「君なら私の"力"、受け継ぐに値する!!」
「ち、から……?ひょっとして、"個性"ですか?」
「その通りさ! 私の"個性"は、聖火の如く引き継がれてきたものなんだ」
「引き継ぎ……ひょっとして、僕が拐われたあそこの研究所って!?」
まさか、あの研究所はオールマイトの個性を極秘裏に研究して!? と思ったけど、顔に出てたのかな?思いっきり否定されてしまった。
「いや、あそこで研究していたものは私の個性とは似て非なるもの……あそこで研究していたものは、他者の個性を奪うことが出来る"個性"なんだ」
個性を、奪う。確かに、オールマイトの個性とは似ているようで正反対だ。奪うと、継ぐ。ひょっとして、起源は同じなのかも!?
「HAHAHA、少年、どうやら深く考えるとブツブツ呟く癖が有るようだね」
「はっ!? すいませんっ!?」
一瞬で見抜かれた! オールマイトの前なのに!
「まあ兎も角、だ。私が受け継いだもの、それは
「ワン・フォー・オール」
「ワン・フォー・オール……」
一人はみんなの為に。正に、オールマイトの生き方そのもの。そしてきっと、オールマイトの前の人も、その前の人も、他の人のために生きてきたのだろう。
「一人が力を培い、その力を一人へ渡し、また培い次へ…そうして、救いを求める声と義勇の心が紡いできた力の結晶!!!」
凄く、光栄だ。けど……
「そんな大層なもの何で…何で、僕に?」
「元々後継は探していたのだ…そして君になら渡しても良いと思ったのさ!! "無個性"で、それでもヒーローを目指し続けていた君は、
視界が滲んだ……あ、これ、僕の涙……?
「まァしかし君次第だけどさ! どうする?」
迷うことなんて無い。涙なんて今は邪魔だ。最高のヒーローが僕を認めてくれたなら!
「お願いします!」
断る理由なんて、無い! 僕がそう宣言すると、分かってたと言わんばかりにニヤリと笑うオールマイト。
「即答、そう来てくれると思ったぜ」
それから2日後、朝5時。僕はゴミだらけの海浜公園に居た。
「さて、緑谷少年。どうやら君の身体は私の個性を身体に入れるだけの器は既に有るようだね。おめでとう、君の努力は無駄ではなかった!」
HAHAHAと笑いつつ、褒めてくれるオールマイトの言葉。それだけで、これまでの苦労の全てが報われる気がする。嬉しくて、つい全力で頭を下げちゃう。
「ありがとうございます!」
「HAHAHA! では、善は急げだ早速君に個性を渡そう!」
一体、どんな風に継承をするのか。オールマイトが1本髪の毛を抜いたけどそんな事は気にならないくらいドキドキで――
「食え」
「へぁ!?」
えっえっえっ?
「別にDNAを取り込められるなら何でも良いんだけどさ! さあグイッと!」
「な、なんとなく仕組みは想像できるけど思ってたのと違いすぎる……」
とりあえず、持ってきたスポーツドリンクでぐびっと飲み込む。あ、めっちゃ長い……
「あれ、何の変化もない?」
身体を見下ろして手足を動かすけど特に何も変わったようには感じない。
「そりゃそうさ!!君胃腸を何だと思ってる! まあ2~3時間もすれば実感湧くさ」
「観念的と思ったらすっごい生物学っぽい!?」
「HAHAHA! まあ細かいことは気にするな! それよりその器を更に強化するために、とりあえず今日からここの掃除だ! 海岸線を蘇らせ、空き缶一つ落ちてないようにするんだぞ!」
ヒーローの基本は奉仕活動、その一歩か!よーし、やるぞ!
「はい!」
掃除をする、ただそれだけなのにこのボランティアはかなり効く。下は砂地だし、割れてたらそこは避けて持たなきゃならないし、重いし普通の器具を使ったトレーニングとは違って、色々なところの筋肉をランダムで使うから、体感でかなり効果がありそうだ。
少し休憩を入れつつ、汗だくになりながら運んでいると、それは突然僕の中から湧き上がってきた。
「っ~~~、こ、これが、ワン・フォー・オール……?」
「受け継いだか、少年! では、早速試してみよう! 全力を出す時はだね、ケツの穴をグッと締めて心の中でこう叫べ! スマッシュと!」
これが、オールマイトから受け継いだ力! 早速全力をためしt……
「あ、あの、オールマイト。オールマイトから受け継いでさらにパワーが上がった
「あ」
あ、オールマイトの笑いが止まった。じゃなくて!?
