豪華絢爛たる緑谷出久のヒーローアカデミア   作:両生金魚

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どうしてもオールマイトとの試験が書きたくて、だいぶ早足に……小説版のエピソードや渋谷辺りの話は、外伝に回そうか……


激闘!期末試験!

 病院を出た後、グラントリノと一緒にサー・ナイトアイの事務所で職場体験させてもらうことになった。今までは甲府っていう最も人口が少ない県庁所在地だったけど、やっぱり東京の繁華街は、全然勝手が違った。あちこちですぐに小競り合いが起きたり、困ってる人が出たり。それに、外国人も凄く多くて、言葉の問題にすごく苦労した。英語だったらまだなんとかなるんだけど、それ以外の言語だと完全にお手上げだ。そんな時は、HALに頼んで翻訳をしてもらった。このサポートAI、本当に頼りになる……。

 そして、僕らがヒーロー殺しを捕まえたことは大々的なニュースになっていて、まだ職場体験の時点なのに、あちこちからサインを強請られてしまった。服とか、写真とか、タブレットへの手書きとか、色々な形で……。さ、サイン、本格的に自分独自の考えていたほうが良いかも……。3年のミリオ先輩からも、「頑張れ!」って励まされたし。

 

 

 そしてなんだかんだ色々と有って1週間後、とうとう職場体験が終わった。体験――と言うよりは、もう殆どサイドキックみたいな仕事をしてたけど。

 

「ははは、細かいことは気にしない!」

 

「そ、そうですね! 本当にすごく勉強になりましたし!」

 

 この数日で、インターンで来ていたミリオ先輩やバブルガールとも凄く仲良くなれた気がする。サー・ナイトアイもバブルガールも、ミリオ先輩もインターンでも是非来てと言ってくれた。

 

「なに、インターンでも確実に君は争奪戦になるだろうからね。今の内に引き込んでおこうと思ったのだよ」

 

「は、はい! ありがとうございます! 最有力候補の一つに入れさせてもらいます!」

 

 本当は必ず!って言いたいけど、今回のグラントリノみたいな事が起きないとも限らないし、今はこう答えておこう。

 

「ああ、それとだ……職場体験と言いつつ、書類仕事からヒーロー活動から、ほぼ正規の仕事をさせてしまったからな……これを持っていくと良い」

 

 そう言って提出されたのは、一つの封筒。恐る恐る受け取ると、結構厚みがある。い、一体幾ら入ってるのだろう……?

 

「あ、あの、これって……」

 

「今回の給金だ。学校側にも話を通しておく。これは、君が稼いだ正当な報酬だ。遠慮はしないように」

 

 今まで、持ったことのないお札の厚さ。ほんの数ミリだけど、それがとても重く感じる。僕が、初めてヒーロー活動で稼いだお金で、沢山の人達の税金から出たお金だ。

 

「――ヒーローとして活躍できているが――大量殺人犯と相対してご家族は心配しているはずだ。是非、それで何か労うと良い」

 

「はいっ、ありがとうございす!」

 

 カバンに大事にしまい、頭を下げて部屋を出る。本当に、色々な体験ができてよかった。

 

 

 

「母さん、ただいま!」

 

 一週間ぶりに家に帰ってきた。こんなに長く家をあけるのは、久しぶりだ。

 

「お、おかえり、出久! 大丈夫!? 怪我してない!?」

 

「うん、スーツのお陰もあって大丈夫だったよ。だから心配しないで母さん」

 

「よ、良かった……」

 

 何度も何度も連絡したけど、やっぱり心配だったんだろう。だから、沢山の感謝を込めて、これを渡そう。

 

「母さん、これ」

 

 カバンから封筒を出すと、母さんが首を傾げる。

 

「どうしたの? これ?」

 

「サー・ナイトアイから頂いたんだ。僕のお給金! ヒーロー活動したから、その分は払うって!」

 

 それを聞くと母さんは、恐る恐る封筒を開けて――その金額にびっくりする。1万円札がそれなりにまとまった枚数だ。

 

「こ、ここここ、こんなに!」

 

「うん。だから、何時もお世話になってるお礼に母さんに渡すよ。今日は、これで美味しいものでも食べに行こうか」

 

