私の名はアーク。
今から話すのは、アークスが発足する前の話だ。
貴公らは知っているだろうか。
かのダークファルス【巨駆】が封印された時の事を。
あれは封印されて間もない頃だった。
私は当時レギアス、マリア、そしてセラと共に【巨駆】封印地点の探索を行っていた。
当時は封印したばかりで若干ながら不安材料が残っていた。
それは、封印されてもなお分身体で活動を続ける【巨駆】の存在。
それの鎮圧が我々の任務だった。
この時誰よりも強く、誇りがあったレギアスやマリアが同行していたのが本当に心強かった。
だがまさか、私にとってこれからも後悔するような出来事が起こることなぞ、当時の私は考えていなかった。
「なんだい、またこの面子かい」
「仕方なかろうて、マリア。我々は実力があるのだから抜擢されても文句は言えぬよ」
「そりゃあそうだろうけども‥‥‥それで?アンタらも呼ばれた口かい?」
「ええ、そうなるわ。またよろしくねマリア」
「些か力不足やもしれんがよろしく頼む」
「アーク、お前が力不足と言うのなら私はどうなる」
「君は力不足ではないだろう、レギアス」
「むぅ‥‥‥」
「さぁ、行きましょうか。とにもかくにも原生種たちが脅かされるのは看過できないから」
「それもそうさな。では、行くとするか」
他愛もない会話を交わしながら、観測地点まで向かう。
この時には誰もが予想も出来なかった。
あの惨劇が起こるとは、誰も‥‥‥。
「‥‥‥この辺りか?」
「そうだね‥‥‥反応は比較的穏やかさね。これなら中途半端な覚醒はないんじゃないのかい?」
「もうマリアったら‥‥‥油断は禁物よ?」
「わーかってるよ、セラ。まったくアンタはちょっとは気楽に構えたらどうなんだい?」
「それはそうだけど‥‥‥万が一ってこともあるでしょ?」
「そりゃそうだけども‥‥‥」
「まあまあ二人とも、この任務が終われば少しの間休憩できるのだから良いのではないか?」
「お、アークあんた話がわかるじゃないか」
「ちょっと、アークまで‥‥‥まぁいいわ。確かにこの辺りならエネミーの反応もないし休憩してもよさそうね」
そう言ってセラはいつの間にか空間収納していたバスケットを呼び出しており、休憩するための準備を進める。
とはいえ任務中なので我々男性陣は引き続き警戒にあたる。
‥‥‥その時だった。
「──アークよ」
「‥‥‥ああ」
「今の気配、お主にもわかったか?」
「うむ、言われるまでもない‥‥‥これは、"出て”きおったな」
「願わくば相対したくなかったが‥‥‥致し方あるまい。アーク、マリアとセラを呼んできてくれ」
「応。警戒は任せたぞレギアス」
「心得た」
そうして私は少しの間持ち場をレギアスに任せ、二人を呼びに向かう。
彼女らの場所まで向かうとすでにマリアは察していたのか、目付きを変えてヴィタパルチザンを右手に持っていた。
セラもなんとなく察していたのか、飛翔剣を背中に背負っていた。
「アンタがその目であたしらを呼びに来たってことは‥‥‥"出た"んだね?」
「ああ、そう思って間違いない」
「なるほどね。で、何処だい?」
「レギアス曰くそこまで遠い場所ではないそうだ。比較的近い位置に半顕現している状態なのだろう」
「かーっ‥‥‥一休みしようとしたところでこれだよまったく‥‥‥」
悪態をつくマリアを余所に、レギアスの元まで戻る。
戻ったところで、現時点での報告をもらう。
「やはり反応は微弱だが、確実に移動しているぞ。間違いなく、完全な顕現を狙った行動と見える」
「なら、やるこたぁ一つって訳だ。いいねぇ、燃えてくるじゃないの」
「とか言って、ケガしないでねマリア?」
「わかってるよ。それこそレギアスやアークがいることだし、こいつらに頼らせてもらうさ」
「ハハハ‥‥‥お手柔らかに頼む」
「お手柔らかにとか言ってられなくなるよ、今にね」
「──そう、だな」
私は小さく呟き、反応のある場所まで出向いたのだった。
───────────────────────
「‥‥‥アーク、見える?」
「ああ、見えているぞ」
「レギアス、マリア、聞こえる?対象確認したわ」
「此方でも確認した。以前として封印地点に向かっているようだな」
「まったく、迷惑この上ないね。とっととハッ倒すよ」