「あ、あの、いきなり全力はまずいと思うんでとりあえず1/10位の力で試したいんですけど、どんな感じでしょう!?」
さあ、オールマイトはどんな感覚で普段から……
「こう、あれだよ。うっかりドアノブを捻り切らないようにとかそういう力加減で……」
「……」
多分、僕今笑ってるけど表情が引きつってる。
「そ、そうだ! こう、そ~っとふって風をぶわー!じゃなくてぶわっ!程度にするような感覚で……」
この言葉で確信する。オールマイトって……
「……わ、分かる?」
「分からないです」
「だよね~……」
超天才型だ! 天才過ぎてコーチに全く向いてないタイプの! ま、まさか全く参考にできないなんて考えてもなかった!?
「と、とりあえずだね~緑谷少年、ま、まずは力を自覚したら適当に動いてみよう!」
「は、はい!」
そ、そうだ、何を贅沢な! 元々無個性が最高の個性を受け継げたんだ! 戸惑ってる場合じゃない!
座って、目を閉じる。指、手首、肘、肩……順々に筋肉の、骨の動きを意識する。体中、動かせる箇所を全て一つ一つ確かめるように動かして、自分というもの全てを把握する。
そうする事で、少しずつ見えてきた。今までの自分とは違うモノ。少しずつ、僕の身体に溶け込んでいく。どこまでも、果てが見えない眩しい光。その光を、ほんの少しだけ自分の体の隅々に行き渡らせる。きっと、この感覚!
「で、できたぶわっ!?」
「み、緑谷少年っ!?」
た、立ち上がろうとしたら動きが速すぎた! まるで自分の体じゃ無いみたいに! これが、"個性"!
「だ、大丈夫です! で、でも、少し分かってきました!」
目を開けると、僕の身体を走る緑の光。これが個性発動の印か! ……か、かっこいいけど隠密作戦に向かなそう……ってそれはどうでもいいから!
「個性を入れる比率はさっきと一緒……立ち上がるっ!」
もはや意識すらしない繰り返し続けてきた動き。でも、意識するとこんなに沢山の動作と力の配分をしていることが分かる。個性を維持したまま、立ち上がって、構える。放つは、オールマイトの技!
「スマアアアアアアアアアッシュ!」
叫びを上げて、虚空を殴りつけると同時に感じたのは、経験のない速さと、風圧。周囲の軽いゴミがみんな吹っ飛んだ。
「は、はは、ははは、ははははは!」
「しょ、少年?」
「で、出来た! オールマイトから受け継いだ個性で、オールマイトの技を、半端だけど、出せたんだ!」
胸の奥から湧き上がる喜びが止まらない。
「や、やった! やった!」
飛び跳ねてみると、身体がこんなに軽い! ほら、こんな高さから自分の力で見下ろすなんて、今までで初めての経験!