 小さい頃から心配かけて、ずっと育ててくれた母さんへのお礼。これから返す、その始まりのお金。世の中お金が全てじゃないって言うけど、それでもやっぱりお金でも感謝の気持ちは伝えられるのだ。……、あ、母さん、また泣いちゃった。

 

「うん、うん……ありがとうね、出久」

 

「どういたしまして! さ、どこでも良いよ母さん、何でも好きなもの、食べ放題!」

 

「何にしようかしら……迷っちゃうわね……」

 

 こうして、僕と母さんは精一杯高い服をきちっと着て、ビルの上階に有るような高級レストランで食事をしたのだった。今まで食べたこと無いけど、凄く美味しくて。母さんは嬉しそうに色々と頼んでいて。とっても嬉しかったなあ……

 

 

 

 次の日、一週間ぶりにクラスメイトが揃った教室は、勿論職場体験の話題で持ちきりだった。耳郎さんもヴィラン退治に参加していたり、梅雨ちゃんは密航者を捕らえたり、お茶子さんはガンヘッドの所でみっちり訓練をしたみたいだし、皆それぞれ、有意義な体験をしてきたようだ。

 

「女ってのは……元々悪魔のような本性を隠し持ってんのさ!!」

 

 …………大体の人が、ね。

 

「ま、一番暴れたのは緑谷で、次点は夜嵐と轟だろうな」

 

「緑谷なんてこの一週間で2度も新聞の一面に乗ったもんな。マスコミ押しかけてきて大変だったろ?」

 

「う、うん……ホテルとか、病院にまで押しかけられてちょっと困っちゃった……」

 

「右に同じく!」「左に同じ」

 

 ヒーロー活動の合間、事後処理なんかをしている時、毎回のようにマスコミの人たちが押しかけてきて本当に大変だった……オールマイトとか、トークがうまくなるのもよく分かっちゃった。本当に色々なことを聞かれるんだもん。彼女とか居ないし……

 

「飯田ちゃんもよく無事だったわね。ヒーロー殺しに狙われて、ケロ」

 

 梅雨ちゃんの心配事だ。飯田君の事を本当に案じていたのだろう。周りの皆も似たような感じに、飯田君に視線を集中させている。

 

「――ああ、彼ら3人のお蔭で助かった。歪んでは居たが――確かに信念は有った。だが、自分ではそれが正しいと思いこんでいる――思想犯とは、あそこまで精神が強固になるものだったとは」

 

 プロヒーローでさえ、気圧されるほどの威圧感。信念。間違っていても、確かにヒーロー殺しは持っていた。

 

「だから、これ以上俺のようなものを出さぬ為にも!! 改めてヒーローへの道を俺は歩む!!!」

 

「飯田君……!」「飯田!」「委員長……!」

 

 完全復活した様子の飯田君に、皆が安心したようだ。

 

「さァそろそろ始業だ席につきたまえ!!」

 

 ちょっと元気すぎるけど……ね。

 

 

 それからも毎日忙しく、月日はあっという間に過ぎ去って、もうすぐ期末試験だ。気合を入れないと! 特に、期末テストで合格点に満たなかったら学校で補習地獄って言うことで皆が気合を入れている。それは当然僕もだ。No.1ヒーローになるためにも、ここで躓く訳にはいかない!

 

 

 

 雄英の会議室、本日の議題は期末試験の訓練内容だ。ヴィランの活動が活発になる中、ロボとの戦闘訓練は実用的ではないと言う事で、対人戦闘・活動を見据えたより実戦に近い教えを重視することとなった。

 

 という訳で、早速ペアが振り分けられていく。今までの成績や傾向から、何が弱点かを把握しその弱点を突く教師が振り分けられるスパルタ方式。凄まじく難易度が高い。皆が順当に振り分けられていく中、残ったのが夜嵐と緑谷だった。

 

