豪華絢爛たる緑谷出久のヒーローアカデミア   作:両生金魚

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三つ巴!障害物競走!

 結局、あの後は二人の息がとても合って(発目さんって言うみたい)、僕の身体が頑丈だからって色々なアイテムの実験台にされちゃった……。危険なものも一杯混ざってたけど、メリッサさんの「発明は独りよがりなものじゃないの! ヒーローが使ってこそなんだよ!」ってお説教で、メリッサさんと共同で安全性を確保しながらの実験になったから何とか助かったかな?

 でも、二人の息が合いすぎて、案内はここで終わってすっかり夜になってしまった。

 

「おいお前ら! 明日は体育祭なんだしいい加減に今日は帰れ!」とパワーローダーのお言葉で3人揃って部屋から叩き出されてしまった。

 

「もう、ケチですね!」「あ、あはははは……もうこんな時間……」

 

 発目さんは不満そうだけど、メリッサさんは申し訳なさそうにパワーローダーに何度も頭を下げてた。……もちろん僕も一緒。

 

「メリッサさんのお陰でベイビーたちがもっともっと可愛くなりました!これで、明日の体育祭でもっと目立てそうです!」

 

「あなたも体育祭に出るの?」

 

「はい! 出て、沢山目立って大企業に目をつけてもらうつもりです!」

 

「そうなんだ、頑張ってね!」

 

 二人はそう盛り上がってるけど、発目さんもライバルだと思うと、自然と気が引き締まる。ライバル手伝っちゃったかな?

 

「ふふふ、緑谷さん、私も明日はあなたに負けずに目立ってみせますよ!」「うん、望むところさ!」

 

 クラスメイトに他のクラス、他の科……誰が来ても、負けるもんか!

 

 

 

 そして、雄英体育祭本番当日、外では派手に花火が打ち上がっていて、外来のマスコミや一般客の人たちもたくさん来ている。外には屋台が沢山有るし、初めて体育祭の現場にいるけど本当にお祭りみたいだ。それに、僕らをスカウトしに来たり警備しに来たプロヒーローも沢山! うわ、シンリンカムイにMt.レディも居る!

 

「出久君の目が輝いている……」 「流石はヒーローオタク」 「緑谷君、見るのもいいがそろそろ控室に行かねば!」 「あああ、ちょっとまって! せめてサインを!」

 

 僕の願いも虚しく、ズルズルと控室まで連れて行かれちゃった……みんな、酷いや……

 

 控室の中では、みんながそれぞれの方法で精神統一をしている。僕も、心を沈めて――と。あれ、轟君がこっちに?

 

「……お前、凄い奴だよな、緑谷。オールマイトに目ぇかけられてるのもよく分かる」

 

「え、う、うん……」

 

「だからこそ、お前には勝つ」

 

「へぇ……」 「……」 「意外と熱いところが……」

 

 急な轟君からの宣戦布告。でも、僕だって負けるつもりはない。

 

「僕だって負けるつもりはないよ。本気でトップを獲りに行く!」

 

「ああ。俺も、本気で行く」

 

 轟君がライバル宣言してくるのは意外だったな……夜嵐君なんて特に驚いてみてるし。あ、負けじと夜嵐君もこっちへ来た。

 

「緑谷! 俺も、轟にも、お前にも負けたくない! 最初に出会った時も、模擬戦の時も引き分けだったけど、今度は俺が勝つ!」

 

「いや、僕が勝つ!」

 

 夜嵐君からのライバル宣言。ぐっと拳を合わせ、負けないように見返す! とっても熱い!

 

「おおおお……」「めっちゃ熱い……」「男子のこういうの、かっこいい……」

 

 今日は、みんなが仲の良いクラスメイトじゃない、ライバルだ!

 

 

 

「1年ステージ! 生徒の入場だ!!」

 

 ドームの各入り口から、それぞれのクラスの生徒が入場する。だが、その中で本当に注目されているのは一握り。

 

『雄英体育祭!! ヒーローの卵たちがわれこそはとシノギを削る年に一度の大バトル!! どうせてめーらアレだろこいつらだろ!!? ヴィランの襲撃を受けたにもかかわらず鋼の精神で乗り越えた軌跡の新星!!! ヒーロー科!! 1年!!! A組だろぉぉ!!?』

 

 1-Aが出てくると、視線と歓声が一斉に集中する。B・C・D・E・F・G・H組はもはや完全な引き立て役だ。その事に不満を述べる者もいれば……それでも上を見上げるものも居る。