「あはっ、あははははっ!」
景色が、すごい速さで流れる! 砂の重さなんかちっとも気にならない! 小さなゴミ山なんてひとっ飛び、凄い、凄い、すg「STOOOOOOOOOOP!」「ぐえっ!?」 しょ、衝撃がっ……
「HAHAHA! 少年、嬉しいのは分かるが落ち着くんだ! 君が今しなければならない事は違うだろう?」
ふと気がつくと、オールマイトが僕の首根っこをひっつかんで持ち上げてた。こ、これじゃ猫みたいって言うかちょっと苦しい……でも、少し落ち着いた。
「そ、そうでした! これから、特訓の続きですね!」
力を維持したまま、誰が捨てたかわからないロッカーを持ち上げる。必要な分の力を維持したまま、バランスを取り、軽トラまで運ぶ。今までの苦労が、まるで嘘のように楽々と運べた。
「HAHAHA! これでは少し楽過ぎるかな? よし、では少年。個性有りと、個性無しで交互に運び給え! 筋力と個性のコントロール、両方を鍛えるんだ!」
「はいっ!」
こうして、僕の本格的なヒーロー特訓が始まった。勿論、ただ体を鍛えるだけじゃなく、技術の方も。
片付け始めてから段々暑くなってきたとある日。流木を、海に思い切りぶん投げて、拾ってきた石を足元に置く。それでもって、狙いを定めて……
「シュートォッ!」
10%位の力で、投げつける! あ、ちょっとズレた! やっぱり、パワーが変わると軌道も変わっちゃう。
「ふむ、投擲を鍛えるのかね? 緑谷少年?」
オールマイトも興味深げだ。
「はい。オールマイト程のフィジカルがまだ出せないですし、遠距離攻撃にはメリットも多いですから!」
オールマイトほどのパワーとスピードが有れば、ヴィランにすぐに追いついて救出も出来るけど、僕はまだまだ。なら、出来る手段を増やしていくしか無い。
「シューーーーーーーート!」
今度は命中! だけど……
「ふ~む、見事にへし折れてしまったね」
「はい。これだと並のヴィランじゃ当たったら死んじゃいますね……。トリモチ玉や催涙玉みたいなガジェットが有れば良いんですけど……」
そう言いつつ、今度はビー玉サイズの小石を幾つかと、10円玉を3枚重ねて貼り付けたものを幾つかポケットに入れる。
「いいアイディアだ! それは何処かに依頼するとしよう……おや? 次は何をするつもりだい?」
「えっと、次は指弾を試してみようかと」
適当に空き缶をゴミの山に配置して……と。
「ショット!」
思い切り親指で弾く!弾く!弾く! 小石の方はそこそこ外れたけど、10円玉の方は結構良い命中率を出せていた。
「ほう、動作がこんなに小さいのにこの威力とは」
「まだ、全然力を出せていないのに、本当に凄いですよこの個性は!」
指弾は命中率に不安が残るけど、手首だけで投げるのはどうだろう? 紐を通した5円玉の束を出して、一つ掴んで、と。10m位離れた目標に……
「ショット!」
命中!
「ショット!ショット!ショット!ショット!」
命中命中命中命中!
「WOW! びっくりだ! まるで時代劇のヒーローみたいだね!」
「はい、そこからアイディアを貰いました! で、でも5円玉だと小さいし、500円玉に穴を開けるのも勿体無いし……」
つい癖で、またブツブツ呟きながら自分の考えに没頭する。でも、オールマイトはそんな僕を笑わないでじっと見ていた。
「はっ!? す、すいません八木さん!」
「少年、夏休みに時間は取れるかね?」
「あ、は、はい!勿論! 作ります!」
「HAHAHA! それは結構! ではパスポートを用意しておいてくれ!」
「へ? ぱ、パスポート?」
な、何で外国に?
「まあ、正確には外国では無いのだが……私と一緒に、I・アイランドに付いて来て欲しい。君に、会わせたい男がいる。私の親友であり、スーツの製作者だ」
「ま、まさか、デヴィット・シールド博士!?」
オ、オールマイトのコスチュームを作った天才博士! ま、まさかそんな人に会わせていただけるなんて!?
「君の才能とその技術と努力は、そんな子供の手作り工作のガジェットだけを利用させるには惜し過ぎる! デイヴなら、きっと君の相談に乗ってくれるだろう!」
「は、はい! 光栄です!」
覚醒時、ちょっとオーバーな喜び方かな?とも思いましたがじっくり自分の力を自覚して、人目を気にしなくていい場所だとすればこれくらい我を忘れてもおかしくない!……はず
そしてオールマイトとの対比としてガジェットや小細工を沢山使う緑谷君です。ワン・フォー・オールの恐ろしい力を利用するとただその辺の石を投げるだけで並のヴィランはぶっ倒れますからね。それを敵に合わせて変えられるとか何かヤバイことになりそうです。
そして次話ではI・アイランドへ。映画見ちゃったら、出したくなってしまいました。後悔はしていない。