豪華絢爛たる緑谷出久のヒーローアカデミア   作:両生金魚

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※注意!コミック勢力でネタバレが嫌なお方はおまけを飛ばして下さい

何となく適当におまけを書いてみたら、筆が乗っちゃってこんな量に……。


女子三人集まれば……?

 職場体験が終わって数日後、今日も皆との訓練を終えてまったりしていると、印照さんから電話がかかってきた。丁度、終わったタイミングを見計らってくれたらしい。皆に頭を下げながら、着信に出る。

 

「もしもし、緑谷です。どうしました?」

 

「どうもこんばんは、緑谷さん。この間は発目さんを紹介してくれて、本当に感謝していますわ」

 

「い、いえいえ……そんな、大したことじゃないですし!」

 

 印照さんの"個性"はIQ。そんな天才的な頭脳を持っている人との会話は発目さんにも凄く良い刺激になったみたいで、次の日の訓練の時間には、いつもの5割増しで発明品が持ち込まれた。――その分大変だったけど……。

 

「それで、是非直接会ってお話してみようという事になりまして……大変心苦しいのですが、土曜日の午後から、雄英の授業が終わりましたら案内して頂いてもいいでしょうか? 発目さんも、一緒にあなたのガジェットを考えたいようでして……」

 

「そ、そんなことでいいなら是非喜んで!」

 

 発目さんとメリッサさん、そこに印照さんという3人目の天才少女が開発に加わってくれるなんて、嬉しすぎる!

 

「ほ、本当にありがとうございます!」

 

「いえいえ。私も本命は、私の装備の相談ですので――緑谷さんもあまりお気になさらないんで下さい」

 

「そ、それでもです!」

 

 電話越しなのは分かってるけど、思わずペコペコと何度もお辞儀をしちゃう。色々な人達に支えられて、僕は本当に幸せ者だと思う。

 

「では、土曜日を楽しみにお待ちしています」

 

「こちらこそ!」

 

 その後ちょっと雑談をしてから電話を切る。土曜日が楽しみだ――って、不穏な空気が……。恐る恐る振り返ると、そこには怖い顔をした峰田君と瀬呂君と上鳴君が。

 

「み~~~ど~~~り~~~や~~~……その電話の相手の女は誰だぁああああああああああああ

…………」

 

 恐ろしく恨み辛み妬みの籠もった声でこちらを見てくる峰田君。あ、あの、血涙流さなくても……漏れた声が聞こえちゃったか……こ、怖い……。

 

「え、えっと、この間救けた人で……は、発目さんと話がしたいから、是非案内して欲しいって言われて……」

 

「この間救けたって、写真で一緒に写ってた聖愛のお姉さまか!? そうなんだな緑谷!?」

 

「女にかまけやがってええええええっ! お前なんて爆破の個性を持つヴィランにでも爆破されちまえええええええええ!」

 

 待って、最後待って! 何かそれ凄く洒落にならなそう!? 主に脳裏にかつての幼馴染がよぎっちゃったんだけど!?

 

「ほ、本命は発目さんだから! た、たまたま僕が知り合いだっただけだから!」

 

「じゃあ何であんなに楽しそうに話してたんだよぉ! 後ろからでもうきうきが分かるぞてめぇ!」

 

「い、いやそれは、僕って女の人と話すのあんまり慣れてないからで!?」

 

 迫ってくる3人の迫力が怖い……助けを求めてあちこち見るけど、女性陣もちょっと冷ややかな目で見てくるし……!? ど、どうしてこんな事に!? そ、そうだ、夜嵐君なら救けてくれるはず! 救いを求める目で見ると……

 

「流石緑谷だなぁ! 頑張れよ!」

 

 と、轟君!

 

「……すげぇ奴だなお前」

 

 常闇君!!!

 

「……己が生み出した災厄の芽……己で摘むが良い……」

 

 い、意外にも常闇君まで冷たい目でっ!?

