楽しみにしてくれていた方、特に感想を頂いた方は長々とお待たせして申し訳ありません。
……でも更新速度は……
寝起きのように意識が覚醒し、自分という存在が浮上していく事が理解できる。
闇の中で唯一つ存在する炎に向かうように、魂だけで世界を渡るような、その様な感覚。しかし不思議と恐怖は無い。……闇にも、炎にも。
……
意識を取り戻した俺が気がついた場所は、このロードランに来て初めて見た篝火だった。
まるで俺と言う存在が再び燃え上がっている事を暗示しているように、篝火は先ほど火がついたかのようにゆっくりと空に向かって炎を伸ばしている。
「ハハハハハ、ずいぶんお早いお帰りじゃないか」
笑い声に反応し視線を移した先には、ぼろぼろの地面に腰かけ、笑いながら声をかけてくる男がいた。
男が発しているその笑いが、明らかに俺を馬鹿にしているのが理解できる。必然睨むような顔つきになってしまうのは、当然だっただろう。
「おいおい、睨むなよ。死んだのはあんた自身の責任だろ?」
「…俺は、死んだのか?」
「ああ、あんたも不死なら理屈じゃなくて本能で、それぐらいは理解できただろ?」
「…死んだのは初めてだ」
「へぇ、そりゃまた、ずいぶんと運が良かったんだな。普通の不死ならここに来るまでに少なくても、一、二回くらいは死んでるもんだがな」
「まあ、ロードランじゃぁ死ぬって事自体が一つの儀式みたいなもんだ」
「失敗した世界に失敗を集め、少しでも成功したらそこを新しい世界にする。だからソウルは先に進めば進むほど大きくなり、先に存在する強いソウルを持つものを殺せばソウルを多く得る事が出来る。世界中のソウルを手に入れたナニカが最後に行き着く場所なんて、それこそ……」
「…下らん事を言った、忘れてくれ」
「いいや、参考になった。……いろいろと、な」
死。
漠然としてはいるが、それは一つの終わりだ。
生まれて死ぬ。
それを一つのサイクルだとするのであれば、俺は既に一つの人生を終わらせた事になる。
しかし今俺は生きている。
それは一人で数々の人生を持っている事と同義であり、すなわち死んでも次があるということに他ならない。
一つの世界で俺(・)と言う人生を繰り返すのではない。
俺と言う存在が僅かに違う別の世界に移動して蘇るのだ。
だから俺は篝火の傍に座る無気力な男と話した事実は持っていても、先ほどの場所を抜ける事が出来た事実は持っていない。
それがこの世界(ロードラン)。
歪み、捻じ曲がり、過去と未来が交差し、誰かにとっての現実が誰かの目線で進んでいく。過去も未来も……正しいことなど、あったものではない。
「ハハハ、案外素直じゃないか、あんた。なら、そうだな。気分がいいからもう一つだけ教えてやるよ」
「あんたが死んだ場所に存在するあんただけが見える歪み……俺達は【血痕】と呼んでるが、それは出来るだけ触っておくことだ。あんたが死ぬ前になくしたモンを、少しだけ取り戻せるかもしれん」
「それはどう言う意味だ…?」
「さあな」
本当に、この男はよく分からない。
思慮深い助言をしたと思えば、次の瞬間には適当に放り出す。
見て聞いて体験する、その手伝いはしている。しかし俺が何を感じるのかまでは決して口を出さない。
答えは己で決めるのだ。それは己で考えていない答えなど、全て不正解と言う意味でもある。
――まるで祖母のようだ。
そんな事を考えながら、男に感謝の言葉を述べた俺は、再び不死街へと足を進めた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
俺は以前と同じように階段を上り、以前と同じようにぼろぼろの鎧を着た亡者を見つけた。
亡者は俺が見ていることに気がついたのか、こちらに向かい走ってくる。
ゆっくりした動きだ。受け流し、切り殺す事など容易い。
――ならば俺は、何処から攻撃を受けた?
