「うう、畜生……」「くっ………届かなかったッス……」
悔しそうに倒れ伏す緑谷と夜嵐。そして、横でオロオロしているオールマイト。そして、めっちゃ気まずいモニタールームの生徒及び教師一同。どーすんだ、これ感がものすごい漂っていた。だが、オールマイトには制限時間が有るので、とりあえず先に呼び戻すことにした相澤先生。
『……あー、その、オールマイト。ちょっとお話がありますし、気まずいでしょうし戻ってきて下さい。今すぐに』
「あ、うん、わ、分かった。じゃ、そこのお二人、また後で!」
「あ、は、はい……」「うっす………」
そう言うと、逃げるように去っていくオールマイト。心なしか、背中が煤けている。オールマイトが去っていく中、二人はお互い支え合い、何とかバスへと戻っていく。緑谷はフルカウルの上限50%を常に出していたせいで、夜嵐は風の出力を限界まで上げつつ、コントロールも利かせる両立をずっと続けていたため、消耗しきっていた。バスへ乗り込むと、倒れるように椅子に体を預ける。しばらく、お互いの荒い呼吸だけが響く。
「……期末、落ちちまったな……」
「……うん……」
「……補習地獄か……。でもよ、勉強だけじゃもったいないし、他の落ちたやつも巻き込んで、特訓しようぜ。……次は……負けねぇ……!」
「……うん!」
敗北に打ちのめされる二人。しかし、それでもすぐに立ち上がる。ヒーローに、倒れている暇は無いのだから。
一方その頃、雄英のとある一室。オールマイトは床に正座させられ、回りを教師陣が取り囲んでいた。皆一様に、目が冷たい。
「いいかい、オールマイト君。あのやり取りは確かに美しいし、君が彼らの壁になろうとしたのも分かる。だがしかしだね、これは期末試験の一環であり、全力と最善を尽くした生徒がクリアできる難易度で無くてはならない。どうあがいてもクリアできないクソゲーではいけなくてでね。他の皆も見ているしあの高さのハードルがデフォルトと思われても困ってしまうのだよ。師弟ならば、最後の最後に超えられる壁でも良いのであろうが、君の立場は教師であってだね……」
長々と、とても長々と続くお説教。トゥルーフォームのオールマイトは、床に座り、平身低頭ひたすら謝り続けている。
「――で、彼ら二人の合否ですが……」
ひたすら校長に説教されているオールマイトをほっといて、判定を始める他の教師達。
「マア合格ダロウ」
「不意打ちを受けてからの素早い反応、攻めと逃げの判断……技の威力や精度にチョイス。どれも適切。惜しむらくは相手が全くハンデを背負ってないに等しいオールマイトが相手だったということだけですね。これを不合格は流石に不合理に過ぎる」
どうやら、満場一致で合格のようだ。逆に、試験内容自体は成功だが、不合格に落とされた者も居る。瀬呂に、麗日と青山だ。それでも瀬呂は峰田を逃した分まだいいが、麗日と青山は相手が本物のヴィランだったら何も出来ずに終わっていた。
「――と、ではこの様な形で。校長、後は頼みます」
「ああ、任せておきたまえ! 君が平和の象徴として忙しいのは分かる。しかし、教師でもあるのだから――」
「(し、しびれるっ……!)」
こうして、オールマイトはひたすらに校長からのお説教を受けるのだった。
次の日、1-A。そこでは一部のメンバーが、お通夜の様に落ち込んでいる有様だった。
「皆……土産話っ……ひぐっ……楽しみに……ううっ、してるっ……がら!」
「み、皆様まだ分かりませんわ! どんでん返しがあるかも知れません……!」
「八百万、それ、口にしたらなくなるパターンだ!」
「なんですって!?」
生真面目にも動揺する八百万。やはり天然のようだ。
「試験……一矢報いることも出来なかった……」「……ッス」
「うおおおおお!? テンション低いぞこっちの入試一位コンビも!?」
「やむ無し。絶望は歩みを止める……」
隅っこの6人はひたすら落ち込んで、クラス中が心配している。そして、さらにもう一人。
「わかんねえのは俺もさ。峰田のお陰でクリアしたけど寝てただけだ」
