたサメチームもとい、お銀たちからそのような報告が飛んできた。

 

「お前ならどうする?言っておくが、場所が感覚でわかるから生垣越しに相手を攻撃するというのはなしだぞ。」

 

「やれと言われればやるが、それはナンセンスがすぎる手法だな。あくまで目的は向こうの河嶋の成果に見せるようであって勝利そのものではないのだからな。」

 

前を向きつつコメットを操縦している最中、シャアに冗談まじりで方法を聞いてみると、呆れた口ぶりで小言のようなものが飛んでくる。

 

「……………一般的に生垣といえども種類はいくつもある。だが、戦車道の試合で使われる以上、おそらくサイズは大学選抜の際に使われた生垣で作られた迷路と同タイプと考えて良いだろう。」

 

「となると…………2メートルが良いところですかね?」

 

河嶋が目線を上にしながら生垣の平均的な高さを言うとシャアが頷く仕草を見せる。

 

「まあ、ボガージュは比較的高い部類に入るからおおよその戦車の車体は見えなくなるだろうな。小型や中型の戦車なら、物によっては完全に隠れてしまうだろう。」

 

「……………で、どうするんだ?戦略面は全くの畑違いだぞ。」

 

「決まっている。視界が悪いということは、いくらでも裏工作ができるということだ。」

 

「裏工作…………単身で仕掛けるのか?」

 

運転中なのも相まって特に考え事をしていなかった俺が適当に思いついたことを口にするとシャアが声を大にして笑い声を上げ始めた。閉鎖空間の戦車では反響して響くんだからやめてほしい。

 

「フハハッ!!…………すまんな。別段工作員を出すことが悪い手段と言っているわけではないが、それをしてしまっては皆こぞってやり始めてしまうだろう。暗黙の了解という奴だよ、アムロ。」

 

少しばかり眉を潜めてイラついた顔を見せていると、笑いを堪えている顔をしながらそう言ってくる。まぁ、奴の言う通りか……………いや待てよ。

 

「…………偵察はどうなんだ?」

 

「……………物事に例外があるのは必然なのだよ、アムロ。」

 

プラウダとの戦いの時に秋山たちを偵察に出したことを指摘するとシャアは視線をあさっての方角に向けながら言い聞かせるように呟いた。

 

逃げたなコイツ。

 

 

「……………話は戻すが、工作員を出さないとは言ったが工作自体を行うことは了承されている戦術のうちの一つだ。」

 

『そろそろボガージュ地帯に突入します。入り組んでいる上に視界も不明瞭なので、各車輌は敵の行動に注意してください。』

 

シャアの言葉に疑問を浮かべているとみほからボガージュ地帯に差し掛かる旨を伝える通信が飛んでくる。

 

 

 

 

 

 

大洗の車輌の中で装甲が分厚いポルシェティーガーとコメットを先頭に狭いボガージュの間を進んでいくと案の定通路の先で待ち構えていたBC自由学園の車輌から砲撃に合う。

 

「……………いつもは避けているから当てられるというのに慣れないな…………」

 

「お前、公式記録は被撃破ゼロの上に直撃らしい砲撃を受けたことも数えられるくらいだもんな…………」

 

砲弾が装甲に弾かれ、衝撃が車体を揺らしていることにあまり慣れていない俺はむず痒い思いをしていると河嶋が乾いた笑みを俺に向ける。

 

「シャア、みほ達は?」

 

動かす必要がないため、操縦桿を手放し、手持ち無沙汰になりながらシャアが座っている砲塔付近に振り向く。

 

「………………別ルートから敵陣の中枢に向かった。ルノーB1bisと共にな。我々はこのまま敵を引きつけつつ、余裕が出てくれば向こうの頭数を減らしておこう。」

 

「了解した。しかし、珍しいな。みほがあのような作戦を立てるとはな。まぁ、有効的なのはわかるのだが…………」

 

砲塔近くの覗き穴から状況を見ながらのシャアの言葉に反応だけ返すと俺は前に向き直りながらそんなことを溢す。

ボガージュ内におけるみほの立てた作戦はBC自由学園の車輌と外見がよく似ているカモチームのルノーB1bisを放り込んで、指揮系統をめちゃくちゃにするという作戦だった。

確かにこれはもともと急ごしらえの協力関係のようなものがが見え隠れしているBC自由学園には刺さる作戦かもしれない。

 

だが、これはカモチームが撃破されるのも時間の問題である、みほらしくない犠牲を前提とした作戦だ。

 

「まぁ、確かに誰かが危険な目に合うのを怖がっていた彼女にしてはそうだろうな。」

 

シャアも同じことを考えていたのか、外の風景を見ながらそんなことを溢す。

 

「だがこれはある種、彼女の信頼の現れなのかもしれんな。」

 

信頼か……………確かに的を射っているかもしれないな。

 

「まぁ、元の世界でも彼女は比較的早くお前には信頼を寄せていたがな。」

 

プラウダの初めてシャアと共に同じ戦車に搭乗したときのか。言われてみれば、確かにそうかもしれないな。

 

 

 

 

 

「……………コメットに動きはあるかしら?」

 

『いえ、ポルシェティーガーと共に後続の壁になり、動き自体はありません。』

 

