「私たちはこのボカージュ地帯で敵の足止めをやる!!頼むからフラッグ車だけはやらせるなよ!!みほ、戻ってこれるかッ!?」
『すぐに相手の後を追撃します!!でも無理はなさらないように!!』
俺がそう通信機に叫ぶとみほからそのような指示が飛んでくる。おそらく、ここで勝負を決める判断をしたらしい。レオポンチームのポルシェティーガーが俺たちの動きに追従する動きを見せる。
「みんなまで付き合う必要はないんだからな!?」
『河嶋さんがダメになるかどうかなんでしょ?やってみる価値はあるんじゃないのかな?』
徹底抗戦の構えをとったポルシェティーガーに思わずそう声をかけるとリーダーのナカジマからそんな声が返ってくる。
「………………全く、思いのほかこちらでも愛されているな!!」
「うれしい限りだが、この状況は手早くすませないとこちらが不利になるのでは?」
俺の言葉に河嶋が表情を綻ばせ、笑みを見せながら砲手席についているシャアに目線と共にそう尋ねると、問われたシャアは少しだけ思案にふけるように親指と人差し指で顎を挟んだ。
「うむ。此方の士気は高い方だが、この土壇場でまとまりをみせたのかBC自由学園も士気が高いように視える。完全に玉砕覚悟の特攻だろうな。」
「そういうのは知波単の連中だけにしてくれないか!?まずは敵の出鼻を挫く!!」
思わず悪態を吐くようにコメットのアクセルを思い切り踏み込んだ。大洗の車輛の中でもトップの速度を誇るコメットが隊列など度外視してスピードを上げれば、自然とコメットが突出した形になると、シャアがコメットのキューポラから顔をのぞかせ、周囲の様子を見る。
「ふむ、陣形らしい陣形もない。完全に一輌でもいいからフラッグ車に攻撃を届かせることを念頭に置いているようだな。」
「だが奇襲しようとしたバレー部のアヒルチームの撃破報告が上がっている。相手の後ろからみほ達が来てくれているとはいえ、攻撃と防衛では気持ちが違うな。」
そう苦い表情を見せている間にシャアがトリガーを引き、轟音と共に砲弾が発射される。狙われた相手のARLはこちらの射線を定めさせないためか、やたらめたらな動きをしていたが、シャアが放った砲弾はそんなことを障害ともしていないように一撃で仕留めた。
「これで向こうの戦力は残り6か」
確認するようにそう呟きながら、俺はキャタピラを操作させ、車体を相手にぶつける勢いでドリフトさせてコメットをBC自由学園の進攻ルート上につけ、フラッグ車の間に立ち塞がる。コメットクラスの戦車がぶつける勢いで迫ってくると、流石に気圧されたのか、BC自由学園の車輛は咄嗟に方向転換したり、急ブレーキをかけたりしてその勢いを弱めた。
「そこか」
その急ブレーキをかけた車輛をシャアは決して見逃さない。河嶋から装填完了の報告が上がるや否や、再びコメットの砲撃が火を噴き、勢いを止めたソミュアを吹っ飛ばす。撃破確認のための白旗すら一瞥せずに次に移ろうとした瞬間、二つほどの敵意を感じた。すぐさまコメットのアクセルをふかしてスピードをあげると二方向からの攻撃がさっきまでいた場所を通りすぎていった。
「ほう………………中々威勢のいい人物がいるようだな。」
「おのれ貴様が先ほどからこちらの車輛を減らしているコメットだな!!これ以上のマリー様の邪魔は許さん!!」
「隊長はやらせない……………!!」
シャアが不敵な笑みを見せる通り、こちらに向かう水に突っ込んでくる様は確かに威勢のいいように見える。
「アムロ、彼女らを丁重にもてなすとしよう!!元の世界ではあのように果敢に向かってくるものはほとんどいないのだからな!!」
「まぁ実際放置が一番安全策ですからね、二人の乗る車輛への対応は。触らぬ神に祟りなしという奴でしょう。」
「…………そうだったとしても理由が幼稚くさい……………いい歳した人間が何を考えているのだか……………ハァ、注意を惹きつける名目で付き合ってやる。」
シャアのウキウキとした反応に思わず頭を抱えるように呆れたため息を吐くと、操縦レバーを操作して追ってくる二輌と向かい合わせる。
「おい。丁重にもてなすといっていたが、まさか加減する腹積もりじゃないだろうな?」
「ふっ、それこそ愚問だなアムロ。」
