警備隊の詰め所の昼下がり。
休憩室には食事したり、気の良い仲間と情報交換がてらお喋り、ある者は武器の手入れをしたりと隊員達は好き勝手に各々過ごしていた。
そんなのんびりとした空間に突如として響きわたる大声。
「えっー!!ええっ?ハルヤ!なんか変なもん食べた!?」
おのずと声がした4人組が座るテーブルへと部屋中の視線が集中する。それなりに警備隊の有名人だからか余計に好奇の目に晒されるのだ。
気づいた声の主は慌てて両手で口を塞ぐ。
しかし、もう遅い。
「ヴェルズ、うるさいぞ。どうして財布を盗まれたくらいで驚かれなきゃならないんだ……?」
ヴェルズをなだめる黒髪の男は集まった視線を鬱陶しげに溜息をついた。
向かい側の席にいる眼光鋭いメガネの大男もやれやれと頷いて、叫び声を上げたヴェルズの頭に一発かます。
「黙れ、にわとり頭」
「痛っ!!叩くことないじゃん!フレース!うぅ…痛いよぅ……」
「たしかにね。騒ぎすぎよねー」
黒髪の男の隣に座った緑色のポニーテールの少女も興味なさげに同意する。
マニキュアを塗ったばかりの緑色の爪を見て満足そうだ。泣き真似をするヴェルズを心配する様子はまったくない。
そんな周りの反応にふてくされたヴェルズは目の前のハルヤに向かって指を指して主張する。
「だってぇー!冷徹非道な副長が手を出されてるにも関わらず無傷で逃がすなんて……!そんなに優しいはずがない!!」
「えっ?どこが?冷徹非道だってヴェルズ?」
ハルヤは冷酷非道と言われる謂れはないと呆れたように言う。
その隣でヴェルズの言い分に引っ掛かったのか、緑の彼女は整えられた爪を見るのを止めて不思議そうに小首をかしげる。
「確かにおかしい。副長は具合でも悪いの?」
「いや、すこぶる体調は良いけど。それに俺は優しいほうだぞ?」
「優しい人は自分で優しいって言いませーーん!」
腕をバッテンにして言うヴェルズにフレースは頷き、眉間にシワを寄せた。
「ハルヤ、いちおう聞くが、捕獲対象が近くにきたらどうする?」
「………とりあえず動かないように手足を折って、それが無理そうだったら足の健を切る?」
「わーお!鬼畜!無自覚で言ってるのがヤバい!ねっ!隊長!」
「ああ、予想はついてたが……お前には容疑者の捕獲とか頼まないようにしよう。これ以上は胃を痛めたくないからな」
ちゃんと真剣に考えて言ったハルヤだが、フレースの肩を激しく叩くヴェルズと目頭を押さえて揉み込むフレースの様子を見る限り、どうやら不正解らしいと察した。