豪華絢爛たる緑谷出久のヒーローアカデミア   作:両生金魚

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どうせ原作と乖離しまくってるし、ぼくのかんがえたさいきょうのみどりやを出してみました……


職業体験初日

 緑谷がグラントリノの所へ向かっている頃、轟と夜嵐は同じ場所へ向かっていた。すなわち、エンデヴァーの事務所である。息子である轟だけでなく、夜嵐にオファーを出したのはひとえにその個性と、自分や息子との相性故。風と炎、上手く組み合わせればこれほど強い組み合わせもないからだ。

 

 入学当初は、片や無視し方や嫌悪していた間柄。だが、今日は違っていた。夜嵐が積極的に話しかけていたのである。

 

「轟よう。好きなものは何スか!!」

 

「そば。ザルの」

 

「か~~! そばなら俺は温そばだ。そしてウドン派!」

 

「合わねぇな」

 

「いや! でも近づいた気はするッス!!」

 

「そばとうどんは近いようで遠い」

 

「俺!! おまえとも必ず親友になってみせる!!」

 

「…………あんまり無理しなくても良いんだぞ?」

 

「いや!無理はしてねぇ! むしろ燃える!」

 

「そうか」

 

 入試の時、ろくに見ていなかった相手。だが、それでもこうやって話しかけてきてくれることが、轟はなんだかむず痒かった。

 

 

「よく来てくれたな、二人共。特に焦凍。ようやく、俺の後を継ぐ気になったんだな」

 

 事務所についた二人を、エンデヴァーが出迎える。だが、二人の表情は芳しくない。

 

「勘違いするな――そんなつもりはねぇ」

 

 入試の時とは違うが、冷たい目――夜嵐は、その違いを敏感に感じ取る。そして、エンデヴァーの表情も。自分も、隣の轟も見ていない。冷たい目で見ているのは、はるか先――オールマイト。

 

 本来ならお門違いなのかも知れない。それに、余計なおせっかいなのかも知れない。ただ、あの緑谷と轟の会話を聞いてしまった夜嵐には、どうしてもそのままにしておくことは出来なかった。それに――自分の友だちも、きっと同じことをするだろうから。

 

「……お久しぶりッス、エンデヴァー……」

 

「? 君には前に会ったことが有ったかな?」

 

「まあ、覚えてないのも当然ッスけど。――俺がまだ小さい頃、あんたに「邪魔だ。俺の邪魔をするな」って退かされた元ファンの一人ッス」

 

「「!」」

 

 驚く二人。それに、エンデヴァーは形ばかりの謝罪をしようとする。

 

「……それはすまなか「……それから、ずっと変わってないッス。俺を……いや、ただ一人しか見てない目。そして、その目をあんたの息子にもさせてたっッス」

 

「一体何を……!」

 

「あんたは! 一体何処を見てんだよ! ファンも見ない! 妻も見ない! 息子も見ない! 身近な人を見ないで、一体ずっと何処を見てんだよ!」

 

「「!!!」」

 

 夜嵐の剣幕と言葉に、驚く二人。そして、エンデヴァーは……気圧されていた。自分の息子と、同い年の男に。

 

「きさまに……貴様に、何が分かる……!」

 

「分かんねえッスよ! あんたの気持ちなんて! でも、分かるのは……そんな目をして! 妻も息子も泣かせて! あんたそれで本当にオールマイトを超えられると思ってんのかよ! オールマイトは! 熱い男だろ! それを、そんな冷たい目をして! 超えられると思ってるのかよ!!!」

 

 自分に立ち向かってくる、必死の剣幕。その熱気に、エンデヴァーはしばし言葉を失う。

 

「夜嵐……お前……」

 

「悪ぃ! お前と緑谷の会話、聞いちまったんだ! それで、ほっとけなくなっちまった!」

 

 ゴンッ! と、腰を曲げて曲げて地面に頭を付けて謝罪する夜嵐。だが、轟が怒ることは無かった。

 

「……良いんだ。――いや、ありがとな」

 

 ふ、と表情が緩む。はじめての時は、熱いだけでウザいやつだと思った。だが、今はその熱さがだんだんと嫌いではなくなっていた。

 

「……じゃあ、失礼するッス!」

 

「…………何処へ行く?」

 

「こんな事言う奴を、職場体験に居させられないッスよね! だから、失礼するッス!」

 

 そう言うと、踵を返す夜嵐。それに、ついていこうとする轟。だが、それをエンデヴァーが止める。

 

「……いや。いい。二人共、是非ここに居てくれ。ここは――No.2の事務所だからな。学ぶことも多いだろう」

 

 "轟くんも、あなたじゃない!!" "そんな冷たい目をして! 超えられると思ってるのかよ!!!"

