ガノンの奇妙な旅路 作:ぬぶぬぶ
ゲルド族は百年に一度、男の子が生まれるという。そしてその子は王となる資格をもつ。
あるところに、ゲルド族の男の子が産まれた。
その男の子はガノンドロフと女王に名付けられた。
彼の乳母となったツインローバは、その子を初めて見たとき赤子でありながらその身に秘める膨大な魔力を見抜いては驚き、彼は将来偉大な王となるであろうと確信した。彼女らはその子を大事に可愛がって育てた。
産まれてから数年がたち、その男の子ガノンドロフはすくすく力強く育っていった。
その歳で、同世代のゲルド族とは比べるべくもないほどの知性、力、そして野望。
作戦を練り、兵を指揮するその知性は彼の教育者を驚かせ
1対多の戦闘でも圧倒的なその力はゲルド族で話題となり
その身に秘めたその野望は神々でさえ恐れるものだった。
ガノンドロフは幼いながらも自分の一族が住むこの砂漠に不満を覚えていた。
昼は灼熱、夜は極寒の死と隣り合わせの世界にて過酷な生活をしていたためか、ハイラル城がある肥沃な大地への憧憬はますます高まり、ガノンドロフはいつかあの地を俺の手にいれてやるとその胸に誓った。
野望が高まるにつれ、ガノンドロフが行う修行は苛烈になっていき。そして齢9にしてついに女王との模擬戦に打ち勝った。
ガノンドロフは自信を持ち、己の道を突き進んだ。
しかし、ある一夜。満月が照らすその夜にて、彼は自分の運命と出会った。
少年は夢をみていた。
まどろみの中で、少年はある男の人生を俯瞰してみていた。
その男はハイラル王家の家臣となり、有能な部下として働いていた。
しかし、男はクーデターを起こしハイラル王を暗殺。そしてトライフォースを強奪した。
だが男は三つとも手に入れることを失敗し、その身には力のトライフォースだけが残った。
7年の月日がたち、残り二つのトライフォースを手に入れようと試みるが、緑の衣を纏い光り輝く剣を持った少年に滅ぼされ、ゼルダ姫と六賢者に封印された。
少年は呪詛を吐きながら封印されていく男を見た。
少年はこの時、この男が自分の未来の姿であることに気が付いた。自分が封印されるということに吐き気を覚えた少年であったが、彼のこの悪夢はまだまだ終わらない。
次に少年が見たのは計画が事前に発覚し、処刑される場面である。
しかし何の因果か時空を超えて、将来手にするはずであった力のトライフォースがその身に宿った。
トライフォースの力で激しく抵抗するもかなわず、男は賢者たちにより影の世界へと追放された。
しかし、男は影の世界の現地人と協力し、彼を利用して光の世界を攻め、賢者の剣とハイラル城を奪い拠点とすることに成功した。
今度は順風満帆のように思えたその征服の過程だった。
だがかつてのように緑の衣の勇者が影の女王をひきつれ、討伐されて死亡した。
夢は依然続く。復活からの封印、復活からの封印と無限のように繰り返した。
どれほど相手の裏をかこうと、どれほど計画を練ったとしても、最後には緑の衣の勇者に倒される。
体は朽ち、怨念となったとしてもいまだその復活と封印の呪縛からは逃れることはできなかった。
少年は無限に思える時間をその悪夢でさまよった。数々の怨念の叫びが少年を震えあがらせた
しかし夢とはいつか終わるものである。少年は自らの体が急浮上する感覚に襲われた。
あぁ...やっとこの長い悪夢が終わる...。少年はそう思った。
そして少年は光に包まれた。
少年、ガノンは目をゆっくりと開けた。
最初に飛び込んできたのは彼を挟んでこちらを心配そうに覗く、コウメとコタケであった。
「大丈夫かい?ガノンちゃん?」
「ひどくうなされていたようじゃけど...」
手で額の汗をぬぐう。服がまるで水につかったかのように汗で濡れていた。
「大丈夫だ...」
ガノンはベッドから立ち上がり、窓際へと向かう。目の前には死の砂漠が広がっている。
夢が終わったこの時、ガノンにあった燃え滾る野望はすでに冷え固まっていた。
幾千もの自分の封印を見て、かつてまであった自信というものが粉々に砕け散ったのだ。
しかし野望が枯れ果てたガノンでも、いまだその身には肥沃な大地への憧れがあった。
川が流れ、森が育ち、生き物たちが住まう土地。
ただそのような土地を持つハイラルを攻めては、夢で見たように自分は長い呪縛にとらわれることとなるだろうということはガノンは嫌でもわかっていた。
自分だけでなくゲルド族の民たちの憧れを何とかしても達成したい。けれどできない。
ガノンは自分の計画のすべてが破滅に導かれるという確信によって絶望の淵に立たされていた。
夜が明ける。太陽が昇り始めた。
