冷泉麻子、行きまーす!!   作:わんたんめん

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第8話

試合が終わったのち、俺たちⅣ号に乗っていたグループは大洗女子寮の大浴場に来ていた。

立ち込める湯気の中、西住達が湯船の中でお湯に浸かりながら談笑している。

俺か?俺は西住達から少し離れたところでゆったりと浸かっている。女性の会話に俺みたいな中身が年寄りを加えるわけにはいかないからな。

だが、ここの湯船はちょうど頭も乗せられるところもあるから中々気持ちいい。

 

「冷泉殿、隣、いいですか?」

 

リラックスしていたところに秋山が俺が入っていたスペースの隣に入ってきた。

 

「秋山?いいのか、西住達と話してなくて。」

「はい。冷泉殿には聞きたいことがあったので。」

 

聞きたいこと?何かあっただろうか・・・。

そう思っていると、秋山が内容を話し始めた。

 

「その・・・。私の趣味についての話をしていた時、冷泉殿も女の子らしくない趣味を持っていると言っているような節がありましたので・・。」

「ああ、そのことか。」

 

要するに俺の趣味を教えてほしいということか。

まぁ、別段減るものでもない。教えても差し支えはないだろう。

 

「私は機械いじりが趣味でな。とはいえ、ここ最近はからっきしだ。この前、戦車のメンテを行ったのが久しぶりの機会だった。」

「機械いじりですか・・・。それは戦車ですか?」

「あたらずとも遠からず、だな。だが、戦車の仕組みはおおよそわかる。」

 

俺の趣味を話すと秋山は意外そうな顔をする。

まぁ、そうだろうな。ある意味戦車より異質かもしれない。

 

「意外か?」

「い、いえ!!まぁ、珍しいとは思いましたが・・・。」

 

そういいながら、秋山は焦った表情で弁解をする。

多分、俺の気に障ったと思ったのだろう。

別に気に障られたとはおもってないのだがな。

 

「冷泉殿はこっちでお話しとかしないんですか?」

「・・・少しばかり気恥ずかしさを感じてしまってな。」

「気恥ずかしさ・・・ですか?」

「ああ。私自身、かなり大人びてしまっている節があるからな。同世代との交流となるとどうしても一歩引いてしまう。」

 

俺がそういうと秋山はどこか納得した様子を見せる。

 

「こういうのは失礼かもしれないですが、確かに冷泉殿は何というか、父親みたいな感じがありますよね。」

「・・・よりによって父親か。そこは母親とかじゃないのか?」

「いえ、冷泉殿の口調も相まって母親というより完全に父親ですね。」

 

そう言われてしまうとどうしようもないな・・・。視線を逸らし、苦笑いを浮かべながら俺は口調を変えるか否かを考え始めた、がどうあっても口調を変えることはできないと即決した。

 

「麻子ー!!あなたはどうするのーっ!!」

 

向こうから沙織が自分を呼ぶ声がする。しかし、どうすると突然言われても何のことか検討もつかないため表情は疑問符を挙げたままだ。

 

「わ、忘れてました!!実はこのあと買い物に行くのですが、冷泉殿はどうするのかと聞きに来たんでした!!」

「そういうことか。私は別に構わない。行くなら行くとするさ。それとだがーー」

 

俺は秋山の方を向き、湯船を上がるついでにこう告げた。

 

「私のことは麻子呼びで構わない。その方が親しみが湧くだろ?」

 

俺がそういうと秋山は表情を輝かせた。本当に嬉しいのだな。表情を見るだけでそれが分かるレベルだ。

 

「はいっ!!よろしくお願いします!!麻子殿!!」

「殿呼びは抜けないのだな・・・。」

 

風呂で汗を流し、さっぱりした後は全員で買い物へと向かった。

そういえば、何を買うんだ?聞いていなかったな。

 

「そういえば、ここに来て何を買うんだ?」

「戦車に置くものを探してるんだよ。」

 

沙織に聞いたらそんな答えが返ってきた。戦車に置くもの・・・?双眼鏡とかそこら辺の競技で役に立ちそうなものか?

