豪華絢爛たる緑谷出久のヒーローアカデミア   作:両生金魚

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始まりの終わり、終わりの始まり

 オールマイトはただオール・フォー・ワンへと向かって走る。託された様々な想いを背中に受け。それが、平和の象徴としての――自分の最後の役割だと信じて。活動限界は、度重なる衝撃波の打ち消しでとっくに超えた。――だから、もうその後は、捨てた。自分の体に残る、ワン・フォー・オールのその残り火、全てを出し切ろう。そうしても、大丈夫だ。自分が居なくなっても、後を支えるヒーローたちが――これから育つ、逞しいヒーローの有精卵達が――そして何より、ワン・フォー・オールを継いだ、新しい力にも目覚めた自分の後継者が居る。

 だから、この身に残る全ての力は、この瞬間のために。

 

 そして、覚悟を決めたのはオール・フォー・ワンも同じだった。ヒーローとは、忌々しいほどに何度も限界を超えてくる。5年前、身体をボロボロにされ、同じくボロボロになった筈のオールマイトは、尚も向かってくる。更には、No.2と、ワン・フォー・オールの後継者。この二人によって、ハイエンドが撃破された。後先も考えぬ、なりふり構わぬその熱さに身を焼かれた。

 ――ならば。ならば、自分も"その先"を捨てよう。まだ未熟な、テレビを通してこの光景を見ているであろう死柄木弔に学ばせてやる最後の事。それは、執念。その目的のためだけに、知恵も、意志も、身体も、全ての限界を突破させる、心の強さ。それを見せよう。でなければ、きっと緑谷出久には敵わない。

 もう、オール・フォー・ワンも衝撃波を飛ばす体力も尽きかけてきた。ワン・フォー・オールの後継者が、まだ全力の一撃を出せる手段を残している以上、長々とは伸ばせない。だから――この身全ては、オールマイトを殺すためだけに。正義の象徴が、抵抗虚しくテレビの前で砕け散るのを、見せるためだけに。

 

 余分な個性は抜く。"エアウォーク解除" 身体への負担は、考えない。"腕の肥大を、両手に波及" 大地に根ざしその力を全て受け止めさせる。"地面を硬化。脚力増強*3"

 

 両腕が膨れ上がった異形の姿。対して、オールマイトは、解除されかけのマッスルフォーム。二人が激突した瞬間、音が死んだ。そして、弾けた。

 

『うおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!』

 

 お互い、小細工の無い真正面からの殴り合い。ただ、泥臭く殴る。お互いの拳を合わせ、お互いの拳から血を流し、口から血を吐き、マスクから血が溢れ、衝撃は周囲を破壊していく。

 

「君のその残り火、全てをかき消そう!!」

 

「ならば、私はその火をすべて使い、貴様を捕らえる!! それが、ヒーローだからだ!!!」

 

 体中から蒸気を噴き出し、血を吐きながら異形の腕と何度と無く殴り合う。

 

「―――オールマイト……」

 

 衝撃波に吹き飛ばされた所を、エンデヴァー共々ダークシャドウに回収され、遠くから見守るブルー。……だけど、ただ見ているだけなんて出来ない。ヘルメットを外し、個性も使い、大声で()()が叫ぶ。

 

「あなたが勝つって信じてるよ、オールマイトオオオオオオオッ!」

 

 それを皮切りに、皆の思いが噴き出す。

 

「そうだ、あんたが負けるはずがない……行けぇ!」

 

『オールマイトォ!!!!』

 

 皆の叫びが唱和する。ここだけでは無い。テレビを通じて、ラジオを通じて、ネットを通じて状況を知った人たちが、声を出す。今まで、ずっと信じてきて平和を守ってきてくれたヒーローが、負けてほしくない――負ける筈が無いと。

 

「はははははっ!! 皆健気だねぇ! 君はもう、とっくに限界だと言うのに! そのフォームすら、維持できなくなるほどに!!」

 

 身体から吹き出す蒸気で、大事な何かが抜けていくように、オールマイトの身体が萎んでいく。顔が、腹が、背中が、足が。殴り合いに必要のない所から、少しずつ削られていくように。

 

「―――醜い」

 

 吹かずとも消え行く、弱々しい残り火を守るように、役目を全うするまで絶えぬように、必死で抗う姿を幻視するオール・フォー・ワン。

 

 そして、最後の最後。力が消え行くとき、オールマイトの脳裏に過るのは――他の誰でもない、師匠の姿と声。

 

 "限界だーって感じたら思い出せ"

 

「うおおおおおおおおおおおおおっ!!」

 

 もはや、左手しか維持できなくなったマッスルフォーム。殴り合いから身体をずらし、渾身の一撃を、オール・フォー・ワンに叩き込み、マスクを吹き飛ばす――が。

 

「(浅いっ……!最後の一振り……全てを左腕に込めたが――もう、パワーが無いのか!?)」

 

 見守るグラントリノの脳裏にも、絶望がよぎる。もう、そこまで消えていたかと――。

 

「それが、限界だったか――! もう、死に給え、オールマイト!!」

 

「いや、ずっと、力を溜めていたのだよ!!!」

 

 左手が萎み、他の部位も更に縮み、歯を食いしばり血を流しながら、折れた腕を、振りかぶる。

 

 "何人もの人がその力を次へと託してきたんだよ。皆のためになりますようにと……一つの希望になりますようにと。次はお前の番だ。頑張ろうな、俊典。"

 

 一筋の光が、色を変える度に太くなる。そして8回目――自分の番だ。残り火を、全て拳に託して。希望になりますようにと願いを込めて。

 

 ――さらばだ、オール・フォー・ワン。さらばだ、ワン・フォー・オール――

 

「(――届かなかったか――次は、頼んだよ。死柄木弔)」

 

「UNITED STATES OF SMAAASH」

 

 最後の一撃が――オール・フォー・ワンの顔面に突き刺さった。陥没した地面の中心に、オール・フォー・ワンが突き刺さり、ピクリとも動かない。

 

 そして月明かりの元、オールマイトはマッスルフォームで、左手を突き上げ立っていた。平和の象徴は負けないのだと、皆に伝えるために。その時、日本中が叫んだ。

 

オールマイトォ!!!!!!!

 

 平和の象徴は、ヒーローは、最後の最後まで――この国の平和を守るために、負けなかったのだ。

 

 

 

 しばらくして、とうとうマッスルフォームの維持すらできなくなったオールマイト。倒れそうになった身体を支えたのは――エンデヴァーだった。

 

「……エンデヴァー……」

 

「――無様な姿を晒すな。……俺が背中を追い続けてきた男は――決して倒れん」

 

「ははっ……相変わらず、厳しいね君は――」

 

 拘束され、メイデンに入れられるオール・フォー・ワンを、主だったヒーロー達全員で監視する。

 

「次を、頼むよ。エンデヴァー」

 

「―――任せろ」

 

 ずっと、目指し続けてきたNo.1の地位。それを託された一言は、とてつもなく重かった。――だが、臆するわけにはいかないのだ。次の世代の為に。オール・フォー・ワンがメイデンに入れられた後、ふと横を見た。そこには、息子を含む7人のヒーローの有精卵たち。何のために戦うのか。それは、紛れもなく未来の――そして、彼等のためだ。

 

 今、一つの時代が終わりを迎えた。朝日と共に迎える次の時代はどうなるか――まだ、知る者は誰も居なかった。




いい所で区切ったから短くなってしまった……。これにて合宿編は終了です。
バトル展開が続いたし、日常編やらラブコメ編やらやってみたいし、チラシの裏の方でも色々と試してみようかな……?
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