ガノンはそのまぶしさに思わず下を向く。
するとふと視線の端に映ったものに気づく。
それはきれいに赤みがかかったイチゴだった。ゲルド族の誰かが栽培しているのだろう。イチゴの根には水が一滴ずつ補給されている。
その時ガノンは閃いた。
何も肥沃な土地を求めずともよい。
ガノンはコウメとコタケの方へ振り向いた。
「二人とも、頼みがある」
「「ほえ?どうしたんじゃい?」」
ガノンはニヤリと口を歪め、自分が考えたアイデアを話した。ガノンが語った内容を聞いたツインローバはその顔に驚愕を浮かべた。
これは本来あるはずがないガノンドロフのストーリーである。
ーーーーーーーーーー
「「う~本当に行くのかい?」」
コウメとコタケは目に涙を浮かべ悲しそうにつぶやいた。
「あぁ行くとも。この砂漠を緑豊かな場所にできるような技術を探しにな。女王の許可も得ている。」
自分の愛馬に荷物を載せながらガノンは二人に言った。
あの悪夢から数年の月日がたち、ガノンはたくましい青年となった。町の本を読み漁り知力を鍛え、日々欠かさず鍛錬をしたその体は町の女たちが見とれるほどのものとなった。
そして、彼...ガノンは今旅へ出るところであった。
「確かに砂漠を緑地化できる技術をアタシたちは持っていないけれど」
「そんなことができる技術が外に本当にあるのかい?」
「あるかないかは知らん。けどやってみなければ可能性は永遠に0のままだ。」
ガノンは鐙に足をのせ、馬にまたがった。
「それに二人がくれたこれのおかげでどこにいようと帰れる。」
ガノンは懐から赤と青に彩られたお守りをだした。
それはコウメとコタケがガノンの願いを聞いてから必死の思いで作り出したもので、ガノンがどんなとこにいようと故郷へと導いてくれるという優れものだった。
「わかった...けど」
「苦しくなったらいつでも帰ってくるんだよ?」
「フッ...了解した」
馬の手綱を手に取り、そのまま手綱をふるう。馬を鳴き声を上げ、前に進み始めた。
「「元気にするんだよ~~!!」」
二人が手をブンブンと振りながら言った別れの言葉に、ガノンは右手を上げ返事をした。
ガノンドロフの旅は今始まった。
ーーーーーーー
その一.ハイラル城下町
ゲルドの町を出たガノンはまずハイラル平原へと向かい、そしてその近くにあるハイラル城下町に来ていた。
初めてくる場所であるのだが、あの夢でさんざん見たので城下町の至るところを記憶していた。
馬を預け、大通りを歩いていると何やら歓声が響いている。通りは人であふれていた。皆嬉しそうにその顔を綻ばせている。
何が起こっているのかと不思議に思ったガノンは近くにいた果物屋の店員に尋ねた。
「ん?ああこの騒ぎかい?ハイラル王のご息女がお生まれになったのさ。確か名前はゼルダ様だったかな」
ゼルダ...この名もあの夢の中で何度も聞いた。幾たびも緑の勇者と共に自分を封印した姫である。
けれど野望を捨てた自分には今後一切関係ないだろうとガノンは考えたのか、すぐに興味を失った。
情報をくれたお礼にと、リンゴを一つ買った。懐にリンゴを入れ、その足は町の図書館へと向いていった。
図書館に入るとそこは大勢の人たちであふれていた。町の研究者、医者、薬剤師などが互いに情報交換でもしているのだろうか?本を片手に喋りあっているのが見える。
(ここにあるとは思わないが...一応見ていくか)
ガノンはとりあえず数冊の本を手にとり、読書をはじめた。
数分もたたずに数冊を速読で読み終えたガノンは本を戻し、本棚を物色していた。
(意外と本が多いな。これは少し面倒だ)
ガノンは顎に手をつき、本の題名を次々とみていった。
「あの...何かお探しですか?」
突然後ろから声がした。振り返ってみると、おそらくこの図書館の司書だろうか。一人の女性が立っていた。
「...色々な植物の特性について書かれている本を探しているんだが」
「あぁ!!それならこちらです!」
女性は笑顔を浮かべ、案内をした。
「ここです!」
目的の本棚の前につくと、女性はこちらに振り向きそういった。
試しに本を一冊取って開くと、そこには青いバラについての特徴が書かれていた。
「なるほど。案内すまないな」
「どういたしまして!」
女性は笑顔で一礼するとこちらに背を向け、本棚の間へと消えていった。
(砂漠のような劣悪な環境で育つ植物はあるだろうか)
サボテンのようにたくましく生きる植物がほかにあれば、魔法などの特殊な技術を使わずとも緑地化ができるであろうとガノンは考えていた。
ガノンは本棚からさらに本を取り読み続けていった。
「.....ーし。もしもーし?」
(うむ?)
