相澤先生の話が終わった後は、まずは1日をかけて皆が生活になれるための準備をし始めた。それぞれの部屋に運ばれた荷物を思い思いに配置し、各階の構造や非常口を確認し、風呂や洗面所にキッチンやロビーなどそれぞれの施設を皆で確認していく。それが終われば今度は掃除当番や料理当番を決めていく。
「そーだ、ゴミの分別ってどうするんだ?」
「あ、それもあったわ! 住んでる所で違うよね? ウチの所と細かい所違いそう……」
「むっ! それはきちんと確認せねば! 収集員や焼却場の皆様にご迷惑がかかってしまう!」
「じゃあ、ネットで調べてプリントアウトしておくね」
「そういやパソコンにプリンターも共同のが有ったな……持ってない奴も使い方覚えとくと便利じゃね?」
「ご、ゴミの分別ですか……初めての体験ですわ」
「ヤオモモが超お嬢様的な発言してる!」
皆が集まってから、会話が途切れずに続いていく。合宿の時、みんなでワイワイガヤガヤしながら訓練をして生活をするのはとても楽しかった。だけれども、今日からはそれが日常になる。しばらくすれば慣れてくるだろうけど、今はそれが凄く楽しくてまたワクワクしてくる。その内B組も巻き込んで、色々なことが起きるのだろう。
「いよーっし! じゃあ、一通り終わった所で皆の部屋、確認してみようか!」「お披露目、お披露目!」
話もほぼまとまった頃、女子組からそんな声が上がりだした。
「ふえ? って、わあああああっ!? ダメダメッ!? ちょっと待――――!!!」
そしていきなり立ち入られる緑谷の部屋。オールマイトだらけのオールマイト部屋である。フィギュアにポスターにタペストリー、本棚にはオールマイト関連の本がぎっしりと。BDも当然オールマイトだらけである。
「オールマイトだらけだ! オタク部屋だ!!」「うわっ! すげぇ予想通りだぜ」
お部屋訪問にテンションが上り批評していく皆様方。緑谷は顔を真赤にしている。
「よぉし! 次は夜嵐君の所行ってみよー!」
「俺ッスか!!!」
特に苦も無く夜嵐の部屋へ。一言でいうとそこは
「うわっ、濃い!」「本人と同じくらい濃いな」
そして見たものの感想はそのまま濃い、である。
「好きなものを集めてたらこうなったッス!」
何時もと同じテンションで堂々と叫ぶ夜嵐。それに感心する男子連中と
「何か予想の範疇だよね」
『うんうん』
割と評価が厳しい女子の面々。少し見た後すぐ次へ移動すると、そこには常闇が立っていた。
「フン、下らん……」
などと言ってドアに体を預けていた常闇。だがおもむろに峰田と上鳴に押されて退けられ中を見られた。
「おわっ、真っ黒!」 「闇属性だ!」
「出ていけっ!」
珍しく激おこな常闇が皆を追い出し、次は青山の部屋にだ。本人は喜んで迎え入れるも
「予想の範疇だよね」
と、続いて酷評をされる。そんな反応が何度も続くと段々と不満も溜まってくるもので
「ちょっと男への当たりキツくね!?」「そーだそーだ! 女子の部屋も見せやがれ!」
早速のドッタンバッタン大騒ぎ。寮生活1日目は、こうして騒がしく過ぎていったのだった。
そんな中、一人蛙吹だけが不安げに見ていたが、1日の終わりに救出しに行ったメンバーと話し合うことで、次からはいつもの調子に戻った様だ。これで、1-Aは全員何時も通り、心機一転して残りの夏休みを過ごしていくこととなったのだ。
そして次の日。夏休みの真っ最中だがここは雄英。もはや通常の授業日と変わらず朝早くから教室に相澤先生含め全員が集まる。
「昨日話した通り、まずは"仮免"取得が当面の目標だ」
『はい!』
早速話し始めた相澤先生に、全員の返事が唱和する。
「ヒーロー免許ってのは人命に直接関わる責任重大な資格だ。当然取得のための試験はとても厳しい。仮免といえどその合格率は例年5割を切る」
「仮免でそんなキツイのかよ」
皆の意見を代弁するように、顔を青くした峰田が呟く。その事実を初めて知る面々は特に、顔色が優れない。
「そこで今日から君等には一人最低でも二つ……」
クイッと指で外から手招きする相澤先生。すると、入ってきたのは3人の先生方。
「必殺技を作ってもらう!!」
『学校っぽくてそれでいて、ヒーローっぽいのキタァア!!!』
