ではほんへ、どぞー(´・ω・`)
数年前。
テミスの災害を覚えているだろうか。
あの忌まわしき事件を。
その際に、もう一人の守護輝士の卵が生まれた事は誰も知らないだろう。
これは、一人の少女の、憧れと恨事の物語である。
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走る。
ただひたすらに走る。
なんでこんな事になったのか、私にはわからない。
けれど、これだけはわかる。
ダーカーが、私たちを殺しに来たんだ。
こんな所で死ねない。
逃げなきゃ。
逃げなきゃ──────殺される。
そう思っていた矢先に、一匹のダーカーが立ち塞がる。
大きい。
アークスの人が言ってたっけ‥‥‥確かあれは"ダークラグネ"とかだったはず。
ダメだ、これじゃあ逃げられない。
────死ぬ?私が?
「いや、だ」
キチキチと牙を鳴らすダークラグネに恐れを抱き、うずくまってしまった。
「死にたく、ない───誰か、助けて───!」
一抹の希望にすがり、私は目をつむった。
だけど、何時まで経っても痛みが来ない。
ふと目を開くと、そこには─────。
「──無事のようだな。立てるか?」
「え、あ‥‥‥」
「心配するな、救援に来た。マトイ、奴を抑えてくれ」
「任せてブレイド。さぁ、早く逃げて!」
「は、はい‥‥‥!」
後に守護輝士と謳われる、英雄が立っていた。
紅く染まったボディにバイザーに隠されたツインアイ。
彼の名は‥‥‥ブレイド。
この時、私は彼に憧れを抱いた。
いつか彼のように、彼と同じように、戦えたら‥‥‥。
そう思っていた時には、既に入隊申請を終えていた。
それからは少しでも追いつきたくて、色々調べた。
あの人は抜剣を使っている。
ならば私も使おう。
あの人はブレイバーだ。
ならば私もブレイバーになろう。
そう考えて、気づけば彼を模倣していたと思う。
彼と同じくらい強くなりたかった。
それが、実を結んだのだろう。
いつかのハルコタン調査の際、私は彼に次ぐ実力者として称えられた。
───でも、私が求めているのはこれじゃない。
私は彼の二番目というレッテルを貼られてしまったのだ。
彼の模倣をしたがために、比べられた。
"ブレイドが出来ているのに何故出来ない"
"ただの偽物じゃないか、実力があるだけで"
‥‥‥悔しかった。
彼と同じくらい強くなりたかったはずなのに、今は彼と比べられて貶められている。
何より、二番目というレッテルが一番悔しかった。
それからだろうか。
私は貪欲に強くなろうとしたのは。
一番に、なろうとしたのは。
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「───は?私が、ですか?」
「ええ。今回の【双子】殲滅戦でブレイドとアーク、そしてもう一名と同行していただきます」
「だけどカスラさん、私が同行していいんですか?」
「ええ、問題ありません。貴女ほどの実力者ならそう判断されていますから」
「‥‥‥わかりました」
「どこか、腑に落ちない事でも?」
「‥‥‥いえ、何でもないです。失礼します」
そそくさと退室し、私は近くにあった壁を力任せに殴り付けた。
また、あの人と比べられる。
‥‥‥ふざけるな。
「ふざけんじゃないよ‥‥‥クソッ」
苛立ちを覚えながら、召集がかかった。
向かった先で、見覚えのある人物がいた。
───ブレイドだ。
「お前か。世話になる」
「まぁ、あまり期待しないでくださいね」
「ははは、何を謙遜している。その実力は誇ってもいいのだぞ?」
「そう、ですかね」
「そうだぜ。今回は頼りにしてるぜ、ヒーロー」
「‥‥‥まぁ、頑張ります」
「さてブレイド、戦術はどうするかね?」
「できれば各個撃破が望ましいが‥‥‥状況が状況だ、厳しいだろうな」
「では、確実に一つずつだな」
「ああ‥‥‥行くぞ」
そうして始まった殲滅戦。
うようよと【双子】が蔓延っていた。
始まって数分、数十分が経っただろうか。
ブレイドとアークと呼ばれた純白のキャストは次々と撃破しているが、もう一人の疲労が見て取れる。
限界が近い。
かくいう私も、正直限界が近かった。
そして、その時は訪れてしまった。
「ぐわっ!」
「ハンクさん!大丈夫!?」
「わ、悪い‥‥‥ドジっちまった‥‥‥」
「ブレイド!もう限界よ、撤退しないと!」
「‥‥‥いや、殲滅は続行する」
「なんで!負傷者がいるんだよ!?」
「考えてみろ。今俺たちが退けばその後はどうなる。【深遠なる闇】に一撃を与えることなくナベリウスが消えるんだぞ?」
「でも!」
「ブレイド、俺はいい‥‥‥行ってくれ」
「どうするね、このまま進むか?」
「進みましょう。今の俺たちにできることをするまでです」
「見捨てるの!?」
「いずれ救援が来る。それに今がチャンスだ」
「そうさな。【深遠なる闇】の反応が近い‥‥‥つまり、これを逃せばナベリウスは消えてしまう」
「でも、私は見捨てるなんて‥‥‥!」
「出来ない、か。勝手にしろ、来るも来ないもお前の判断だ。アークさん、行きましょう」
「承知した。悪く思わんでくれ、リュー」
そう言って彼らは先へ行ってしまった。
私は、やっぱり見捨てる事が出来ずそのまま残ることにした。
「嬢ちゃん、お前‥‥‥」
「大丈夫。絶対守るから」
「だけどよ」
「‥‥‥信じて」
「‥‥‥わかった。無理はすんなよ」
「わかってるよ、そんなの」
‥‥‥来た。
【双子】がまた、来た。
絶対に、守り通してみせる。
だけど、決定的な戦力差は埋められず、不利な戦いになっていた。
そして。
────パキンッ!
