僕のヒーローアカデミア 〜One's just awakening〜   作:ノボル0624

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遅れて投稿。台風が怖い今日この頃。
皆さんもどうかお気をつけて。


圧倒的な才能。

フランシス・バラナス。渡日二ヶ月。早々に大ピンチを迎えております。

「あっはっは!アレは傑作だったねぇ!」

食堂に笑い声が響き渡る。周囲の目を気にして、ただでさえ無理やり席に座らせるために縮こませた体がさらに狭苦しく感じる。とりあえずイロハは黙ってほしい。

「あんまり笑うのも失礼ですよ」

「でも面白いわよ。全力疾走で校内駆け回って迷子になった挙句、担任の相澤先生に捕まって引きずって来られたんでしょ?」

「いやまあ場所聞かんと言ったんはホンマにミスよね。でもすぐ教室戻ったんやけど、相澤先生おらんかった」

「あの時の顔本当に面白かった!」

「お前悪魔やろ」

イロハがあっけらかんと言い放った言葉にツッコミを入れる。しかしまあ、彼女にそう言ったところで関係ないのだろう。

現在は昼休み。今日は寝坊することもなく、授業も普通に受けて併設された食堂にて談笑している。

「ボクがその話を聞くのは二回目だが、やっぱり何度聞いても愉快な話だな!」

はっはっは!と隣のチビが豪快に笑う。彼女の名は天上(あまがみ)(つかさ)。金髪にツインテールに常にやんちゃそうな笑みを浮かべたチビだ。

身長はおよそ140センチほどで、もはや幼児と子供ほどの差がある。それ故、俺の巨体でもその影響を受けることなくわずかなスペースでゆったり座れている。

ツカサはヒーロー科B組。なんでも午前中の授業で行われたグループワークでハルカと意気投合して付いてきたらしい。初対面の俺とも臆面なく話すあたりからもその人懐っこさは滲み出ていた。

ところでテーブルを見回すが女子が一人もいない。男友達とか普通に憧れるのだが、まあ見事に女子で染められてるわけだ。

「何、目移りしそう?」

「目移りてなんやねん。いや、周りの視線が痛いな思うて。こんなナリして女の子に囲まれてるんやで。俺かておんなじ状況の人やったら正直犯罪を疑ってまうで」

「そんなこと、ないですよ。フランクくんは、かっこいい……です」

「ハルカ、ゲッカ、イロハにボク……両手に花状態だな!」

各々話しかけてくるがその状況がさらにまずい。周囲の視線が刺さりまくる。特に隣にいるのがツカサで、かつスキンシップに遠慮がないのがまずい。

「あかん、耐えられへんわ。ごめんやけど先抜けさせてもらうな」

「え、あっちょっと!」

衆人環視に耐えられずに立ち上がり、去ろうとするとがっちり腕をつかまれた。

「キミ、少し待ちたまえ」

「え、なな、なんです?!」

さっさと立ち去ろうとした矢先の出来事で、自分でも想像以上に動揺してしまう。

「そ、そんなに驚かなくてもいいだろう。ほら、落し物だ」

「ああ、コレ!今落としたん?ありがとう。確かキミは……飯田くんやったっけ?同じクラスの」

「ああ。君はフランシス君だな。昨日の個性把握テスト、素晴らしい結果だった」

「キミもやで、飯田くん。ありがとうな、落し物拾ってくれて」

「気にする必要はないさ」

昨日や入試での様子を見ていたが、厳しそうな男だったがどうやら違ったらしい。ほっと安堵の息をついている隙に何者か数名が背中を登ってくる。

「それよりもプレゼント・マイクから聞いたよ」

「何が?」

「君も入試の構造を見抜いていたのだろう?」

「入試?構造?何の話や」

「多分、アレじゃないかな。超巨大ヴィランと戦ったって事だと思うよ」

飯田という青年の後ろから緑髪の少年が顔を出す。

確か昨日の個性把握テストで指を粉砕していた少年だ。自身の個性で体をぶっ壊す人間は、アメリカでもそう聞く話ではない。

「ああ、当然やん。誰かが困ってるんやったら助けたらんと。ま、いらん心配やったみたいやけど」

「その当然を実行できなかった人間があの試験では多かった。自分の人生を秤にかけた上で、それでも他人のために行動を起こす事ができた。俺は君やこの緑谷くんの事を尊敬する」