読書に集中していたためか、自分に呼ぶ声に反応するのが遅れた。
顔を本から上げ、自分を呼ぶ張本人を見てみるとさきほどの案内をしてくれた女性であった。
「もう閉館の時間ですよ~他の利用者も全員おかえりになりました。」
周りを見てみると確かに自分以外に誰もいない。
「わかった」
短くそう言い、読んでた本を本棚に戻す。
「熱心に読んでいたようですけど、何を探していたんですか?」
女性は今自分が読んでいた本の表紙をチラッとみて尋ねた。
「砂漠の緑地化について調べている。今のところ成果はないがな」
一瞬嘘を言おうかと思ったが、別に言っても支障はないので正直に言った。
「砂漠の...あっ!!もしかしてゲルド族の方ですか?」
「...見た目でわかると思うが?」
今のガノンの見た目はゲルド族の民族衣装であり、その肌色と合わさってすぐにゲルド族だとわかるものだった。
「い、いやぁ~...ゲルド族の男の方を見たのが初めてで...」
女性は気まずそうにほおをかく。
「あっそういえば、旅の方ですよね?この後はどうなさるおつもりですか?」
「どうもなにも適当にそこらで野宿するが」
外はもう夕暮れ時だ。ゲルドの町を出るときに食料をもってきたため、飯には今のところ困らない。
「でしたら私の家で食べていきませんか?」
...何を言ってるんだこいつは。
「意味がわからないのだが?」
「旅は道連れってやつですよ!」
「お前は旅をしていないだろ...」
何が目的だ?食事で油断させて俺の持ち物を盗むつもりだろうか?しかしこんな気の抜けたやつにできそうとは思えないが。
「それに、一人の女性が見知らぬ男を家に誘うなど、襲われる危険を考えてないのか?」
「大丈夫です!!私の夫がもうすぐ迎えにくると思うので!」
「しかしだな...」
自信満々で言うその顔も相まって断りづらいが、ここはきっぱりと言うべきだろう。
「お誘いはありがたいが「お~いハリア~!迎えにきたぞ~!」...うむ?」
出口の方から声がした。
一目みて鍛えているとわかる男がこちらに笑顔でやってきた。
ーーーーーーーー
「「かんぱ~~~い!!」」
「...乾杯」
図書館へとやってきた、彼女の夫であるこの男ドットは妻の話を聞き、強引に俺を家まで連れて行った。
初対面のものにどうしてそう無警戒でいられるのか甚だ疑問である。
それをドットに尋ねてみると
「ハッハッハ!俺はこれでも王国の騎士をやってるからな!腕っぷしには自信がある!それに...」
「それに?」
「あんたを見たとき、何故か知らんが興味を持った!だからあんたを家に連れてきた!」
「実は...私もです」
二人そろってこの俺に興味を持ったと言う。
「興味だと?」
「初対面とは思えないような奇妙な感覚...デジャヴとかだったか?それを感じたんだ」
奇妙なことを言う。俺は確実にこいつらとは初対面だ。なにせ俺は今までハイラル王都に来たことなどなかったからな。
「まぁそれはそれとして飯を楽しもうじゃないか!」
ドットは酒を片手に笑いながら言った。
目の前には見たことのない食べ物ばかり。色鮮やかな食材たち。砂漠では決してとれぬもの。
異文化の飯の味は、懐かしく感じた。
食事をしながらいろいろなことを話した。
「それで、ハイラル王都の次はどこへ行くつもりなんだ?」