少し前に頭に受けた痛みを思い出しながら、視線を動かし俺を殺した存在を探す。
すると崖の上にもう一人亡者を見つけた。
火炎壷を構え、こちらに狙いを定めている。
亡者になって尚、あれほど離れた場所から俺の頭に火炎壷をぶつけた事には驚かされるが、来ると分かっていれば対処は難しくない。
走りこんで来る亡者の脇を抜けながらすれ違い様に脇を切り裂き、盾を上に向けて構えながら亡者に死角にもぐりこむ。
死角になっているそこで一度呼吸を整えると、階段を一気に駆け上がる。
火炎壷を投げる亡者の近くには標準的ではあるが肉厚な斧……バトルアクスを持った亡者も存在していたが……亡者であるが故の宿命なのか、動きがかなり緩慢である。
バトルアクスを振り上げる前に、背中を見せている火炎壷の亡者を背中から切り裂いた。
そしてバトルアクスを持った亡者が地を蹴るような音共にその場から飛び退く。
ごう、と風を切る音が聞こえる。
しかし既に亡者の間合いから離れた俺にはその攻撃は当たらない。
そして重量のあるバトルアクスを全力で振り下ろした亡者は無防備な背を晒しており、攻撃してくれと言わんばかりである。
それに答えるように背後から亡者の背を蹴り崖の下に突き落とす。
誰もいなくなったその場で最期に周囲を確認し、緑色の光を発する俺の血痕に触れた。
何かが戻ってくるような感覚と共に、ここではない何処かで生きていた俺の最期の記憶が流れ込んでくる。
――
俺は火炎壷を頭にぶつけられ、血を流す頭を炎で焼かれながらその場でのた打ち回り、呆気なく息絶えた。
――
――なるほど、血痕に触れれば俺は以前の【俺】を引き継げるのか。
俺が俺の血痕に触れた事で、以前の俺は正式に消滅したのだと。
その事が、何となく理解できた。
そしてそれと同時に、回復の奇跡が殆ど役に立たないであろう事を理解してしまった。
考えてみれば当然の事だ。
腹に刺さった槍や剣、矢を抜けば回復の物語を読み上げる事で怪我は癒されるだろう。
しかし頭蓋にぶつかった火炎壷で意識を失ってしまえば、誰が回復の物語を読み上げてくれるのだろうか?
誰かと共に旅を続けていなるわけではないのだから、意識を失う事や行動不能になることは即ち死だ。
――得るべき物は回復手段ではなく守りの奇跡だったか。
たしかペトルスは回復だけではなくフォースの奇跡も知っていると口にしていた。
フォースは聖職の騎士に広く普及している。
あれがあればそれなりの数に囲まれたとしても何とかなるかもしれない。
……それなりの誠意を見せればフォースの奇跡ぐらいであれば教えてくれるだろう。
俺は一度ペトルスの元へ戻り誠意を見せ、フォースの物語を教えてもらうと共に再び不死街に足を進めた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
底の見えない断崖を眼下に納めながら、俺は水路の中へと進入した。
水路の中には浅い水深ではあるが水が流れており、今尚この水路が機能している事がうかがえる。
水路の中には見た事も無いほど巨大なねずみが存在していたが、ねずみは一心不乱に死体を食っていた。
肉が裂ける嫌な音が水路の中に響き、何とも言えぬ不気味さを醸しだしている。
名も知らぬ誰かの死体を貪るねずみを後ろから切り殺し、死体に視線を向ける。
先ほどのねずみのせいなのか、動かなくなったこの誰かは肉の大半が失われていた。
服といえるものも武具と言える物も持っておらず、生きているのか死んでいるかのさえ分からない。
ただ力なく地面に倒れ、ピクリとも動かないと言うこの現状こそがこの誰かの全てであった。
……このロードランの現実を見、こうはならないと心に刻みながら、俺は再び水路を遡りながら先に向かうため足を進めた。
水路から出、階段を上るといきなりバトルアクスを持った亡者と折れた剣を持った亡者に襲撃されたが、冷静に折れた直剣の亡者の攻撃を受け流し、体制が崩れた亡者を毛って距離を開けた。
そのままバトルアクスを持った亡者の腹を盾で殴打し、顔が浮いた所を蹴り上げる。
その隙に直剣の亡者を刺し殺し、体制を崩しているままのバトルアクスを持つ亡者に一気に近づき切り払う。
俺の一撃をもろに受けた亡者はそのまま力無く倒れ付し、その手に持ったバトルアクスが地面に転がった。
