豪華絢爛たる緑谷出久のヒーローアカデミア   作:両生金魚

40 / 48
すっごい気合を入れた回……書くのが大変だった――でも、ベッタベタのジャンプの王道とかいいよね!


常闇踏陰:オリジン

「ぐっ、うう……!」

 

「イイカゲンブッコロサセヤガレヤァ!!!!」

 

「もぅ少しだナ」

 

 闇の中、常闇が苦しんでいる。後もう一押だと、ヴィラン連合のメンバーが暗視カメラで様子を見て、後どれ位で落ちるか賭けまで始まる中、唐突に気の抜ける声が響いた。

 

「どーもォ。ピザーラ神野店です~~」

 

 途端に、轟音。オールマイトが壁を破り、シンリンカムイがウルシ鎖牢で全員を縛り、グラントリノが炎の個性持ちを蹴りで気絶させ、ブルーが指弾で、マスクをしていない口の中に、催涙玉を放り込む。突入してほんの数秒、ヴィラン連合の主要メンバーは皆が拘束された。

 

「もう逃げられんぞヴィラン連合……何故って!?」

 

「我々が来た!」

 

「オールマイト……!! あの会見後にまさか、タイミング示し合わせて―ー―!」

 

「木の人! 引っ張んなってば!! 押せよ!!」

 

「や~!! 何ですかこれ、甘い~! 羊羹?」

 

 拘束され、動けなくなるヴィラン達。そこに、緑谷が指弾で粘着式の発信機を全員に取り付ける。

 

「……羊羹?」

 

 ふと、ブルーが腰のポーチから催涙玉を取り出すと――

 

「あれ、これ羊羹玉!? グラントリノのおやつの!?」

 

「……グラントリノ?」

 

 冷たい声がグラントリノに飛ぶが――

 

「誰だ、君は!?」

 

「ボケられた!?」

 

 と、漫才を繰り広げられるのを忌々しそうに見つめるヴィラン連合。

 

「全く、締まらないな――攻勢時ほど、守りが疎かになるものだ……ピザーラ神野店は、俺たちだけじゃない」

 

 と、エッジショットを先頭に機動隊も突入してくる。

 

「外はあのエンデヴァーをはじめ、手練のヒーローと警察が包囲している」

 

 この圧倒的不利な状況に、仕方ないと覚悟を決める死柄木。

 

「仕方がない……俺たちだけじゃない……そりゃあこっちもだ。黒霧。持ってこれるだけ持ってこい!!!」

 

 だが、何も起きない。

 

「すみません死柄木弔……所定の位置にあるハズの脳無が……ない……!!」

 

「!?」

 

 重なる想定外に、更に混乱する死柄木。

 

「やはり君はまだまだ青二才だ死柄木!!」

 

「あ?」

 

 せめてもと睨みつけるも、そのかすかな抵抗が虚しい。

 

「ヴィラン連合よ、君らは舐めすぎた。警察のたゆまぬ捜査を。そして、我々の怒りを!!」

 

「2階、制圧!」「4階、囚われていたヴィランを発見! そして厳重に鍵をかけられた部屋が有ります! 恐らく、拐われた少年が囚われているものかと!」

 

 他の階の機動隊も、ヒーローを先頭に次々と制圧していく。――そして、残った最後の部屋を開けようとした時、轟音。部屋を覆っていた鉄板が粉々に引きちぎられ、ヒーローや機動隊が吹き飛ばされた。

 

「なっ!? 何が起きたのだ!?」

 

 混乱するヒーローたちに、死柄木が嗤う。

 

「やっぱり、ちょ~~っと遅かったようだな、ヒーロー共」

 

 

 

 場面は少し戻り、神野区のとある裏通り。そこには、下手な変装をした雄英生5人が居た。目の前に有るのは、廃倉庫。木を隠すなら森の中と言わんばかりに、堂々と街中に有る。

 

「電気も点いてねーし、中に人がいる感じはねぇな」

 

「正面のドアは、下に雑草が茂っていますわ。他に出入り口が有るのでしょう……こういう時は、これを使いましょう」

 

 と、八百万はアタッシュケースの中からドローン達を取り出し電源を入れ、皆に咽喉マイクを配る。

 

 "ドローンオンライン……着きましたのね?"

