提督をみつけたら三次創作〝君が提督を見つけたら〟   作:ジト民逆脚屋

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まだまだしつこくいきます


黒と過去

「あ、貴方、一体なにを考えて……」

「ふむ、上手く撒けたね。何を考えているとは、我が家に伝わる大祖母の言葉の事かね?」

「いや、そうではなく……! 相手は憲兵隊ですよ?! どうやったって逃げ切れる訳が……」

「つまり、君には憲兵隊から逃げなくてはならない理由があるという事だ」

 

言葉が詰まった。

返答は無いが、沈黙は金であり雄弁である。

つまりはそういう事だ。

 

「自己認識の薄い艦娘、これはある意味新しい発見と言えるだろう。確定した意思と存在を持つ艦娘、しかし君はそれを持ち得ない」

「ええ、だから……」

「だが、今の我々にはそんな事関係無い」

「はい、そうですね。…………はい?」

 

神妙な面持ちから途端に間抜けた表情へと変わる。

 

「今の我々はフレッシュなティーンエイジャー! つまる所、我々は何も定まらず未来へ邁進する為にもバカをする若者に過ぎない……!」

「いやいや、それでも憲兵隊と事を構えるとか……!」

「ははは、我が大祖母の血筋の男は大体八割が憲兵隊若しくは、何かしらと十代の頃に事を構えているのだよ」

「何ですかその反権力一族!?」

「我が大祖母はアウトローの出だったと伝え聞く。恐らくはその関係だろうね。いやはや、さぞかし堂々とした女傑だったのだろう」

「だったのだろうって、会った事は」

「無い。私の母が最後だ。私が語る大祖母の言葉は全て、私の血筋に脈々と受け継がれたものに過ぎない。だが、大祖母の言葉は私の中に息づいている」

 

つまり

 

「〝いっぺん構えたんやったら、最後まで騒がんかい〟 この大祖母の言葉を実践する時だ!」

「やっぱり頭おかしいですね」

「ははは、青春の時間だよ。誰が正気なものかね。さあ、よく分からん流行りの飲み物飲んで意味も無く写真撮ったり、ポーズやダンスでネットの海をざわつかせようではないか!」

 

この男、と少女は歯噛みした。

何故、何者かも判らない相手にここまで絡むのか。

この頭のおかしい男は一体何がしたい。

自身に抱えた不明と諦感、もうどうでもいいのに、何故この男から離れたくないと思ってしまう自分が居るのか。

 

「さあ! 君、十代の青春は短い! さっさと騒ごうではないか」

 

手を引かれ、立ち上がる。

先を行く君には何が見えている。

その問をする声は出ない。

代わりに

 

「どこに行くんですか?」

「まずは茶だよ。走って渇いた体に染み込ませようではないか」

 

行き先を問う。そうすれば必ず答えが返ってくる。

何故、そう思ったのか。それも判らない。

だが、何故かそう思えた。

それは何故なのだろう。もう行く末は決まっているのに。

 

「おや、喫茶店が無くなってるね」

「……行き着けの店があったので?」

「いや、以前に見た様な気がしたのだよ。ふむり、少し離れるだけで潰れるか」

「何処か別の場所に居たんですか?」

「ああ、我が大祖母よりの頼みで大祖母の家に、少々の間住んでいたのだよ」

「そうですか。……あれ?」

「おお、まさに喫茶店ではないか! あそこにしよう!」

「あ、ちょっとまって……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「隊長」

「見付けたでありますか。まったく、先生の血筋には毎度苦労を……」

「はっ、目標は現在ゲームセンターにて格闘ゲームで対戦中です」

「させられ……、は? ゲームセンター?」

「はっ、目標の負けが決定したそうです」

「は? いや、んん? てっきり、町から出るものかと思っていたでありますが……」

「情報入りました。目標は現在ゲームセンターから公園へ移動している様です」

「……一応、足取りを」

「はっ! 目標は喫茶店でランチを済ませ、ゲームセンターで遊戯の後、公園へ向かっています」

 

真っ黒黒助は頭を抱えた。あの血筋の動向は細かく記録してきたが、その大体、約八割以上がこちらと事を構えるか、何かしらの事件の中心に居る。

そして、最後の最後でその血筋の原作があの高下駄の音と共に出てきて、全部を煙に巻いて有耶無耶にしてしまう。

 

――もう勘弁してくれませんかね? 龍驤先生

 

額を押さえ、天を仰ぐ。

付き合いは長かった。この街が出来る以前、あの大戦の影響と混迷がまだ世界に染み付いていた時代。

あの胡散臭い俎板は安煙草を吹かし、胡散臭い語り口と何やらそれらしい格式ばったやり口の祓い屋やら拝み屋やらよく判らない生業で、あの時代を生きていた。

初対面からして胡散臭く、

 

「おや? 何やらエライもん取っ憑けた真っ黒黒助が居るなぁ。どや? 一発落としてみんか?」

 

いきなりのこれだった。

そんなものを信じる質ではなかったが、実際に肩凝りが異様に酷く、ついでに龍驤が居着いていた町は少々素行不良で監視対象となる者達も多く住み着いており、龍驤も町の顔役の一人として監視対象だった。

渡りに船と祈祷を受けてみれば肩は軽くなったが、そこからだ。

それから、あの町で起きる事件の解決に引き摺り出され、町が無くなってからもその繋がりは続いた。

今にしてみれば、あれはこちらの身分に気付いて吹っ掛けてきたのだろう。

懐かしくも騒がしく、そしてもう二度とは無い喪失の日々。

身分と立場が変わり、晩年には会えなかった。墓参りにも行けていない。

だから、この喪失は二度と無く、これから先もあの喪失は起こさせない。

立場も何もかも違っても、あの日々で得たものは代え難く、龍驤はどう思っていたのかは知る術は無い。だが、それでも己は彼女を唯一無二の友と思い決めたのだ。

 

――龍驤先生、貴女への報いになるかは分かりませぬが

 

友の、連綿と続く奇跡の血統を護る。

その為なら、

 

「総員行動開始、目標の動き次第で即時制圧。……奇跡の血統を護れ。最悪、殺傷も許可する」

 

嗚呼、随分と温度の無い声を出せる様になった。

内心で自嘲しながら、最期に会った時に貰った煙草が入ったケースを懐から取り出す。

中に残っているのは二本、密閉型のケースの中で眠ったそれを一瞬だけ見て、また懐に仕舞う。

龍驤が何時も吹かしていた安煙草。これも、メーカーが倒産し、もう何処にも無い。

 

「……感傷、とでも言いましょうか」

 

そう呟き、何処からか聞こえてくるやけに耳に残る嗤い声を妨げる様に外套の襟を立て、黒は酷薄な笑みを浮かべた。

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