その割には芳香剤とかクッションとか家に置くものばかりまわっている気がするのだが・・・。

沙織は何か良さげなものが見つかると、これでお尻が痛くなくなるとか言っている。

 

「なぁ、西住。まさかとは思うが、沙織は戦車の内装をデコレーションするつもりか?」

「あ、あはは・・・。匂いとかがきついって・・・。」

 

俺が西住に耳打ちすると、西住は乾いた笑いを上げながら頷いた。

 

「・・・・まぁ、内装だけなら問題ないか・・・。」

 

俺と西住は共に苦い笑みを浮かべながら沙織の買い物に付き合っていた。

秋山も微妙な顔をしていたな。

 

次の日、私はバックを担ぎながらグランドへ向かっていた。

 

今日は初めての訓練だ。気を引き締めていかないとな。

そう思いながら戦車庫に向かうと、目を疑うようなものが飛び込んできた。

 

そこには金色にペイントされた38tがそこにあった。陽の光が反射して正直言って眩しい。

その周辺には満足気な生徒会メンバーがいた。俺は思わず杏に話しかけた。

 

「・・・・会長、これは?」

「見ての通りだ、戦車をペイントした。」

「・・・戦車は普通、迷彩色が基本じゃないのか?ほら、向こうで秋山が絶句しているぞ。」

 

俺が指差す先にはワナワナと震えている秋山の姿があった。

 

「そういう君たちのⅣ号も内装を変えているようだが?」

「私達のは外装には手をつけない約束だったからな。しかし、お前にしては珍しいな、金色なんて。いつもは大抵赤だっただろう?」

「先客がいたからな。向こうを見てみるといい。」

 

そう言われ、向けた視線の先には色鮮やかに染色された戦車達があった。

ピンク色に可愛く塗装されたM3、装甲にデカデカと『バレー部復活』の文字が描かれた八九式、そして、赤く染め上げられた装甲に4本ののぼり旗が上がっているⅢ突があった。

 

「・・・・・なんだこれは。」

「それに比べれば、ただ単純に金色にしただけの38tは軽いものだろう。」

「十分に問題だ!!隠密性が皆無じゃないか!!主に!!」

「そう堅苦しく考えるな、麻子。むしろ好きにさせた方が、変に緊張感を持たれるよりはマシだと思わないか?」

 

シャアの言葉に俺は言い淀んだ。まぁ、お前の言うことももっともか。

俺たちは強豪校でもなんでもない寄せ集め集団だ。右も左もわからないまま、全国大会優勝を目指さなければならないおそらく前代未聞の集団だろうな。

むしろこうした方がらしくはなるか。

 

「はぁ・・・わかったよ。」

 

渋々だが、俺も納得をしておくことにした。

 

「よし、これから訓練を開始する!!各員は自身の戦車に搭乗しろっ!!」

 

河島の号令とともに全員が各々の戦車に搭乗する。そんな中、杏だけ38tに乗らずに校舎へと戻っていく姿が見えた。

 

「会長?どこへ行くんだ?」

「私には私の仕事がある。桃には訓練の内容は伝えてあるから彼女の指示に従ってくれ。」

 

杏はそれだけ言うと足早に校舎へと戻っていった。

俺はそれ以上は何も言わずにⅣ号に乗り込んだ。

ああいう口調の時の杏、というかシャアはおそらく上の者としての仕事を行うからだろう。

 

訓練の内容は横、および縦一列での行進や的に向けての砲撃など基本的なものがほとんどであった。

しかし、やはり初心者ばかりなためか、横一列に並べなかったり、隊列を乱したりなど、一朝一夕では行かない課題ばかりが浮き彫りとなる。

砲撃も中々当たらないものがほとんどであったが、西住の指導で華は的に直撃させることができた。持ち前の集中力の高さが功を奏しているのだろう。

 

「よし!!今日はここまで!!」

 