 

 まっすぐぶつかってくる、熱い少年たち。彼らの熱で、絶対零度の炎が揺らぎ始める。

 

「……そうッスか。じゃ、お邪魔するッス!」

 

「……俺も。学べることは、学ぶ」

 

 彼らは、未来の為に学ぶのだろう。――未来。

 

「(未来、か……)」

 

 遠い遠い背中。決して超えられなかった断崖。それに眩んで見えなかったものが、少しずつ取り戻されていく気がした。

 

 

 

「キャーっ!? ひったくりよーーっ!? 誰か、助けてええええええっ!」

 

「ヒャッハー! 頂いたぜー!」

 

 個性"バッタ"のヴィランが、住宅街でひったくりをしていた。昆虫の力強くしなやかな両足のバネを使い、一軒家やアパートなど、背の低い建物の上を跳び抜けていく。

 

「はーっはっはっは!この街で俺に追いつけるやつは居ねぇ!」

 

 "個性"が世に蔓延することになってから、掃いて捨てるほど生まれた突発的"個性"犯罪の一つだ。これらの犯罪の対処の難しいところは、大抵の犯人は自分に有利な土俵で行うことである。"個性"は大抵一芸特化で有るが、犯罪を起こす犯人はその一芸を最大限活かせるシチュエーションを選ぶ。今回の事件ならば、犯人は己の個性の有利を把握し、低い建物の多い住宅街で建物の上を跳んでいくことで警察やヒーローを振り切りやすくしている。

 

「こら―! 待ちなさい!」

 

「待てと言われて待つ奴ぁ居ねぇ!」

 

 たまたま自転車で巡回していた警官が見つけるも、道に沿ってしか走れない自転車では追いつけるはずがない。また、発砲も出来ない。

 

「はーっはっはっは! あばよ、のろまな警官! この町では俺こそがスピードキングだぜ!」

 

 己の持つ"個性"への自信過剰が引き起こす犯罪。これは、どんな街でいつでも起こりうる犯罪だ。そしてだからこそ――

 

「もう大丈夫です! なぜかって……? それは、僕が来た!」

 

 日本中に、ヒーローが居るのだ!

 

「あん? ヒーローかと思ったらただのガキじゃねえか! そんなんで俺に……「追いつけるさ!」何ぃ!?」

 

 フルカウルで、難なく追いつく緑谷。その後ろでは、グラントリノまでが楽々ヴィランに追いついていた。今までスピードで負けたことのなかったヴィランは、酷く動揺する。

 

「ち、畜生! 負けてたまるかっ!」

 

 そうして、自棄を起こしたヴィランは、リスクを犯し危険な挙動をする。そうなれば、一般市民もヴィラン自身も危ない。だからこそ、早く解決する必要がある。

 

「止まらない! なら!」

 

 緑谷は、腰から下げたボールの一つを取り出すと、カチリとボタンを押す。

 

「1・2・3・4……ネットボム、シュート!」

 

 ボタンを押してから4秒経って投げ、5秒目で爆発し、ボールが人をすっぽりと多い尽くせる程の大きさのネットへと変貌する。ヴィランを無傷で制圧するため、開発してもらったガジェットの一つだ。コストは掛かるが、その分性能と強度は折り紙付きである。

 

「ち、畜生!? 動けねぇ!?」

 

 空中で網に包まれ、動けなくなるヴィラン。そして、落下していくヴィランをキャッチして、無傷で事件を解決する。

 

「ヴィラン、確保しました!」

 

「おお、やるじゃないの坊主。早速お手柄だな」

 

「はい!」

 

 警察を呼び、犯人を引き渡しそして――

 

「本当に、ありがとうございました!」

 

「いえ、僕はヒーローですから!」

 

 救けた人に、お礼を言われる。嬉しそうに、涙すら浮かべて何度も何度も。それを見ると、とても嬉しくなる。そして、それこそがヒーローの報酬なのだ。

 