 

「許せねぇ……許しちゃおけねえが、条件次第じゃ渋々許してやっても良い……」

 

「じょ、条件って?」

 

「そのお姉様を通じて、俺らにも聖愛の子達を紹介しろぉ!」

 

「お嬢様学園のヒーロー科ってなんか良いよな!ロマン有るよな!」

 

「……お、俺もいいって人が居たら……」

 

 必死の形相で要求してくる峰田君と上鳴君、瀬呂君はおこぼれが有ったらって感じで……。で、でも……

 

「ぼ、僕も知り合ったばかりだから、そういうお願いは流石に……」

 

 そう言うと、血涙を流す峰田君と上鳴君。

 

「……そ、相談してみます!」

 

『いよっしゃあ!』

 

 ヒ、ヒーローは人を救けるものだし……切実に悩んでいる二人をほっとけなかったんだ……

 

「ま、ちょこっとだけ期待して待ってるぜ」

 

 瀬呂君はちゃっかりしてるよ、ホント。

 

 

 

 そうして次の土曜日。雄英の土曜は午前で終わりだけど、基本的にヒーロー科の科目が入っているのでみんなクタクタだ。でも、僕は案内する予定があるし……そそくさと制服に着替えて、早く校門に行かないと。

 

 待たせないように急いで校門に行くと……ちょっと人が足を止めてがやがや騒いでいる場所がある。

 

「おい、見ろよあの制服。何処のだ?」「聖愛の? 何しに来たんだろう……?」「すげぇ美人……」

 

 ひょ、ひょっとして……

 

「緑谷さん、こんにちは。今日はよろしくお願いしますわね」

 

 注目を集めていたのは、やっぱり印照さんだった。そして、視線も一斉に集まる。

 

「い、いえいえ、こちらこそ、お待たせしちゃって!」

 

「全然待っていませんわ。そちらこそ、急いで駆けつけて頂いたようでありがとうございます」

 

 優しく微笑んでフォローしてくれるんだけど、その分周りの反応が……!

 

「緑谷が聖愛の人連れ込んでる……」「くそっ、何でアイツばっかり……!」「やっぱりモテるのか、1位はモテるのか……!」

 

 い、急いでここを離れよう……。印照さんの首に許可証が下げられているのを確認して、と。

 

「そ、それじゃあこっちです!」

 

 他の人の視線を気にしないようにして……サポート科まで真っ直ぐ! で、でも放課後だから人が多い……。ちらりと印照さんを見ると、ヒソヒソ話している男子に微笑んで照れさせたりしてるし、凄い余裕だ……!

 

 あんまり周りを気にしないように校舎の中を進んでいくと、そこに居たのは心操君と……相澤先生? 意外な組み合わせだ。

 

「あ、心操君こんにちは。相澤先生と……どうしたの?」

 

「ああ、捕縛布の使い方、習ってんだ」

 

「へえ! 相澤先生の捕縛布は凄いし、習得すればきっと凄い武器になるよね!」

 

「ああ、俺もそう思って習ってる所。えっと、そっちの人は……?」

 

「えっと、聖愛学園の……「印照才子と申しますわ」」

 

 ペコリと優雅にお辞儀をして、二人に挨拶する印照さん。あ、相澤先生も軽く頭を下げてる。

 

「捕縛布……イレイザーヘッドの武器……これも汎用性が高そうですわね……」

 

「ご興味が?」

 

「はい。私の"個性"も心操さんと同じで、直接戦闘には向きませんので……。なので、自分の戦い方を模索している最中なのですわ」

 

 相澤先生の問いに答える印照さんの表情は、やや曇っている。確かに、何か確固たる武器が無いとヒーロー活動はなかなか辛いだろう。

 

「サー・ナイトアイは5キロ有る印鑑を武器にしてましたね……。と、そういう、何か手段を求めるためにサポート科の発目さんに会いに来たんですよ」

 

「なるほど」

 

 僕の説明に、頷く心操君。彼もまた、様々なガジェットも試している最中なのだろう。

 

「……ふむ、良かったら後で心操の訓練を見学されていきますか?」

 

