豪華絢爛たる緑谷出久のヒーローアカデミア   作:両生金魚

24 / 48
いわゆる繋ぎ回と言う奴でしょうか


一夜明けて

「んだョ、あのヒーロー殺しぃ!脳無も! まるで役に立たねぇじゃねえか!」

 

 とあるビルの屋上――死柄木は、とてつもなくイライラしていた。指をガジガジかじり、足を踏み鳴らし、不機嫌な様子を隠しもしない。せっかく投入した脳無3体も、ヒーロー殺しも、ろくに成果を上げること無く無力化されてしまったからだ。子供のような癇癪が、ますます酷くなっている。ひとしきり喚いた後、懐からスマホを取り出す。

 

「先生! あいつら、何一つ使えなかったじゃねぇか! もう3体送ってくれよ! 今度こそ暴れさせるからサァ!」

 

 だが、激高する死柄木に、電話の先の声はねっとりと優しく諭す。

 

「落ち着くんだ弔。今からそこに送っても戦力の逐次投入になるだけだよ?」

 

「だがよ、このままじゃ、アイツラだけに名前が!」

 

「名前ってのはね、大きくなればなるほど身勝手な感情が付属するもんなんだ……ああ、僕も覚えがある。憧れや敵意が散々に押し付けられ、少しでも違うと失望する――また、出来ないことが有れば他人の何倍も何十倍も失望する――そんな身勝手な感情を押し付けられる立場に、彼はなりつつあるのだよ」

 

 教育を施す声の主は、とてもとても楽しそうだ。相手が強力だと言うのに、とてもとても。

 

「さあ、今回のことでどれだけ彼らは憧れられるのかなぁ?そして、どれだけ畏れられるのかなぁ? それらは理解とは一番程遠い感情だってのにさ! それはどれだけ彼らをある意味孤独にするんだろうねぇ!」

 

「……何か、作戦でも有るのか?」

 

 上機嫌な電話の主を、訝しむ弔。ここまで上機嫌な声は久々に聞くかも知れない。

 

「いいや! まださ! だが、策を立てる土台も手段も、沢山整ってきた! ああ、楽しみだねぇ! 塔が高ければ高いほど、崩れ行くさまはそれはもう見事なものになるのさ!」

 

「……なるほど、分かった。んじゃ、今日のところは引いていくさ」

 

「ああ! 今回のことからも、ちゃんと学ぶんだよ弔。それが、君を強くするんだからね」

 

「わかってる。んじゃな」

 

 電話を切ると、そのまま黒霧の中へと消えていく。後には、静寂だけが残った。

 

 

「ヒーロー殺し逮捕だって!! すげえすげえ!!」「マジ!? 誰が倒したん!?」「体育祭で活躍した、雄英生の1年達だってよ!」「ウッソだろ!? あいつらどんだけ凄いんだよ!?」

 

「安心したけどなんか残念~~~~」

 

「うわダサっ、あいつ擁護するのかよ。エンデヴァーのセリフ聞いてないのか?」

 

「えっ、マジ何が有ったの!?」

 

 次の日の朝刊、一面はヒーロー殺しの逮捕の記事だった。テレビでも連日トップニュースであり、ワイドショーでも繰り返しその様子を伝えている。

 

「三人のヴィランはいずれも住所・戸籍不明の男。その外見的特徴とNHAテレビが偶然捉えた二人の男の姿から、先日雄英高校を襲った"ヴィラン連合"との繋がりを指摘する声も上がっています。"オールマイト"以降の単独犯罪者では最多の殺人数。犯罪史上に名を残すヴィラン"ヒーロー殺し・ステイン"、その身勝手でエンデヴァーに完膚なきまでに論破された、その犯行の詳しい動機など追ってお伝えします」

 

 世間では、ヒーロー殺しの事が繰り返し報道されているが、それに関連してエンデヴァーの激昂もまた、それ以上に放映されていた。

 

"己がNo.1になろうとする気概もないものが――正義を……あいつを語るなど――巫山戯るなぁ!"

 

 恐らく殆どの人が目にしたことのない、No.2ヒーローエンデヴァーの激昂した姿。それも、話題がオールマイトに関してである。エンデヴァーの、オールマイトを示した形容詞は、"狂人"、"あいつ"、"あのバカ"など、ファンが聞いたら激怒しそうなものだ。だが――それだけに、見るもの全てに伝える。あの叫びが、エンデヴァーの本音なのだと。皆がオールマイトを仰ぎ見る中、彼だけが本気で横に並び立とうとして、希望の象徴の苦労を少しでも減らそうとしていたのだと。

 

「実は、あんなに熱かったんスね、エンデヴァー! 一気にファンになりました!」

 

「ずっと、オールマイトを見てたんですね……ある意味、彼が一番のファンなのかもしれません」

 

 ヒーロー殺しと、エンデヴァー。この二人の主張の差は、世間に大きな石を投じたように波紋を広げていく。そして、ネット上でも、ステインを称賛していた声はピタリと止んだ。あの瞬間、ステインの主張は――彼は――ただの負け犬に成り下がったのだ。ただ、弱いやつを殺すだけと。

 

 

 

「……って感じで外は凄いことになってるね……」

 

「エンデヴァー……あんなに熱かったんッスね……」

 

「……………………」

 

