書けないものはいっそ書かない様にと。綺麗な爆豪ファンは、回れ右をお願いします。
「うわあ、凄い……」
「イズク君、そんなに珍しい?」
「はい! こんな最新の研究施設とか入ったこと無かったので!」
メリッサさんに連れられて、右へ左へキョロキョロと視線をやると、ちょっとからかうように笑われてしまった。なんだか凄く田舎者っぽいけど、それでも珍しくて止められないや。
「着いたわ。ここが私が使っている研究室。散らかっていてごめんね」
「いえ、そんな事は無いです! こんなところで研究できるなんて、やっぱり凄いんですね!」
大量の資料と研究資材に囲まれて、雑然としてるけど見てると凄いワクワクしちゃう。それに、謙遜してるけどこんな研究室を使えるってことは凄い優秀なんだろう。トロフィーや盾も、そのへんに無造作に置かれている。
「実はね、私そんなに成績が良くなかったの。だから一生懸命勉強したんだ。どうしてもヒーローになりたかったから」
「プロヒーローに?」
どうしてヒーローになれなかったんだろう。……あ、ひょっとして……。
「ううん。それはすぐに諦めた。だって、私無個性だし」
「!……"無個性"……」
何でも無い様に話すけど、その辛さは本当によく分かる。
「勿論ショックだったわ。でも、私にはすぐ側に目標があったから」
「目標、ですか?」
「ええ、私のパパよ」
そう言って笑うメリッサさんはとても誇らしげで、とても綺麗で。メリッサさんが飾っている写真のデイヴィットさんやメリッサさんも、みんなとても素敵な笑顔をしていて。
「パパも、ヒーローになれるような"個性"は持っていなかったけど、科学の力でマイトおじさまやヒーローをサポートしている。間接的にだけど、平和のために戦っている」
「ヒーローを助ける存在……」
「そう。それが私の目指すヒーローのなり方」
そういいながら、メリッサさんは倉庫の奥から箱を持ってきて、ボクの目の前で開けてくれた。中にあるのは、ボタンの付いたベルトのようなものだった。それを、僕の手に巻きながら説明してくれる。
「これはね、マイトおじさまを参考に作ったものなの」
「オールマイトを?」
ピッとボタンを押すと、ベルトが伸びて僕の腕に巻き付いて、篭手みたいになった。軽く動かすけど、一体感がとても凄い。
「これは……」
「名付けるなら、"フルガントレット"かしら? イズク君、腕に生傷が一杯だし、テストの時も本気を出せてなかったわよね? 多分、イズク君は強すぎる個性に体がついていってない状態なんじゃないかなって」
「あっ、はい、その通りです」
見抜かれていたなんて! やっぱりメリッサさんも凄い科学者だ!
「このフルガントレットは、マイトおじさま並のパワーを出しても、3回は耐えられるくらいの強度が有るわ。きっとイズク君の本気にも耐えられると思うの。だから、是非イズク君に使って欲しい」
「えっ、でも大切なものなんじゃ……」
「だから使って欲しいの。おじさまの弟子なんでしょ? あなたに渡せば、きっと人を救けるために使ってくれると思うから」
じっとまっすぐ見つめられる。その表情は、とても真剣で。だから、僕は頷く以外の選択肢が見つからなくて。
「……はい。大切に使わせて頂きます」
ヒーローはひとりじゃない。戦いの場に立つ時も、常にたくさんの人に支えられている。そう覚悟を新たにすると、メリッサさんが笑顔で誘ってきちゃって……
「うん。良かったわ。それじゃ、そろそろお腹空いたでしょうし、何か食べに行きましょ!」
「あっ、は、はいっ!」
で、でも女の人と二人で食べにとかはどうすればいいんだっ!?
