儚い夢想、ココロに届け。   作:バ烏@(°∀。)ノウェ

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『夢を、見た。

 あの人がどんどん遠くへ行ってしまう夢だった。

 暗い暗い、なにも見えない空間であの人だけがはっきり見えて。

 でもどんど。ん離れて、姿も霞んでいって。

 呼びかけてもこっちを向いてもくれなくて。

 最後に、あの人が倒れたような気がした。

 

 起きた後、パジャマは冷たい汗でぐっしょりしていた。

 冷たさのせいなのか身体の震えが止まらず、ベッドの上で膝を抱えてしばらく動けなかった。

 彼は私の大事な人。

 彼はあたしが失っちゃだめな人。

 

 最近、こんな夢ばかり見る。

 あの人といて楽しくて楽しくて仕方ないはずなのに。

 こんな暗い感情になんてならないはずなのに。

 きっと、あの時から。

 あの人が倒れたあの時。

 

 あの時、あの人は私のせいで無茶なことをして、そのせいであの人は倒れてしまった。

 私が、いい子にしてないせいで。

 あの人まで、失ってしまうところだった。

 

 ……いいえ、違う。

 あの人()()とは、どういう事だ?

 

 待って、それを考えないで。

 誰かがそう言う。

 

 違う、アレは、私の、あたしのせいじゃない。

 違う。違うと言ったら違う。

 私は悪くない。

 仕方ない事だった、お父様もそう言ってくれた。

 

 そう、貴女はなにも悪くない。

 誰かがそう諭してくれる。

 

 息が苦しい。

 胸が大音量で脳を掻き回す。

 ハロハピで演奏してるときと違ってとても静かなのに。

 あの人といるときと同じように、音なんて無いのに。

 なのにこの煩い音はなんだ。

 

 気にしない、気にしちゃいけない。

 だから、誰かに従う。

 ガチャリと音がした気がする。

 

 でも……そうね。

 私がみんなをハッピーにしなきゃ。

 みんなを笑顔にしなきゃいけないわ。

 

 あの人をもうあんな目に遭わせたくない。

 このオモイがなんなのか、私にはよくわからないけれど。

 あの人は、大事にしなきゃいけないわ。

 お人形さんみたいに、可愛く、可愛くしなくちゃ。

 だって、死んじゃったらもう逢えないのだもの。

 

 生かして、生かして、ずっと私と一緒にいてもらうの。

 少なくとも、あの人は私にはとても大事な人だから。

 だから、今日もあの人に会いに行かなくちゃ。

 いつ行こうかしら? 学校に行く前? 帰ってくる時? あの人は、彼はどんな顔をするかしら。

 いっつもみたいに、めんどくさそうな顔をするわ、きっと。

 彼のお母様はきっと、笑いながら彼の部屋に通してくれるわ。

 

 彼のお母様を笑顔にできる。

 きっと、彼も笑顔になってくれる。

 だったら、行かなくちゃ。

 世界中のみんなを笑顔にするのですもの。

 彼のお家くらい、毎日笑顔にしましょう?

 

 言っている間に、黒服の人たちが部屋に入ってくる。

 そして、黒服の人たちに準備をしてもらったら、家を出る。

 そうね、今日は帰りに寄っていきましょう。

 少しくらい、彼にも私を大事にしてもらわなきゃ、ね?』

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