【戦闘妖精雪風×ストライクウィッチーズ】妖風の魔女 Re:boot   作:ブネーネ

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ネウロイだ、間違いない。

501JFW総隊長・ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ中佐は己の執務室で痛む頭を押さえていた。

事の発端はトラヤヌス作戦の結果を受けて501JFWの再結成が決まり、新たに用意されたロマーニャ基地へ向かう途中にて拾ったあの男達の事だ。

人類の偉大な発明と言えば、何を思い浮かべるか、人によって答えは様々だ。

しかし現時点で、かつ兵器という点で最も評価されているのは様々な意見こそあれどストライカーユニットで間違いない。

それを彼等の乗っていた戦闘機は出力を全開にしたストライカーをいとも簡単に抜き去っていった、スピード自慢のイェーガー大尉でも追いつく事は困難であろう。

彼等が投棄したロケット弾は何かを切っ掛けに爆発する可能性があったためベネツェア艦隊に処理を頼んであるが、その威力は凄まじい威力を秘めていたらしい。

『ユキカゼ』、彼等が呼ぶ現代技術の及ばない時代錯誤な漆黒の戦闘機が確かに今自分の足元に存在する。

そして異世界に存在するというフェアリィ空軍、見知らぬ装備と未知の技術の世界からやって来た異世界人、私は彼等の正体はネウロイなのではないかと疑っている。

もしもそうだとしたら問題は容易い、501JFWは司令部を持ち各運用群、そして千人強からなる部隊を抱える一組織であるからだ。

周辺地域の防衛と対ネウロイ戦に関してはある程度の裁量権を与えられ、大義名分と総隊長たる自分のサインさえあれば数人程度なら秘密裏にこの世から消滅させる事は可能だ。

そうならないのは出来なくなる理由があったからだ、それは今朝の話である、緊急の要件として暗号通信にてとある人物から連絡が入った。

アドルフィーネ・ガランド中将、501JFWを統括する上官であり原隊であるカールスラント空軍のウィッチ隊総監である女傑だ。

用件はつまり、捕虜に手を出すなという事だった、さらには中将自ら捕虜との対話を希望しているという話だ。

ミーナ中佐は問題の種が凄まじい勢いで根を張り、それが大きく枝葉を広げ忌々しくも災厄の果実を落とそうとしていくイメージが脳裏から離れない。

もう事態は止まらない、一刻も早くあの忌々しくも不吉なあの黒い戦闘機に別れを告げたかったというのに。

 

 

その現状を知っており苦悩する中佐を眺める人間がもう一人いた、501JFW副隊長にして戦闘隊長、坂本美緒少佐である。

坂本としては思考はシンプルだった、敵は斬り捨てるだけの事である、だが何が敵であるかを判別するのは苦手であった。

だからこそ、どこか心の底ではミーナ中佐という存在を指針としている自分が居たのも確かだった。

その綺麗な顔の眉間に皺を寄せて悩む姿をみて、さっさと処分してしまえばいいのにと考えて、それが出来ないから悩んでいるのだと思い出した。

世界は戦争に包まれ、ネウロイだけでも手一杯だというのに人間は人間同士で争っている。

起床時間が過ぎているから皆はそろそろ食堂へ集まるころだ、息抜きに朝食へ誘うのもいいだろう、それともモラルを乱さない為に遠慮するべきか?

本来であれば副隊長の自分が補佐するべき立場なのだが、私が口を開こうとしても名案が在るわけでもない。

やはり剣だけの女だ、だから剣に人生を捧げて来た、しかし己が鍛え上げた肢体の剣はもはやヒビ入り、折れかけている。

やはり私は駄目な人間だ、だからこそ戦いに人生を…しかし…。

 

執務室では幹部が二人して唸り、結局食堂に顔を出す事は無かった。

後で作り置きの料理を宮藤軍曹が持ってくるまで、それは続いていた。




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