桃の訓練終了の掛け声と共に、ゾロゾロと戦車庫へと戻って行く。

だが、俺は少し考え事をしていて、Ⅳ号を動かしていなかった。

 

「冷泉さん?どうかしました?」

「西住、それと皆。少し自主練に付き合ってもらっていいか?」

 

自主練と言われて、西住達は疑問符をあげるが、すぐに笑顔に変わる。

 

「ええ、いいですよ。少しくらいなら大丈夫です。でも何をするんです?」

 

俺は西住達の了承を聞届けると前を向き、操縦桿を握りしめる。

 

「・・・少し、コイツの限界が知りたくて、な!!」

 

一気にアクセルを吹かし、Ⅳ号の最高速まで速度跳ね上がる。

突然の加速に西住達から驚きの声があがるが、今回はお構いなしでやらせてもらう。

 

「舌を噛むかもしれないから気をつけろよ!!」

「そう言われても無r きゃあーーーっ!!!?」

 

沙織かが悲鳴をあげたのはおそらく俺が戦車でトップスピードのままドリフトしたからだろう。Ⅳ号のキャタピラが曲がるために土煙を上げまくる。

だが、思った以上に滑ってしまい、旋回に時間がかかってしまう。

 

「ちぃっ!!もう少し早く旋回してくれ!!」

 

思わず悪態をついてしまう。他にもジグザグに進んだり、悪路を無理やりトップスピードで走破した。

しかし、やはりというか無茶な動きをしたからか、はたまたⅣ号の経年劣化が激しかったのもあったのかーー

 

 

バツンッ!!

 

何かが切れる音がした。だが察しはついていたため、すぐさまⅣ号を停止させる。

 

「れ、冷泉さん・・・?どうかしましたか?」

 

砲手の座にいた華が俺が急に停止した理由を尋ねてくる。

理由は簡単だ。

 

「履帯が切れた。」

「り、履帯がですかぁ!?」

 

秋山が驚いた表情で外へ出て確認しにいった。

 

「やはりメンテナンスしたとはいえ、長期間放置された状態では厳しかったか・・・。」

「ほ、本当に切れてますぅ!?」

 

だろうな。ほかの乗員は気づいていなかったようだが、俺が操縦している中でも聞こえたんだ。

そういえばさっきから一番文句を言いそうな沙織が静かだな。

 

「沙織、先ほどからだんまりだがどうかしたーー」

 

そう思いながら沙織のいる通信席を見るとそこには顔面蒼白で口を手で塞いでいる沙織の姿があった。

 

「し、死ぬかと思った・・・。」

「・・・・すまない。手荒い操縦をしてしまったようだ。」

「沙織さん、大丈夫ですか?その、戻しそうですか?」

 

西住が心配そうに声をかけると沙織は手で制しながら大丈夫な様子をアピールする。一方で俺には抗議の視線を向けているが。

 

「そ、そこまではいってないから大丈夫。でも、麻子ー、さすがにやりすぎだよ。」

「・・・申し開きのしようもないな。」

 

俺は髪を掻きあげ、謝罪の意識を表す。

それを見た沙織は表情を緩ませる。

 

「まぁ、自主練に付き合うって言ったのは私たちだから私たちにも自己責任ってのがあるし・・・。でも、本当にびっくりしたんだからね!!そこら辺のジェットコースターより怖かったよ!!」

 

沙織に説教されていると、後ろから何かの気配を感じた。

気になった俺は思わず振り向いた。その瞬間。

 

「冷泉センパァーイ!!」

「ごふっ!?」

 

茶髪の弾丸が腹に直撃する。思わず悶えながらもその弾丸を受け止めた。

 

「き、君は・・・阪口、桂利奈、か?」

「わ、私の名前、もう覚えてくれたんですか!?」

 

そう言って、すごーい!!と言いながら無邪気に俺に抱きつく桂利奈に対して、俺は困惑するしかなかった。

 

最終章、見たいですか?(モモチャンズリポートのあとがき要参照)

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