 

 すると即座にドローンから才子の声がする。本当に、ずっと待機していてくれたようだ。

 

「はい。着きましたわ。こちらもタブレットを起動しますので、是非偵察をお願いします」

 

 "了解しましたわ。今紅茶を補充しますので少しお待ちを。とっておきのダージリンを淹れてきますわ"

 

 彼女の個性は、紅茶の品質によっても左右される。よって、出来る限り高級の淹れたてを使いたいのだろうと皆が納得した。今のうちに、人気がない裏手に回り、5人が食い入るようにタブレットを覗き込む。 

 

 "なっ、これは……"

 

『脳無!』

 

 6人が驚いている頃、広域に展開させたドローンが、多数の人影を探知する。それは――ヒーローたち。突如、大きな音と共に、廃倉庫の一角が崩れた。

 

「あれは……Mt.レディ!?」

 

 "疾いですわね――もう襲撃をかけてきました"

 

「これなら安心ですわね」

 

 と、八百万が締めて帰ろうとした時、それは起きた。

 

 "サーマルセンサーに感有り、奥にもう一人居る……!?"

 

 そして、才子は見た。ベストジーニストが一瞬でその不審人物を拘束したと思ったら、直線上の何をかもをも吹き飛ばす攻撃を。

 

 "なっ―――!?"

 

 そして、その場に居た5人は動けない。――その、あまりの気迫に。威圧感に。直接対峙しているわけでもないのに、濃密な死を感じさせた。

 

 

 

「こ、これは、ダークシャドウ!?」

 

 ダークシャドウの叫び声と、常闇の苦悶の声から、何が起きたかを瞬時に察知する。だが、その混乱の中、各ヴィランに、謎の泥の様な物が付着して、何処かへ消える。常闇とダークシャドウもだ。

 

「すみません皆様ァ!!!」

 

 シンリンカムイが自責の念から叫ぶが、エッジショットが冷静にそれをフォローする。

 

「お前の手落ちじゃない! 俺たちも干渉できなかった! 黒霧の「空間に道を開く」ワープじゃなく、「対象のみを転送する」系と見た!」

 

「HAL、直ぐに消えた対象の場所を割り出して!」

 

 泥と共に現れた屋内の脳無をオールマイトに任せつつ、ブルーは外に出て、他の脳無の撃破に回る。機動隊の銃は脳無には利いていない。エンデヴァーと手分けしつつ、最小の消耗で撃破していく。

 

「エンデヴァー!! 大丈夫か!?」

 

「どこを見たらそんな疑問が出る!? 流石のトップも老眼が始まったか!? いくならとっとと行くがいい! ここは()()()に任せろ!」

 

「ああ……任せるね」

 

 そう言うと、オールマイトはもう一つのアジトの方向へと飛び立つ。

 

「さて、ブルー! ミドルレンジ以上は任せろ! お前はもう片方まで取っておけ!」

 

「はいっ!!」

 

 エンデヴァーに指示され、機動隊の各危ないメンバーをフォローしていく緑谷。一刻も早くオールマイトに追いつくために。

 

 

 

 様々なものが吹き飛んだ廃倉庫で、その男はヴィラン連合のメンバーを呼び出し――更に、もう一人。常闇とダークシャドウも、案内した。

 

「げぁっ!?」「なんじゃこりゃっ!?」「うぇっ、ぺっぺ」

 

 このワープは、色々と体に入るのか、皆吐き出していた。

 

「また失敗したね弔。でも決してめげてはいけないよ。またやり直せばいい。こうして仲間も取り返した。この子もね……君が「大切なコマ」だと考え判断したからだ。いくらでもやり直せ。その為に僕がいるんだよ。全ては、君のために有る」

 

「ブッコロシガイガアリソウダゼェエエエエエエエエ!!」

 

「ああ、それはまた後にしてくれたまえ。後からなら、いくらでも標的を与えてあげよう」

 

 暴れるダークシャドウを軽くあしらいながら、死柄木を導こうとする姿。それは、ヴィランの全てを認め導く――悪のカリスマ。そこにいる全員に、否が応でも大物だと確信させる。

 

「(ここで、動かなきゃ――!!)」

 

「(動くんだ――!!)」

 

「(動け――!!)」

 

 今すぐにでも、常闇を救おうとする夜嵐・轟・切島を、止める飯田と八百万。恐怖に震えながらも、それでも絶対に守るんだという決意。そして、その自重は報われる。

 

 空気を切り裂く、独特の音。テレビで、ラジオで何度だって聞いた、救いの音。はるか高空から一切臆すること無く、殴りかかるヒーロー。

 

