豪華絢爛たる緑谷出久のヒーローアカデミア   作:両生金魚

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この話で終わらせようと思ったら、予想外に伸びた……!
大混戦は難しい……。やっぱり絵でパット見わからせられる漫画は偉大だ……


託される想い、受け継がれる意志

「んだよそれ……何だよ、俺らが気持ちよく勝ってたのに、なんだこのクソゲー具合はよおおおおおおおっ!!」

 

 子供が癇癪を起こしたように、死柄木が叫ぶ。常闇すらも奪い返されて、先生が来たのにもはや完全に形勢が逆転していた。ダークシャドウを纏った常闇は素早く、あっという間に5人の元へと合流する。

 

「すまん、皆迷惑をかけた!」

 

「んな事ねぇよ!」「心配してたんだぞ!」「信じてましたわ!」「さあ、行こう!」「……逃げるぞ!」

 

 そのまま、離脱しようとする6人。

 

「せめて、てめぇらだけでもブッ殺――がはっ!?」

 

 ヴィラン連合の注意がここに居る雄英生達に向くがそうはさせじとブルーがひたすら衝撃波を飛ばす。遮蔽物のない戦場は、逆に防御手段の乏しいヴィラン連合を追い詰める。

 

「こ、のっ……チート野郎がああああああっ!ごはっ!?」

 

「早く、逃げて!」

 

『了解!!』

 

 立ち上がる度に、何度も何度も吹き飛ばされる。クラスメイトを守る位置から、ひたすら遠距離攻撃をかけ続ける。近くに行って殴るよりも、オール・フォー・ワンにもヴィラン連合にも遠距離攻撃を放てる位置に居て、ひたすらいやらしく援護に徹する。オールマイトより弱いとは言え、50%で放たれる手足からの衝撃波は、オール・フォー・ワンを苛立たせ、また気を散らすには十分過ぎた。

 

SMAAAAAAAAASH!!

 

「っ!?」

 

 腹に渾身の一発が突き刺さり、さしものオール・フォー・ワンも形勢の不利を認めざるを得ない。

 即座に、ボロボロでも気絶中でもいいので脳無を周りに無差別に呼び寄せ、肉の盾とする。

 

「チィッ! またか……!」

 

「吹き飛べっ!!」

 

 脳無の突然の登場と攻撃に、ほんの一瞬気が逸れるオールマイト。そこに、街の数ブロック分は吹き飛ばすほどの衝撃を与え、時間を稼ぐ。

 

『オールマイトっ!』

 

「心配しなくてもあの程度じゃ死なないよ。だから――君は逃げろ、弔」

 

 片手間に緑谷に衝撃波を飛ばしつつ、もう片方の手で謎の黒い触手を黒霧に伸ばす。6人は、下手に緑谷の防御範囲から出れずに足止めをされる。

 

「ちょ! あなた! 彼やられて気絶してんのよ!? よくわかんないけどワープを使えるならあなたが逃してちょうだいよ!」

 

 だが、いかにオール・フォー・ワンと言えども全能ではない。

 

「僕のはまだ出来たてでねマグネ。転送距離はひどく短い上……彼の"座標移動"と違い、僕の元へ持ってくるか僕の元から送り出すしか出来ないんだ。ついでに……送り先は人。なじみ深い人物でないと機能しない」

 

 と、個性を説明しながら、黒霧の個性を強制発動する。

 

「さあ行け」

 

 と、その時オールマイトを吹き飛ばした方から轟音がする。どうやら、直ぐに復帰したようだ。皆の視線がそちらに向く。

 

 "(あれが、ワープの個性――今なら、ドローンを……!)"

 

 誰も見ていないその一瞬、高空に待機させていたドローンを、才子は今のうちに突撃させる。すぐに通信不能になるかもしれないが、発信機は各ドローンに仕込んである。隠れ家が分かるだけでもヴィランに更にプレッシャーを与えられる。

 

 

「チィッ! オールマイトが居ねぇ! ブルー! 大丈夫か!?」

 

「はいっ!」

 

 少し遅れて、グラントリノも駆けつけてきた。自在に空中を跳ね回り、弱った脳無から仕留めていく。形勢は、ヴィラン連合が明らかに不利だ。

 

「もう、猶予は無いな。――行け」

 

 また黒い触手を伸ばし、マグネに突き刺し、個性を強制発動させる。皆が、渡我へと一斉に引きずられ、黒い霧の中へと飲み込まれていく。

 

「待て……駄目だ 先生! その身体じゃあんた……駄目だ……俺、まだ―――!」

 

 必死に手を伸ばす死柄木。だが、その手は届かず、空を掴む。

 

 そして、黒い霧が消えると同時に、オールマイトがまた戦場へと舞い戻る。周りの脳無は次々と倒され――オールマイト・グラントリノ・ブルーの3人のヒーローと、その後ろに居る有精卵達が戦場に残っている。

 

「今、だ……早く、みんな逃げて!」

 

『応ッ!』

 

 ようやく隙が出来たと皆が逃げようとして――

 

「逃がすか」

 