「最後に残ったのは緑谷と夜嵐ですが……オールマイトさん、頼みます。この二人が組むと、中々に手がつけられない。高いフィジカルと強い個性を持ち、やや大雑把なきらいが有るものの繊細なコントロールさえ可能な夜嵐。そして、圧倒的な身体能力と技術に判断力を持ち、更に遠近両用に対応できる戦闘スタイルを使いこなす。おまけに数々のガジェットをさえも身につけ始めた緑谷。お互い推薦と一般の一位同士ですが、正直この二人は、戦闘面だけで言えばすぐにでもプロに出して通用します。よって、この二人には――圧倒的な格上の経験を積ませたい。特に緑谷はこれまで負け無しで、強敵のいなし方の経験が少ないです」

 

『異議なし』

 

 これにもまた、教師陣が満場一致で賛成する。そして、一人決意を固めるオールマイト。

 

「(思えば……私は教師としても、師匠としても中々彼に教えることが出来なかった……なら。せめて、立ち塞がる壁としての役割は全うしよう……!)」

 

 ……だが、彼は肝心なことを忘れていた。これはあくまで――試験なのだと言うことを。

 

 

 ……と、そんな経緯を説明されるクラス一同それぞれのペアが割り振られていき……

 

「そして、最後に残った緑谷と夜嵐がチーム……で、相手は――「私がする

 

「オ、オールマイト!?」

 

「ま、まさかオールマイトが相手なんて……う、うおおおおおおおおおおおっ! こ、これ以上無い熱い展開ッスね…………!」

 

 驚く緑谷に、気合を入れようとする夜嵐。だが、流石に相手がオールマイトとあっては動揺が隠しきれない。

 

「マジか、あの一般、推薦トップコンビとは言えオールマイトが相手って……」

 

「緑谷ちゃんと夜嵐ちゃんは大丈夫かしら……」

 

 流石に、これには周囲も心配の視線を向ける。いくらなんでもハードルが高すぎると。

 

「まあ、心配するな。教師陣には、それぞれ体重の半分の重りを装着することになっている」

 

「ちなみに、デザインはサポート科の発目君だぞ!」

 

 これは、生徒達に逃げ以外の選択肢を用意するためのハンデ。確かに、普通に戦闘するイレイザーヘッド等には有効なハンデだろう。だが……

 

「体重の半分……オールマイトが付けるハンデが、たったこれっぽっち?」

 

『あ…………』

 

 緑谷の呟きに、固まる多数。リニアより速い速度で移動できる男にとってはあまりに軽すぎるハンデでは無かろうか。

 

「……い、今からでも増やすかい?」

 

「いえ、予備がなくて……」

 

「…………」

 

 微妙な空気の中、イレイザーヘッドが口を開く。あえて読まないようだ。

 

「さて、それぞれ試験会場に散ってもらおう。……ああ、緑谷と夜嵐は最後だ。全員、この3人の試験は見てみたいだろうしな。では、それぞれバスに乗って移動しろ」

 

『はいっ!』

 

 と、それぞれがバスに乗り、各試験場へと向かっていく。

 

「緑谷ぁ! 絶対合格しようぜ!」

 

「うん、勿論だよ!早速作戦会議をしよう!」

 

 ともあれ、気合を入れる二人。相手はNo.1ヒーローオールマイト。ハンデがあるとは言え、楽観など微塵も出来る相手ではない。

 

「それで方針だけどよ、どうする?」

 

「逃げの一択……って言いたいところだけど、オールマイトがそれを許すとも思えない……。多分、二人が背を向けた時点で即捕まえられると思う」

 

「俺も同意見だ。俺たちは追い詰められたネズミになっても、ネコを噛むことくらいは出来るんだって見せつけてねぇとな。だけど、逃げが主体って事では良いよな?」

 

「勿論! 隙が有れば、お互い即出口に駆け込もう!」

 

「ウッス! それで行くぜ!」

 

 方針が決まると、お互い拳を合わせて、気合を入れる。それから、モニタールームへ向かって皆の試験を見学するのだった。各々の先生が、それぞれ弱点を的確についていく様は、流石プロヒーローと言わざるを得ない。

 

「凄いね……」「あぁ……」

 

 砂藤・切島ペアの様にあえなく倒れてしまうペアも有れば、常闇・蛙吹ペアの様に持てる個性を見事出し切り合格したペアも有る。それに、瀬呂がやられ峰田が根性を見せて合格するなど、意外な結果を出したペアも有った。そして、どれもが……