……地面に倒れ付した二人の亡者を見下ろしながら、俺は地面に転がるバトルアクスに目を奪われていた。
そして僅かに思考をめぐらせ、持ち主の居なくなったバトルアクスを拾い上げる。
名も知らぬアストラの騎士から譲り受けた剣は、かなりの業物であるが故に代わりに替えが効かない。加えて恩人の形見でもあるため雑には扱いたくないのが本音であった。
しかしこのバトルアクスはそうではない。
良くも悪くも量産品であり、投擲武器として扱いやすい形をした武器だ。肉厚であるが故に力任せに叩きつければそれなりの威力を期待でき、手入れをする必要もあまり無い。
使い捨てのサブウエポンとして持つならば、今の所はこれが最上だろう。
何度かバトルアクスを振るい調子を確かめ、動かなくなった亡者からバトルアクスを腰に固定するための腰巻の材料を拝借する。
その場で即席の腰巻を作り、バトルアクスを固定する。
素早く腰からバトルアクスを抜き放つ動きを繰り返すが、問題なく機能するようだ。
一度アストラの騎士から貰った直剣――これからはアストラの直剣と呼ぶ事にする――を腰の鞘に仕舞い、バトルアクスを構える。
そして地面に倒れ付した亡者に向かい……全力でバトルアクスを振り下ろした。
亡者の鎧と肉を難なく裂き、地面にぶつかりガキンと言う音共に腕に衝撃が跳ね返ってくる。
――問題なく使用できそうだな。
そう判断した俺はバトルアクスを腰に仕舞いアストラの直剣を抜くと、警戒しながら足を進めた。
そうして城壁のようにも見えるこの場所を道沿いに進むと、少し開けた場所の奥でこちらに向かい火炎壷を投げつけてくる亡者が存在していた。
火炎壷を盾で受け、距離を詰めるため一気に走り込もうとしたが……これは俺が最初に死んだ場所に告示している事に気がついた。
火炎壷を投げつけてくる亡者だけが見えており、それ以外は家に隠れて何も見えない。
――ならば、気をつけるべきだ。死角からの一撃が容易く命を刈り取る事を、俺は既に知っている。
火炎壷を盾で受け、走りこむ代わりに先ほど拾ったばかりのバトルアクスを素早く抜き放ち腰を捻りながら投擲する。
バトルアクスは高速で回転しながら亡者の胸に吸い込まれ、火炎壷亡者の命を呆気なく刈り取った。
すると火炎壷亡者がやられた事に合わせるように、道の左に存在していた家の中から亡者が現れる。
普通に進んでいれば背後を取られていたであろうこの配置から、この亡者は生意気にも獲物を待ち伏せしていたらしい事が伺える。
しかし釣り役の亡者は既に死に、残ったのは一人だけ。
亡者が剣を振るよりも早くアストラの直剣を振るい、亡者の胸を一気に切り裂いた。
火炎壷亡者の胸を貫いたバトルアクスを回収し、敵が居なくなった周りを見回してみる。すると左右の家はドアが存在しておらず、中に入れるようになっていた。
しかし左の家は崩れた階段以外は何も無く、階段を登ることはできそうだがそれがどこかに繋がっている様子も無い。
そうなると、必然的に進む道は右側の家と言う事になる。
右側の家に入り、階段を上……ろうとした時、家の奥で何かが光ったような感じがした。
俺はその光に好奇心を刺激され、階段を上らず広くは無い家の奥に向かって足を進める。
すると俺が向かった先には力なく壁に寄りかかる誰かが居た。
その誰かの胸元には、あまり大きくはないが、間違いなくその「誰か」の物であろうソウルが輝いていた。
見知らぬ誰かに僅かな祈りを捧げ、俺はその誰かのソウルを手に取った。
俺の手に触れたソウルは、俺の体に吸い込まれるように消えていく。
……何故ソウルがこのような動きをするのかは誰も知らないが、この現象は世界の常識であった。
ソウルは死んだ者から生きた者へと移り変わる。
不死人はソウルを光として捉える事が出来る。
そしてソウルは、命の源である。
……故に不死人は、生きる者から命の炎を奪う闇である。
闇は払わねばならぬ。払えぬのであれば封じねばならぬ。
我ら人が、光であると願う限り。
――ペトルスに誠意を見せた時ではなく、死体からソウルを奪ったこの瞬間に。少しだけロイドの騎士として勉学に励んでいた頃のことを思い出した。
僅かな感傷に浸りながら家の中の階段を上り、そのまま道沿いに進んでいくと――何か巨大なものが羽ばたくような音共に、魂が押し潰されそうな重圧が空から落ちてきた。
ガァアン!!
