「とりあえず、キラのエコーロケーションの指示通り、一通り探してみたが・・・・。」
アムロさんがみんなが探してきてくれた戦車の有様を見て、困ったかのような表情を浮かべる、黒髪を軽く弄り始める。
まぁ、それも無理もないと思う。みんなが集まった倉庫にあったⅣ号戦車の他には確かに戦車はあった。それもキラさんが示した場所にしっかりとあった。
それはそれでキラさんが置いた機械の精密さに舌を巻いていたんだけど・・・・。
「いやー・・・・。これはないでしょ。」
「それな。これじゃあ動くかどうかも定かじゃないぜ。」
ジュドーさんとガロードさんも見つけた戦車を見て引きっつらの笑みを浮かべてしまう始末であった。
なにせ、残っていた戦車の場所がそれぞれ中々奇抜な場所だったのだ。
「それぞれ一体どこにあったんだ・・・?」
「えっと確か・・・駐車場と池の底と、森の中に兎小屋の中・・・?」
アスランさんが疑問気に出した言葉にシンさんが戦車を見つけ出した場所を一箇所一箇所、指を折りながら数え始める。
うん、そこまではいいんですけど。兎小屋の中は百歩くらい譲ってだけど・・・・。
「泥沼の中に・・・・崖の洞窟の中、これに至ってはドモンがいなきゃ割と厳しかったな。」
「確かにな。いつもはあの怪力には脅かされてばかりだが、今回ばかりは感謝の念しかでないな。」
「あの・・・風紀委員長さんがどうしたんですか?」
何故そこでドモンさんの名前が挙がったのかよく分からなかったためお二人に聞いてみることにした。
私の疑問に二人はある戦車を指差した。それは八九式中戦車だった。
「崖の中で見つけたのあの戦車だったんだけど、普通に降ろそうとすると危なかしかったから、会長の指示でドモンに頼んだ。」
「えっと、頼んだって言うのは・・・・?」
「ここまで持ち運んでもらったんだ。一人でな。」
シンさんに向けた質問をアスランさんが答える。しかし、アスランさんから飛び出た言葉は思わず耳を疑ってしまった。
だって戦車を一人で運ぶなんて・・・・ねぇ・・・?
八九式中戦車は確かに中戦車だから重量は戦車の中では軽い方だ。
だけど、それでも10トン以上はある。到底人に持ち上げられる重さじゃないけど・・・・。
「さ、流石に嘘ですよねぇ・・・・?」
乾いた笑みを浮かべているシンさんが突然どこかに向けて手を振り始めた。そのシンさんの視線の先を追ってみるとドモンさんがいた。多分、直接聞くつもりなんだと思う。
シンさんの視線に気づいたのかこちらを一目したドモンさんは軽く首を傾げながらこちらに近づいてきた。
「どうかしたか?」
「いや、さっきはありがとな。あの戦車を運んでくれて。」
「なんだ、そのことか。あの程度であれば朝飯前だ。気にすることはない。」
・・・・・朝、飯、前?
戦車を持ち上げたんですか?お一人で?いやいやいやいやいや、いくら教室の壁を破壊していたとはいえ、戦車を持ち上げるなんて・・・。
「だが、あの戦車を持った状態であの崖を飛び降りるのは準備運動にはちょうどいいかもしれないな。脚の筋肉の目覚ましにはなるだろう。」
なんなのこの人・・・・・?戦車を持ったまま崖を飛び降りる?え、それが準備運動?どう考えても死にますよね。それ。
ドモンさんの軽く口角をあげながら言った言葉に私は開いた口が塞がらなかった。
まさに余裕淡々といった様子で佇んでいるドモンさん。
ほ、本当にやっちゃったんですか・・・・・?