「承知した。アーク、セラ、此方が先行する。援護は頼むぞ」
「了解だ」
「わかったわ。無理しないでね?」
「ハッ、私らがやられるとでも思ってんのかい?」
「まさか。でも気を付けることには変わりはないでしょ?」
「わかってるよ。じゃあ、先行するよ」
その言葉を皮切りに、レギアスとマリアは半顕現状態の【巨駆】に向かっていく。
その瞬間、気配を察知したのか【巨駆】は迎撃状態に移行する。
《貴様らは‥‥‥あの時の者共かぁぁ!!》
「気づかれたッ!」
「問題ない、突貫するぞ!!」
「結局いつも通りかい!仕方ないねぇ!」
「応えろ、世果ェ!」
「ラビュリス、行くよ!」
《ふはは、来ぉい!》
その瞬間から、熾烈な戦闘が開始された。
レギアスが抜刀した世果を差し向けて斬りかかるが、【巨駆】も負けじと背中に背負っていた大剣を抜き、応戦する。
隙を見たマリアがラビュリスで叩きつけようとするが翔んでかわされてしまう。
舌打ちしつつも次の一手を即座に叩き込むマリア。
「─ッ、浅いか‥‥‥!」
《どうした、そんなものかフォトナーの操り人形よ!》
「クソァ、あたしらはもう操り人形じゃあないんだよっ!」
「応とも。我らは”アークス”、星を護りし者だ」
《アークス‥‥‥ふふ、ふはははは!なるほど、その名、覚えたぞ!来いアークス、貴様らの闘争を見せてみよ!》
「ハッ、上等!レギアス、合わせな!」
「了解だ!」
次の瞬間タイミングをコンマ単位でずらし、連続攻撃を浴びせる。
しかしそれでも相手はダークファルス。
やはり簡単に次々と回避されていく。
だが、ここで遅れてアークが大剣で割って入る。
割って入ったタイミングは完璧だったのか、強烈な一撃を入れることができたようだ。
《むぉぉ、おのれぇ‥‥‥!》
「ふむ、間に合ったようだな」
「ハハ、ドンピシャじゃないか!よくやった!」
「感謝する、アークよ。助かった」
「なに、お互い様と言うやつだ。それに‥‥‥」
さらに遅れて飛翔剣で牽制し、セラが降り立つ。
「二人とも、大丈夫?ケガはない?」
「今んところはね。ま、奴さんが相変わらずヤル気満々なんだけどね」
「それはそうでしょうね。”レスタ”」
セラが呟くと、暖かな光にレギアスとマリアが包まれ、傷が癒えていく。
これは”レスタ”と呼ばれる光テクニック。
対象者の傷をある程度まで癒すことができる汎用型のテクニックなのだ。
「さて、どうすんのよ?」
「当然、奴を倒し鎮める。それが我々の任務だからな」
「そりゃそうか‥‥‥なら、いっちょやるかぁ!」
「では、散開して撃破を狙うぞ!」
「了解!」
四方に散開し、次々と別ベクトルで攻撃を繰り返す。
だがしかし、いっこうに有効打を与えられずに数分が経過した‥‥‥その時だった。
つい先程まで攻撃をいなし続けていた【巨駆】が突如として猛烈な反撃を繰り出してきたのだった。
流石にこちらも攻撃をかわさざるを得ない状況になり、一瞬だけ連擊の合間に綻びができていたことに私は気づけなかった。
そして──────。
「クソッ、前々から思ってはいたけどタフすぎやしないかい!?」
「同感だ‥‥‥!」
《どうした、そんなものか"アークス"よ!ならば此方から行くぞォ!》
「マズッ──!!」
その瞬間、【巨駆】は瞬時に間合いを詰めて肉薄し、いとも簡単にマリアの体を吹き飛ばし、さらにはレギアスをも地に伏せて見せたのだ。
そして、私がその光景を見た直後にも【巨駆】は既に至近距離にまで私に接近していた。
その時、とてつもない衝撃を受けて吹き飛ばされたのは僅か数秒後。
軽々と私の体は宙を舞い、地面に叩きつけられてしまう。
叩きつけられた瞬間、全身のモーターが一時的に痺れ、わずかな間だが身動きができなくなってしまった。
もちろんその隙をヤツが見逃すわけもなく、更なる追撃を仕掛けてくる。
私は傷ついた身体に鞭打ち、なんとか体を起き上がらせて回避する。
回避したのはいいが、やはり蓄積されたダメージがあったのか力なく膝をついてしまった。
‥‥‥今度こそやられる。
そう思ったその時、目の前に"何か"がその追撃を遮ったのだ。
───だが、その行為は私にとっては衝撃的な出来事だった。
「アーク‥‥‥無、事‥‥‥?」
