「ハァ〜」
夏祭りといえば、友達とワイワイしたり恋人同士でイチャイチャしたりするものだろう。本当はボクも、代表や優子と行くはずだったのだが、用事やらなんやらで結局は一人になってしまった。せっかく浴衣で来たのに…
「ん?」
もう帰ってしまおうか、なんて考えていると人混みの中から、知り合いを発見した。
「おーい、ムッツリーニ君」
「…………工藤愛子!」
「奇遇だねムッツリーニ君。一人で何をやってるんだい?」
「…………浴衣のさつえ………祭りを楽しんでただけだ」
「フーン、撮影ね?撮りたかったらとってもいいよ?」
「…………何を言っている?俺は、そんなことはしない」
パシャ
「今撮ったよね…?」
「…………(ブンブンブン)」
やっぱり、ムッツリーニ君はいじり甲斐があるな〜。そう言えばムッツリーニ君は一人でいるな。ウム、いい事思いついた。
「ねえ、ムッツリーニ君。一緒にお祭り回ろうよ」
「…………俺は忙しい」
「またまた〜照れちゃって。ほら行くよ」
「…………仕方ない」
「あれ?素直だね」
「…………夏の暑さにやられただけだ」
だからそんなに顔が赤いの?とは、口にしなかった。彼が怒って帰ってしまうことがボクにとって一番最悪だからね。
「さてと、何処に行こうか?たこ焼きに射的、金魚すくいもあるよ」
「…………何処でもいい」
「じゃあ、ホ・テ・ルでも行く?」
「…………(ブシャァァアアッ)」
「ちょっ?ムッツリーニ君!?」
「…………この世に悔いなし(ガクッ)」
「ムッツリーニくーん!!」
やりすぎたちゃった☆
まあ、誰にでも失敗はあるよね。
それから、ムッツリーニ君が起きて色々な場所を回った。もちろんホテル以外…
「いや〜、そろそろ祭り終わっちゃうね」
「…………まだ花火がある。それに…」
「それに?」
「…………また来年来ればいい」
「なっ!何、急にカッコいいこと言ってんの!」
不意にドキドキしてしまった。やっぱりムッツリーニ君のこと…
「…………何言ってる。花火が始まるぞ」
「あ、ああそうだね」
花火が空に舞う。何てキレイなんだろう。まるで、光輝く子供のようだ。だから、祭りに来た人も同じように子供になってはしゃげるのだろう。ボクは、本日二度目のいい事を思いついてしまった。少し恥ずかしいけど、ボクは今、花火と同じ子供だから大丈夫。
「ねえ、ムッツリーニ君。カメラ貸して」
「…………何故だ?」
「そんなに警戒しなくても大丈夫。ちょっとだけだからさ」
ムッツリーニ君がカメラを渡してくれる。本当に、なんでこんなに今日は素直なんだろうか?しかし、そんな事を考えてる暇はもうなかった。あと少しで花火が終わってしまう。手早くカメラを設定して彼に向ける。それと僕にも。
「…………何してる?」
「記念撮影だよ。ハイ、チーズ」
パシャ
「今度売ってね、この写真」
「…………考えとく」
うーん、ここは素直に売るっていって欲しかったな。そんな事をしている間に花火が終わってしまう。
「…………名残惜しい」
「ふふっ、何言ってんのムッツリーニ君。」
「…………?」
「また来年来ればいいじゃん」
「…………ああ」
来年だけじゃない、五年間も十年後もまた一緒に回りたいと思う。君もそう思ってくれてるかな?ムッツリーニ君。
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