 

「うおおおおおおおっ! 熱いッス! 燃えるッス! これが、雄英の試験ッスか!」

 

「うるさいよ、静かにおし!」

 

「すいませんでした!!」

 

 床に頭を叩きつけて謝罪する夜嵐。だが、興奮が冷めやらぬようだ。元々熱い男なだけに、ここまで熱いものを見せられては我慢もできなくなるだろう。緑谷も、個性ノートを取り出して皆の情報をさらに補充していく。そして、段々と試験を終えたクラスメイト達が戻ってくる。

 

「だーーーっ! ダメだった!」

 

「すまねぇ、切島……途中で眠くなっちまって……」

 

「いや、俺の方こそ途中で硬化が切れちまって……」

 

「ふ、二人共どんまい!」「次、頑張るッス!」

 

「おう!次はこうは行かねえ……!」「もっと、個性の持続時間伸ばさねぇとな……」

 

 負けたのに次へ切り替えられている切島・砂藤ペア

 

「あ、梅雨ちゃん、常闇君、合格おめでとう!」

 

「ケロケロ、ありがとう緑谷ちゃん。夜嵐ちゃんと一緒に頑張ってね」

 

「敵は強大――遙かなる高み――しかし、貴様らなら超えられることを信じている……」

 

「おう! やってやるぜ!」

 

 見事合格してきた常闇・蛙吹ペアなど、見ていた二人はそれぞれに感想や反省点を出し合っていく。モニター越しに見ていたからこそ、分かる情報も有るのだ。

 

 

 そして、ほぼ全ペアが終わった辺りで、緑谷と夜嵐も試験会場へと移動する。バスにオールマイトも一緒にちょこんと乗っているのがものすごくシュールである。だが、オールマイトと話せるレア機会なので、夜嵐はこれがチャンスとガンガン話しかけていた。オールマイトも、普段あまり出来ない生徒との交流ができて実に楽しそうだ。そして、ほんの数分揺られてバスが停まる。

 

「じゃ、これから私は配置につくから!」

 

 そう言うと、一瞬で見えなくなるオールマイト。正直ハンデを付けている気が全くしない。――だが……それを乗り越えることこそ、雄英の校訓。Plus Ultraの精神だ。

 

「おっし、緑谷!行くぞ!」「うん!」

 

 ガシッとお互いに手を合わせ、気合を入れる。

 

 "うちのクラスのトップスリーの内の二人のペアか……どうなるのかな?"

 

 "あいつら、マジでスゲーからな"

 

 "でも、オールマイトはもっとスゲーぞ"

 

 皆もモニターにかじりついている。これからの試験に、何よりオールマイトが動くことに皆の興奮が高まる。

 

 "緑谷ー!頑張れよー!"

 

 "夜嵐君も! 熱くなりすぎないようにねー!"

 

 聞こえなくても思わず応援してしまう。気分はなんだかスポーツ観戦だ。

 

 "お前達、真面目に見ろ。何のために最後に回したと思ってるんだ"

 

 と、終わった教師たちもゾロゾロとモニタールームに入ってくる。皆が皆、やはり興味はあるのだ。

 

『いよおおおおおおし! それじゃあ行くぜぇ! 3!2!1!スタート!』

 

 何故か、スタートの合図をプレゼントマイクが出している。すっかり実況する気満々の様だ。

 

 スタートと同時に、物陰に隠れる二人。やはり、見つからないなら見つからないに越したことはない。物陰から物陰へ、こそこそすばやく動く二人。

 

 "やっぱりそうするよな" "オールマイトとガチンコとか考えたくもねえ……"

 

 まず、どう動くかにしろ、オールマイトの位置と様子を確認してから……そう思っていた二人だったが――その考えは、甘過ぎた。

 突如、轟音と暴風と共に、街の一角が吹き飛ばされる。

 

「「!?」」

 

 "うおおおおおおおいっ!?" "マジかよオールマイトォ!?" "ふ、二人共大丈夫!?"