それは伝説で語られる飛竜であった。
体中に生えた棘は体を守る防具であり、敵を威圧する禍々しさを持っている。
巨大な体躯は人など問題にしない暴威の化身であり、魂まで焼き焦がすような荒々しい熱を備えている。
足元に居る俺に対して一瞥もくれないその態度は、しかしそれを可能とする種としての格の違いを本能から思い起こす畏怖によって、ある種の納得さえ覚えてしまう。
邂逅は一瞬。
飛竜が選んだ足場に俺がたまたま存在していたと言う、それだけの話。
飛竜にとってそれ以上の意味は無く、俺にとってもそれ以上の意味は無い。
……だがそれでも、俺は飛竜を見た事でロードランの事を深く知る事が出来た気がした。
伝説が形を持った現実として存在し、現実として生命を脅かし、気持ちを昂ぶらせ言葉を交わすことさえ可能とするのだと。
飛竜との邂逅で昂ぶる気持ちを抑えながら、一本道の城壁にも見える道を進む。
すると少し進むと開けた場所に出た。
開けたその場所を守るかのように、数人の亡者が視界に映る。
高台にはクロスボウを持った亡者がこちらを狙っており、そこに至るための階段を剣と盾を持った亡者が塞いでいる。
さらにその階段を守るように同じ装備の亡者が存在しており道を守っているかのようだ。
――今までも亡者の動きを考えるのであれば、一気に走り抜けて一人ずつ切り伏せればいい。もしもの時は……フォースもある。
盾を持つ手に、盾と共に握っているタリスマンを握りこみ、開けた空間に向かって一歩を踏み出す……――その瞬間、高台のクロスボウが発射された。
今までの弓のように弦が緩んでいないのか、かなりの速度で標的に向けて飛来する。
火炎壷の事を思い出しとっさに盾で顔を覆ったが、やつの狙いは胴体であったようで骨に響く鈍い感触が体を走る。
「ッッ!」
しかし即死ではない。
俺はまだ生きており、思考する頭が残っている。
クロスボウによる狙撃で動きを止めた獲物に留めを刺すためなのか、道を塞いでいた亡者たちの足音が俺に向かって近づいているのが理解出来た。
――だが、そこまでは織り込み済みだ。
「―■■―」
盾と共に握っているタリスマンを握り込み、ペトルスから教えてもらったフォースの物語を読み上げる。
一言で語られるその物語は、汚れた聖女の騎士を称えたもの。
その物語は一言で語れる簡易的なものであるが故に敵を消し飛ばす破壊力こそ無いが、魂を揺さぶる誇りが込められている。
物語を読み上げた俺を中心に、魂を揺さぶる球体状の白い衝撃波が空間を走る。
衝撃波は接近しようとした敵を怯ませたのか、近づこうとしていた足音を止め、再び放たれたのであろう矢を地面に叩き落した。
作り出したその隙目掛けて疾走するため、盾を開くと共に体制を崩した二人を素早く切り裂く。
正面の二人の亡者を切り裂くと同時に背後からも気配を感じるが、その気配に向かって腰から抜いたバトルアクスを無造作に投擲しておく。
すると肉を裂いたような音と、それに僅かに遅れ何かが地面に倒れたような音がする。
どうやらこちらも当たりのようだ。
再度クロスボウから矢が放たれる前に階段を駆け上り、のろのろと振り向く亡者を力任せに切り裂く。しかしそれでも死ななかったのか、倒れる事のない亡者は腰に差した剣を抜こうとする。
――剣を抜かれたから負けるとは思わないが、抜かせないのが一番だ。
既に高台の端に追い詰めていた亡者を盾を使い殴りつける。
そしてそのまま体重をかけて一気に押し出し、辛うじて下が見えている場所に向かって突き落とした。
目に見える亡者を全て倒したことで僅かに緩む気持ちを抑え周りを見回すと……瞬間、近くの足場に炎が上がった。
急いで周りを確認するが、それを行ったのは離れた場所の屋根で存在する亡者であった。
かなり離れているが、しかし火炎壷は目の先まで届いている。
――どうやらロードランの亡者は強肩が多いようだ。
一気に走り抜けることは可能だが、それをやったとしてもここから見える火炎壷亡者はかなり遠い。
フォースが使えるとは言え凄まじい数に待ち伏せをされていたら苦戦するだろうし、機能を劣化させていないクロスボウの数が揃っていれば何も出来ずに死ぬだろう。
……
走り抜けるのは得策ではないと判断し、火炎壷亡者に背を向けた。
先ほど周りを見回した時に気付いたが、この場所の上に見える巨大な橋の柱の中に入れるようになっている。
そこには不死院で見た火の灯っていない篝火が存在しており、先の戦闘で受けた矢傷を癒すにはちょうどいいだろう。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
何か使えるものは無いかと思い、橋の柱の篝火から少し戻り先ほど数人の亡者に止めを刺した広場を曲がる事にした。
