(これより彼女らが見せるは地獄か、はたまた屍産血河の戦車の残骸か。)
ちなみに一日クオリティなので、完成度はかなり低いです。
大洗で初めて戦車の訓練を行ってから早3日。大洗の市街ではお祭り騒ぎのような喧騒が飛び交っていました。
なにせ数十年ぶりの戦車道の試合が行われるそうなので、大洗の皆さんも自然と活気があふれてくるようです。
そして、記念すべき私たち大洗の初戦の相手が聖グロリアーナ女学院。全国大会の常連校であるかなりの強豪。
はっきり言って素人(?)同然の私たちにとっては過ぎた相手かもしれません。
だけど、隊長として立候補し、就任してしまった以上は出来る限りのことをやっていきたいと思います。
こちらの車輌はⅣ号戦車を筆頭に38(t)、M3中戦車リー、Ⅲ号突撃砲、ルノーB1bis、そしてポルシェティーガーの合計6輌。
ポルシェティーガーに至ってはあまり試合に出せるとは思ってなかったのだが、アストナージさんを筆頭とした自動車部が一日でやってくれました。
おまけに規則に書いていないからってモーターあたりもいじったようです。
そのモーターをフル稼働させた時のポルシェティーガーはすごく速かったです。(小並感)
そして、今回の相手である聖グロは濃い緑色の150mmの装甲を持つチャーチルやベージュ色のチャーチルより一回り小さい車体を持つマチルダが五輌の編成だった。
一回り小さいとはいえ、マチルダは十分にこちらの戦車を一撃で撃破できる火力は持っている。気をつけなきゃ・・・・。
「西住。大丈夫か?」
色々戦略を考えているところに背後から声がかけられる。驚いた表情をしながら後ろを振り向くと副隊長になってくれた
その顔はどこか私を心配してくれているような顔を浮かべていた。
「そこまで気を張る必要はないと思うぞ。なにせ私達は初めての試合だ。まだ場数を踏んでいないにも関わらず、勝ち負けにこだわるのは私たちには早すぎる。」
・・・・言われてみれば、そうかもしれない。確かにみんなの実力はともかくとして、大洗にとって、この試合は初陣なんだ。勝ち負けはあまりこだわらない方がいいかもしれない。
だけど、その考えは私にとって中々飲み込めないものだった。
西住流、『撃てば必中 守りは固く 進む姿は乱れ無し 鉄の掟 鋼の心 』
その言葉がどうしても私の心の中で繰り返され、どことなく自分が自分で無くなるような感覚を覚えてしまう。
「でも、勝たないと、大洗が廃校になってしまうんですよ?だったら勝たないとーー」
「・・・・はぁ。」
ズビシッ
「あいたぁっ!?」
突然
「な、何するんですかーーっ!?」
「全く、聞いていて呆れる。ここは黒森峰ではないんだ。それは君の心の中でちゃんと認識できているか?」
「え、えっと、そのぉ・・・・。」
完全に呆れているようにため息を吐きながら憮然と腕を組んでいる
「そもそもとして、この試合はあくまで練習試合だ。負けようとも誰も君のことを責めたりはしないさ。それは私が保証する。そうだな、あまり私が言えた義理ではないが、君なりにこの試合を楽しんでみてはどうだ?一応、戦車道はスポーツなんだろう?」
軽く柔らかな笑みを浮かべながらそう言った
「・・・・そういえば、私は副隊長だから君と一緒に相手校の隊長と副隊長に挨拶に行かなければならないとシャアから聞いたのだが。」
「あ、そうですね。行きましょうか。」
『これより大洗女子学園と聖グロリアーナ女学院の試合を始めます!!両校の代表は前へ!!』
審判の言葉に促されるように前へ歩を進める。
歩いているうちに向こうの聖グロの隊長の姿が見えてくる。金色に輝く綺麗な髪を後ろでまとめ、その瞳の中にある碧からは彼女がいかに気品に満ち溢れているかを否が応でも感じさせる。
彼女こそが、聖グロリアーナ女学院の隊長、ダージリンさんだ。
「今回はよろしくお願いしますわ。」
「・・・・はい。こちらもよろしくお願いします。」
ダージリンさんから差し出された握手をこちらもしっかりと握り返す。
副隊長である
「中々、奇抜な編成をしていますのね。」
ダージリンさんは不意に視線を大洗の戦車に移すとそんなことを呟いた。
まぁ、そうですよね、そう思いますよね。だって統一性とか一切皆無ですもん。
「しょうがないだろう。こっちは寄せ集めもいいところなんだ。そちらのように統制はからっきしだ。」
「え、言っちゃうんですかっ、それっ!?」
それではこっちは弱いですって言っているようなものですよ!?
ほら、ダージリンさんもどこか笑いそうな顔をしていますし!!