「ゾーラの里へと向かうつもりだ。里に入れる可能性は低いがな」
ゾーラとゲルドは昔から仲が悪い。だが水と密接にかかわっている彼らなら緑地化の技術を持っているかもしれない。
「そうなった場合は国外へと向かう。だが俺でも国外の話はあまり聞いたことがない。そこにはまだ知らぬ何かがあるだろうな」
「そりゃあ大変だなぁ」
ドットは酒をのみながらそう言った。俺も手にしたグラスを傾け酒を飲む。
グラスを手にしながら窓からハイラル城を眺める。
黄昏の光がハイラル城を雄大に照らす。街中ではご息女誕生の祝いにバーが賑わい始めているだろう。
「ありがとう。美味かったよ」
そう呟き懐から金をだし机の上に置く。
ドットとハリアはこちらを向いた。
「行くのか?もうすぐ夜だぞ?」
「泊まっていったらどうです?」
二人はもう日が暮れることを心配して言った。だがもう長居は無用だ。
「すまない。もうゾーラの里へと向かうことにする。」
「それなら..このお金は大丈夫です」
ハリアは先ほど俺が出した金を手に取り俺の前へと差し出した。
「わざわざ引きとどめたのは私たちですし....」
強引に金をやろうと思ったが、その瞳をみてあきらめた。俺が受け取るまで決して引かないだろう。
「わかった」
ハリアから金を受けとり、懐へと戻す。彼女はニコッとほほ笑んだ。
荷物を手にとり玄関を出る。
「ほんの僅かだが世話になった」
「いえいえ...旅がんばってくださいね!」
ドットとハリアは笑顔で手を振った。
俺は別れを済ませ、振り向いた時だった。
「
俺はゾッとしてすぐさま、今その
ドットは頬を指で掻きながら、困ったような表情だった。
「俺たちの子供につけようと思ってる名前だ。なんでこんなことをお前さんに言おうと思ったかわからねえ。奇妙なことだよな?」
ドットは苦笑して言った。
「...ハッハッハッハ!」
意外にも、俺の口からは笑い声がでた。
「俺様が保証してやる。お前の息子はこの国一番の騎士になるだろうよ。」
俺はそう言って振り返る。
ドットは目を開き、彼もまた大声で笑った。
「ハハハハハ!!じゃあなガノン!その旅路に幸運を!」
門へと向かう俺はそれに右手を上げることで返した。
これまた奇妙な縁だな。
ドットたちと別れた後、ふと視界の隅にとある建物が見えた。
俺はなぜか引かれるかのように、門へと続く道を離れ、その場所へと歩いて行った。
そうその建物こそ、かの勇者の剣マスターソードが眠りし時の神殿である。
建物のなかに入るともう夜になったせいか誰もいなかった。
夜になっても明るい神殿はまさに神秘的であった。
俺はゆっくりと三つの精霊石を供える台座へと近づく。
感慨にふけて、手で台座に触れた。埃ひとつないその台座は、きれいに光を反射していた。
しばらく眺めた後、台座から手を放し、来た道を戻ろうとした時だった。
後ろから重いものが引きずったような音がした。
気になって振り返ってみると、
(なんだとッ!?)
台座の奥にあった扉が開かれていた。
(そんなはずは無い!)
その扉は本来は3つの精霊石とハイラル王家に伝わるという時のオカリナを用意しなければ開かないはずである。
しかしその扉は今!そのどれもが揃っていないのにも関わらず開いている!