そんなこんなで、僕とオールマイトのデータ取りが終わり、オールマイトは日本の用事も有るので僕と共に日本に帰ることになった。一泊二日位の忙しい日程だったけど、凄い楽しかった……。
日本に帰ってからも、オールマイトに見守られたり、一人で自主トレだったりで訓練訓練の毎日! メリッサさんから連絡先ももらったから、フルガントレットのつけ心地も報告したりで、あっという間に月日が過ぎ去っていった。
……かっちゃんは相変わらず、僕に個性を使って突っかかってくるから、一度本気で取り押さえて犯罪になる前にかっちゃんのご両親と相談して……それで転校することになっちゃった。……このまま顔を合わせていてもいい結果にならなかったしきっとこれでよかったんだと思う……うん。
そうして、月日は流れて冬休みのとある日。
「そうだ、雄英にちょっと行ってみよう」
なんて思い立った僕は、とりあえずランニングしながら雄英を訪れてみた。オールマイトやエンデヴァーも在籍していた憧れのヒーロー校を、是非一度見たくなっちゃって。
そして、そう考えているのは僕だけじゃ無かったようで。
「おおお! ここが雄英ッスか!」
身長が……190位有るのかな? 角刈りの多分同級生な人が雄英の門の前で叫んでいた。しかも、僕と同じ様にランニングスタイルで。それで、僕に気がついたようでずんずんとこっちにやってきたけど、近い近い!?
「こんにちはッス! 君も雄英入学を狙ってるッスか!?」
「うん、そうだよ。 一般入試でだけど」
ちょっと圧倒されちゃうけど、それより濃いオールマイトで慣れてるから受け答えは普通にできる。そして、それが嬉しいのか彼もグイグイ話しかけてくる。
「そうッスか! 俺は推薦をもらってるからそっちで受験をするんだ! あ、俺は夜嵐イナサッス! よろしく!」
「僕は緑谷出久。宜しくね!」
でも、こういう熱血は嫌いじゃない。思わず、挨拶に熱が入っちゃった。
「そうだ、入学を狙っているもの同士、ちょっと勝負してみないッスか!? マラソン辺りで!」
「うん、いいね! 雄英一周とかどう?」
「よし、決まりッス! じゃあ、行くぜっ!」
「スタートは、この小石が落ちたらで!」
僕がそう言うと、イナサ君も走る体勢になる。ひょいっと上に小石を放り投げて……スタートっ!
「うおおおおおおおおおおおおっ!」
「ぬおりゃあああああああああああああっ!」
お互い負けないように走るけど、やっぱり歩幅が大きいぶんイナサ君が有利かっ!? でも、負けないっ!
「うおっしゃああああああああ!」
「負けるかあああああああああっ!」
でも、お互いノリで雄英一周なんて言っちゃったけど、考えてみると雄英って凄い広いから……。
「ぜぇ……はぁ……!」
「まだ……まだぁ……!」
一周する頃にはお互いクタクタになっちゃった……あはは……。
『ご、ゴール……っ』
「同着、かな……?」
「多分、そうッスね……」
雄英の門の前、二人で倒れちゃった。す、凄い疲れたけど……凄い熱かった……!
「引き分けか……ヘヘッ、これでも俺、地元じゃ一番だったんスけど」
「僕は、比べる人が居なかったから……やっぱり、雄英に入ろうとする人って凄いや」
倒れながら、お互い笑って拳を合わせる。何かライバルっぽくて、凄く良い。
「なあ緑谷、雄英に絶対に入れよ。そして、また俺と勝負ッス」
「うん、勿論。あ、これってライバルって奴かな?」
「ああ、そうだな! 俺たちはライバルだ!」
また拳を合わせる。ライバルか、凄い良い関係だ。
「はぁああああああああ~~~ん♡ 良いわぁ、この青春、凄く好ぃ……♡」
「なっ!?」「ふえっ!? ミッドナイト!? どうしてここに!?」
そんな風に笑っていたら、いつの間にか18禁ヒーロー、ミッドナイトが側にっ!?
「どうしても何も、私はここの教師だし。何か表で騒いでる二人がいるって聞いたから覗いてみたんだけど、ヴィランじゃなくて青春する学生ですごい得したわねぇ♡」
「あっ、すみません、すぐに別の場所に行くのでっ!」
「申し訳ございませんでした!」
二人共謝るけど、イナサ君は地面に頭つけて凄い謝り方だっ!?
「良いのよ別に。じゃ、二人共気をつけて帰りなさい♪ 二人に教える日が来るのを楽しみにしてるわ♡」
そう言うと、僕とイナサ君それぞれにスポーツドリンクを渡して学校に戻っていった。開けて飲むと、体の隅々にまで行き渡る感じがする。
「あっ、そうだ、僕のアドレス、教えておくね」
「おう、頼む! 交換しようぜ!」
メールアドレスを交換してから、別れる。ふとしたきっかけで、出会いが有って。雄英での学園生活がますます楽しみになると同時に、絶対に受かってやると心に誓ったのだ。