「セ、セラッ!?何故私を庇った!?」
「だって‥‥‥あなたがいなくなったら‥‥‥アタッカーがいなくなっちゃう‥‥‥」
「だが‥‥‥!!」
「いいの‥‥‥お願い、アー、ク‥‥‥あれを、鎮めて‥‥‥!──”レスタ”‥‥‥」
「─!」
彼女は私にそう言い残し、最後の力を振り絞ってテクニックを使った。
その直後、彼女はゆっくりと目を伏せ、気を失ってしまった。
目の前の景色に呆気に取られていた私に、【巨駆】の声が響く。
《ふはは、良い仲間ではないか‥‥‥だが、そこまでのようだな、アークスよ‥‥‥終わらせてやろう─!》
「‥‥‥セラ、私が不甲斐ないばかりに‥‥‥その意思、しかと受け取った‥‥‥!終わるのは、貴様だ【巨駆】ァァァッ!!」
《──何ィッ‥‥‥!!》
私はその身に残ったフォトンを全て手持ちの大剣”試作型ユニオンソード”に込め、高密度のフォトンの刃を形成する。
形成したその刃の切っ先を【巨駆】に向け、一言小さく呟いた後に腰を低く構えて肉薄する。
《何と‥‥‥!!》
「言ったはずだ、終わるのは貴様だとな」
《フッ‥‥‥見事だアークス───!!》
「──ゼヤァァッ!!」
ドシュウ、と深く、強く【巨駆】の胸部に大剣を突き立てる。
程なくして、声高らかに笑いながら【巨駆】の半顕現状態のヒューナル体は消えていった。
その直後私もその場で倒れ伏してしまい、意識が朦朧としだす。
遠くでレギアスに肩を借りながら歩み寄ってくるマリアが何かを叫んでいるが、聞こえない。
そして、その時ばかりは私は意識を手放してしまった。
────────────────────
それから、私が目を覚ましたのはあの日から実に二日が経とうとしていたときだった。
やや見覚えのある天井‥‥‥メディカルルームだという事に気づくのに然程時間はかからなかった。
私が覚醒したのを見たメディックスタッフが気分はどうかと問うてきたが私自身の事はその時はどうでもよかった。
私は、彼女の安否がわかればそれでよかった。
「‥‥‥彼女は、セラは‥‥‥無事かね‥‥‥?」
「えっと、それは‥‥‥」
スタッフは何処か歯切れの悪い言い方でうまく答えられないような様子だった。
そんな時、聞きなれた声が聞こえた。
「生きてるよ、一応ね」
「マリア‥‥‥無事だったのだな‥‥‥」
「それでも重傷一歩手前だったけどね。今はこの通りどこも悪くないよ」
「だがマリア、一応というのは‥‥‥」
「言うより見た方が早いだろうね。ちょっとコイツ借りるよお嬢ちゃん」
「えっ、ちょっと待ってください!まだ退院できるかわからないんですよぉ!?それに今覚醒したばかりでs」
「大丈夫、コイツはそこまで柔じゃないよ。んじゃ、借りるからね。アーク、着いてきな」
「わかった‥‥‥」
「え、えぇ!?ちょ、ちょっとぉ!まだバイタルすら測ってないんですって‥‥‥あぁんもう!!」
狼狽えるスタッフを尻目に、私はそのまま言われるがまま彼女に着いていった。
着いていった先にあったのは、集中治療室のような場所。
そのまま中へと入室し、その先に彼女はいた。
‥‥‥大小様々な管に繋がれた、彼女が。
「こ、これは‥‥‥マリア、どういうことなのだ!?」
「言っただろ、一応生きてるって。だけど”ああ”やっておかないと死んじまうのさ」
「これでは‥‥‥生きてるとはとても‥‥‥!!」
「だろうさね。だから今起きた寝坊助のアンタに決断させにここに連れてきたんだよ」
「‥‥‥決断?」
「そっ。このままずっと生かし続けたとしてもいずれは死ぬ。だから今この時に楽にさせるか、あるいは‥‥‥」
”キャストになるしか、ないね”とマリアは何の躊躇いもなく言い切った。
「なっ‥‥‥キャストになるにせよ彼女の意思に反してしまうのではないか!?」
「仕方ないでしょ一向に目ェ覚まさないんだから。でなきゃアタシもここにアンタを連れてこないって」
「だが‥‥‥!」
「決定権はレギアスもアタシもアンタに委ねるつもりだよ。キツいかもしれないけど、決めてくれるかい?」
「‥‥‥少し、時間をくれまいか」
「──わかった。だけど早めに頼むよ?いつ状態が変わるか分かったもんじゃないからさ」
「‥‥‥うむ」
実のところ、私は後悔していた。