「よろしいのでして?」

 

「はい。強くなろうと努力する見習いを、ほっとくのは教師じゃありませんので。7時位までは居ますので、場所は緑谷に聞いて下さい。じゃ、行くぞ心操」

 

「はい!」

 

「頑張ってね、心操君!」

 

「おう」

 

 お互い笑って、別れる。印照さんは可愛らしく手を振って見送る。さあ、いよいよ発目さんの所に到着だ。サポート科のエリアに行き、開発工房へ。扉をゴンゴンっとノックしてから学生証をかざして入ると、発目さんが夢中になってまたガジェットを弄っていた。

 

「こんにちは、発目さん。印照さんを連れてきたよ」

 

「お邪魔します」

 

 印照さんも入ってくるけど、聖愛の制服と、このメカメカしい部屋が凄くちぐはぐだ。男の子の僕としては、ワクワクする部屋だけど、お嬢様学園の印照さんにはとても珍しいようで、部屋をキョロキョロと見渡してる。

 

「おや、緑谷さんも、印照さんもよく来てくれました! ささ、私は印照さんと、メリッサさんとお話するので、あなたはこのベイビーたちのテストをお願いします!」

 

「うん、了解……って、メリッサさんも!?」

 

「はい。印照さんも来るというので、テレビ電話の予約を取り付けておきました! さ、早く早く!」

 

「わ、わかったから慌てないで!?」

 

 まずは手につける補助ブースターを装着しつつ、二人の方を見ると、大きいモニターのスイッチが入ってメリッサさんの姿が映る。

 

「メイさん、どうもこんばんは……じゃなかった、こんにちは! イズク君も! それで、えっと、そちらの方が……」

 

「印照才子ですわ。本日はよろしくお願いします、メリッサさん」

 

「はい、サイコさんもよろしくお願いします!」

 

「どうもこんにちは! えっと……三人でお話を?」

 

「はい! この間話し込んだ所、沢山のアイディアを出していただきました! それをメリッサさんにも伝えた所、是非話したいと言いまして! それで3人で話せるように呼んだのですよ!」

 

 発目さんがハイテンションだ。それにしても、天才3人の集まりはこうして見ると、オーラみたいな物が凄いな……。早速、3人で色々と話し始めている。印照さんは、自前で持ち込んだティーポットで早速紅茶を入れている。IQが2倍になるなんて本当にすごい個性だ……

 

 そんな三人を眺めつつ、とりあえず1つ目のガジェットを試す。ブースターを作動させると、急加速!? 天井まで昇って叩きつけられたっ!?

 

「あいたたたたたたっ!?」

 

「うーん、ちょっと出力が強すぎましたか。要調整ですね」

 

「だ、大丈夫ですの!?」

 

「だ、大丈夫イズク君!? ちょっと、メイさん、マイルドさは何処に行ったの!?」

 

 二人に心配されるけど、発目さんはあくまでマイペースだ。

 

「いやー、お二人と話す刺激でちょっとテンションが上りすぎちゃったようです」

 

 あはは~って笑うけど僕以外だと洒落にならない……いや、だからこそ僕が実験台をやってるんだけど。

 

「後、重いしかさばるしパワーが有る人向けだね、これ。ジェットの場所を変えられれば、格闘戦にも使えると思うんだけど……」

 

 でも、評価はちゃんとする。ガジェットを幾つか作ってもらってるしね。

 

「なら、腕を軸に回転させられるようにすれば……でもそうすると強度が……」

 

「偏向ノズルは、あまり役に立ちそうにありませんわね」

 

「むしろ、炎を調節して攻撃する武器に使えるかもしれません!」

 