「用は済んだか?すんだのであれば俺はウーフェイと組手をしてくるが・・・・。」
「ああ。サンキューな。」
シンさんがお礼を述べるとドモンさんは倉庫の外へと出ていった。
「・・・・驚くのも、無理はないだろう。私達だっていつもドモンには驚かされてばかりだからな。」
「は・・・・はい。」
「で、シン。あとはどこにあったんだ?」
アスランさんが私に気を使うような発言をしてくれる。やっぱり私以外にもちゃんとドモンさんに異常さを感じ取っている人はいるんだ・・・・。
でも、そのあとの切り替えの速さからもうアスランさんも結構慣れているんだなぁと感じ取ってしまう。
「・・・・なんか体のいいように使われているきがするけど、まぁ、いいか。確かトビア達がやっているレストランの中にもあったな。」
「ああ。あそこか。薫製機のような使われ方をされていたんだったか?」
「そんな感じだったな。だからあそこのは除外した。」
「まぁ、仕方がない、か。料理人にとって、料理器具は命だからな。」
「せ、戦車が料理器具・・・・。そんな感じに使っているなんて、聞いたことがありませんよ・・・・。」
「この間まで戦車とは全く無縁だったんだ。これくらいは目をつぶってくれ。」
「そ、そうですね。」
アスランさんからの言葉に頷いていると、ふと気になったことを聞いてみることにした。
「そういえば、アストナージさん達に頼んだ一番反応が大きい戦車ってどうなったんですか?」
「・・・・そういえばそうだったな。誰か、知っているはいるか?」
「ああ。それなら作業工程でミスがあって落っことしたって聞いたな。またパインサラダ関係かってみんな言ってたぜ。」
アスランさんが倉庫にいる人たちに向けて聞いてみるとガロードさんが顎に手を当てながらそう言った。
ほ、本当にパインサラダはあの人にとってブロックワードだったんだ・・・・。
「そ、それでその戦車はどうなったんですか?」
「ちょっと壊れたらしいが、アストナージさんなら大丈夫っしょ。最悪、ロウ辺りがジャンクパーツ組んでなんとかしてくれる。それよりもこれ洗った方がいいんじゃない?泥だらけだったり埃まみれでひでぇもんだぜ?」
ロウさんという初めて聞く名前が出てきたがガロードさんの言う通り見つけてきた戦車はどれも汚れが目立っていたから確かに洗う必要があるだろう。
「そう言うだろうと思ってホースを持ってきた。アストナージ達が戻ってくるまでできることは私達で済ませてしまおう。」
声のした方向へ振り向くとアムロさんがホースを抱えながら持ってきていた。
「さっすがアムロさん!!さっさとみんなでやろうぜ!!」
ジュドーさんが満面の笑みを浮かべながらアムロさんからホースを貰うと水源の蛇口にホースを取り付け、埃まみれだった戦車にむけて水を噴射する。
「西住さん、私がホースを取り付けておくから、他のみんなを呼んできてくれないか?外で暇をしているだろうからな。」
「あ、はい。」
アムロさんからの頼みを承諾した私は外へ出て、他の皆さんを呼び戻そうとする。
ドモンさんとウーフェイさんは組手をしているとか言っていた。外に出てみると他の人たちはみんな揃ってドモンさんとウーフェイさんの組手を座って見ていた。
「とぉぉりゃぁぁぁぁぁ!!!!」
「はぁぁぁぁぁぁっ!!」
・・・・・はっきり言って、おふたりの組手はレベルが違いすぎました。だって2人がぶつかり合うたびに周囲に衝撃波みたいなのが見えちゃうんです。
しばらく唖然とその組手を見ていたらウーフェイさんが弾き飛ばされた。人が吹っ飛ぶだけでもとんでもなかったが、ウーフェイさんはそれを防ぎきったように見える。しかし衝撃はやっぱり凄まじかったのか力尽きた様子で片膝をついた。
「また腕を上げたな、ウーフェイ。いいファイトだった。」
「ちっ、それでもやはり貴様にはまだまだ及ばんらしいがな。」
ドモンさんがウーフェイさんを讃える言葉を述べる。それにウーフェイは少しばかり不機嫌そうな言葉で返すが、表情にはそのようには見えず、むしろ晴れやかなものだった。
「おや、西住さんじゃないですか。どうかしましたか?」
「あ、カトルさん。えっと、アムロさんが戦車を洗うからみんな来てくれって言ってましたよ。」
カトルさんが私に話しかけてきた。ちょうどよかったからカトルさんに伝える形でみんなに呼びかけることにした。
「成る程、わかりました。それと、僕のことはカトルと呼び捨てで結構です。貴方より学年は一年下なのですから。」
「ご、ごめんなさい・・・・。中々そう言うのは苦手で・・・・。」