 

「街への被害などクソくらえだ。試験だなんだと考えてると痛い目見るぞ。私はヴィランだ、ヒーローよ。真心込めてかかってこい」

 

「50%! スマアアアアアアアアアアアッシュ!」「雄風ぇ!」

 

 オールマイトの声が聞こえるや、砂埃の中から後先考えず全力で左右から攻撃を仕掛ける二人。しかも、緑谷は近距離、夜嵐は遠距離の二段構えである。並のヴィランなら、これだけでもうノックアウトされるに違いない。だが――

 

「いきなり全力ブッパ、良い判断だねぇ」

 

 並でないヴィランであるオールマイトは、クロスさせた腕を左右に開く。ただその動作だけで、風を打ち消して夜嵐を吹き飛ばし、緑谷の渾身のスマッシュを受け止め、また反対側に弾き飛ばす。

 

 "やべええええええええ!?" "何処にハンデが有るんだよオールマイトの!?"

 

 一瞬で弾き飛ばされる二人だが、思考を途切れさせること無く即座に次の行動に移る。緑谷が即起き上がって、オールマイトとは反対方向に走り、それを砂埃で覆い隠して視界を途切れさせる。

 

「HAHAHA! 煙幕は確かに有効だ――私で無ければなぁ!」

 

 緑谷の方に走りつつ、軽く腕を一振りするだけで砂埃を全て払いのける。だが、その払い除けた動作をした後の腕に向かって、緑谷が突っ込んできた。

 

「(逃げたフリか!)」

 

 "うおおおおおおっ!" "凄いですわ二人共!"

 

「捕獲――!」「は無理なんだよなぁ!」

 

 だが、緑谷が見えてから超反応で上半身をずらすと、そのまま緑谷の足を掴み、そのまま夜嵐に投げつける。タイミングが完璧に決まったのに、それでもねじ伏せるのがNo.1ヒーローたるオールマイトの底力だ。

 

「ゲハァっ!?」「うわっ!?」

 

 突風で威力を弱めるも夜嵐に激突し、そのまま錐揉みで地面に倒れる二人。

 

「ヘイヘイヘイ! どうしたどうした、そんなものか!?」

 

「……ヤバいッス……想像以上ッス……!」

 

「うん、敵にして初めて分かる、この威圧感、判断力……!」

 

 "えっ、ちょっとオールマイト本気出し過ぎじゃ……" "こ、これって試験なんだけど……"

 

 実力行使が難しいと判断するや、即逃げる方向に思考を切り替える。しかし、二人共逃げるだけではダメだ。どちらかが止めねばすぐ追いかけてくる。そして、足止めは今回は緑谷が行う。

 

 クラウチングスタートの体勢を取ると、オールマイトに向かう。

 

「行くぜ緑谷ぁ! "順風!"」

 

 緑谷のスタートと同時に、風で射出。超スピートで、全力でオールマイトにぶつかる。

 

「50%……エア・ジョージアスマアアアアアアアアッシュ!」

 

 オールマイトに蹴りが炸裂し、幾らか吹き飛ばすと、その横を夜嵐が駆け抜ける。

 

「任せたぜええええええっ!」「行けええええええええッ!」

 

 蹴りからの着地、更に左右拳のラッシュ、ラッシュ、ラッシュ! だが――

 

「同じ攻撃ばかりだと、見切られるぞ少年!」

 

 ラッシュの癖を見抜き、出来た隙に、腹パン1発。その一発で、今まで入れた数十発が全てひっくり返される。うずくまる緑谷をほうっておき、対象を夜嵐に変えると、一気に距離を詰め、足で地面に押し付けた。

 

 だが、そんなオールマイトに飛んでくる衝撃波。腹を押さえながら、何とかデコピンで起こす衝撃波で遠距離攻撃するも、虚しくかき消された。

 

 "や、やばすぎるぞオールマイト……" "コノ試験、ココマデ厳シクテイイノカ?"