 女の人3人が揃って、するのはガジェットの話題。色気はないけど、みんな真剣そのものだ。だからこそ僕も、全力で実験台になるのだ。

 一つ一つ、それぞれのガジェットを4人で論評しながらテストしていく。その後は、印照さんの番だ。僕が実験台になり、危険と判断され改良された数々のガジェットを、試していく。体育祭で見せたブースターや、小型テーザーガンにスタングレネード、催涙弾なんかは凄く高評価だ。これは、個性が有ってもなくても有効な場合が多い。また、目と耳と鼻で知覚するほとんどのタイプにも効く。ただ、コストがちょっと掛かるのが難点だけど。

 

「ふむ、しかしこれらはあくまで手段の一つ……やはり、私自身にも戦闘能力が欲しいですわね……」

 

 ここに来る途中で心操君を見て、思う所が有ったみたいだ。警棒、杖、トンファー、模擬刀など様々なガジェットを見てるけど、今ひとつしっくり来ない様だ。

 

「そう言えば、ミッドナイトは鞭を使ってましたね。あれ、痛いし拘束出来るし射程長いし武器だけ奪えるし、熟練すればかなり強い武器なんですよね」

 

「鞭……なるほど……」

 

 そう言うと、様々なガジェットの中から鞭を選び出し、ピシッと地面を打つ。……あれ、なんだか凄く様になっているような……。

 

「なかなか良いですわね……なんと言うか、凄いしっくりきますの」

 

 本人も気に入ったようだ……。ちょ、ちょっと怖いかも……。

 

「鞭……となると、強化素材で切れない千切れない素材を使うね!」

 

「柄の部分や先端に色々と仕込んでみましょう! 電気ショックとか定番ですよね!」

 

 メリッサさんと発目さんが早速食いついた……。こ、これから先、どうなっちゃうのかな?と一抹の不安を抱いたけど、それでも戦闘力が付くなら何よりだよね!

 

 

 

 暫く、4人であれこれ相談してたけど、そろそろ6時30分……相澤先生の特訓も見に行きたいな。

 

「それじゃ、そろそろ、相澤先生の所に行きます?」

 

「はい! 今日はとても有意義でしたわ! 是非、またお会いしたいのですが……」

 

「勿論です!」「はい、こちらこそ!」

 

 発目さんもメリッサさんもノリノリだ。3人の会話がとても楽しかったみたいだ。メリッサさんと印照さんの連絡先の交換も終わり、さあ行こうと行った所で……

 

「あ、そうだ、イズク君、確かI・アイランドに来るんだよね?」

 

「はい。雄英体育祭で1位だったので招待されたんです」

 

「それじゃ、それに合わせて二人も来ない? 招待するわ! お父様にも紹介したいし!」

 

「はいはいはい! 是非行きたいです!」「デヴィッド博士にも!? ぜ、是非お願いしますわ!」

 

 メリッサさんの誘いに、二人共食いついた。そりゃあ、こんなチャンス逃せないだろうし……。

 

「それじゃ、招待状送っておくから後で住所教えてね! それじゃ、引き止めちゃってごめんなさい」

 

「いえ、本当にありがとうございます」

 

「ふっふっふ、どのベイビーを見てもらいましょうか……」

 

 お礼を言う印照さんに、野望を燃やす発目さん。I・アイランドでどんな事が話されて、どんなガジェットが生まれるのか……今から楽しみだ。

 

 そうして、次は相澤先生と心操君の特訓へ。捕縛する布の動きは、捕縛する鞭の動きと通じるようで、印照さんが何一つ見逃さないようにと、見入っている。見学するだけじゃもったいないし……折角来たことだし、僕も手伝おう。

 

「心操君、手伝うよ! 適当な武器でも持って、襲えばいいかな?」

 

「えっと、相澤先生、是非やってみたいです!」

 

「良いだろう。だが緑谷、加減しろよ!」

 

「はい!」

 

 そこら辺に落ちていた長い棒きれを拾って、個性を使わずに大振りで隙を見せながら心操君に襲いかかる。すると、棒きれに布が巻き付いて手から強制的に引き剥がされて、更に身体に巻き付いてくる。両腕は塞がれたけど、手と足が残ってるから――突進して頭突き!を寸止め。心操君を見ると、悔しそうにしている。

 