「そうですか・・・申し訳ありません。気が利かなかったようで・・・。」
「い、いえ!!そんなとんでもないです!!」
カトルさんが笑いながらも謝ってきたことに対して私は思わず自分の胸の前で手を振りながら遠慮を露わにする。
私の反応が少しばかり面白かったのか、カトルさんはかけていたメガネを軽くあげるとツインテールを揺らしながら私から見て奥の方へいたドモンさん達の方へ向いた。
「みんな!!戦車を洗うから一度、倉庫へ戻ろう!!」
カトルさんがそう呼びかけるとドモンさんとウーフェイさんの組手を観戦していたみなさんは、ゾロゾロと倉庫へ戻っていった。
みんな本当に仲がいいんだなぁ・・・・。
私はなんとなくみんなのその様子を見て羨ましく思うのだった。
そして、脳裏に思い浮かんだのは、何も言わずに出て行ってしまった黒森峰での唯一の友人だった人。
・・・・たぶん、怒っているだろうなぁ・・・エリカさんは結構怒りっぽいところがあるから・・・。
「・・・・西住さん?」
ふと呼びかけられた声に振り向くとバナージさんが少し心配そうな表情を浮かべながら私を見ていた。
もしかしたら、さっき自分が考えていたことが顔に出ていたかもしれない。咄嗟に表情を笑顔に変え、何事もなかったように振る舞おうとする。しかし―――
「何か、辛そうだったけど、大丈夫?」
私が何か言おうするより早く、バナージさんが口を開く。
しまった。やっぱり顔に出ていたらしい。
「ううん。大丈夫。少し昔を思い出しただけだから。」
「・・・・・何か辛そうだったら、すぐに頼ってくれて構わないよ。誰だって辛いことはなにかしら抱えて生きている。それにみんな、君が何か抱えてしまっていることはわかっているから。」
バナージさんの言葉に思わず表情を驚いたものに変えながら倉庫の方へ振り向く。
そこにはさっきまで談笑していたり、戦車を洗っていたはずのみんなが揃って私の方を向きながら軽く笑顔を浮かべていた。ヒイロさんは無表情だったが。
「君が前の学校で何があったのか、こちらから聞くことはしない。それは君があまり聞いて欲しくないことだと思う。だけど、私達はいつだって君の味方だ。」
バナージさんからそういわれ、私はもう一度彼女の方へ振り向いた。
「あの、私、そんなにわかりやすかったですか?」
「そんなことはないよ。ただ、人より察しがよすぎる人が集まっているからね。」
思い返せば、カミーユさんやジュドーさんも私が戦車道に対して良くない感情を抱いていることを見抜いていた。
「シャアもそこら辺はわかっていたんだろう。だから君を無理に誘おうとはしなかった。そうだな?シャア。」
「・・・・否定はせんよ。ただ本人がやりたくないのであれば誘わん。ただそれだけのことだ。」
アムロさんがそう言うと会長さんの声が倉庫に響いた。倉庫の入り口の方を振り向くとシーブックさんとウッソさんを引き連れて、会長が腕を組みながら立っていた。
「あの、もしかして―――」
「知っている、とだけは言っておこう。だが、それを知っているのは私や生徒会を含め、アムロくらいのものだ。まぁ、勝手に調べてしまった者もいるが。」
勝手に調べた人もいるんですか・・・・まぁ、ゴシップにも掲載されたような気もあったから少し調べればわかってしまうと思うけど・・・・。
「そういえば、戦車を探そうとなった時から生徒会の姿が見えなかったような気もするが、何をしていたんだ?」
「あ、そういえばそうですね。シーブックさん、何やってたんですか?」
アムロさんの質問にトビアさんが疑問に思いながらも何故かシーブックさんに質問をぶつけた。どうしてシーブックさんなんだろう?
「実はシーブックさんは二年生の時はパン屋を出していたんだ。それこそ、トビア達のレストランと同じ場所でね。」
「え、トビアさんのレストランって・・・学園艦の下の方でやっているって言う・・・。」
バナージさんがシーブックさんについて驚きの情報を出してくれた。あんなにいい人そうな人が学園艦の下の方にいたなんて・・・・。
「いわばトビア達はシーブックさんの後継者みたいなものだよ。みんなシーブックさんの世話になっていたらしいからね。」
「なるほど・・・・。」
バナージさんの言葉に納得といった表情を浮かべていると会長さんが何かみんなに向けて話していた。内容に耳を傾けているとこんな言葉が聞こえた。
「私達が席を外していたのは練習試合の申し込みをしていた。全国大会までは期間がそれほどないからな。結果から言えば、練習試合を受けてくれる学校はあった。」
え、練習試合組んだんですか!?まだ戦車に触ってすらいませんよっ!?