「隠したところでどのみち明るみに出るだろう。だったら最初から包み隠さずに暴露した方が後々引きずらないさ。」
「ふ、ふふっ・・・・!!あなた、中々面白いことをするのね。」
笑いを必死に堪えているダージリンさんが
「・・・・まぁ、退屈をさせない程度にはやってみせるさ。」
「でしたら、少しは期待させてもらいますわね。それでは。」
それだけ言うとダージリンさんは自身の陣地へと戻っていく。
その後ろ姿を少し見つめて、私と
陣地に帰ってきた時、他の人たちは戦車に腰掛けて談笑に花を咲かせていたが、私たちが帰ってきたのを見ると、意識を切り替えたのか何も言わずに自身のあてがわれた戦車に乗り込んでいった。
その切り替えの速さに少し面を食らう私だったが、
Ⅳ号戦車に乗り込んで程なくして、試合開始を告げる破裂音が鳴り響く。
「全車、パンツァーフォー!!」
喉元につけたマイクにそう声を送るとばらつきはあれど大洗の戦車がキャタピラから駆動音を響かせながら前へ進んでいく。
まずは、こちらに有利な陣形を組み立てないとーーー
「各車輌、事前にお伝えしたポイントへ向かってください。そこで陣形を組み立てます。」
『了解!!』
受信機から各車輌の車長の声が響く。そのことになんとなく懐かしさを感じながら予め指定したポイントへと向かう。
しばらく戦車の振動に揺られていると長い谷に進んだ先に小高い丘があるポイントに差し掛かる。
今回の試合ではここに聖グロの車輌を誘き出し、集中砲火をかける。
単純だけど、一番効果的な戦法。その分、向こうには長い谷に差し掛かったところで看破される恐れもある。
何せ相手は全国大会の常連校、仮に突破されたとして、次はどうすれば・・・。
「西住さん?何か思いつめたような顔をしているけど、大丈夫?」
「え、あ、だ、大丈夫、です。」
隊長としてみんなを不安にさせるような顔は見せられないというのに・・・・。
完全に私のミスだ。取り繕うべきかどうするかを悩んでいるとーーー
「なんだ、西住さんも十分初心者じゃないの。」
「どうやら、そう見るのが一番正しいのかもしれないな。」
思わずハッとした顔をしながら沈んでいた顔を上げる。そこには笑みを浮かべている
「私達は戦車の動かし方はマニュアルを見ただけの初心者だ。対して君は戦車の知識こそあれどあまり物事を言うのは苦手と見える。違うか?」
「え・・・えと、その、否定は、しません。」
元々引っ込み事案な私はあまり人と話すことは得意ではなかった。
これでも副隊長という重要な役職についていたから決して他人との会話もないわけではなかったがそれは事務的なものばかりで、友人としての会話ができていたのは極少数の人だけだった。
「なら、これから成長していければいい。人にはそれだけの可能性があるのだからな。」
「かのう・・・せい・・・?」
その言葉が妙に私の心の中に色濃く残ったからだ。
「ま、それもそうなんだけどさ。まずは自分を信じてやったらどうよ?せっかく自分で建てた作戦なんだからドーンと自信を持ってもいいんじゃないの?」
「西住さんの不安があるのも確かだけど、仮に突破されても後ろにきっちりと退路はある。もしもの時はそこに逃げ込めば、あとはそのまま進んで大洗市街地での試合。地元である私たちに地理的優位はある。」
「だから、君には落ち着いて、戦況を見ていてほしいんだ。君の指示に私たちはついていく。」
「どんな指示でも私達は従うさ。西住、君に出来ることをやってほしい。私たちからはそれだけだ。」
そう、だね。いつまでもこうして沈んでなんかいられない。むしろこの先、たくさんの障害を乗り越えていかないとみんなと、大洗のみんなと一緒にはいられない。
いちいち沈んでいるようではこの先の難題に立ち向かうことさえ、困難になっていくだろう。
だったら、
「私、頑張ります!!」
この試合を楽しんでいかないと、せっかく無名だけどすごい人たちがいっぱいいるんだ。多分、どんなことでもやってくれる、はず!!