 夢を追いかけ続けて10年以上。そして、初めて()()()()()で人を救けられたのだ。第一歩を踏み出したようで、緑谷は深い充実感に包まれている。

 

「こりゃ優秀で俺が教えることもあんまり無さそうだな……ま、後で書類仕事はやってもらうが。もう事務員の姉ちゃんもだいぶ前に辞めちまったしな」

 

「あ、書類仕事も大事ですもんね」

 

 公的な活動であり、その成果によって税金から支払われる給料の額も、ヒーローとしての順位も変わるのだ。これも凄く大事なことである。

 

「俊典の奴は、書類仕事は他の人に頼ってたからな……まあ、お前もそうなるだろうが」

 

「へ?」

 

「No.1ヒーローになるんだろ? なら、書類仕事よりも他にやることが有るだろう。雄英なら経営科も有るし、事務員を見つけとくのも良いかもな」

 

「は、はいっ!」

 

 最初のボケ老人っぷりは何処に行ったのやら、実に的確なアドバイスをするグラントリノ。伊達に雄英で教師をしたわけではないようだ。

 

 のんびり歩きまわりながらのパトロールであるし、時間はいくらでも有るから話は弾む。

 

 

「あ、たいやき屋だ」

 

「ここのは美味いんだ。どれ、一つおごってやろう!」

 

「ありがとうございます」

 

 だが、のんびりしている時も気が抜けないもので

 

「く、食い逃げだー!?」

 

「ふはははは!この疾風の「スマッシュ!」げはぁ!?」

 

 名乗る前に撃沈するヴィラン。

 

「いや~、楽でいいのう」

 

「あはははははは……」

 

 再び警察に引き渡すのを待つ間、今度は周辺のゴミ拾いをする緑谷。最初の修行が海岸の清掃で、オールマイトの薫陶も有り、ゴミを見つけては拾うので片手には常にゴミ袋をぶら下げてる状態だ。

 

 そして、そんな姿はスマホで撮られ、SNSに拡散される。

 

 "雄英の緑谷が、ヴィランを捕まえた後街の清掃してたよ!" "うわ、地味な仕事やってる! 顔と一緒だ!" "個性は派手なのにこういう事はしっかりするんだな。何か好感持てるわ" "と言うか、今日だけでもう何件も緑谷の活躍報告されてね?"

 

 そして拡散したSNSの情報は、回り回ってクラスメイトに届いたりもする。

 

「あ、出久君だ。やっぱり注目されるんだなあ」

 

 ガンヘッドの事務所での休憩中に、麗日が気がついたり

 

「緑谷さん……堅実に実績を重ねているようで何よりですわ」「でもでも、目立ち具合ならこっちも負けないよ!」

 

 遠い目をした八百万がメイクアップの最中に気がついて拳藤と雑談していたり

 

「おっ、緑谷も似たような事やってんな!」「何? マジだ!」

 

 切島、鉄哲コンビが公園の清掃の合間に噂を拾ったりと、遠く離れていても注目される雄英生の情報は共有される。

 

「あ、LINKの通知だ……結構入ってるけどどうしたんだろうって……、え!?」

 

 ふと、スマホを確認すると、そこには友人たちからのメッセージが。どうやら、大分拡散していたようだ。

 

「僕の姿が、こんなに……」

 

 ふとSNSを確認すれば、いつ撮られたのかあちこちに有る緑谷の写真。中には、ヴィランを抑え込んでいる姿を激写した物や、大ジャンプで空に滞空している時の写真も有った。

 

「これが、有名になるってことだ。これも、オールマイトが辿ってきた道だ。気分はどうだ?」

 

「なんだか……凄く嬉しいです!」

 

 自分の行いで人助けができ、お礼を言われ、拡散される。ヒーローの特権を存分に享受した緑谷は、更に気合を入れてパトロールに励むのだ。

 

 

 遠くで消防車のサイレンが鳴る。何か事件だろうか。それを聞くと、緑谷はおもむろにメガネを取り出し、咽喉マイクのスイッチを入れる。

 

「HAL、無線・SNS分析」

 

「Yes.無線傍受――検索・甲府市――中規模火災と判明。住所・ルート・情報を表示します」

 

