豪華絢爛たる緑谷出久のヒーローアカデミア   作:両生金魚

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色々と皆様に心配をかけました。それに、温かい言葉を色々と頂きありがとうございます。
とりあえず、まだまだ弱いメンタルですが、皆様が楽しまれる作品を書けるようこれからも頑張っていきたいと思います。


病室にて

 ふと目が覚めると、様々な薬品の匂いがした。見渡せば、病院で、身じろぎをしようとしたら、両手と足はギプスで固められていた。右腕には点滴されていて、色々と薬品を投与されていた様だ。

 

「っつ……!」

 

 適切に治療をされていたようだが、やはり疼く。だが、この有様では痒くなってもろくに掻くことすら出来ないし、ナースコールも出来ない。ただ、退屈なだけの時間は考える時間を与える。そしてその胸に去来するのは、救けきれなかったことへの後悔。目の前まで迫れて、尚友達を救けられなかった事への無力感。自然と、涙が溢れてくる。

 

「くぅっ……!」

 

 何も出来ない、話せる人もいない孤独は、ただ自責の念を膨らませていく。終わりのない思考の負の連鎖を重ねていると、ふと扉をノックする音が響いた。思考が一時、中断される。

 

「あっ、はい……」

 

「起きていたのだね、少年」

 

「オール……マイト……」

 

 折角来てくれたオールマイトの姿。だが、それが今の緑谷には辛い。オールマイトから認められ、継承された"個性"。だが、憧れの彼の様に、全てを救うことは出来なかったのだ。その力を継承されても尚。

 

「すみません、オールマイト……僕、僕……目の前まで、常闇くんの側に居たのに……救けられなくて……!」

 

 悔しくて悲しくて、そしてオールマイトの期待に応えることが出来なくて、何より目の前で友達が攫われて。次から次へと涙が止まらない。

 

 だが、止め処無く涙を流す緑谷をオールマイトは優しく抱きしめた。

 

「頑張ったね、緑谷少年」

 

「オール……マイト……」

 

「君は、意味なく無茶をする人間では無い。必要と思ったから――そうやって、手足を犠牲にしてまで戦ったのだろう?」

 

「で、でも、僕――」

 

 後悔の念に、ネガティブなニュアンスな言葉を言おうとする緑谷の言葉を遮り、尚もオールマイトは言葉を紡ぐ。

 

「洸汰君だったね? ちゃんと無事だよ。――それに、他のクラスメイトで死んだ者は誰も居ない。脳無は君でなくては対処しきれなかっただろうし、マスキュラーだって相手が出来る者は相澤くん位なものだったろう……。だから、少年。君は、常闇少年を取り逃したのかもしれない。――だが、君が救った命も、確かに有るのだ」

 

「オール……マイトォ……っ!」

 

 守れなかった自分、それでも認めてくれた、最も偉大なヒーローの言葉に、涙が止まらない。

 

「まったく、泣き虫だね、君は――」

 

 そう言いつつも、優しく抱きしめ続ける。この、まだ未熟な少年に、一体どれだけの負担がかかったのだろう――どれだけ不安だったのだろう――それを思うと、オールマイトの闘志が無限に湧いてくる。

 

「(ヴィラン達よ、絶対に許すわけにはいかん――! 返してもらうぞ、何もかもを!)」

 

 と、決意を抱きつつ、緑谷が落ち着くまで抱きしめるオールマイト。

 

「安心したまえ、緑谷少年。奴らの居場所は割れた。それに、八百万君が敵の脳無に発信器を取り付けてくれた。――だから、次は"私が反撃に行く"」

 

 強い強い決意を抱く、偉大なヒーローの気迫。それを近距離で受けた緑谷は、それに凄く頼もしさと安心感を感じるのだった。

 

 ――と、そこへ入ってくるのは――

 

「い、出久っ! お、起きたのねっ!?」

 

「か、母さんっ!」

 

 暗い暗い顔をしていた緑谷の母が、慌てて駆け寄ってきた。髪を振り乱し涙を浮かべ、縋るように抱きしめる。

 

「出久……良かった……お母さん、本当に心配したんだよ……」

 

 オールマイトから変わるように、ぎゅうと強く強く抱きしめる。オールマイトともまた違う、母の暖かさに、また涙腺が緩む。

 

「うん、ごめん、ごめんね、母さん……!」

 

 ひとしきり泣いた後、引子はオールマイトに向き直る。その表情は真剣そのものであり、また怒っていた。

 

「オールマイトさん……雄英は、一体何をしていたんですか……! この子は、この子はまだ子供なんですよ……!」

 