 片腕を異形に変え、渾身の一撃を撃ち込むと、それを守るためにオールマイトが盾になる――そして、さらにもう一つの個性を発動。呼び出すのは、とびっきりの脳無。

 

「もうちょっと調整したかったが――仕方ない。暴れてもらうとしよう。――君たちもUSJで戦っただろう? それの、ハイエンドモデルだよ」

 

 体色が、黒い脳無。しかも更に悪いことに、翼まで生えている。

 

「また、脳無―――!!」

 

 臨戦態勢を取る、ブルーとグラントリノ。オール・フォー・ワンはオールマイトが相手をする以上、脳無は自分たちでやるしか無い。

 

「グラントリノ……ブルー……!」

 

「分かっとる!」「分かってます!」

 

 オールマイトに応えた二人は、迷わずに脳無に突っ込んでいった。

 

「100%――セントルイススマアアアアアアアアアッシュ!」

 

 フルガントレットの両足、残り耐久1回ずつ。左足で、地面を陥没させながら飛び出し、利き足である右足に渾身の力を込め、思い切り地面に叩きつける。温存はしない、出来ない。初めから全力の一手を。――だが

 

 

「GYAAAAAAAAAAAA!」

 

 対オールマイトを目指して作られた脳無は、それでもまだ動くのだ。ダメージを受けた端から修復し、今度は翼を伸ばして、空を翔ぶ。

 

「空中戦は、俺に任せろ!」

 

 思い切り肺に空気を吸い込み、足の裏から一気に吐き出す。空中で何度も方位を変え、背中に蹴りを入れるがダメージにならず、逆に弾き飛ばされる。そこを狙われ追撃されるが、今度はブルーが右手の100%で殴り飛ばす。残り、3回。

 

「硬い、重い、疾い――!」

 

 まるで空を翔ぶオールマイトを相手にしているかのようだ。だが、オールマイトの援護は期待できない。オール・フォー・ワンは、街を巻き込むように大規模な衝撃波を次々と飛ばしていくので、オールマイトはひたすら守勢に回されている。側には、雄英生も居る。虎視眈々と脱出の機会を狙っているが、それも難しい。

 

「クッ……! 何も、出来てねぇ……!」

 

 そして、悔しそうに歯を食いしばるグラントリノ。自分は――この二人の助けになれないのかと、無力感に苛まれる。

 

「おやおやぁ? 僕ばかりにかまけて良いのかな? オールマイト。このままでは、どちらか、あるいはどちらも死んでしまう。そう、君の師匠――志村菜奈の様に」

 

 表情は見えない。しかし、その声色だけでニタリと嘲笑っているのが分かる。

 

「貴様の穢れた口で……お師匠様の名を出すな!」

 

「理想ばかりが先行しまるで実力の伴わない女だった……! ワン・フォー・オールの生みの親として恥ずかしくなったよ。実にみっともない死に様だった……そして、今キミの未熟さで、後継者さえも失いそうだねぇ……いやなんと無様な!」

 

Enough!!

 

 激高し、大振りになった所を高空まで弾き飛ばされた。それを、グラントリノが追い、更に脳無が追撃し、それをブルーが阻止する。両方の手を握り、思い切り振り上げてから、100%の力で振り下ろす。

 

「スマッシュ!!!」

 

 轟音とともに、また地面へと叩きつけられた脳無。だが、また再生していく。残り、右手2回・左手3回。カウントダウン。100%を出せる限界が、近づいてくる。

 

「ふむ、先程の組み合わせに、もう少し足してみるか」

 

 狙うは、不確実なヒーローの卵たちではなく、逃げ遅れた市民達。

 

「行くぞ」

 

 軽い言葉とは裏腹に、直線上のもの全てを吹き飛ばすような衝撃の連打。歯を食いしばり、血を流しながらも、それを何度もSMASHで止めるオールマイト。助けようにも、ブルーとグラントリノは、脳無に掛かりきりだ。このままでは、消耗し尽くしてしまう。そう思われたその時。

 

プロミネンスバーン!!!

 

 突如として、大火力が脳無とオール・フォー・ワンへと向かう。オール・フォー・ワンは個性で逸らすが、脳無は直撃を受け焼かれる。

 

「この、炎は――」

 

『エンデヴァー!』

 

「貴様が、この騒ぎの元凶――そして、ハイエンドの脳無か……!」

 

 初っ端から最大火力を放ったが、オール・フォー・ワンには逸らされ、脳無はもう再生を始めている。

 他のヒーローたちも次々と現着し、周りの人々を救け回収していく。

 

「エンデヴァー……脳無を、頼む……!」

 

「チィッ! まさか、貴様から頼まれるとは……だが、任せろ!!」

 

 そう言うと、エンデヴァーは背中のガジェットに炎を通し、そのまま空中へ吹き上がる。I・アイランドの技術者達から提案された新装備だ。彼等曰く――炎を出し続けられるならば、飛べないはずがないとの事だった。だが、試作品なせいもあり、身体に熱をどんどんと溜めていく。そして、空中戦は脳無の方が疾い。