 すると、緑谷の着けたメガネに、様々な情報が表示されていく。火災の場所に、地上を移動する場合のルートに、各パトカーの位置。それに、無線で報告される逃げ遅れた人の場所や特徴なども隅に記録される。

 

 これは、メリッサの開発した新装備の一つ、インテリジェンスゴーグルである。極薄の液晶ディスプレイ搭載のゴーグルに、ポーチに入れた超高性能超重量コンピュータ、そしてサポートプログラムのAIが一体となって緑谷を救けるガジェットだ。警察や消防、救急の無線を傍受して音声認識で情報を読み取り、ゴーグルに表示する。また、SNSに投稿される事件や写真を分析し、それをフィルタリングし必要な情報だけを抜き取る。まだ、オールマイトより機動力が低い緑谷を効率的にサポートするためのガジェットの一つだった。

 

「グラントリノ! ついてきて下さい!」

 

「おう!」

 

 フルカウルを全身に身に纏い、パルクールの要領で塀、屋根、電柱、屋上などを伝い走り、地上の混雑を一切無視して現場に到着する。5階建ての集合住宅に、火の手が上がっていた。そして、ベランダには助けを求める人々が。

 

「だ、誰か助けてー!?」

 

 救急隊員も、必死になってはしご車を伸ばしているが、いかんせん人が多い。

 

「HAL、火災モードに変更!」「Yes.火災モードに、移行します」

 

 そう言うと、緑谷の首筋から、液晶張りのフルフェイスヘルメットが昇ってきて、顔を包み込む。これなら煙の中でも、5分間は呼吸が可能だ。両手足のガントレットは、より深く手足を包み、耐熱性を高める。I・アイランドの超技術により、重量を犠牲にすれば、様々なギミックをコンパクトに仕込める――。故に、ワン・フォー・オールの超パワーを持っている緑谷にはうってつけのガジェットたちであった。

 

「グラントリノ! 僕は部屋の中に誰か居ないか調べます! そちらは、ベランダの人たちをお願いします!」

 

「任せろ!」

 

 そう言うと、二人共迷わず火災現場に飛び込んでいく。グラントリノは、救急隊員達の手が回っていない人を抱き地上に下ろし、緑谷は火の回っている建物の中を超スピードで見て回る。熱で変形したドアをこじ開け、バックドラフトに注意しながら一部屋一部屋確認していく。そして、とうとう見つけた。

 

「だ、だれか……」

 

 身体の弱い、お年寄りだった。熱で変形したドアを開けられず、かといって煙で燻されたベランダにも出れなくなりどうしようもなくなっていたのだ。今にも死にそうで、とても不安そうなご老人に、緑谷は――

 

「もう大丈夫、助けに来ました!」

 

 そう、笑顔で答え抱え上げた。近くにあったタオルで老人の口元を覆い、そのまま抱いて、一気にベランダから飛び降りる。煙の中に居たのは、1秒にも満たなかったろう。最小の負担で、救けることが出来た様だ。

 

 外では、グラントリノが半分以上の人を救け、息を切らせ地面に座っていた。

 

「はぁ、はぁ……小僧、そっちは大丈夫か?」「はい!でも、他の部屋も見てきます!」

 

「おう、気をつけろよ」

 

 再び炎と煙の中に突っ込む緑谷の背中はとても頼もしく、そこにグラントリノはオールマイトを幻視する。

 

「ふっ……教えること、後どんだけあるんだっつーの」

 

 こうして、更に3人を助け出した緑谷は、SNSだけでなくその日の夕刊の一面も飾るのだった。タイトルは――"超新星現る! 雄英のスーパールーキー! 大手柄!"であった。




個人的に夜嵐は熱くて好きなので、嫌いなものを否定してしまったあれを改善した結果、エンデヴァーに相対するほど熱くしてしまいました。これから夜嵐と轟は良いコンビになっていくでしょう。それに、エンデヴァーと組んでも凄まじい戦闘力を発揮しそうです。

そして、便利過ぎるギミックの数々ですが映画で見せてくれた超技術の数々を見ると、むしろコレくらい楽勝でしてくれる気がします。あの島、技術本当にヤバすぎて……というか、デヴィットの20年以上の前の車に積んであるナビですら超高性能だからそれから20年以上経ったらこれくらいできるよね?って感じで作りました。
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