忠告のように俺が文句を垂れている瞬間、シャアが仕掛けたのか聞きなれた轟音が耳をつんざく。だがその砲撃音の直後、なにか装甲に弾かれたような甲高い音も聞こえた。大方シャアが何かしでかしたと思い、いぶかし気な顔で運転席の覗き窓から外の様子を見てみると、やっぱり呆れたようにため息をついてしまう。そこから見えた光景は、不自然なスピードで砲塔がぐるぐると回転しているARLがあった。
そして回転していて見えずらいが、ARLの特徴である長い砲身が途中からまるで折れてしまったように短くなっていた。そのかわり、その砲身の先端は90度くらい別方向に向けられていた。
「密接していたソミュアとARLに対して、ARLの砲塔右側面にわざと破壊しない程度に砲弾をかすらせて回転力を生み出し、その力で隣のソミュアにARL特有の長い砲身をぶつけさせることで折り曲げたのか。」
呆れと称賛が半分ずつの複雑な心境でそういうと、満足気なシャアの雰囲気を感じ取る。というか回りくどくないか?愚直にこちらにまだ向かってくるものだからどうみても相手は気づいていないようにも見えるのだが………………そうこうしていると突然ARLが自爆した。まぁ大方砲身を曲げられたせいでふたができあがり、砲弾を打ち出すことができなかったためなのだろうが。
「まぁ………………そうなるな。」
俺は思わず遠い目を浮かべ、果敢にも向かってくるソミュアを一瞥する。もっとも次の瞬間にはシャアが撃ちぬいていたが。
「………………勝ったな。」
「そうだな。まぁ、私たちがいなくとも、みほたちなら勝つことができたと思うが。」
「ほう?やはりだいぶ高く彼女を買っているようだな。」
「当然だろ。冷泉麻子と角谷杏があそこにいる本来の性格だったとしても、流石に過程こそは異なると思うが、こうして戦車道にかかわり、大洗の廃校を回避している。」
妙な笑みを浮かべるシャアからの言葉にそう返しながら、俺は手元に置かれたケーキをほおばる。
結論から言えば、大洗はBC自由学園に勝利した。俺たちが終盤つっかかってきたソミュアとARL(ちょうど向こうの隊長のマリーという人物のそばに従者のように立っている二人組が車長だったらしい)を相手している間にみほたち奇襲組が追い付き、向こうのフラッグ車を取り囲んで動けなくしたところところを撃破した。
「まさか、BC自由学園もアンツィオと似たような校風だったとはな。」
「どちらかといえば、これは向こうの隊長の気質のような気もしないわけではないがな。」
そしてなぜ俺たちが試合が終わったにもかかわらずこうしてケーキを食べているのかと言われれば、BC自由学園の隊長である彼女の計らいで大洗のメンバーを加えた敢闘会のようなものを開くことになった。さすがに怪しまれる可能性も考慮して、遠慮したいのが本音だったが、かたくなに表に出てこようとしないのもそれはそれで周囲から疑われるというシャアの言葉を聞いて渋々ながらもそのパーティーのようなものに参加することになった。
「………………BC自由学園はフランス風の学校だったか?」
「そうだな、ソミュアもARLも大戦中のフランス軍の戦車だったはずだからな。ケーキをはじめとする菓子類が美味なのもその裏づけにはなるだろう。」
ふと気になったことをシャアに聞く。シャアに渋々ながら連れてこられたこのパーティーだが、せっかく本場に近いものが食べられる機会なのだから、食をメインにしてもまぁ問題はないだろう。
「ジィー…………………」
(凄い目線を向けられているな…………ケーキを頬張りながらこちらに目線を向けている。)
食い意地が張っているのかはたまたこちらへの興味がそれを優っているのか定かではないが、向こうの隊長からじっくりと吟味されているような目線を感じる。
彼女でさえこの通りなのだから、他の学校の隊長格の人物だったら目も当てられないことになりそうだ………………。
アムロが心の中で頭を抱えている最中、非情にも大洗に流星のように突如現れたコメットの存在に目を光らせた者たちがいる。想像した通り、他校の隊長格の人間たちである。
聖グロリアーナ女学院
「まさか、大洗にあんな隠し玉が出てくるなんてね。」
「そうですね。コメット巡行戦車は火力ではポルシェティーガーに劣るものですが、そのほかの性能面からみて大洗では一番の高性能の車輛でしょう。」
ダージリンの隣に座るアッサムが手持ちのタブレットにコメットのデータを表示させながらそんな評価を下す。
