第二種目終了後、ご飯を食べに行こうとしたら轟君に呼び出された。いつにも増して、迫力と威圧感が有る。
「なァ……おまえ、ひょっとしてオールマイトの隠し子か何かか?」
「……へ?」
な……なるほど……そうなるのか……!
「と、とりあえずオールマイトと親子じゃないし! そんな関係じゃないし!」
「……でも、たしかに感じる……。おまえと、オールマイトの『何か』を。俺の親父はエンデヴァーだ。知ってるだろ」
「!」
「万年No.2のヒーローだ。お前がNo.1ヒーローの何かを持ってるなら俺は……なおさら勝たなきゃいけねぇ」
それから話されたのは、轟君の過去。エンデヴァーの過程での秘密、個性婚問題……。そして轟君の過ごしてきた日々。僕とも違う、壮絶な過去。だけど、それでも……。
「僕は……ずっと助けられてきた。さっきだってそうだ……僕は、誰かに助けられてここにいる」
そう。母さんやオールマイト、クラスメイトの方々にメリッサさんや発目さん。それに先生たち……沢山の人の助けが有って、今の僕を形作っている。
「だからこそ、君に勝ちたい。そして、オールマイトも超えて更に先に。No.1になりたい! さっき受けた宣戦布告、改めて、僕からも……僕も君に勝つ! だから……"全力"で、かかってこい!」
「っ…………!」
轟君の顔が歪む。まだ、左を使わないつもりか。でも、それなら……負ける気がしない! 本戦でもし当たるなら、轟君は果たして左を使うだろうか? そんな事を思いつつ、午後のためにもしっかりご飯を食べなきゃ。
食堂に行くと、案の定すっかり混んでいた。
「おう、おせーぞ緑谷! どうしたんだ?」
「ん、ちょっと用事があってね」
峰田君が見つけてくれて手を振ってくれた。他のみんなはもう自分の分も受け取っているし、僕も並ばないと。今日はゲン担ぎにカツ丼を食べよう。
「おっ、アメリカのチアリーダーじゃん!」
「おおおすげぇ! 外国産は一味違うぜ!」
ランチラッシュのご飯を食べに来たチアリーダーに、上鳴君と峰田君が特に強く反応する。他のみんなも大なり小なり興味津々だし。それに、確かに色々と大きい……。でも、ご飯が楽しみなのはアメリカでも同じようだ。ワイワイと、楽しそうに僕の後ろに並び始めた。もちろん会話は英語で、一応それなりには分かる。
「あっ、イズク君! ここに居たのね!」
と、その中に知っている顔と声を見つけた。まさかの、メリッサさんだ!?
「えっ、メリッサさん、その格好は!?」
遠目に眺めるんじゃなくて、知ってる人がこの格好をしているとちょっと照れてまっすぐ見れなくなっちゃう!
「? どうしたの? この格好、似合ってな「そ、そそそそそそんな事は無いです!」 そう、良かった」
にっこり微笑んでくれるけど、メリッサさんはただでさえ発育が良いのに魅力的な格好をしていて破壊力が凄い!? ぼ、僕には直視するのが辛い……!
「アメリカの友達がね、みんなを応援するって言うから私も混ぜてもらったの。それで、ここのランチはヒーローが作ってるって言ったらみんな凄く興味津々で、食べに来たのよ」
「なるほど……昨日は食べられませんでしたからね」
量も質も大満足のランチラッシュの食事なら、きっとアメリカから来たみなさんも満足してくれるだろう。
「それにしても……イズク君、見てたけどとってもかっこよかったよ。障害物競走でもえーと、キバセン?でも、すっごく。……それ見てたら、応援したくなっちゃって。だから、最終種目じゃしっかり応援するね?」
「あ、ありがとうございます……」
まずい、顔が赤くなってまともに見れないっ。女の人から褒められるのってすっごい恥ずかしい…。ちょっと顔をそらすと、他のみんながって、あ……
「「み、緑谷ぁあああああああああああ!!!?」」
上鳴君と峰田君が突進してきたぁ!?
「てめぇ! 一体何なんだよその外国産美女とお知り合いなんて!?」
「神聖な体育祭の最中に何キャッキャウフフしてんだゴラァ!! 人生ナメてんのか!!?」
「わ、痛いやめて!?」
ふ、二人の剣幕が凄いっ!? それに他の皆の顔も大なり小なり怪訝だっ!?