「──ッ!?折れ、た──!?」
「嬢ちゃん、前!」
「っは!」
ズン、と重い一撃が入る。
あまりにも衝撃が強く、軽々と吹っ飛ばされてしまった。
なんとか立ち上がるも、抜剣が折れてしまって使い物にならなくなっていた。
これじゃ、戦えない‥‥‥!
もう、ダメなの‥‥‥?
「ッラァ!!」
「ハンクさん!?」
「諦めんな嬢ちゃん!先に諦めねぇって言ったのは嬢ちゃんだろ!それ使え!」
「レイソード‥‥‥ハンクさん、ありがとうっ!!」
投げ込まれたレイソードを手に取る。
クラス適応外のためか、かなり重く感じる。
だが、そんな事は言ってられない。
何より、私を信じている人のために。
戦う。
守るために。
「絶対‥‥‥守るんだぁぁぁぁぁ!!」
それから数十分が経ったのだろう。
突然【双子】が形象崩壊を始めた。
それはつまり、【深遠なる闇】の撃退を意味していた。
「はーっ‥‥‥はーっ‥‥‥はーっ‥‥‥終わっ、た‥‥‥?」
「は、はは‥‥‥すげーよ嬢ちゃん‥‥‥」
「帰れる‥‥‥んだね、私たち‥‥‥」
そこから先は、直ぐ様メディカルセンターに担ぎ込まれたせいで覚えていない。
けれど、これでハッキリした。
私は、ブレイドのように非情になれない。
でも、それでもこんな私でも守ることは出来た。
それだけわかれば、もう何でも良かった。
それから少しして、因子浄化のためにコールドスリープする事になった。
それは彼も例外ではなかった。
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それから二年が経とうとしたある日。
私は叩き起こされた。
シエラさんのおかげで。
二年の月日でかなり変わったようだった。
あの人にも会ったけど‥‥‥やっぱり素直になれなかった。
わかってはいる。
でも、以前の私がそうさせてくれない。
‥‥‥歯がゆいなぁ。
そうして裏方で任務を遂行していたある日の事。
どうやら新しいクラスの話が持ち上がっていたみたいだ。
そこで、私もクラス創設のために協力することになった。
そのクラスの名は────"ヒーロー"。
私が、目指したかったものだった。
でも、私は忘れてはいない。
今の私があるのは、彼が私を助けてくれたからだ。
だから、今度は私が助けになる番。
いつか、隣に立って戦いたいな‥‥‥。
「先輩!準備できましたよ!」
「ん、ありがとね。じゃあ行こっか、スっちゃん」
「はい!気合い入れて頑張りましょう!」
「───もっと、強くならなきゃね」
「先輩?どうしたんですか?」
「あ、ううん何でもないよ!じゃ、行こう!」
「はい!」
待っててブレイド。
私は必ずアンタの隣に立って、助けになってみせる。
その日まで、待っててくれるかな?
Episode Ryu...END.
という訳でリュー編でした。
これを見ているであろうフレンドに捧ぐ‥‥‥!
気に入ってくれるといいなぁ‥‥‥。
では、また次回にて。
その時はまたよろしくお願いします(´・ω・`)
ではでは(´・ω・`)ノシ
(おまけ)
リューってこんな子(フレンド)。
同じチームに入ってきた時一番衝撃を受けたね。
めちゃ可愛いんですもの。
そのキャラクリを見習いたいですぞ‥‥‥!
コーデの合わせ方とかもホントすこ。
とりあえず一枚PON☆と置いときます
(´・ω・`)
【挿絵表示】