その先には盾と槍を持った亡者が二人存在しており、何かを守っているかのようだったため気にはなっていたのだ。
そうして近づいて気付かされたのだが、この亡者たちはがっちりと盾を構え、槍でこちらの隙を刺し貫こうとするその様はとてもではないが亡者とは思えない。
――しかしその思考は、いささか守りに偏っている。
幾ら近づいても盾を構えるばかりで何もしない。
おそらくこの亡者は「盾で武器を弾いてから攻撃する」と言う思考しか残っていないのだろう。
だから近づかれても反応する事ができない。
「―■■―」
フォースの物語を唱え衝撃波を放つ。
先ほどの亡者たちのように大きく仰け反りこそしなかったが、しかし盾を崩して無防備を晒すには十分すぎた。
フォースの衝撃波で近くに存在していた木箱が砕けて破片を散らすが、俺は亡者たちにぶつかる木片を気にする事無く二人の亡者を切り捨てる。
そして何時ものように周りの確認のため視線を彷徨わせると、先ほど存在していた木箱の下に隠れた階段が存在していた。
そのまま階段沿いに下の階に降り、場所を確かめるために建物の外に向かって足を進めると、その場所には先客が居た。
……それは大きめの桶を撫で続けている老人であった。
「おう、あんた」
「どうやら、まともみたいだな……?」
「だったら、俺のお客様だ」
「ソウルと交換だ。いいものを揃えてるぜ?」
「イヒヒヒヒヒッ」
とてもそうは見えないが商人……なのだろうか。
こんな場所で何処から商品を仕入れたのかなど想像に難くないが、こんな場所ではこういった人材も必要なのだろう。
そう思考し商人が並べている商品に目を通す。
投げナイフ、修理の光粉、火炎壷……そして、ロイドの護符。
何処の物か分からぬ鍵と、おそらく鍛冶を行うためのものであろう簡易的な道具箱。そしてまったく使い道が想像できない箱。
武器や防具も簡易的なものは一通り揃っているようだが、バトルアクスとアストラの直剣があれば必要だとは思えない。
遠距離攻撃を行う事ができるショートボウが目を引いたが、矢の持ち運びの事まで考えれば現実的な武器ではない。
そうなると必要なのは火炎壷や投げナイフだ。……せいぜいが使い道の分からない鍵と箱だろう。
「店主よ、この鍵と箱は一体なんだ?」
俺がその事を聞くと、店主はイヒヒヒヒヒと笑い声を上げ腹を抱えた。
「あんた、面白い事を聞くなぁ。知らないなら教えるが、この箱は貪欲者の烙印って呼ばれてる底無しの木箱さ。理由は分からないがこの箱には幾らでも物を入れることが出来、篝火で休憩する際に道具を自由に出し入れできるんだとよ。お買い得だぜ?」
「鍵は……何処のモンなのかしらねぇな。拾ったから並べただけだぜ」
幾らでも物を入れることが出来る箱か。
その話が本当なら、是非とも買っておきたい物だ。
鍵は……まあ、安ければ買っておいてもいいだろう。何かの役に立つかもしれない。
「貪欲者の烙印とやらを買おう。それと、鍵の値段は幾らだ?」
「貪欲者はこんなもん。鍵は……こんなもんでさ」
貪欲者と鍵の値段が同じだと? どういう事だ?
鍵に価値があるのか?
それとも貪欲者の烙印に需要が無いのか?
……それは、ありえそうだ。
話を聞く限りでは貪欲者の烙印はこのロードランを旅をするために必須のように感じる。必須であるとするのなら、ロードランの地に居る皆が持っていても不思議ではない。
しかし最初に出会った無気力な男は俺を見て「久しぶり」と言った。
必須であるが故に誰もが持っており、売れ残りがここに置いてあるのだとすればこの値段もおかしいものではないのかもしれない。
「ならば、両方買おう。加えてショートボウと矢、火炎壷と投げナイフも頼む。……それとロイドの護符を、一つだけ買おう」
「まいどあり、イヒヒヒヒヒ」
追加で商品を買い、買った物を抱えて篝火に戻ろうとした時に背後から声をかけられる。
「そうそう、せっかくなんで教えといてやるよ」
「ここらへんも、最近は物騒でなあ」
「この下にゃぁちょっと前から、山羊頭のデーモンが住み着いてやがるし。上は上ででっかい飛竜やら、最近では牛頭のデーモンまで現れるらしい」
「あんたも、せいぜい死に場所を選んでおいた方がいいぜ」
「イヒヒヒヒヒヒッ」
「……そうか。ならせいぜい、店主が見つけられぬ場所で死ぬ事にしよう」
死に場所を選ぶつもりなど無い。
そんな決意を込めた皮肉を店主に返し、俺は今度こそ篝火へと脚を進めた。
ダークソウル2は色々残念でした。
ソウルシリーズとして出さなければ普通に高評価だったかもしれないのに、何故ソウルシリーズで出してしまったのでしょうね。普通に疑問です。