「全て返してもらうぞ! オール・フォー・ワン!!」

 

「また僕を殺すか、オールマイト」

 

 そして、受け止めるは悪のカリスマ。オール・フォー・ワン。両手で組み合う。ただそれだけで、凄まじい衝撃波を周囲に発生させる。

 

「オールマイトが、来た……!」

 

 途端に5人から緊張が幾分抜ける。オールマイトとは、それほどの安心感を与えるのだ。

 

 ――だが、オールマイトは苦戦する。近くに、まだ闇に囚われ暴れる常闇が居るからだ。気絶しているヴィランへの攻撃すらも、オールマイトは防いでいるのだ。その事が、オール・フォー・ワンは愉快でたまらない。

 

「守るものが多いと大変だねぇ、オールマイト――今度は守れるかな?」

 

 耳障りな声で嘲笑するオール・フォー・ワン。だが、それは相手を強敵だと認めてのこと。あらゆる手を使い、オールマイトを弱体化させようとする。

 

 まずは、常闇を止めること――! それが第一と考えた才子は、ドローンの一つを上空から突撃させる。使うのは、機能の一つ。

 

 "スタン・ドローン起動!"

 

 I・アイランド製の小型静音ドローンから、突如発せられる強い光と轟音――それは、一瞬でダークシャドウを小さくさせる。――が。

 

「五月蝿い蝿が居たか」

 

 一瞬でドローンが破壊され、再びダークシャドウが暴走する。

 

「貴様っ! 常闇少年に何をしたっ!?」

 

「ふふふふふ、彼の半身は、実に闇が好きなようなのでね。少しサービスをしてあげただけさ。彼の周りの、光を"遮断"した。ダークシャドウ君にとって素晴らしく心地よい空間だろう」

 

ヒャッハー! ゴキゲンダゼー!!!!

 

 個性で作られた闇の中、ダークシャドウがどんどん増長していく。常闇の身体の体積を遥かに超え、今までずっと我慢してきた物がとうとう弾け跳び、開放されようとする。その、開放のカタルシスは喜びに満ちていて、破壊に身を委ねるのは、とても気持ちが良さそうで。

 

「俺は……俺は……ヒーローに……なれないのか……!」

 

 悔しさで涙が溢れる。あんなに、憧れていたのに。そのために、これほど努力してきたのに――憧れの人(オールマイト)の足を、ここまで引っ張るなんて……

 

 

 何とか、常闇を救い出そうとするオールマイトだが、オール・フォー・ワンの前では、他に気を向けるなど自殺行為だ。戦闘をしながら、ただ常闇へと話しかける声を止められないことに、血が出るほど歯を食いしばる。

 

「俺は……俺は……!!」

 

「そうだとも、君はヴィランにこそ相応しい」

 

 とても優しく、安心させるカリスマを含んだ声。――いっそ、この衝動に身を委ねたら、どんなに安心できるだろうか。心が折れそうになった、その時――

 

「そんな事、無い!!!!!」

 

 もう一人、ヒーローが現れたのだ!

 

「その声は……緑谷!」

 

「ブルー!」

 

 暗闇の中、友の声が聞こえた。不安を、少し忘れた。

 

「ゴージャス……グリーン……! 緑谷出久……!」

 

 姿が見えないこそ、その声ではっきりと分かる。目の前のヒーロー(オールマイト)の後継者。こちらの都合の悪い時に、何時も現れる目の前の男に、実にそっくりだ。しかも――彼は、自分の弟子と比べて、現時点でも遥かに強い。

 

「僕は、僕たちは知っている! 君が、どれだけヒーローに憧れているか! ヒーローになるために、どんなに君が努力してきたか! そんな君が、ヒーローになれない筈がない!」

 

 腹の底から力を込めて、クラスメイトに、仲間に、親友に届くようにと願いを込めて。その声が、常闇の心に光をもたらす。ダークシャドウの暴走が、少し弱まった。そして、緑谷に触発されるように、また一人声を出した。

 

「そうだ、常闇ぃ!! お前は、俺のダチで、ライバルだ! まだ、体育祭のお前のリベンジマッチやってねえだろうが!!!!」

 

 オール・フォー・ワンの威圧感に、ただ怯えていた自分の弱気を蹴飛ばし、常闇に向け、大声で叫ぶ夜嵐。ダークシャドウから、少し主導権を取り戻す。

 

