不死の騎士   作:赤蜘蛛

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火継ぎの祭祀場

どさぁ!

 

俺を捕まえたばかみたいでかいカラスにどこかに運ばれ、地面に落とされた。

落下と共に体と心に衝撃が走る。

 

「っっっ~~」

 

体の感覚的にはどこにも怪我を負っていない。

もはやそれ自体が奇跡である。

落とされた俺からすると今のはそれほどの衝撃だった。

 

「おいおい、今回の巡礼者はずいぶん派手じゃないか。」

 

いまだに地面で声を出さないようにうずくまっている俺に向かって声がかけられる。

そう思うならもう少し声のかけ方ってもんがあるだろ。

かなりいらつきながら声の方に顔を向ける。

 

視線の先にいたのはチェイン装備と呼ばれる鉄を体の線に合わせて加工した鎧を着た男だった。

 

「睨むなよ。あんな風にここに来たのはあんたが初めてだったもんでつい口が出ちまっただけだよ。」

「なんにしても、よくきたな。新しいやつは久しぶりだ。」

「どうせ、あれだろう?不死の使命がどうとか…皆一緒だ。」

 

たしかに不死の使命を聞くつもりだったが、皆一緒というのはどういうことだ?不死院で出会った騎士のような者が大勢いるということだろうか?

 

「呪われた時点で終わってるんだ。不死院でじっとしてればいいものを…ご苦労なことさ。」

「まあ、いい。暇なんだ、教えてやるよ。」

「不死の使命に言う、目覚ましの鐘ってのは、ふたつある。」

「ひとつは、この上にある、不死教会の鐘楼に。もうひとつは、この遥か下にある、病み村の底の古い遺跡に。」

「両方鳴らせば、何かが起こるって話だが…どうだろうね?」

「少なくとも俺は、その先の話は聞いたこともねえが…まあ、いい。」

「さあ行けよ。そのためにきたのだろう?この呪われた不死の地に。」

「まあ、あんたみたいな亡者一歩手前のやつじゃどの道無理ってもんだろうがな。」

「…ハハハハハ。」

 

それは教えると言うよりは独白に近い。

 

「おい、どうせしゃべるなら俺にも分かるようにしゃべれ。」

 

「俺は独り言のつもりでしゃべってたんだよ。」

 

「そんなことはどうでもいい。俺の質問に答えてもらう。」

 

そういい剣を男に向ける。

 

「…はあ、ずいぶんな挨拶じゃないか。まあ、いい。何を聞きたいんだよ?」

 

「あの火は何だ?」

 

そう言って不死院でも見かけた剣の突き刺さった地面が燃えているものを指さす。

 

「…おいおい、そりゃぁずいぶん間抜けな質問じゃないか?それとも…最初から俺をやるつもりだったのか?」

 

「本当に知らんだけだ。」

 

「…俺は篝火を知らない不死がいたってことに驚いてるぜ。」

 

「篝火?」

 

「ああ、不死の体を癒し、蘇生も、魂の強化も、人間になることでさえこれを使うんだ。」

 

「蘇生?俺たちは今生きているだろうが。それと当り前だが俺は人間だ。化け物に見えるか?」

 

「…そんな間抜けな返事をするってことはまじで何も知らないんだな…いいぜ、教えてやるよ。」

「俺たち不死は篝火で休息することで体調をほぼ万全の状態まで持っていける。」

「まあ、眠気みたいのなのはどうしようもねえわけだが。」

「蘇生ってのはそのまんまの意味で俺たち不死は死んでも最後に休憩した篝火で甦るんだよ。」

「だがそんなもんこの地じゃ何回も死ねるって意味しかねぇ…そんなことばっかり繰り返してりゃ誰だろうが亡者になるってわけだ。」

「そんな、死んで亡者になりかけた時に人間性って呼ばれてるもんをこの篝火に捧げると人間に戻れるってわけだ。」

「どうだい?よくできたからくりだろ?」

 

「人間性とはなんだ?」

 

「さあね。まあここを調べるつもりなら嫌でも見ることになると思うぜ。」

「簡単に言っちまえば白いもんが纏わりついた黒い何かだ。」

 

「それとこのエスト瓶について何か知っていないか?」

 

「…篝火の火をエスト瓶の中に溜めておけるんだよ。俺は持ってるからいらんが、他のやつにそれを軽々と見せないことだな。殺してでも奪い取ろうとするやつは絶対いるぜ。」

 

つまり不死院の化け物にやられた後、篝火を浴びることができたから体の痛みが和らいだということだろうか?