その報告にひとまず息を一つだけ吐くとマリーは通信機から手を離す。

 

「あの………マリー様?些か一輌の敵車輌に対して警戒心を抱きすぎではないので?」

 

同じ搭乗員であるお嬢さま風の生徒、身嗜みからしてエスカレーター組の生徒からの質問にマリーはケーキを口にしながら納得しているような表情を見せる。

 

「……………あの車輌、事前データが一切ないのはわかっているわよね?」

 

口に含んだケーキを咀嚼した後にマリーがそう尋ねると共にしている二人の貴族風生徒は静かに頷いた。

 

「あまりにも突然現れたものだからてっきり右も左もわからない初心者だと思っていたわ。まぁ大洗も、もともとは隊長である西住さん以外は完全素人の集団だったから、その結論に至るのは9割そうでしょうね。」

 

最初こそ、飄々と語っていたものの徐々にマリーらしいおっとりとした声色から険しいものへと変貌していったことに他の生徒は息を呑む。

 

「でも、そうではなかった。残りの1割。あのコメット、少なくとも砲手はかなりの腕を持っている。そう思っていいでしょうね。」

 

コメットに対する感覚からくる持論を展開しているマリーに遠くから爆発音のような音が響いているのを耳にする。

 

「…………結構張り切っているみたいわね…………」

 

『おのれ!!ついに本性を現したか!!マリー様、必ずや奴らを仕留めてご覧にいれましょう!!』

 

それは通信機を通じて、声を荒げたような生徒の声だった。何やら撃破にものすごく息巻いているようだったが、なんとなく嫌な予感がふつふつと彼女の中で湧き上がっていた。

 

()()()()!!』

 

「何やってんのよぉぉ!?!?」

 

どういう訳か、チームメイトが仲間割れを起こしているという状況にマリーたちはお嬢さまらしくなく、ティーセットを放置し、慌てた様子でルノFTに飛び乗ると猛スピードで移動を開始する。

 

その先はいわずもなが、諍いを起こしている受験組とエスカレーター組の元へ、そしてこの蟠りを引き起こした張本人の元へ。

 

 

 

『ご、ごめんなさい!!もはやこれまでのようです!!』

 

「…………やられたのか?」

 

インカムからそど子の悲鳴のような声が響いたことに少なからずルノーB1bisが撃破されたことを悟った。だが、いかんせんまだ作戦が始まってから時間が経っていない。

 

「どうやらそうらしいな。先ほどまでボガージュの奥から聞こえていた戦闘音も鳴りを潜めている。」

 

「そんなッ!?まだ西住が想定していた時間より看破されるのがずっと早いですよ!?」

 

 

河嶋の悲鳴がコメットの中で反響する中、俺はインカムの向こうにいるそど子に状況を尋ねる。

 

「そど子、君が見ていた限りでいい。仲間割れを起こして自滅させた敵はいくつだ?」

 

『た、確か………2輌………ソミュアとARLが1輌ずつよ…………』

 

「シャア、敵の残存車輌は7輌だ!!ソミュアとARLそれぞれ3、フラッグ車1!!」

 

「前へ出るぞ!!これはおそらく我々が下手に相手の警戒心を高めたのが原因だ!!ええい、加減しても介入した時点でこれか!!そんな大したことはしておらんというのに!!」

 

「だからお二人の常識で動くのはやめてくださいよー!!」

 

再度河嶋の悲鳴が響く中、俺はコメットのアクセルを踏み、コメットを急発進させる。

 

ドゥンッ!!

 

ほぼそれと同じタイミングでコメットの車体を揺らす衝撃が起こる。おそらくシャアがトリガーを引いて砲弾を発射させた音なのだろう。

その証拠に前方にいた二輌を包み込むように爆煙が上がる。見るからに当たっていないにも関わらず爆発したのを鑑みるにどちらかの車輌が放った砲弾とぶつかり合ったのだろう。

 

「突っ込むッ!!」

 

俺はそのまま後ろにいたポルシェティーガーたちを置いていくように爆煙に突っ込むと、そのまま壁となっていたソミュアに突進をかまし、相手のソミュアを弾き飛ばす。

 

「ARLの火力は厄介だ。ここで排除させてもらう。」

 

そういうとシャアは砲塔を横に向け、装填が済まされたのを確認するや否やすぐにトリガーを弾き、ARLを撃破する。

 

「撃破した。おそらく西住君はフラッグ車をボガージュの外へ逃す算段で行くはずだ。奴らがこちらを追跡しているところを仕留めるぞ。」

 

「了解した。おおよその居場所は掴めているから…………行くぞ!!」

 

コメットを前進させながら、俺はインカムのマイクを口元に持ってくると若干の事後報告気味になっているが彼女に連絡を入れる。

 

「西住、私たちコメット組はフラッグ車から外れて一足先に迎撃に向かう!!」

 

『い、一輌でですかっ!?無理しないでください!!私たちもすぐ向かいます!!』

 

「何、()()()をするだけだ!!それに、君たちなら大丈夫だ!!この程度の相手、無理をする必要性もないからな!!」

 

 

 

 




アムロがいう足止め……………ここまで読んでくれた諸君なら………意味………わかるよね?

最終章、見たいですか?(モモチャンズリポートのあとがき要参照)

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