 

 まず壇上に立つのはミッドナイトだ。相も変わらず過激な衣装と道具を持ち、目立っている。

 

「選手宣誓!! 1-A 緑谷出久!!」

 

 選手宣誓は、一般入試1位の緑谷だ。ドーム中の視線が集中するが、一切の気後れすること無く、独り前へ出る。一呼吸した後、大きく息を吸い込み、大声で叫ぶ。

 

「選手宣誓! 僕は、ヒーロー科の入試で1位を獲りました。今日も同じです。この雄英体育祭1年の部は、僕が1位を獲ります!」

 

「なっ!?」 「ふざけんな!?」 「生意気言うんじゃねー!」

 

 当然出てくるブーイング。だが、それにもひるむこと無く振り返ると、挑発するような顔と声でこうさけぶ。

 

「なら、遠慮なくかかってこい! 僕は、一切逃げるつもりも引くつもりもない! 全力で、1位を獲りに行く!」

 

「うおおおおおっ!」 「上等だぁ!」 「熱いぜ緑谷ぁ! 負けねぇぞ!」「うるせぇ、1位は俺が獲る!」 「っ……!」

 

「(ああああああっ、青春いいわぁ……!)」ゾクゾクッ

 

 だが、ブーイングだけでない。緑谷に触発されて、熱くなるものも多数。そんな彼らに不敵に笑い返すと、早速最初の種目の説明が始まる。

 

「さあ、種目はこれ! 障害物競走よ! 計11クラスでの総当たり、4Kmの外周を巡るレース。わが校は自由さがウリ文句! ウフフフ……コースさえ守れば()()()()()()構わないわ!」

 

 そう言うと、位置につかせるミッドナイト。だが、既に勝負は始まっている。皆が少しでも有利な位置につこうと、押し合いへし合いだ。

 

 そして、そんな中決意を新たにする緑谷。

 

「君が来たってことを、世の中に知らしめて欲しい!!」

 

 体育祭前、オールマイトの言った言葉が頭をよぎる。

 

「(とりあえず宣誓で目立った。でも、実力が伴わなきゃただの口だけ野郎になる)」

 

 シューズを確認し、最終チェック。見据えるのは、はるか向こう。

 

 

『3!2!1!スターーーーーーート!』

 

 スタート地点から入口が狭く、既に押し合いへし合い大混戦だ。だが、そこをさっさと抜けていくものが居る。

 

「まずは最初の篩……」「うおおおおおおおおっ!」 「35%!フルカウル!」

 

 先頭を走る轟は、氷結で後続を凍らせ、夜嵐はその個性で頭上を飛んでいき、そして緑谷は選手たちの頭上を、左右に壁を蹴り飛び抜けていった。

 

『うおおおおおおおっと! いきなりA組の3人が飛び出たぁ! 3人共それぞれの個性を使って一気に突っ走っていく!』

 

 実況のプレゼント・マイクも最初からクライマックスだ。隣のイレイザーヘッドは相変わらずテンション低いが淡々と実況をしている。そして最初の妨害ゾーン、入試の時の0ポイントヴィランの群れが出てくる。

 

「お先に失礼するッス!」

 

 そこで突出したのはやはり夜嵐だ。空を飛べれば、地べたの敵はほぼ無視できるが、それを想定していたのか雄英も甘くない。

 

「ヒャッハー!」「ミサイルだぜー!」 

「うおおおおおっ!? そんなの有りかよっ!?」

 

「有りなんだなぁ、これが!」 

 

 プレゼントマイクの有り宣言により、ツッコミが入る。どうやら音声もバッチリ伝わっているようだ。

 

「かえって上は危険か……なら!」

 

 上は危険と見て、地面を走りつつ衝撃波でヴィランを吹き飛ばす緑谷。だが、もちろん黙ってみてるだけではない。

 

「先へは行かせねぇぞ!」「っ!?」

 

 高速広範囲の氷結が、緑谷の行く手を阻み、またヴィランの体勢を崩させ、緑谷の上に倒れさせる。

 

「うわわっ!? 40%スマッシュ! これ、僕じゃなかったら死んでるよ!?」

 

「他の奴にやるかよ!」

 

 地べたで二人がトップ争いをしている。だが、もちろん夜嵐もただ上空で迎撃されるだけではない。

 

「漁夫の利だぜええっ!」

 

 轟と緑谷が争っている横を、夜嵐が風で加速しながら駆け抜けていく。やはり、個性だけより足も使って加速したほうが速いようだ。

 