しかしこの篝火でソウルを使った魂の強化が可能とは…。

人間性というものの実物を見てないがこの男の言葉を信じるならすぐに見ることになるのだろう。

この男、口調はあれだが根は悪い男ではないのだろう。

不死の使命とやらのことも口にしていたし詳しく聞いてみるか。

 

「不死の使命の鐘のことを詳しく聞きたい。」

 

「知りたがりは好きじゃないが…まあ、いい。」

「あと少しだけ教えてやるよ。」

 

どうやら思った通り、根は悪い男ではないのだろう。

 

「1つめの鐘は、確かこの上の不死教会だが今はリフトが止まっちまってる。」

「だから、この先の崖沿いを上って水路から不死街に入るしかない。」

「もう1つの鐘は、その不死街を下へ向かえばいいはずさ。」

「もっとも、不死街の先は、疫病者が集まる病み村だ。」

「俺ならそんな場所ごめんだがね。」

 

「最後の質問だが、ここはどういう場所なんだ?」

 

「この地の名前はロードラン、ソウルを通貨代わりに使命がどうのこうのってやつらが這いずり回っては死んでいく碌でもない場所だ。」

 

「…そうか、感謝する。」

 

聞きたいことは聞けたことだしこのあたりを軽く調べて不死街とやらに向かうとしよう。

 

 

 

篝火の近くに座った男に他に人がいないか聞いてみる。

するとリフトの方に白教の坊主がいると教えてくれた。

せっかくなので挨拶でもしておくとしよう。

 

 

教えてもらった方に行くと坊主と言うよりは戦士のような重々しい装備を身につけた男がいた。

「ああ、こんにちは。はじえまして、ですな。」

「ソルロンドのペトルスと申しますが、何かご用でしょうか?」

 

「用はない。ただ篝火のそばに座っている男からやつ以外の人間がいると聞いたから顔を見に来ただけだ。」

 

「そうですか。…御用がなければお互い、あまり関わらない方がよろしいでしょう。」

「ただ、そうですね。ここで会ったのも何かの縁です。」

「それなりの誠意さえ示してもらえれば私の知る奇跡をお教えしますがどうでしょうか?」

 

「誠意か…」

つまり何か寄こせということだろう。

ただこういった手合いは付き合い方さえ間違えなければ害はない。

「ソウルしかないが、それでもいいか?」

 

あえて何も知らないように振る舞い確認を取る。

無知な者ならペトルスも警戒しないだろう。

 

「ええ、もちろん、それでかまいませんよ。ではまず白教の誓約を結んでくれませんか?」

 

誓約を結ぶなんて初めてだ。

…少しだけロイドの騎士のことを思いだしてしまったな。

 

「祈るだけでいいのか?」

 

「大丈夫ですよ。」

 

ペトルスに向かって祈る。

…これではないという感覚が付きまとってしまう。

 

「…これで誓約が結べました。では好きな奇跡をお教えしましょう。…ああ、奇跡はタリスマンがないと発動しませんよ。」

 

「何があるか教えてくれ。」

 

ペトルスの説明を聞き回復の奇跡とソルロンドのタリスマンをソウルと交換した。

その時気付いたが俺のソウルは普段では考えられぬほどの量になっていた。

あの化け物を倒したからだろうか?

 

ついでなので不死の使命とやらの話を聞いてみよう。

 

「不死の使命の話を聞いたことがあるか?」

 

「不死の使命ですか?」

「残念ですが、それは、申し上げられません。」

「ただ、貴方は、私の教え子ですから、誠意次第では…」

 

また誠意か。

 

「…これでいいか?」

 

そう言ってソウルを渡す。

 

「…そうですね、他ならぬ貴方です。お話しましょう。」

「聖職における不死の使命とは、まず『注ぎ火』の探索です。」

「『注ぎ火』は人間性により、不死の篝火を育てる業。」

「それにより、我らは英雄の力を得るのです。」

 

また、人間性か。

話を聞く限りでは、篝火に人間性を捧げることで何らかの『力』を得ることができるということだろう。

 

「そうか。」

 

聞いた価値があるのかは、試せば分かるだろう。

 

「聞きたいことは聞けたことだし、俺はもう行こう。」

 

「そうですか。また、会えるといいですね。」

 

 

 

篝火のそばに座っている男の言葉の通りに崖沿いを上って水路から不死街に入ろうと足を進めた。

 

崖沿いの階段を上った所に亡者が待ち構えていた。

ぼろぼろの鎧を着た亡者である。

こちらに走ってくるが亡者らしく遅い。

盾で受け流し、胸に剣を突き刺す。

不死院でも経験した単純な作業。

 

だが今回は全く違っていた。

何かが頭にぶつかり割れる。

そして言葉にすることのできない激痛。

頭に、何かがぶつかった、そのことで飛びそうになった意識を、わざわざ引き戻しその意識を焼くかのような形容しがたい激痛。

 

何があったのか、その理由を理解することさえできないまま、俺は、死んだ。

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