「それもそうだけど………………あのコメット、まだ本気を見せていないわね。」
「本気………………ですか?」
あのコメットはまだ本気を見せていない。そのダージリンの言葉にオレンジペコは首をかしげてその真意を尋ねる。その視線にダージリンは手にしていたカップの中の紅茶を口にすると遠くを見つめ始める。
「………………みほさんたちがBC自由学園の背後を取ろうとして孤立させられたシーンがあったわよね。」
「はい。あのコメットはちょうど最後尾にいたため、運よく半包囲から抜け出した状態でしたが、丘の頂上に陣取っていたフラッグ車付近を砲撃することで向こうに警戒感を出させて退かせていました。」
「そうね。でも私の個人的な感覚から言わせてもらえば、あの時点で試合を決めようと思えば決められた気がするのよね。ほかでもないあのコメットが。」
そういってダージリンは再びカップに口をつけて遠くを見定める。まるでその顔は遥か向こうの流れ星でも眺めているようだった。
サンダース大学付属高校
「どうやら大洗は無事に二回戦に進めたみたいね。一時はどうなることかと思っていたけど………………」
テレビの中継で大洗の試合の様子を見ていたケイは一本の映画を見終わったように腕を上へ挙げて伸びをすると感想を述べた。
「でも事前情報もなく突然でてきたあのコメット………………初心者が乗っていたとしては撃破スコアがおかしすぎる。1輌で相手の半数を撃破するなんて、どうみても経験者かその筋の人間が搭乗しているとしか思えない。一体何者?アリサはなにか知ってる?」
「知ってるも何もこの試合が始まってから気づいたわよ!!あたしともあろうがなんて情けない!!今全力で情報の精査中!!一体いつあんな奴が大洗にはいったていうのよ………………!!」
机に指をつつかせていぶかし気な表情を深めるナオミに情報通のプライドに傷をつけられたと思っているのか、すべてがベールにつつまれたコメットの存在にいら立ちを隠せないのか、荒々しい口調で情報の洗い出しを行っていた。
プラウダ高校
「ミホーシャが勝ったわね!!」
「そうですね。まぁ、我々を下した大洗であれば問題なく勝利を手にすることができたでしょう。」
大洗が勝利したことをまるで自分のことのように諸手を挙げて喜ぶカチューシャ。そこに同意するようなノンナの言葉が入ると、隊長である自分がこうも素直に感情を前に出していいのだろうかと思ったのか、突然周りを見渡すと咳払いをしてから背筋をのばしてふんぞり返るように腕を組む。もっともそれはクラーラの肩車の上で行われていることなので、威厳もへったくれもないが、それを指摘するともれなくシベリア送りされるため禁句なのは公然の秘密である。
「ふふん。ミホーシャ、今度は負けないから芋でも洗って待っていることね!!」
「カチューシャ。それは芋ではなく首だと思いますが。」
そんなことを言われれば、カチューシャは恥ずかしさのあまり喚き散らすが、ノンナはそれをスルーして肩車しているクラーラに視線を向ける。
『同志クラーラ、先ほどの試合、どう思いましたか?』
『同志ノンナ、そうですね、やはりあのコメットでしょうか。』
カチューシャが聞き取ることのできないロシア語で会話を交わす二人。戦車道でも有数の実力者である二人はコメットの存在が否応にも引っかかるようだ。
『あのコメットは必ず我々の障害となりうる存在です。可能であれば、彼女らの実力を詳らかにするべきでしょう。』
『その意見には私も同じです。ほかの隊員に命じて個別にあの車輛の映像を撮らせておきます。』
クラーラの申出にノンナを承諾の意を込めて首を縦に振る。
『ところで今のカチューシャの様子は?』
『ばっちりカメラに収めています』
『いいでしょう。あとで現物の複製を』
『了解しました』
名だたる強豪たちがまるで流星のごとく現れたその
自動車部をはじめとするキャラたちの本名が判明するって本当ですか!?
………………書き直さなきゃ(使命感)
最終章、見たいですか?(モモチャンズリポートのあとがき要参照)
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見たいです
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見たくないです