思いっきり盛り上がる一同。必殺技、そう聞いてワクワクしないヒーロー志望は居ないだろう。朝からテンションが一気に上る。
「――とは言っても、諸君らは既に幾つか必殺技を編み出している者も居るな。よって、これは普段の放課後の特訓の延長になるが……夏休み期間だ。授業や帰宅時間に悩まされず、長時間訓練できる上にエクトプラズム先生やセメントス先生がほぼ付きっ切りで見て下さる。何時もより効率的だろう。そして、編み出す必殺技に合わせてまたコスチュームの改良も個々に行っていく。皆、PLUS ULTRAの精神で乗り越えるように」
『はいっ!』
それに、元気良く答える一同。こうして、朝からTDLでの特訓が始まった――が。
「さて、その前に。緑谷、夜嵐、轟。お前らはこっちに付いてきてくれ。話が有る」
他のクラスメートが教師に引率されてTDLへ行く中、3人が相澤先生に呼び止められた。
「は、はい」「うっす!」「…了解」
「お、1-Aトップ3が呼ばれてる」「なんだろなんだろ?」
3人だけが特別に呼ばれることに興味津々なみんなだが、ひとまずそれぞれの場所へ呼ばれていく。相澤先生に連れられた3人は疑問に思いつつもとある個室へ呼ばれると、そこには既に校長先生が座っていた。
「やぁ! よく来たね! まあ座ってくれたまえ!」
校長の隣には相澤先生が、そして向かいのソファーに生徒3人が座る。ますます疑問に思う3人だが、それは早速解消され始める。
「さて、君たちをここに呼んだ理由だが、次の仮免試験の事なんだ」
校長自らがお茶を入れ全員に配りながら話し始める。
「仮免試験、ですか?」
それならば、それこそ1-B含めた全員の前ですればいい話なのに一体何なのだろうか。首を傾げつつ不思議に思う3人だが、聞かされたのは更に予想外な言葉。
「うん、そうさ。次の仮免試験は2段階有るんだけどね、最初の1段階を君たち3人は免除するとの通知が上から来たのさ」
「へっ!?」「はっ!?」「なっ!?」
全くの予想外の内容にびっくりする3人。いまいち事態が飲み込めない。
「い、いやいや、僕らまだ1年生ですよ!? それなのに何でそんな特別扱いを!?」「そ、そうッス! 何か不公平ッス!」
「落ち着けお前ら、それを今から説明するんだ」
ジロリ、と、ドライアイな目で一睨みされると、ピタッと落ち着く二人。それを見ると校長は隣でHAHAHAと笑いながら話し始める。
「特別扱い、それは当然さ! 何せ君たちは特別なんだからね!」
手を可愛く上げて笑顔な校長。そして相澤先生の説明が続く。
「お前ら、4月に入学してからの事を思い出してみろ。USJでのヴィランの撃破を筆頭に脳無の撃破とステインの捕獲、I・アイランドでの事件の解決に合宿でのヴィラン及び脳無の撃破。事実としてはっきり言っておく。お前ら3人は戦闘に限って言えばすぐにでもプロで通用する」
「その通り、試験とはその資格に相応しいかを判断する為に行うんだ。だから既に実力が証明されている君たちには必要無い、と上が判断したんだ」
先生2人、そして上とやらの高評価になんとも言えない感情を抱く3人。特に、真っ直ぐ熱血の夜嵐は複雑そうだ。
「で、でも特別扱ってのは……「夜嵐」」
言葉を募らせようとする夜嵐に、相澤先生は手を伸ばしピタリと言葉を止めさせる。
「お前らの免除は、他の試験を受ける奴への配慮でも有る」
「ほ、他の人ッスか?」
「そうだよ! 仮免試験なんだから、プロの基準を100として60位の人を選別するために有るんだよ! そこに120位有る人をぶつけるのはぶつけられた側の不幸さ!」
「あ、あ~……」「そうか……」
何となく、納得する緑谷と轟。この3人ならば他校のトップクラスの生徒にでも勝てるだろうし、それは一人でも多くの強いヒーローを求めている上の思惑とも合致しないのだ。
「実際、お前らはプロヒーローでも撃破が難しい脳無を複数体撃破している。上は何が何でもお前らを現場に出せるようにしておきたいんだろう」
そんな上の思惑に複雑な感情を抱いてしまう教師陣だが、それと同時にこのとてつもなく優秀な3人を遊ばせておく余裕がないというのも分かってしまうだけに、あまり強く反対も出来ないのだ。だから、自分達教師に出来るのはより彼らを優秀なヒーローへと成長させることだ。