「よーし!!なら、初めての指示出し、よろしくな、隊長さん!!」
「まずはこの先の小高い岩場に相手を誘い込みます!!そのためには囮が必要ですがーーー」
「私達、Ⅳ号戦車が務めます!!皆さんは射程距離に入り次第、砲撃をっ!!」
『了解っ!!』
他の車輌からの返答を聞届けると
「・・・・・来ないな。」
「まぁ・・・・相手もそれとなりに警戒して進軍しているんじゃないですか?」
「アムロさん、向こうの隊長はどんな人だったんですか?」
「・・・・・あまりスキが見られないような人だった。厄介なタイプの人間だ。彼女は。」
そんな風に話しながらのんびりと偵察をしていると、微かに聞こえる戦車の駆動音と共に、聖グロリアーナの戦車隊が荒野で砂煙を巻き上げながら進んでいるのが見えてくる。
それを視認した瞬間、私が何か言うより早く他の四人は素早い動きでⅣ号戦車の中に戻っていく。
予想外のみんなの機敏な動きに呆気にとられながらもなんとか遅れないように他の四人と同じようにⅣ号戦車の中に駆け込む。
「冷泉さんはエンジンを鳴らさないように進んでください。五十鈴さんは砲撃準備を。倒す必要はありませんので、当てることだけを意識してください。」
二人にそう指示を下し、
「よい、しょっと。」
そんな声が聞こえたと同時にガコンという音が車内に響く。
「・・・・もうすこし鍛えた方がいいんだろうな・・・・。多分このままじゃ、ついていけない。」
「ま、それはおいおいやっていった方がいいでしょ。ちょっと鍛えたくらいでつくもんじゃないだろうし。」
砲弾の重さに苦い顔を浮かばせながら手を握ったり開いたりしている
そんな会話を耳にしながらもキューポラからわずかに顔を出しながら聖グロリアーナの動向を見守る。
見ている限りこちらに気づいている様子は見られない。だったらーーー
「五十鈴さん、撃ってください!!」
「了解!!直撃させるっ!!」
その砲撃でこちらの存在を確認したのか、先ほどまで前を向いていた砲塔は私たちのⅣ号戦車に向けられる。
「冷泉さん!!後退を!!」
そのままⅣ号戦車を他のみんなが待っている場所へ向かわせる。
ふとキューポラから顔を覗かせて背後の様子を確認すると、チャーチルを筆頭にマチルダがしっかりと私たちを追ってきているのが見えた。
無論、砲弾も何発も飛んでくるのだが、
しばらく逃げているうちに地平線の向こうから指定ポイントにしていた小高い岩山が見えてくる。
『こちら、38tだ。Ⅳ号戦車を確認した。まだ相手の姿は見えないが、すぐそこまで来ているという認識でいいな?』
「はい!!各車輌は砲撃準備を!!出来る限り履帯を狙ってください!!」
そろそろ射程距離に差し掛かろうとしたところで、小高い岩山の方から光が見えた。
多分、戦車が発砲した時のマズルフラッシュだと思う。
射程距離ギリギリでの発砲。普通ではほとんど当たらないものだけど、私には妙な確信があった。
ガガガガガガンッ!!!
後方から金属板に連続で硬いものをぶつけたような音が響く。砲弾が装甲に弾かれたのだろうとは察せるのだが、そもそもとして、そんな音が響くということは、目標にとりあえずは当てられたことを意味する。
「・・・・あ、当てちゃった・・・。射程距離ギリギリなのに・・・。しかも全員分の砲撃が・・・・。」
他のみんなの規格外っぷりに思わず胃が痛くなりそう。あとでダージリンさんに謝った方がいいのかな・・・・。
「・・・・・・ねぇ、ペコ。今のなんの音かしら?」
「・・・・砲弾がチャーチルの装甲に当たった音かと。幸い有効弾とはなってはいませんが。」
「アッサム?大洗の戦車の砲門数は?」
「目の前で囮の役目を受け持っているⅣ号戦車を除けば、6門かと。M3リーには砲塔が二つ付いていましたので。」
アッサムからその数を聞いたダージリンは即座に自身の脳内で先ほどの音を思い返す。
かなり連続で何かが当たったような音だったが、衝撃自体は、六つほどだったはずだ。
「・・・・・この距離で全車輌の砲撃を1輌に集中させた上で直撃をさせた・・・?」
「・・・・はい?」
ダージリンの言葉にチャーチルの装填手であるオレンジペコが首を傾げた瞬間ーーー
ガガガガガガンッ!!!
「またこの音・・・!?」
ダージリンは再度響いた炸裂音に少しばかり不安気な表情を浮かべる。そしてーー
『こ、こちらルクリリ!!敵からの集中砲火により撃破されましたぁ!!』
「・・・・お、おやりになりますわね・・・・。」
まさかの撃破報告。しかもただ撃破されたわけでもなく、射程距離ギリギリのはずの砲撃にも関わらず、全ての戦車の砲撃が1輌に集中させた上で全て命中という明らかにおかしいことにダージリンの手は彼女らしくなく震え始め、手にしていたカップとソーサーがカタカタと鳴ってしまっているほどであった。
ちなみにこれでもまだ序の口であることは、これを見ている諸君らにはおわかりであろう。
これより始まるのは(多分)試合ではなく、ただの蹂躙劇かもしれない。
ひゃっはー!!者ども、かかれぇぇーー!!
最終章、見たいですか?(モモチャンズリポートのあとがき要参照)
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見たいです
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