「てめぇ、あの人と! お前は! どんな関係で!?」
峰田君がメリッサさんに指差すけど無礼だから止めたほうがっ!? でも釣られてメリッサさんの方を見ちゃうと。
「お友達?」
にっこり笑って手を振ってくれた。あ、どうも……。こっちも振り返して……
「どう見ても仲よさげじゃねーかこのやろおおおおおおお!!」
「えっ、ちょっと違うんだ、前にちょっと知り合って!」
「どういう偶然で日本の地味っ子が外国産美女とお友達になれんだよこんちくしょう!」
「そういう偶然は二次元の中だけで十分なんだよ!」
こうして、しばらく二人にもみくちゃにされた後、皆に詰問された……ううう、せっかくのカツ丼の味がよくわからなくなっちゃったよ……。
午後からは、レクリエーションの後に最終種目、トーナメントだ。尾白君や庄田君が辞退したりなんて事はあったけど、メンバー決めは順当に決まった。1回戦は心操君か……気合い入れなきゃ。
……ところで、A組女子のみんながチアガールになってたのは峰田君たちの陰謀らしかった……。アメリカ産は凄かったけど、日本産には可愛さが凄い有るなあ・・…ってそうじゃなくて!? レクリエーションの間ではしっかり体を休めてと。
いよいよ、第三種目の本番だ。ドームの通路が、やけに長く感じる……。
「HEY!」
「オールマイト!」
振り返ると、後ろにトゥルーフォームのオールマイトが居た。駆けつけてきてくれたようだ。
「少年、第一種目と第二種目、見事だった。開会式での一位宣言から、どちらも一位を有言実行でもぎ取り、「キミが来た!」というのを世間にアピールしてくれたね」
「はい、ありがとうございます!こうやって、自分を追い込みました!」
「うん。追い込まれたときこそ万全のポテンシャルを発揮できるのもヒーローの条件だからね」
優しい笑顔で、労ってくれるオールマイト。
「後4回。後4回勝てば、文句なくキミがNo.1だ。期待しているよ、緑谷少年」
「はい!」
僕は、救けられ、受け継ぐもの。あの人から救けられ、オールマイトから受け継いだ。だからこそ、負けるわけにはいかない――。そう思うと、会場へ歩く足に力が強く入った。
『一回戦!! 一位宣言からずっとそのとおりの活躍をしてきた、ヒーロー科緑谷出久!! VS ごめんまだ目立つ活躍なし! 普通科、心操人使!!』
『ルールは簡単! 相手を場外に落とすか行動不能にする! あとは「まいった」とか言わせても勝ちのガチンコだ!! 怪我上等!! こちとら我らがリカバリーガールが待機してっから!! 道徳倫理は一旦捨て置け!! だがまぁもちろん命に関わるよーなのはクソだぜ!! アウト! ヒーローは、ヴィランを
「「まいった」……か。お前は絶対に言わないんだろうな、緑谷。だけど、俺だって負けたくない。強く思う"将来"があるならなりふり構ってちゃダメなんだ…」
その言葉に、頷く緑谷。
『そんじゃ早速始めようか!!』
「
「チャンスをドブに捨てるなんて馬鹿だとは思わないか?」
明らかな挑発。だが、緑谷には分かる。これもなりふりかまっていられない男の、必死の作戦だと言うことが。だから、無言でファイティングポーズを取る。だが、フルカウルは纏わない。完全な生身のままで、心操に近づく。
「っ! ナメられたもんだな緑谷ぁ! "個性"すら使わねえなんて、そこまで、そこまで俺は弱いかっ!?」
何とかして口を開かせようとする心操。だが、無情にも緑谷は近寄ると、フェイントを入れローキックを叩き込む。
「っ!?」
フェイントに引っかかり、対応できない心操はそのままローキックをくらい、体勢を崩す。そこへ、更にワンツーからの背負い投げ。派手な個性だけでない、確かな技術が心操を襲う。
「(馬鹿に、してるわけでもない。こいつは……!)」