「そうだ! 常闇!! お前がなりてぇもんはそうじゃないだろ! 思い出せ! お前のなりてぇもんを、ちゃんと見ろ!!! ヴィランなんかじゃ、ねぇ!!!」

 

「俺の、なりたいもの……」

 

 オールマイトに憧れた。ヒーロー達に憧れた。弱きを助け、強きを挫き、夜の平穏を守る。そんな姿に、憧れた。心の光が、また強くなった気がした。

 

「五月蝿いんだよ、君たち!」

 

 邪魔だとばかりに、5人の方へ隙を見て、衝撃波を飛ばすオール・フォー・ワン。だが、それを緑谷が渾身の一撃で相殺した。フルガントレットの耐久力を犠牲に、受け止める。

 

「あいつの攻撃は、全部僕が止める!! だから、皆、声をかけて!」

 

 "私は1-Aの皆さんに片っ端から連絡を取りますわ! スピーカーを、早く!"

 

 緑谷に守られ、八百万がアタッシュケースの中のスピーカーを慌てて設置する中、切島が続いて叫ぶ!

 

「常闇ぃ!! お前が暴走するんだったら、俺達が何時だって止めてやる!! 俺の"個性"で、全部受け止めてやる!!」

 

 切島が目指すのは、絶対に倒れないヒーロー。だからこそ、仲間が暴走しても止められるようになりたい――いや、止めてみせる!!

 

「ならば、俺は何時だって駆けつけよう! 俺はインゲニウムの名を継ぐ者! 友のためならば、いつでもどこへでも駆けつける!」

 

 僕はかけがえのない友人たちに救けられた。なら、今度は僕が救ける番だ。友達の様に。そして何より、(インゲニウム)の様に。

 

「そうです、闇があなたを強くするというのなら、私は幾らでも光を創り出しましょう!!」

 

 そう言うと八百万は、まばゆい光を放つサイリウムを沢山作ると、それを常闇へと、思いっきり投げつけた。遮断の内側から、まばゆい光で照らす。――少しずつ、ダークシャドウを操れるようになってきた。

 

 "1-Aの皆さんとの電話、繋がっていきます! もう、ガンガン流しますわね!!"

 

「常闇ちゃん、帰ってきて!!」「常闇くん!!みんな待ってるんだからね!!」「俺、そこに行けなかったけど!! 本当は、お前のこと心配してて! それでも、動けなくて、ごめん!!」「また、皆で特訓しようよ!! 大丈夫、常闇君は強いから!!」「僕の光でも、何時でも照らしてあげる☆ だから、皆を信じて!」「お前の個性、本当にすげーよな! だからさ、人助けしたら超沢山の人救けられると思うんだ!!」「お前、俺よりずっとかっけーじゃねぇかよーっ! だから大丈夫だって!! 帰ってこいよ!」

 

 ここに居る仲間だけではない。クラスメイト全員の声が聞こえる。そして――

 

「常闇。俺は無駄なことはしない主義だ。だから、無駄な暴走をしたなら、しなくなるまで――お前がプロヒーローになってコントロールできるようになるまで何度だって止めてやる。それが合理的だ」

 

 イレイザーヘッド――相澤先生の声までもが。

 

「みんな…………!」

 

 暴走し、広がっていた闇は、徐々に常闇に収束していく。今、確かに光は届いていないかもしれない。だが、別のものが、常闇の心を照らす。それは、皆の想い――そして

 

「そうだ、俺が、俺がなりたかったものは――」

 

「そう、君は――!」

 

 緑谷の言葉に、クラスメイトと先生、そしてオールマイト。皆の声が合わさる。

 

『ヒーローになれる!!!!!!』

 

「う、うおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!」

 

 暴走していたダークシャドウは完全に抑えられ、また常闇の姿を変える。ダークシャドウを身に纏ったその姿は名付けて

 

「深淵闇躯!!!」

 

 ダークシャドウを完全に制御下に置き、躯に纏わせる。もう、暴走はしない。どんな暗闇の中でだってコントロールできるだろう。何故なら――

 

「我が名はツクヨミ!! 漆黒を操り、深淵に潜む闇から人を救うヒーローなり!!」

 

 心が何よりもまばゆく光っているのだから。

 

 




22巻発売! 黒鞭乗ってるし、もうコミック勢にもネタバレ注意しなくてOKになった!
ちなみに緑谷は、フルガントレットの100%で思い切り踏み込んで追いつきました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。