 更に悪いことに、オール・フォー・ワンまで空中へと飛び出した。

 

「こいつらじゃ、空中戦は出来ねぇ……! なら、俺が行くしかねぇ……!」

 

 限界をさらに超え、大きくジェットを噴出し、空中へ。ブルーも、何とか下から手を出そうと跳躍するが、既に足のフルガントレットは粉々に砕け散っている。必然、下から直線的に狙うしか出来ない。

 

「もっと、力が有れば……僕が、この力を使いこなせれば……!」

 

 悔しさに、涙が出そうになる。ヘルメットの下で歯を食いしばり、それでも諦めずに空中戦を挑むが、捉えきれない。そして、空中で炎を何度も放っていたエンデヴァーが、とうとう墜落する。熱を、溜め過ぎた。

 

「ぐっ……がっ……!」

 

「哀れだなNo.2。所詮、それが君とオールマイトとの一生埋められない差だよ」

 

「っ―――親父ぃ!!!」

 

「轟っ……!」

 

 ヴィランに嘲笑され、落ち行く姿に思わず轟も叫んでしまった。あの親父でさえ、限界を超えて戦っているのに、何も出来ない自分。――だがもし、出来ることが有るのならば。

 

「夜嵐、頼む――親父を、エンデヴァーを回収してくれっ……!」

 

「っ~~~! 任せろぉ!」

 

 威力を限界まで振り絞り、風でエンデヴァーを引き寄せる。その隙は、ブルーが稼いだ。左手で100%の衝撃波を放ち、脳無を吹き飛ばす。残り、2回。

 

 引き寄せられたエンデヴァーを、轟は全力で氷で覆い、冷やしていく。あまりの熱に、凍らせた端から凄まじい水蒸気が出て身体が熱くなるが、構わない。オールマイトも、緑谷も、エンデヴァーも、周りのヒーローたちも皆限界を超えている。なら、自分が超えないでどうするか……!

 

「"エンデヴァー"……! 熱くなりゃ、何度だって、冷やしてやる。だから――だから――オールマイトを、緑谷を――救けてくれっ…………!」

 

 息子が父に頼む、初めての願い。それに、奮い立つ。

 

勿論だ!

 

 

 一方、自責の念に駆られている緑谷は、ただ願う。止めたい――捕らえたい――救けたいと。生半可なガジェットも、空中へのジャンプも通じない。そして、その強い想いが、かつての想いを呼び寄せる。

 

 "ああ、良いぜ――俺の力を、貸してやる!"

 

 内側から響いてくるのは、聞いたことのない――しかし、安心感を与えてくれる声。ふと両手を見ると、黒いモヤが溢れる。

 

 "それは俺の個性――黒鞭って言ってな。そりゃーもう良い個性さ"

 

 ブルーの意志に呼応し、形を変え、伸びる。

 

 "俺たちまでの代であいつとの決着を終わらせられなくて、お前さんにも重荷を背負わせちゃって済まないな。――だから、頼む。あいつを、止めてくれ。あいつとの因縁を、終わらせてくれ"

 

 姿は見えないが、こくりと頷く。きっと願いは同じなはずだから。

 

 "使い方は体で覚えな!! 感情を制御して、心を制しろ! そうすれば、必ずお前さんの意志に従う!!"

 

 心の中、薄れゆく願いと自分の願いを託し、その黒い鞭を伸ばす。倒す必要はない。ただ、拘束すればいい……!

 

いっけえええええええええええええええええ!!

 

 緑谷の身体から伸びる、多数の黒い線。四方八方から伸ばし、退けようと振るってきた脳無の腕をそのまま拘束し、翼を縛る。暴れる脳無の圧力に、全身が悲鳴を上げるが、無理やり抑え込む。動きさえ、封じ込めてしまえば――

 

「待たせたな、ブルー」

 

 ガチガチに身体が冷えたエンデヴァーが、脳無の下に潜り込む。熱を、ただ上へと指向して、熱を上げる。

 

「しっかり抑えておけよ!!!」「はいっ!!!!!」

 

 二人共限界を超える。その時、二人の脳裏によぎるのは、雄英の校訓。

 

「(オールマイトのように……! 限界を、超えて―――!!)」

 

「(昔から、この校訓が大嫌いだったよ――!!)」

 

行けええええええええっ!! 親父いいいいいいいいいいっ!」

 

 (息子)の限界温度も、エンデヴァー(自分)の限界温度さえも遥かに超え、青い炎で夜空を焦がす。

 

PLUS ULTRA!!!!!プロミネンスバーン!!!!!」』

 

 真っ青な炎に包まれ、再生ができないほどに炭化した脳無。そのまま、地面へと落ちた。後は、ただ託すのみ。熱で動かなくなった身体を無理やり動かし、叫ぶ。

 

行けえええええええええええっ!!! オールマイトおおおおおおおおおおおっ!

 

「ああっ!!」

 

 もう、敵はオール・フォー・ワンだけになった。背に、数々の声と想いを受け、オールマイトはまた走り出した。

 

 

 

 

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