立ち上がる心操に向け、また油断なく拳を構える緑谷。心操の呼吸が整うと、また向かっていく。今度は蹴り技主体に。右と見せかけて上、左と見せかけてやっぱり左からの回し蹴り。心操の隙があるところを狙い、身体に分からせていく。
「(俺を、導いてやがる……!)」
思えば、初めて出会った時も、無個性でできることを教えてくれた。そして、今も。まるで無個性でも、ここまで凄いことができるんだぞと教えてくれているようだった。
初めて、心操が蹴りを止めた。そこから、ストレートで反撃。それを顔面にくらい、よろける緑谷。
『おおーっと!?どうした緑谷、個性を全く使わない!?』
『……馬鹿野郎、非合理的だ。……だがまあ、嫌いじゃない』
緑谷に導かれるまま、隙を消し、構えを矯正され、どんどん動きが良くなっていく心操。ダメージを受けながら、緑谷は、特訓をしていたのだ。そしてそのまま、二人の戦いは泥臭い格闘戦へ移行する。何も言わず、殴り、蹴り、投げ、お互いボロボロになりつつも、ひたすらに戦う。
「(あああああああっ!? 青臭くて、泥臭くて、良いいいいいいっ!」
初めは"個性"を使わないことに、ブーイングすら出てきた会場では有ったが、今では鳴りを潜め歓声が上がっている。男と男のタイマン。その熱さに、みんなが虜になっていた。
「お、おおおおおおおおおっ!」
だが、それにも終わりが訪れる。同じく体を鍛えては居たが、その強度の差が出た。徐々に身体が鈍くなっていく心操。だが、痛みと疲労が蓄積していく中、腫れ上がった顔はそれでも笑顔だった。
「(ありがとうよ、緑谷!)」
最後の勝負をかけるために、渾身の右ストレート。だが
「うおおおおおおおおおっ!」
それに合わせた渾身のクロスカウンターが、心操の顔面に突き刺さった。吹き飛び、倒れ伏す心操。
「…勝負有り! 勝者、緑谷出久!」
『うおおおおおおおおおおおおっ!』
とたん、スタジアムから上がる大歓声。
『二回戦進出!! 緑谷出久――!! IYAHAYA! 初戦はまさかの泥臭い殴り合い! だがしかし、熱い、熱いぜえええええええっ!!』
『……まったく、バカばっかりだな』
『そういう事言うなよイレイザー! 両者の健闘をたたえてクラップユアハンズ!!』
そう言うまでもなく、スタジアムは歓声と拍手に包まれていた。
「……ありがとうな、緑谷」
「どういたしまして。でも、君もすごい根性だったよ、心操君」
倒れてる心操に手を伸ばして起こす緑谷。お互いの顔は腫れ上がっているが、それでも笑顔だ。
「……俺も、絶対ヒーローになる。そして、お前を超えたい」
「ダメだよ、No.1は僕がなるんだ」
「オールマイトすら超える気なんだな。……ははっ、凄いやつだよ、本当に」
そう言うと、ボロボロの体を引きずり通路へと戻っていく。そして、そんな彼を迎えてくれたのは、混じりけのない称賛の声だった。
「かっこよかったぞ心操!」「正直びびったよ!熱かったな!」「俺ら普通科の星だな!」「障害物競走一位の奴とよくあんなに殴り合えたもんだ!」
ざわめきの中、心操に聞こえるのは称賛の声。それは、ヒーローたちからでさえも。
「……………!」
思わず涙ぐむ目を押さえ、言葉の代わりに頭を下げるとまた歩き出す。次は。次こそは、負けないように。
「緑谷ぁ! 負けるなよ!」
「―――うん!(あっ!?)」
と、最後に返事をした緑谷にかかったのは洗脳。ちょっとしたお返しというわけだ。
「フツー構えるんだけどな。俺と話す人は。これからも、油断するなよ?緑谷」
そう言うと、緑谷への洗脳が解ける。
「みっともない負け方はしないでくれ。……後、あんまり無茶もすんなよ」
「(心操君……)うんっ!……あ」
強いのに、どこか抜けてる。そんな緑谷に笑いつつ、心操は去っていった。
個性使うと瞬殺にも程が有るんでこういう形にしてみました。
捕縛布は、流石に2週間じゃ特訓しても扱いきれないだろうなってことで素手でのタイマンです。さて、今日はどれ位書けるか……