ただ、驚いた表情を浮かべていたのは私だけだった。周りを見渡してみても驚いた様子を見せている人は誰一人としていなかった。ただ、会長の次の言葉を待っている、そんな感じだった。
「相手は全国大会の常連校、聖グロリアーナ女学院だ。試合は三日後だが、慣らし運転なら余裕だろう。」
「十分だな。あとは各戦車に誰が乗るかだが・・・・。」
「それは任せる。我々は寄せ集めだからな。変に縛るより各々の感性に頼った方がいい。」
「それもそうか。」
会長とアムロさんの会話が行われていく中、私は自由すぎるその方針に破顔していた。
だって慣らし運転は三日で十分とか、およそ初心者が言えることではないからだ。
「あ、あのっ!!」
「ん?西住君、どうかしたかな?」
「み、皆さん、まだ初心者ですよねっ!?」
「まぁ、分類的にはそうなるだろう。」
思わず私は会長さんに掛け合った。私の驚いた様子と違って会長の表情は特にこれといったものは感じられない。
「会長は私が、戦車道をやっていたことはご存知なんですよねっ!?」
「そうだな。」
「でしたら、私が隊長をやってもいいですかっ!?その、なんかみんな危なかしくて・・・。」
「む、そうか。君がやってくれるのか。私個人としては隊長はアムロ辺りで別にいいかと思っていたが、経験者である君がやってくれるのであれば、話は別だ。」
「そ、それなら・・・。」
「ああ。君の好きなように部隊を動かすといい。君の指示に我々は全力で応えるだけだ。」
「あ、ありがとうございますっ!!」
よ、よかった・・・。これで当面の危機感とかはなんとかなりそう・・・・。
そう胸を撫で下ろしているとアムロさんの不安そうな表情が目に入った。
そっか。アムロさんは会長さんから私の転校の経緯を知っているんだっけ・・・・。
「西住、良かったのか?君は―――」
「だ、大丈夫、大丈夫ですからっ!!」
「・・・・そうか。ならいいんだが。」
アムロさんの言葉に無理やり重ねる形で遮ってしまうが、私はこの大洗女子学園の隊長になりました。
なった理由は、この人たちに好き勝手やられたら、戦車道の概念が崩れるような感じがしたから。
「それでは、まずはそれぞれの戦車の搭乗員を決めます。えっと、見つけた戦車は確か―――」
何を見つけたか思いだそうとすると、視界の端に紙が差し出されたのが見えた。
「はい、これ見つけた戦車のリスト。まとめておいたけど、詳しい戦車の特性は君の方が知っているだろうからね。」
紙を差し出してきた人の正体はキラさんだった。私がお礼を言いながらその紙を受け取るとそこには見つけた戦車の名前が記されてあった。
「えっと、Ⅳ号戦車、八九式、38(t)Ⅲ号突撃砲、M3、ルノーB1bis、三式中戦車、それとポルシェティーガーが一番火力があるけど・・・・。」
うーん、全体的に火力が足りないなぁ・・・・・ポルシェティーガーが最高火力なんだけど、これは確か結構曰く付きだったような・・・主にエンジン部分が・・・。
「火力が足りないと言ったところか?」
「はい・・・。それどころか装甲もそれほど分厚くない車輌が大半です。私達の練習試合の相手である聖グロリアーナはイギリス戦車が中心で、確か使っていたのは、マチルダⅡとかその辺りだったかなぁ・・・。とりあえずこちらは一発でも当てられたら終わりですね。」
「なら、当たらなければいいだけだな。」
「はい、そうで―――はい?」
冷泉さんの言葉に思わず二度見してしまう。当たらなければいい?まぁ、たしかにその通りですけど・・・・。
「それができたら苦労しませんよ・・・・。」
「隊長ー。一つ聞いていいか?」
苦い顔を浮かべているとデュオさんが手をあげながら質問の許可を取ってくる。
「あ、はい。何ですか?」
「そのポルシェティーガーってやつが一番火力あるのか?」
「そう・・・ですね。ルノーB1bisも重戦車なのでない訳ではありませんけど、やっぱりポルシェティーガーの88mmには及びませんね。」
「なら、ウチら風紀委員組をそのポルシェティーガーに回してくんねぇか?どうせ砲弾もそれなりに重いんだろ?だったらウチの筋肉委員長が適任だろうよ。装填手にはさ。」
た、確かにドモンさんの筋力であればポルシェティーガーの砲弾を持つことは容易いですね・・・・。
「わかりました。それならポルシェティーガーは風紀委員の皆さんでお願いします。」
「りょーかいっと。」
「オーライ!!任せな!!」
「わかった。」
それならあとはほかの戦車だけど・・・・どうしようかな・・・はっきり言って私はみんなのことを知らなすぎるし・・・・。
「あの、皆さんにはデュオさんのように何か要望とかあったりします?」
「ってもなぁ・・・・正直に言ってなんでもいいの一点張りだよな。」
「ですよねー。」
ジュドーさんが微妙な表情を浮かべながらそう言ってくる。確かにジュドーさんの言う通り、私はみんなの個性を知らないし、それに対してジュドーさん達は戦車の知識はほとんどないと言っても過言ではない。
他のみんなもうんうんと頷いたりしていて、思った以上に難航しそうだった。
思ったより大変だなー・・・・・。どうしようかなー・・・・。
そういえば、登場人物の名前ですが、元のキャラクターの名前の方がいいですか?それともガンダムキャラの名前でいった方がいいですかね?
最終章、見たいですか?(モモチャンズリポートのあとがき要参照)
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