 

 見ている側も戦慄する恐ろしさである。尤も教師陣は訝しんでいたが。

 

「HAHAHA! パワー・スピードは良いけど意外さが足りないなぁ! 君たち、()()()過ぎるんだよ!」

 

「「!」」

 

 確かに、今までの攻撃は、兎に角パワーやスピードを上げての攻撃や風をぶつけるだけだった。オールマイトのパワーやスピードばかりに目が行き、技巧にまでは行っていなかった。

 

「旋風ぇ!」

 

 夜嵐の風が、竜巻のようになってオールマイトを包み込む。一緒に周囲の瓦礫の山が舞い上がるほどの威力である。そして、瓦礫が地味にオールマイトに当たる。

 

「イチチッ、確かにチョッピリ痛いけど、この程度かい?」

 

「いや……とっておきの物が有るッス! 緑谷ぁ!」「おう!」

 

 その竜巻の中に迷いなく緑谷は飛び込むと、瓦礫を足場に、瓦礫から瓦礫へと飛び移り、オールマイトの周りを回り始める。その動きはまるで……

 

「グラントリノかっ!」

 

「はいっ、参考にしました……!」

 

 竜巻の中をピンボールのように跳ね回り、四方八方から手錠をかけようと狙う緑谷。それを目で追って対処しているオールマイトだが、こっそり忍び寄るのはもう一つの手錠。繊細な風のコントロールで、竜巻の中に手錠を潜り込ませる。

 

 "うおおおお!" "す、すげぇ……あの二人……!"

 

 そして、タイミングを合わせ、2つの手錠が同時にオールマイトに襲い来るが――

 

「見事、だが、まだまだぁ!」

 

 アッパーカット1発で、竜巻も瓦礫も緑谷も手錠も、全て吹き飛ばした。

 

「「なあああっ!?」」

 

 渾身の一撃を更に外され、二人の心に軽く絶望感がよぎる――が、まだ、終わったわけではない。最後まで、諦めない。

 

「スマアアアアアアアアッシュ!」 「順風!」

 

 スマッシュで空気を殴り、その反作用でゴールまで一直線に飛んでいく。そして、それを後押しする夜嵐。

 

「行かせるかあああああああああっ!」

 

 だが、阻もうとするのはヴィランオールマイト。空中でも加速しつつ、背中から迫ってくる威圧感に背筋が寒くなりつつ、それでも進み続け――ゴール手前、ギリギリで、止められた。地面に叩きつけられ、動きが足で封じられる。

 

「ま、まだ……僕は……僕たちは試験に……!」

 

 オールマイトの足の下、それでも地面にスマッシュを撃ち、もがこうとするが最後まで脱出はできなかった。そして、追ってきた夜嵐も、ギリギリの所で間に合わなかった。

 

『終―――了―――!』

 

「…………ごめんね、夜嵐君……間に合わなかった……」

 

「俺こそ、すまねぇ……もっと、風の力が強ければ……」

 

 疲労とダメージから、地面に倒れて、お互い謝る二人。歯を食いしばり、涙すら浮かんでいた。すべてを出し切ったのに、勝てなかった。特に緑谷は、オールマイトの期待に応えられなかった様に思えて、余計に涙が止まらない。

 

「う、うぅぅ……うぁあ……」「畜……生……!」

 

 "う、ウソだろ、あの二人が……" "オールマイト、マジやべぇ……"

 

「(……頑張るんだ、少年たち。その悔しさが、涙がきっと君たちをもっと強くする……。だから、それまでは……私が壁として立ち塞がろう……そして、いつか私も超えていってくれ……)」

 

 そんな二人を、優しい目で見守るオールマイト。きっと、彼らなら大丈夫だと、そう信じて。

 

『あの、オールマイト。なんだかいい話でまとめようとしないで下さい。これ、試験なんで生徒が突破できる難易度にしないとダメなんですけど』

 

「……………………………………あ」

 

 やっちまった感が、顔に張り付くオールマイト。見ている生徒たちも呆れ顔、教師たちは一様に頭を抱えている。師匠としてはちょっと成長できたけど、教師としてはダメダメに過ぎた。




公式ファンブックによると、オールマイトはパワー・スピード・テクニック・知力・協調性がオールSの超ヒーロー担っています。フィジカルにばっかりに注目が行きますけど、テクニックや判断力もクソヤバイんですよね。

しかし、新人教師オールマイト。期末試験なのに、少年漫画の師弟物のノリをやらかす。
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