 まだ、入学したての頃に恐ろしいヴィランに襲われた。職場体験では、何故か恐ろしいヒーロー殺しとも戦った。I・アイランドでも恐ろしいテロに巻き込まれた。そして、昨日――林間合宿が襲撃され、自分の息子は両腕と足に大怪我を負い、見たこともないような顔色の悪さでベッドでうなされ痙攣していた。

 

「何故、出久がこんなになっているのに、あなたは無事なんですか! 何故、何もしていなかったんですか! あなたは……あなたは、出久の師匠なのに……」

 

 ぽつぽつと、ではなく大粒の涙が溢れて止まらない。悲しくて恐ろしくて、本当はぶつけてはいけない、言いがかりだと理性で分かっていても、感情で止められない。

 

「現場にはプロヒーローも居たんでしょう!? 先生も! なのに、どうして、どうして出久がこんな怪我を……」

 

 医者にカルテを見せられ、卒倒した。両手と左足がボロボロで、高熱を出してうなされて、しかも激痛が続いていて。

 

「……出久は"個性"が出なくて、それでもヒーローに……あなたに、ずっと憧れてきました。でも、奇跡的に"個性"が発現してからは、ずっと嬉しそうで。毎日が楽しそうだったんですけど、それでも――こんなこんな目に合うなら……あなたに憧れての行動が、こんなボロボロの姿になるならば――"無個性"のまま、ただヒーローの活躍を嬉しそうに眺めるだけの方が、この子は幸せだったんじゃないかって……思ってしまうんです」

 

「お母さん!」

 

 ヒーローとして活躍するということ。それは常に危険な場所へ向かい、命をかけるということ。ヒーローとして輝けば輝くほどに、またその闇は深く大きく寄り添う。

 

「入学してすぐの時も、今回も、こんなに何度も襲われるなんて――出久を雄英に通わせるのが――あなたの弟子でいさせるのが……怖いです……!」

 

 涙ながらの母親の叫び。それを否定する事は、二人には出来なくて。言葉が見つからなくて。

 

 重い重い沈黙が個室を包む。

 

 と、そこへまたもノックする音が。

 

「失礼します」「しつれいします」

 

 やってきたのは、マンダレイ――送崎信乃と、洸汰であった。

 

「オ、オールマイト!?」「オールマイト……」

 

「あ、あの……お二人は?」

 

 突然の訪問者に、驚く引子。だが、マンダレイと洸汰も、オールマイトに驚いていた。

 

「私は送崎信乃――プロヒーロー・マンダレイと言います」「出水洸汰です」

 

 お辞儀をする二人。

 

「え、えっと、緑谷引子……この子の母親です。出久に御用ですか……?」

 

 引子の疑問に、マンダレイは頷き、洸汰は何度も何度も大きく首を振る。

 

「お、俺……昨日、出久兄ちゃんに救けられたんだ。俺の――パパとママを殺したやつから!」

 

「「!」」

 

 驚くオールマイトと引子。

 

「あんな、酷いこと言ったのに、左手折れてたのに、それでも救けてもらって――だから、俺、俺……!」

 

 上手く言葉がまとまらない。でも、大怪我をしたと聞いて、居ても立ってもいられなくなってここに来た。

 

「出久兄ちゃん……救けてくれて……ありがとう……!」

 

 そう言うと、緑谷に縋るようにして泣いてしまった。その頭を、やさしく慰めるマンダレイ。

 

「私達も、同じです――恥ずかしながら、私達、プッシーキャッツのうち3人も彼に救けてもらいました。――彼はもう、立派なヒーローです」

 

「洸汰君……! マンダレイ……!」

 

 救けられなかった者が居る。――だけど、救けられた側からは、確かにヒーローなのだ。常闇を救けられなかった悲しみと、救けた側からお礼を言われる嬉しさ――色々と綯い交ぜになって、また涙が溢れる。

 

「っ―――!」

 

 息子は、誰かのヒーローになった。それは嬉しくて、でも――その代わりこんなに傷ついたのが怖くて――。

 

「そ、そうですか……。あ、あの、すいません、少し失礼します――!」

 

 感情が爆発して、泣きながら、引子は外に出ていってしまった。

 

「あっ、お母さん――」

 

 手を伸ばそうとするも、その両手は、ギプスの中だった。

 

「…………」

 

 室内には、沈黙が降りる。――だが、なにか言う前に、緑谷に眠気が訪れて、ベッドに倒れ込む。

 

「少年……」

 