「くそっ、止められねぇ……!」

 

「いや、習い始めてこの期間で武器を取れりゃ合格点だ。緑谷、良かったらこれからも付き合って欲しい」

 

「勿論です。心操君、人相手に試したくなったら、何時でも体育館γに来てね!」

 

「……ああ、ありがとう」

 

「成る程……すごく参考になりますわね……」

 

 と、発目さんに手渡された鞭をピシッと振るう印照さん。この二人にも、直接戦闘向けの"個性"は無い。でも、イレイザーヘッドの様に、サー・ナイトアイの様に、戦闘向けでなくても鍛えれば、凄く強くなれるし、そこに個性でプラスアルファを載せられる。だから――頑張れ!

 

 そう、辺りが真っ暗になってもまだ訓練を続けたそうな二人を見てそう思っちゃうんだ。

 

 

 

 

【息抜きおまけ】

 

 緑谷がふと目覚めると、違和感を感じた。身体に、"個性"が、ワン・フォー・オールが無い。その事に跳ね起きると、自分の体が貧弱になっているようだった。慌てて周りを見渡す。自分の家……だけど、雄英の制服がない。それどころか、中学の制服がかかっている。慌てて携帯を見れば、機種変して変える前の物。慌てて日にちを確認すると……

 

「雄英、入試日……!?」

 

 冗談じゃない、ワン・フォー・オールが無ければ、合格なんて夢のまた夢だ。――そう思った時、頭に流れ込んできたのは、もう一つの記憶。あの日、攫われなかった――あの人に出会わなかった人生を歩んだ、もうひとりの自分の記憶。だから――諦めていて、身体も鍛えてなかったのだ。

 

 その気持ちは痛いほどよく分かる。結果、爆豪を筆頭にクラスメイトにも10年以上虐められ続け、気力すら無くなってしまったのだろう。そして、記憶を思い出していると――

 

「出久、今日は入試だけど、その前にまた海へ行くんでしょ! 早くしなさい!」

 

「あ、う、うん、そうだよ! 今行く!」

 

 とりあえず、何故こうなったかもわからない。だけど、今動かないと、この体の僕自身が誰よりも傷ついてしまう。だから、動き出す。海へ向かい、砂浜へ走り出し最後のゴミを、トラックに乗せる。

 

「HAHAHA! おめでとう、少年! ……? 少年、何か変わったかい?」

 

 怪訝そうに尋ねるオールマイト。魂は同じだけど、一つの出逢いだけで別人並みに変わってしまった自分に違和感を感じるのだろう。

 

「……ええ、夢を見てました。とても、素敵な、輝いている夢を」

 

「そうか、何か有ったのだな。そしておめでとう。いよいよ継承だ。じゃあ、食え

 

「はい!」「えぇ……」

 

 迷わず髪を食べたらちょっと引かれた。解せぬ顔をした緑谷。

 

「よし、使い方を教えよう。細かな説明をする暇は無いから、これだけ……ワン・フォー・オールを使う時は、ケツの穴グッと引き締めて心の中でこう叫べ!!! "スマッシュ!"」

 

 それを聞いて、止まる緑谷。

 

「……あの、オールマイト。今の僕がそれやったら、腕バッキバキになると思うんですけど――」

 

「――あ」

 

 どうやらやっぱり、教育者としてのオールマイトはまだまだのようであった。

 

 付いたのは雄英高校の入り口。

 

「(もう一度、来たんだ……また、上手くやろう)」

 

「どけデク!!」

 

 どうしてこうなったかはわからないが感慨に耽っていると、後ろから響く懐かしい怒声。振り返ると、爆豪が睨んでいた。そう、こっちの自分はまだ"デク"のままなのだ。だから――

 

「嫌だね」

 

「あぁん!!!!????」

 

 思いっきり、拒否してやる。

 

「僕はもう、"デク"じゃない。校門はこんなに広いんだ。勝手に、そっちが避ければいい」

 