「さて、次の仮免の試験は2段階に分かれる。1段階目は戦闘、そして2段階目が救助だ。お前達3人は、2段階目の勉強を重点的にやってもらう。AEDを筆頭とする救命道具の使い方や事故、火災現場での迅速な行動、瓦礫への対処法など、覚えることは多岐に渡る。……例年通りならUSJからじっくりと学んでいくんだがな、今年はトラブル続きでどうしても諸君らへは戦闘面ばかりを覚えさせることになってしまった。……本当にすまないと思っている」
と、先生二人が同時に頭を下げる。
「い、いえ、仕方ないと思います」「そうッス! ずっとトラブル続きだから仕方ないッス!」「訓練が無かったら、もっと辛かった」
「そう言ってもらえると、助かるよ。とにかく、君達は他のクラスメート達と少々やることが変わるから、そこを話しておきたかったんだ」
「3人共それぞれ様々な技を編み出しているしな……が、轟。お前、個性の同時使用はどれくらい出来る?」
「――同時に使うと、少し動きが鈍ります」
今まで個性を使ってこなかったせいか、どうしても同時使用時には動きも精度も落ちるようだ。
「そうか。じゃあ轟は合宿に引き続きこの個性の同時使用の訓練を重点的にするように。両手を同時に使うように、氷と炎も同時に使いこなせ。それでお前は更に強くなれる」
「はい」
轟自身も、深く頷く。自分でも弱点は自覚している。ならば、それを解消するだけだ。
「そして緑谷。あの、戦いで使った黒い触手みたいな力だが―――」
初めから、規格外の力を持っていた。だが、そこに更に新しい力の覚醒である。部屋の視線が、一斉に緑谷に向いた。
「……よく、分からないです。でも、あの力を強く使うと、出した所に凄い負荷がかかって……」
ワン・フォー・オールの事は話せない、が。上手い説明の仕方が見つからない。緑谷としては、何と言っていいかよく分からないが、それでも、ここに居る他の4人には、そして緑谷に関わりの有る人は皆知っている。
「そうか。じゃあ、まずは限界を見極めて使いこなせる様にだな。使う度にリカバリーガールのお世話になるのは流石に拙いだろう」
「うん、それも間違いなく君の力さ! だから、頑張って使いこなすんだよ!」
「はいっ!」
だから信じるのだ。いつか話してくれる日まで、または話せなかったとしても。
「いよぉし! じゃあ早速特訓だな! うおおおおおおおっ! 燃えてきたぜえええええっ!」
「手伝って欲しい事が有ったら、遠慮無く言えよ? 何時でも手伝うから」
「うんっ!」
新しく出来た目標に、改めて心を燃やす3人。その様子を、二人の教師は表情をほころばせて見守ったのだ。
さて、新たに気合も入った所で3人がTDLの特訓に合流すると、そこではセメントスとエクトプラズムの二人が能力をフル活用して、A組の特訓を指導していた。そこには更にオールマイトもやって来ていて、それぞれへとアドバイスをしている。
「やあ、緑谷君、よく来たね。なにか必要な地形は考えているかい?」
早速セメントスがやって来て地形をカスタマイズをしてくれる様だ。
「あ、あの、いろんな形や大きさや重さのブロックや玉なんかを沢山お願いします! これの、訓練をしたくて!」
手から"黒鞭"を出して、希望を伝える。先代から継承した力の一つ。上手く使いこなさなければ。
「分かった。新しい武器が出来たようだね。使いこなして、ちゃんと自分の強みに出来るようにするんだよ」
「はい! ありがとうございます!」
こうして緑谷の希望の物を作ると次は夜嵐、そして轟の元へ。周りを見れば、皆はそれぞれ自分の"個性"を発展させて必殺技を作ろうとしている。だが、自分はまずは"個性"を知ることから始めないと。そう思うと、初めに四角いセメントブロックへと黒鞭を伸ばし、掴む所から訓練を開始したのだった。
と言う訳で、1-Aトップ3の面々は第1段階免除する事にしました。
……正直、この3人があの試験の戦闘で苦戦する所が全く思い浮かばず……
そして、ちょこちょこっと全体的に細かい所手直ししてみようかと考え中です