「オールマイト……洸汰君……マンダレイ……お見舞い、ありがとうございます……ちょっと、まだ、眠くて――」

 

「ああ、ゆっくり休むと良い……」「兄ちゃん……」「緑谷君……お大事に、ね」

 

 三人に見守られ、また意識が遠のいていった。

 

 

 再び目を覚ますと、まだ明るいままだ。ただ、日めくりカレンダーの日にちが、次の日に進んでいた。

 

「(また、1日眠っちゃったのか……)」

 

 眠気眼をこすろうとして、まだギプスがハマっていたことを思い出すが、両手と左足の感覚がちゃんと有るし痛みもない。恐らくリカバリーガールが治癒して行ってくれたのだろう。

 

「あー緑谷!!目ぇ覚めてんじゃん!」

 

 オハーとドアを開けたのは、上鳴で、それを皮切りにクラスメイト達がゾロゾロと病室に入ってきた。

 

「テレビ見たか!? 学校いまマスコミやべーぞ」

 

「春の時の比じゃねー」

 

「メロンあるぞ。皆で買ったんだ!」

 

 

 がやがやと賑やかに入ってくる。

 

「大丈夫か? 緑谷?」

 

「うん、多分リカバリーガールが治療してくれたみたいだから……A組皆で来てくれたの?」

 

 心配する障子に安心させるように言う緑谷。実際、痛みはもう泣い。

 

「いや……葉隠君はガスにやられ、八百万君も頭をひどくやられた――B組には、もっと被害者が多いが……。だが、八百万君も昨日意識が戻ったらしい。だから、来ているのはその3人を除いた……」

 

「……16人だよ」

 

 ぽつりと、麗日が呟く。

 

「常闇、いねえからな……」

 

「ちょっ、轟……」

 

「……昨日、ちょっと事情は聞いたんだ。――救けられなくて、ごめん」

 

「……言うなよ。俺らなんて、補習受けてて、なんも、なんも出来なかったんだ……!」

 

 切島の後悔の言葉に、沈痛な顔になる補習組。皆が命がけで戦っていたのに、安全圏に居た事に、いたたまれなさを感じてしまう。

 

「……俺だって同じだ……! まだ戦える場所に居たのに、俺は……俺は……!」

 

 夜嵐も、後悔で震えている。自分の知らない所で仲間が拐われたのが余程許せないのだろう。

 

 と、微妙な空気の中更に来客がやってくる。

 

「失礼するよ」「失礼します! イズク君、無事!?」

 

 アメリカから日本旅行に来ていたシールド親子が。

 

「緑谷さん! 大丈夫ですかっ!?」

 

 いつもの調子は何処へやら、心配そうな発目が。

 

「緑谷さんっ! 心配しましたわ!」

 

 優雅さはどこへやら、印照が。

 

 続々と、見舞いに来ていた。

 

「デヴィットさん、メリッサさん、発目さん、印照さん……心配かけちゃって、ごめんね……」

 

「全く、トシ……いや、オールマイトの様に無茶をする」

 

「ほ、本当に心配したんだから!」

 

「あなたが居なくなったら……私のベイビーちゃんは誰が面倒見てくれるんですか……」

 

「――無茶、し過ぎですわ」

 

 彼女らも心配してくれる。

 

「そうだ、剥いてもらったしりんごお食べ!」

 

 と砂藤にりんごを口に突っ込まれつつ、思案する緑谷。――そして、そんな様子を見て意を決したように切島が口を開く。

 

「なあ、緑谷――常闇、救けに行こう!」

 

『!?』

 

 その言葉に、皆が衝撃に包まれる。

 

「実は俺と轟と夜嵐さ、昨日も来ててよォ……偶然、八百万とオールマイトと警察の会話聞いちまったんだ」

 

 何でも、脳無の1体に泡瀬の力を借りて発信機を付けたらしい。そして、八百万は受信デバイスを創れる。

 

「……つまりその、受信デバイスを――八百万君に創ってもらう――と?」

 

 飯田の脳裏に過るのは、かつての自分。感情に身を任せ、ヒーロー殺しに殺意を向け、友達に迷惑をかけた自分。

 

「ちょっ!? お待ちなさい! あなた方はまだ仮免すら取っていないのですよ!? そんな事、許されませんわ!」

 

「その通りだ! これはプロに任せるべき案件だ! 生徒(おれたち)の出て良い舞台ではないんだ馬鹿者!!」

 