 弱みなんて微塵も見せずに睨み返す。その事に、沸騰するほど腹を立てているようだけど、知ったことか。10年以上……個性まで使われ、自殺教唆までされたのだ。引く理由など、何処にも無い。

 

「んだとてめぇ……!」

 

 手を振り上げるが、鼻で笑う。

 

「いいの? 今入試会場だよ? ここで個性を不正利用しても、見逃してくれるクラスメイトや先生は居ないよ?」

 

「~~~~~~~~~!ちぃ!」

 

 苦虫を100万匹ほど噛み潰したような顔でこちらを睨むと、思い切りぶつかりながら進もうとしたので、ぶつかり返す。倒れた爆豪を鼻で笑ってやれば、更に顔が真っ赤になる。

 

「デェエエエエエエエクゥゥゥウウウウウウウウウウ…………!!!」

 

「監視カメラがあちこちに有るんだ。お行儀よくしたら?」

 

 そう言うと、もう興味もないとばかりに先に行く緑谷。脳裏によぎるのは、もう一人の自分の記憶。悲しくて、痛くて、無力で、何も出来なくて、ただ虐められるだけで――。許すつもりは、毛頭無かった。自分のクラスも全員ヒーロー科志望だったようだが、彼らこそ、あんな態度で緑谷を嗤い見下して、ヒーローになれると思っているのだろうか。

 

 

 そう、怒りが充満すると両手から黒いモヤが出る。……何だこの力は、こんな物は無かった。と、混乱する脳裏によぎるのは、別の声。

 

「ちょっと! お前、憎しみに囚われてるよ!」

 

 慌ててキョロキョロと見渡すと、回りには見たことがない風景で、何処かオールマイトに似た人が立っていた。何かを話そうとしたら、口がなかった。

 

「ああん? しゃべれないのか! よし、単刀直入に言うぞ! 坊主! その黒いもやもやは、俺の"個性"さ! 名を、黒鞭って言う。そりゃ~もう便利な個性さ。だが、怒りのままに奮ったんじゃダメだ! お前のその力は代を重ねるごとに熟成され、俺の"黒鞭"も、超強化された! だから、怒りのままに振るうな! 大事なのは……心を制することだ。怒りに飲み込まれるなよ」

 

「―ー!」

 

 口がないので、コクリと力強く頷く。そうだ、自分が憧れたのは、ドロドロしたものじゃない、誰よりも輝く、二人のヒーローだ。だから、怒りに飲み込まれちゃいけない! そう決意すると、先代の一人はサムズアップしながら、また消えていった。

 

「――ですか? 大丈夫ですか?」

 

「っ、あ、ああ、大丈夫! 心配かけてごめんね!」

 

 振り返ると、心配してこちらを覗き込んでいたのは麗日さんだった。優しい笑顔に癒やされつつ、もう大丈夫と笑顔になる。

 

「お互い、頑張ろうね!」「うん! うちも、絶対合格するんや!」

 

「(大丈夫だよ、麗日さん、きみは合格するから――)」

 

 そう心の中で微笑んで、いよいよ試験場へ。筆記は楽勝、問題は実技試験の方だ。今の自分は、出せてたった5%のフルカウルしか纏えない感じだ。――だが、今の自分には、目覚めたもう一つの"個性"がある。

 

『HEYHEY! それじゃあスタート!』

 

 合図と共に、誰よりも早く駆け出す。出力は5%で真っ先にヴィランと相対すると、左手から顕現させる。名を――

 

「黒鞭!」

 

 鞭のようにしなやかな黒い線がヴィランロボへと伸び、拘束。そのまま引き寄せると、右で思い切りぶん殴る。ポイントの差なんて関係なく、鞭を伸ばし、見つけた端から次々と、引き寄せ殴り、引き寄せ殴る。そして集まったガラクタを、黒鞭で包み、ハンマー投げのハンマーの様に集め、ヴィランのど真ん中で思い切り回転する。

 

「うおおおおおおおっ!?」「なんだありゃああああああ!?」「どんなパワーしてんだよ!?」

 