それを聞いて、露骨に耳に手を当て称賛を聞く峰田。
「で、でも……それは瀬呂君がミッドナイトから逃したお陰だし……」
「……あ~、でも、それどれ位加点されんのかな……。兎に角、採点基準が明かされてない以上は……」
「同情するならなんかもう色々くれ!!」
と、そこへ勢いよく入ってくるのは相澤先生。「予鈴がなったら席に着け」と何時も通りだ。
「おはよう。今回の期末テストだが……」
第一声に、悲壮な表情になる敗北組。
「残念ながら赤点が出た」
空気が重い。
「したがって……林間合宿は全員行きます!!」
「「「「「「どんでんがえしだあ!」」」」」」
「うおおおおお! 俺も行って良いんスか!?」
「静かにしろ夜嵐。そもそも、お前赤点じゃねえ」
「えっ!?」
「筆記の方はゼロ。実技で、切島・上鳴・芦戸・砂藤。あと瀬呂と麗日と青山が赤点だ」
「うえええええええええっ!?」「…………アハッ☆」「確かにクリアしたら合格とは言ってなかったもんな……クリア出来ずの人よりハズいぞコレ……」「う、ウチらなんてもっと恥ずかしいわぁ……」「う、美しくないね……ミ★」
赤点組は、行けることに喜んでいるが、逆に課題をクリアしての赤点組はどん底に叩き落された格好だ。皆一様に頭を抱えている。
「今回の試練、我々ヴィラン側は生徒に勝ち筋を残しつつどう課題と向き合うかを見るように動いた。裁量は個々人によるが。でなければ課題云々の前に詰む奴ばかりだったろうからな」
「本気で叩き潰すとおっしゃってたのは……」
「追い込むためさ。そもそも林間合宿は強化合宿だ。赤点採った奴こそ、ここで力を付けてもらわなきゃならん。合理的虚偽って奴さ!」
「ゴーリテキキョギィイー!!」
悪い笑顔の相澤先生に、クラス中から総ツッコミが入る。意地悪な人だ。横では、敗北組がわあい!と喜びを顕にしている。
「またしてやられた……! さすがは雄英だ! しかし! 二度も虚偽を重ねられると信頼に揺らぎが生じるかと!!」「わぁ、水差す飯田くん」
シュタッと手を上げ起立しツッコミを入れる飯田。だが、今回はそれを受け入れる様だ。
「確かにな。省みるよ。ただ全部嘘って訳じゃない。赤点は赤点だ。お前らには別途に補習時間を設けている。ぶっちゃけ学校に残っての補習よりキツイからな。」
『――――!!』
喜色から一転、表情が凍りつく赤点組。喜びが半分ほど絶望に食らい付くされた。
「あ、あの~、所で僕たちの判定は……」「そ、そうッス! 負けちまったッス!」
「あの内容で落としたら誰が合格できるんだよ。オールマイトは校長からお説教&反省文コースだ。全くあの人は加減できないんだから……すまんな、緑谷、夜嵐。ほら、オールマイトからも」
『え?』
「わ、わわわ、私が申し訳無さがいっぱいの気持ちで来た!」
冷や汗ダラダラ流しつつ、入ってくるオールマイト。そして、教壇に立つなりゴンッ!と台にヘッドバッドかましつつ謝る。
「さ、昨日は本当に済まなかった……! 二人には心から詫びる……どうもすみませんでした……!」
「い、いえいえいえいえいえいえいえいえいえ!?」
「了解ッス! 昨日のオールマイト、向かっていったけど熱くて凄かったッス!」
大抵のことは引きずらない夜嵐。ともかく、二人からは許されたようだ。
「どうもありがとう……と、予定があるので済まない、次の授業へ行かねば!」
そうして謝ると、あっという間に姿が見えなくなる。相変わらず忙しい人だ。
「……ま、そんなわけだ。お前ら二人はむしろ成績上位での合格。じゃ、合宿のプリント回すぞ」
何はともあれ、無事に全員で行けることになったのは何よりと皆が思っていた。夏休みまでの残りの期間、それぞれがまた思い思いに過ごしていく。その彼らの日常を、これから覗いていくとしよう。
皆さんから思い切り怒られたオールマイトでした。そして、オリ設定として、お茶子ちゃんと青山君が赤点に。あれ、13号が殺す気だったら間違いなく終わってましたからね……。