 3人は今、病院に来ていた。怪我をした飯田の見舞いのためにである。それと、マスコミ避けの為でも有った。学生だけで脳無の1体を倒し、更にはヒーローを救いヒーロー殺しまで捕らえたのだ。マスコミが食いつかないはずもなく、"ゴージャスグリーン"、"ショート"、"レップウ"の名はエンデヴァーと共に全国へ鳴り響いた。――すると当然、マスコミが嗅ぎつけないはずもなく、その日泊まった保須市のホテルには、マスコミ関係者が詰めかけて大変だった。3人共、見舞いの時間を削られないために今日の朝は裏口からこっそり出たほどである。

 

 ともかく、無事に病院についた3人は待合室の隅っこの目立たないところでそれぞれがスマホを弄っていた。3人共それぞれ、クラスメイトから心配やら色々なメールを送られていて、返信にかかりきりである。

 

「飯田様のお見舞いの3人はいらっしゃいますでしょうか?」

 

 病院側も気を使ってくれていて、3人の名前は呼ばない。

 

「あ、はい!」「うっす!」「ども」

 

 看護師さんに付いていくと、病院の個室に案内された。飯田の腕に巻かれた包帯が痛々しい。

 

「おっす飯田、大丈夫か?」「だ、大丈夫?」「腕……」

 

 三者三様に心配する。見るからにダメージは大きそうだったから、後遺症が残ってないか気が気ではないのだ。

 

「左手、後遺症が残るそうだ」

 

「「「っ!」」」

 

「両腕ボロボロにされたが…特に左のダメージが大きかったらしくてな。腕神経叢という箇所をやられたようだ。とは言っても手指の動かしづらさと多少のしびれくらいなものらしく、手術で神経移植すれば治る可能性もあるらしい。ヒーロー殺しを見つけた時、何も考えられなくなった。まずマニュアルさんに伝えるべきだった。やつは憎いが……やつの言葉は事実だった。だから、俺が本当のヒーローに成れるまで、この左手は残そうと思う」

 

「……あ(あの時、もっと強く言っていおけば……!)」

 

「……(俺の、馬鹿野郎!!)」

 

「……飯田……(お節介、か。したほうがいいのかもな)」

 

「そんな顔をしないでくれ、みんな。日常生活に支障は無いし、今は納得している。――だから、俺はもっと強くなる。君たちのように……いや、君たちを超えられるように!」

 

「……うん、負けないよ!」「ライバルッスね! 熱いッス!」「おう」

 

 こうして、決意を新たにする3人。

 怪我は軽かったので、彼らはまた職業体験に戻る時間だ。

 

「それじゃ、また来るね!」「土産話持ってくるッス!」「…食いたいもん、あったら言ってくれ」

 

「……ああ!」

 

 そして飯田は、彼らのような友人が居ることに心から感謝をした。

 

 

 

 一方その頃、グラントリノはオールマイトと電話をしていた。

 

「緑谷出久……お前、よくあんなのを見つけてきたな。……良い奴だ、戦闘で教えることがほとんどねぇ。実戦以外の救助やら法律関連やら、ちゃんと学校で教える諸々を叩き込めればすぐにでもプロで通用する」

 

「そうですか……グラントリノのお眼鏡にも適いましたか」

 

「あァ……呼べて、飯田って子が助かって結果オーライだが、本当は悪いことをしちまったと思ってる。こんな田舎のサイドキックもいねぇ事務所に呼ぶべきじゃなかった。……だから、残りはお前の元サイドキックに託すことにした」

 

「サー・ナイトアイ……!」

 

「あいつも、気合を入れて緑谷に教えとった。自分が後継者として選んだ他の雄英生も居るのにな。やっぱりお前に選ばれて実力を見せつけたのがきいたらしい。最初に反対したのを悔いてるのかもしれん。……一度、会ってやれ」

 

「……はい。追々、必ずや」

 

「しかし、ヒーロー殺しは凄まじかった。実際に相まみえた時間は数分もないが、それでも戦慄させられた。――まあ、No.2に諭されちまったがな」

 

「グラントリノともあろう者を戦慄させるとは……しかしもうお縄になったのに何が……」

 

 それから、グラントリノは己の懸念を口にする。負かされたとは言えカリスマ性や、感化される人間の危惧。エンデヴァーに言い負けたとは言え、言った内容の中身に感化されるものは必ず出るはずだろうと。そして、"オール・フォー・ワン"が動き出したことを。

 

「……お前のことを健気に憧れているあの子にも、折を見てしっかり話しといたほうが良いぞ。――サー・ナイトアイはあの子に"予知"を伝えた」

 

「なあっ!?」

 

 知られたくないこと。まだ、知られてはいけないことが知られたとあって、オールマイトの血相が変わる。まだ、早すぎるだろう。

 

「サー・ナイトアイ……何ということを……!」

 

「落ち着け。どの道いつか教えなきゃならん事だ。それに――"予知"が、外れるかもしれん」

 

「え?」

 

「"見えない"そうだ。あの子の運命とやらは。そして、お前を"見た"中にもあの子は出てこなかった。――つまり、あの"予知"は、外れる可能性がある……!」

 

「――!」

 

「…………9代目にして。もしかしたら――とうとう、"オール・フォー・ワン"が終わる時かもしれん。――だから、俊典。……生きろ」

 

 そう言うと、電話を切るグラントリノ。一度に様々な情報が入ってきて、オールマイトの胸中はしばらく混乱を続けていた。

 

 




本当はこの後、小説版のエピソードが有るんですが……個人的に早く緑谷・夜嵐VSオールマイトの期末試験を書きたいので、サー・ナイトアイのところでの体験学習や、遊園地ネタなどは外伝として後に回そうかな……林間合宿の前には映画も有るし、イベント目白押しだなあ。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。