 ヴィランの残骸を集めたハンマーに、次々と撃破されまくっていくヴィランに、皆は早々に緑谷のそばから離れ、こちらに来ないようにと祈りつつ、ヴィランを相手にしていく。しかし、ある程度撃破した緑谷は、救助ポイントを稼ぐために他の人を救けて回りつつ撃破していく。ネタが割れている試験、他のみんなには悪いが、ポイントを稼がせてもらう。

 

 そうして、荒稼ぎというのも生ぬるいほどポイントを稼ぎまくった後、現れたのは0ポイントヴィラン。そして、下にいるのは麗日お茶子。5%では、あれを殴り飛ばせないだろう。ならば――

 

「大丈夫!? 今救けるよ!」

 

 黒鞭を伸ばし、麗日を引き寄せ、すっぽり腕の中へ、ちょっとだけお姫様抱っこの格好になって顔を赤くする麗日だが、すぐ下ろすと緑谷は0ポイントヴィランへ向かっていく。冷静になってみれば、楽勝と体育祭で言われた0ポイントヴィラン。数々の強敵と戦ってきた今の緑谷には、隙だらけに見える。足を曲げた所を黒鞭で縛り、転ばせ無力化し、トドメとばかりに先程の要領でヴィランハンマーを作ると、思い切りぶち当てた。

 

「す、すげぇ……」「何だアイツ……」「バケモンだ……」

 

 呆然とする回りの受験生を尻目に、試験は終了だ。

 

「大丈夫? 立てる?」

 

「う、うん、ありがと……」

 

 麗日に手を伸ばして、立たせて、周りを見渡す。畏れられてるけど、それがNo.1の宿命だし……。となりの麗日の様に、それでも笑ってこちらを見てくれる人もいるのだ。

 

 

 

 そして、モニタールーム。盛り上がる教師陣の中、オールマイトは混乱していた。見たこともない"個性"。だが、少年は確かに無個性だったはず。――なら、あれは、ワン・フォー・オールの中に眠っていたもの……!? 自分の弟子が合格間違いなしなのは一安心だが、さらなる謎が出てきて混乱するオールマイトであった。

 

 

 試験から一週間、自分のときとは違い、こちらの母はずっと不安そうだった。自分の所の母よりずっと太っているし、随分と心配をかけたようだ。だから、リビングで手紙を開き、一緒に見る。

 

「お、オールマイトっ!?」

 

 オールマイト自らの説明に、びっくりする母。そして、語られる内容は衝撃の事実。

 

「撃破ポイント100! 救助ポイント81! 2位に100ポイント以上の差を付けて、ぶっちぎりで合格だ! おめでとう、緑谷少年! ここが、君のヒーローアカデミアだ!」

 

 そして、母は泣き崩れた。嬉しさのあまり。だから、こういうのだ。

 

「今まで心配かけちゃってごめんね。でも、ありがとう。もう大丈夫だから――僕は、オールマイトを超えるNo.1ヒーローになるから……!」 

 

 それは、別の世界で繰り広げられる、もう一つのヒーローアカデミア。




はい、という訳で、映画に発目ちゃんと印照さんが参戦となります!……ただ、BDの発売日が2月なんですよね……小説版だけじゃなくて、ちゃんと映像見ながら書いてみたいし、映画はぱぱっと飛ばして、発売されてから書いてもいいかな……?


そして、ちょっとこの世界の緑谷が原作の緑谷に飛ばされちゃったおまけでも書いてみようかと思ったらここまで長くなっちゃった……先行き不明だし、爆豪アンチになっちゃうし、コミック勢の人にはネタバレが入っちゃうしでどうしようか悩み中。模擬戦で爆豪ぶっ倒すところまではやってみたいけどどうするか……

他にも、黒霧にぶっとばされたら、何故か21世紀のニューヨークに飛ばされて、宇宙人みたいなのが襲来していた、ヒーローたちが戦ってる真っ只中みたいなおまけも考えてます。
……本編書けよって言われそう!
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