「ああっ!?」 「てめぇ!?」

 

 それにより、二人も一時争いを止め、夜嵐をおう。トップは完全に三つ巴だ。

 

『1-A、3人の三つ巴だぁ! 妨害用のヴィランをものともしねえ!』

 

『うちのクラスでも飛びぬけて優秀な3人だな』

 

 3人の戦闘により、結果的に後続の道を開くことになっているが、もう後続にかまっている余裕はない。ライバルは、横の二人だ。

 

『さあてあっさり突破された第1関門だが、お次はどうだ!? 第2関門、ザ・フォーール!』

 

 奈落と石柱と縄。大がかりな綱渡りだが、これもまた3人の障害になりはしない。

轟は縄を起点に道を作り、石柱の間が狭いところは直接道をかけ、夜嵐は個性を利用した幅跳びで加速しながら渡り、そして緑谷は……

 

「35%! フルカウル!」

 

 縄など関係なく、ただ石柱の間をジャンプして駆け抜けていく。

 

『ああ~っと! 障害がもう障害になってないーー! どうなってんだこの3人!?』

 

『逆に道ができたな。トップ争いもいいが、フィールドの変化による下位争いも見ものだぞ』

 

 後続では、氷の橋で作られた一本道を使い、熾烈な闘いが行われている。だが、やはり注目を集めるのは前だ。

 

『さあてあっさり突破されたが次は最終関門! 一面地雷原!!! 怒りのアフガンだ!!』

 

『この学校のネーミングセンスどうなってるんだ』

 

 

「っ! 手加減なんて!」 「している!」 「余裕がない!」

 

 轟は氷を出して変わらず安全地帯を作り、夜嵐は低空飛行で浮力を稼ぐ。そして緑谷は……

 

「小細工じゃ勝てない!なら! 40%……スマッシュ!」

 

『うおおおおおおおおっ! ここで緑谷、パンチ一発で土を吹き飛ばして地雷を全部露出させたぁ!』

 

『もう障害物がほとんど意味無くなったぞ』

 

「二人共、先に行かせてもらう!」

 

 地面が安定しているなら、身体能力は緑谷の独壇場だ。地雷のない地面を選び、二人よりも圧倒的に速いスピードで追い抜かす。

 

「畜生!」 「緑谷ぁ!」

 

 二人の必死の妨害も、その俊足には届かない。

 

『イレイザーヘッドおまえのクラスすげぇな!! どういう教育してんだ!』

 

『俺は何もしてねえよ。奴らが勝手に初日から火を付けまくった結果だ』

 

 地雷原を超え、残りのストレートを駆け出す。もはや独壇場だ。

 

『さぁ、トップはなんと! 選手宣誓の宣言通り! 今一番にスタジアムに帰ってきたのは……緑谷出久だああああああああっ!!!」

 

 今、独走してゴールイン! 続いて、夜嵐、轟がゴールに辿り着く。そしてそれは、緑谷が一人、皆の注目を独占することを意味する。

 

「あの子って……確か1年前の…!」

 

かつて出会ったヒーローが

 

「やった!やったね出久!」

 

家で応援している母が

 

「……」ガリッ

 

悪意を貯め込むヴィランが。各所各様に、緑谷への反応を見せる。

 

 そして、緑谷は一番見せたい相手を貴賓席より探しだし、目を合わせる。そこには、デヴィット博士とメリッサと、オールマイトだ。目を合わせると、ガッツポーズ。そしてそれにサムズアップで返すオールマイト。

 

「いやはや、トシ、凄いね彼は」

 

「うん、イズク君凄い!」

 

「ああ、私の……自慢の弟子だ!」

 

 だが、1位とは言え、まだ第1関門。体育祭は、まだまだこれからなのだ。独り悔しがる轟。そして

 

「緑谷ぁ!」「夜嵐君!」

 

「今回は俺の負けだ! だが、勝負はここからだ!次の種目じゃ、俺が勝つ!」

 

「ううん、負けないから!」

 

 緑谷に、まだまだ勝負が終わってないと闘志を燃やす夜嵐。

 

「(うぁああああああああっ! この子達凄いいいいいいいいいいいっ!)」

 

 そしてゴールを果たした者たちは、後続の個性をスタジアムのモニターで油断なく見据えるのだった。

 

 




やっぱりこの3人が応用力含めてダントツですねえ……。しかし、執筆欲が凄くて、今日中に体育祭全部書ききりたい気分ですw

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