「んなもん分かってるよ!! でもさァ! 何っも出来なかったんだ!! ダチが狙われてるって聞いてさァ! 緑谷の道具借りて、仲間がただやられてる所見て、拐われたって聞いて、何っっも出来なかった!! しなかった!! ここで動けなきゃ俺ァ! ヒーローでも男でも無くなっちまうんだよ!」

 

「その通りだ! ダチがとっ捕まってんのに、のうのうと家になんぞ居られるかぁ!」

 

 激高する切島に夜嵐。それに、同意する轟。意志は、固そうだ。

 

「待ち給え君たち! I・アイランドの時とは違うんだ! 君たちは"個性"を人に向けるのすら許されない立場なんだぞ!」

 

 と、デヴィットが大人として、皆を嗜める。

 

「分かってます、分かってますけど!」

 

「ふざけるのも大概にしたまえ!」

 

 と、暫く言い争いが続く。法律で言えば、動かないのが何より正しい。しかし、皆ヒーローを目指しているのだ。――ヒーローは、こういう時にこそ動くものなのだ。それが、より切島や夜嵐を感情的にさせる。

 

 ――が、ここで更に来客が来る。

 

「静かにしたまえ、諸君。ここは病院だ」

 

「そこの有精卵共、落ち着きな」

 

 サー・ナイトアイに、グラントリノ。二人のヒーローがやってきた。

 

「ふ、二人共、どうしてここに……?」

 

「お前さんに大事な話があってな。――すまんが皆さん、席を外して貰えんだろうか」

 

「すみませんが、ご協力を」

 

 プロヒーロー二人に促され、一同は緑谷の病室を出る。

 

 

「サー・ナイトアイに……グラントリノだっけか? 何をしに来たんだろうな?」

 

「じゃあ、聞いてみるですよ!」

 

 そういうのは、発目だ。出る時こっそり病室にマイクを仕掛けてきたらしい。

 

「なっ、君! それは盗聴ではないか!」

 

「だって、気になるんです!」

 

 その言葉に、皆は否定できない。

 

「では、こっそり聞いてしまおうか」

 

『デヴィットさん!?』「パパ!?」

 

 そんな事を言いだしたのは、よりによってブレーキ役となるべきの大人、デヴィッドであった。

 

「――ヒーローを目指す君たちは、正しいと思ったことが有るなら止められない。……なら、周りはそれをサポートするだけさ。それに、また緑谷君はなにかに巻き込まれそうになるかもしれなくてね――」

 

 と、言うデヴィットの目的は、ある程度のガス抜きと――いざという会話が出た時、無理矢理にでも止めることだった。どうせ、こういう事をする子ならば、ある程度管理下に置いたほうが良いというものだ。

 

 と、小型スピーカーから声が流れ始める。その音に、皆が耳を澄ませた。

 

 

 

「……大変だったな小僧――だが、良くやった」

 

「ええ。ミドルレンジ以上の脳無及びマスキュラーの撃破……そこらのプロヒーローよりも遥かに良い働きをしてくれた」

 

「……ありがとうございます」

 

 プロヒーロー二人の評価に、頭を下げる緑谷。それがきっと彼らの評価なのだろうが、その評定には納得できないとの感情がありありと浮かぶ。

 

「身体、もう良いのか?」

 

「ええ、多分。もう動けそうです」

 

「そうか……なら、小僧。お前に会いに来たのは勿論見舞いだけじゃない――チームアップの依頼だ」

 

「!? ぼ、僕がですかっ!?」

 

「ああ……ヴィラン連合のアジトが割れた。だから、今夜襲撃をかける。……俺なんぞも呼び出される事態だ。……必ず、何かが起きる!」

 

「……正直、大怪我をした君を呼び出すのは心苦しい。が……ガジェットを装着した君ならば、ミドルレンジ以上が出ても、対応が出来るだろう。オールマイトやエンデヴァーの他に、奴らに対抗できる駒が是非とも欲しい!」

 

 二人共、事態を相当に深刻に受け止めていた。予感がするのだ。オールマイトが本気をかけざるを得ない何かが起きるのではないかと。

 

「……それに小僧。お前も、魂が叫んどるんじゃろ? 救けたい、と」

 

「……何せ、目の前で救けられなかったのだからね」

 

 返事は、聞くまでも無いだろう。オールマイトの後継者ならば

 

「はいっ!」

 

 その衝動を、止められるはずが無いのだから。

 

 

 

 




今まで何とか無事に解決してきたし、USJのは骨折が即直されたから引子さんは知らないので、ダメージが超大きいのです。……しかし、そんな母親を余所に更に戦いに引きずり込むヒーロー二人でした。
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