扉を見て数秒硬直したガノンであったが、その奥が気になったガノンは警戒しながらその扉を通り抜ける。
扉の先の部屋はガノンが思っていたよりも広い。しかし
(ここは...夢で見た場所とは違う)
夢の中では、あの扉の先にはマスターソードが台座に刺さっていたはずだが、その部屋にはマスターソードどころかその台座すらない。
窓すらない空白の部屋となっていた。
嫌な予感がしたガノンは早々と部屋を離れようと、警戒して拳を構えながら後ろ向きで扉へと戻ろうとしたが、
辺りが光に満ちた。
そしてちょうどガノンがいた部屋の真ん中の足元に幾何学的な模様が現れた。
(これは、魔法陣かッ!?)
二人の魔導士のそばで育ったガノンはその模様を一瞬で理解し、部屋の外へと飛び出そうとした。
しかし、先ほどよりも光が猛烈に強まると、強烈な衝撃がガノンの頭に響いた。
(不味いッ!)
頭に衝撃をもらったことでガノンはその場に崩れ落ちる。徐々に意識が薄れていくなか、ガノンは目の前に女が立っているのを見た。
そしてガノンの意識は暗転した。
--------------------------------------
終焉を引き継ぎ生まれたあなたへ
大いなる力の中で生まれたあなたへ
激流の運命の中で生まれたあなたへ
祝福を
あなたのはてしない旅が
幸せの旅路となれるよう
私は願います
---------------------------------------
古ぼけている神殿に一人の男が倒れている。
傍らには彼の愛馬が心配そうに舌でその男をなめている。
誰もいないその神殿は独特の雰囲気をだしていた。
その馬は何かに気づいたのかなめるのをやめて、神殿の入り口を見る。
その時神殿の扉が開かれた。
「あーやだやだなんで僕がこんな古臭い神殿に来なきゃいけないんだか」
「そう言うなリーバル。相棒と姫様の儀式にはこの
扉から入ってきたのはリト族とゴロン族。リト族の男は愚痴をつき、ゴロン族はそれを宥めてる。
「ほら!四人とも遅いよ!」
とリト族の男、リーバルは悪態つく。
「ま...待ってください!」
「そう慌てることはないじゃないか。ほら、御ひい様」
「あ、ありがとう」
「.......」
二人に続き、四人が神殿に入る。
「で、ここで何の儀式をするんだい?」
リーバルはゼルダに尋ねる。
「退魔の剣を女神像へとささげる儀式です」
ゼルダはそう言うと、退魔の剣を持つ男、リンクへと振り返った。
「....?何をしているんです?」
リンクは神殿の奥をじっと見つめ、そして指をさした。
他の五人も彼のさす方向へと視線を向ける。
「あれは...馬?」
ゾーラ族であるミファーはこちらを見つめる大きな黒い馬を見てそうつぶやいた。
そしてそのそばには
「!?誰か倒れている!?」
ゼルダがそう言うと、その倒れている人へと駆け寄った。
慌てて他の五人も駆け寄る。
馬は彼らの邪魔にならないよう主人のそばから離れた。
男は仰向きで倒れていた。しかし胸が上下に動いているので生きてはいるのだろう。
「うん...大丈夫。怪我は見た感じ見当たらないよ」
そうミファーは男を観察して言った。
「この方はいったい..?」
「これは驚いたね」
「?ウルボザどうしたのです?」
ゲルド族の女であるウルボザは倒れている男を見ながら言った。
「この男、ゲルド族だよ」
「「えっ!?」」 「「なんだって!?」」 「.....!」
ウルボザのその呟きで皆は驚いた。
「ゲルド族の男性は初めて見ました...」
「そりゃそうさ。なんせゲルド族の男なんてここ数百年は生まれていないからね。私も初めてさ」
六人とも倒れている男をまじまじと観察する。
「それにしても妙だね。ゲルド族に男が生まれたなら私の耳に入るはずだけど...もしかして国外から来たのかね」
「国外...」
ハイラル王国はその四方を広大な海、そして深い谷に覆われている。
つまり国外から来たのならばそれを乗り越えてきたということである。
「!それよりこの方をどこか安静にできる場所に運ばないと!」
「おう!このダルケル様に任せときな!」
ダルケルはその男を軽々と持ち上げた。
「近くに民家があるからそこに運びましょう!」
そうゼルダは言い、外へでると他の五人はそれに続くように神殿の外へとでた。
その様子を女神像は笑顔を浮かべ見ていた。
まだまだ旅は始まったばかりである。