あの日あの時、私がああならなければ、彼女は生死をさ迷うことなどなかったはずだと、マリアから彼女の容態を聞かされた瞬間からぐるぐると考えていた。
ましてや彼女を生かすためにキャストにしたとして、余計に彼女を悲しませるのではないかと思考を巡らせていた。
それならばいっそ───。
‥‥‥そして、数時間にわたって考え、ロビーのベンチに腰かけていた時だった。
「‥‥‥マリアか」
「その様子だと、まだ決まってないみたいだね。何を迷ってんだい?」
「‥‥‥私は、怖いのだ」
「怖い?何が?」
「もし、もしだ。彼女をキャストにしたとして、彼女が生き延びたとしよう。だが、たったそれだけの決断で彼女を悲しませるのではないかと思うと私は‥‥‥」
最後まで言おうとしたその時。
不意に左頬に激痛が走る。
‥‥‥どうやらマリアが私を殴ったようだ。
そして、マリアは言葉を続ける。
「だぁーっ!!アンタそれでも男かい!?さっきから聞いてりゃウジウジウダウダとぉ!前々から思ってたけどアンタセラに惚れ込んでんだろう!?」
「な、何故それを今‥‥‥」
「いいから聞きな!」
「ぬぅ‥‥‥」
「惚れ込んだんなら男として覚悟決めて、"俺がお前を支えてやる"って言ってやんな!!セラはそれをきっと待ってる!!」
「だ、だが私が言ったところで迷惑では‥‥‥」
「アンタが惚れ込んだ女なんだから大丈夫に決まってんだろう!?」
「む、むぅ‥‥‥」
「‥‥‥はぁ、言いたいこと言えてスッキリしたよ。で、アンタはそれでもなお手をこまねいているつもりかい?」
「‥‥‥そう、だな‥‥‥すまなかった、マリア」
「謝罪はいらないっての。行くんだろ?」
「ああ」
「じゃあ早いとこ行ってやんな。まったく世話の焼ける野郎だこと‥‥‥」
「‥‥‥ありがとう」
「──煽てても何も出ないよ。ほら、行った行った」
そうして私は、その決断を下した──。
──────────────────────
時は流れて現在。
私は、自室の一角である写真を眺めていた。
そんなとき、不意に声がかかる。
「あなた、ここにいたのね。何を見ていたの?」
「‥‥‥なに、昔の写真だ。そこまで面白いものじゃ──」
「あら、この写真。まだ持っていてくれたの?」
「ぬ、ぬぅ‥‥‥」
「懐かしいわ‥‥‥私がキャストになって戸惑っていたときにあなたが”これからは私がずっとお前を支えてやる”って言ってくれたのよね。今思えばちょっと不格好なプロポーズな気がするけど」
「セラ‥‥‥私はだな‥‥‥」
「いいんです、わかってるから。あなたは不器用だもの。でも、そこが可愛いじゃない」
「むぅ‥‥‥」
そう言ってセラは私を見据え、私に問うた。
「ねぇ、あなた」
「‥‥‥何だ?」
「これからも、私を支えてくれますか‥‥‥?」
「──勿論だ。お互いに支え合いながら行こう、セラ」
「そうね‥‥‥今後とも、末永くよろしくおねがいしますね、あなた」
「うむ、セラもな」
「ええ、わかってるわ」
彼女はそう言って、私に儚くも華やかな笑顔を見せてくれた──。
きっとこれからも、私は彼女と支え合いながら前へ進む。
それはきっと、若き戦士たちへの道標になると願いながら。
さぁ行こう、セラ。
私たちはまだ休んでる場合ではなさそうなのでな。
ゆっくりと、歩みを進めよう。
何かに繋がる、その時まで。
Episode Ark....END.
という訳でアーク編でした。
何気に六千文字‥‥‥初めてかもしれない()
というかここまで書くのにとんでもないぐらい時間をかけすぎてることに気づいてしまった‥‥‥。
次回はなるべく早めに上げたいなぁ‥‥‥(叶わぬ思い)
あそうだ、次回はカレン編をあげる予定です。
場合によっては予定変更して別のキャラになるかも?
では、次回の更新でお会いしましょう。
ではでは(’・ω・‘)ノシ
(おまけ)
アークってこんなキャスト。
Hrが来るっていう情報が回ってからずっと構想を練っていただけあってしっかりできてる、と思う。
正直なところ爺様キャラを作りたかったってのもある()
Hr実装当初はヤバイなんてもんじゃなかった(Hr多すぎて既存クラス全然いないとか)
でもあれはあれでいい思い出ですね、うん。
【挿絵表示】