「緑谷?ああ、君もあいつに立ち向かったんか。俺はフランシス・バラナス」

話の流れでモジャモジャ頭の少年を指すと理解した。

小柄な割に度胸が据わった男だ。最大限の敬意を評して握手を求める。

「バラナス……?もし間違ってたらすみません。ひょっとしてバラナスドラゴンの関係者ですか?」

不意に投げかけられた言葉に手を止める。

まさか日本に来てまでその名を呼ばれるとは思わなかった。少年の真摯な眼差しに冷やかしの色は見えない。

「せやで。俺はその息子や」

「ああ、いや、えと……申し訳ないです」

「よう知ってんな。そんな有名なヒーローとちゃうのに」

「は、はい!」

ポンポンと頭を叩きながらそう言う。

「フランク、話し込んでるとこ悪いけどそろそろ次の時間だよ!」

ドン、とイロハが背中に捕まってくる。

「イロハ、お前……。いや、急がなあかんな。緑谷、あんまし気にすんなよ。あと次からはタメで頼むわ」

「あ、は……う、うん!」

「君らもよろしくな」

「ああ!」

二人が教室へ戻り始めるのを尻目に、彼らの後ろにいた少女が後頭部を掻きながら挨拶する。

「よろしくね!」

「おう、よろしく頼むわ」

タッタッタ、と駆けて行く彼女の後ろ姿を見送る。

「ほら、お前ら。そろそろ授業の時間や。はよ戻らなまた怒られてまうわ」

「また怒られるのはフランクだけでしょ?」

イロハが悪戯な笑みを浮かべて突っついてくる。

「ああ。せやけど怒られんのは嫌やろ?ほら行った行った」

彼女たちを急かすと存外素直に言うことを聞いてくれた。

を確認してからロケットをポケットの中にしまい込む。

「まさか気付かれてまうとはなぁ」

 

ーー

 

「私がァァ」

予鈴が鳴った後も談笑が続く昼頃、そんな声が聞こえてくる。

「普通にドアから来たァ!」

スパァン!とドアが勢いよく開かれた。

筋骨隆々の巨躯に輝かんばかりの笑顔。彼こそが最高のヒーローだと言うのは、その姿が何よりも雄弁に語っている。

日本が世界に誇るナンバーワンヒーロー、オールマイト。遠目から見たことは数回ほどあるが、これほどの近距離で出会えたのは初めてだ。

生徒たちの感動もひとしおで、あちらこちらからオールマイトに出会えた感動の声や熱い眼差しが飛び交う。

彼は声援に応えつつもさっさと授業の説明に入る。

「私の担当はヒーロー基礎学。ヒーローの素地を作るためにさまざまな訓練を行うための科目だ」

その言葉を受けて何人かの目はギラつき、何人かは億劫そうな表情を見せる。特に俺の前後に座る二人は対照的だ。後ろにいるのは緑谷。彼はどこか不安げな顔で先生を見つめている。かたや前に座る爆豪はその後ろ姿からでも分かるほどにテンションが上がっていた。

「みんなが入学前に送ってくれた個性届と要望に沿ってあつらえたコスチューム!着替えたらグラウンドβに集合だ!」

 

ーー

 

「格好から入るってのも大事なことだぜ、少年少女。自覚するのだ、今日から自分はヒーローなのだと!」

グラウンドβに集合した生徒たちにオールマイトは笑顔で言った。

周囲を見渡すと様々なコスチュームに身を包んだ生徒がいる。入学前に身体情報、個性届、デザインなどの要望を出すと一流企業がコスチュームをあつらえてくれるらしい。

俺はそれらの提出に加えて、実際に使っていたコスチュームを提出した。訳あって実際に使っていたシロモノだ。提出したのもデザインの参考ではなく修繕並びにメンテナンスのため。

防刃、防弾、耐熱、ありとあらゆる状況に晒されても破損されにくい頑丈なコスチューム。それが長期間タンスの肥やしになっただけで性能が落ちるとは思えないが、念のために修繕を依頼している。

新たになったコスチュームを見るもそんなに変化は無さそうだ。といっても記憶が曖昧で細部のデザインは覚えていない。見ること自体が数ヶ月ぶり、実際に着るのは一年以上も昔の話だ。

「あんまし変わってねぇな」

説明書を読んだ限り、性能に違いは無さそうだ。本当に修繕だけをしてくれたのだろう。焦茶色のスーツ。要所要所にはポリカーボネート製のフレームが入っている。見た目に派手さはないが、堅実に全身を覆う繊維の鎧だ。

見た目なんてものはどうでもいい。問題は実用性だ。頭についた丸いゴーグルを下げて目に装着する。網膜に障害を負わず、かと言って視界を遮らないギリギリの遮光性を持つ暗めのレンズ。

「ヴィランっぽいね!」

そういうイロハのコスチュームは昆虫的な見た目だ。白を基調としたスーツに紫色の複眼を想起させるバイザー。腰には大量のガスマスクがぶら下がっている。何よりも特徴的なのは左腕の装置だった。

「うるさいな!こういうのは見た目やない、実用性第一や」

「実用性と見た目の両方を重視しなきゃ」

言葉に詰まる様子を見て、イロハはイタズラ好きそうな笑みを浮かべてつついてくる。周囲もそういった感じの雰囲気だ。それぞれのスーツについて聞いたりと談笑している。

パンッと一回、いい音が鳴り響く。オールマイトが手を叩いたのだ。それをきっかけにして生徒たちは一気に静まり、オールマイトに注目した。

「君らにはこれからヴィラン組とヒーロー組に分かれて二対二の屋内戦を行ってもらう」

「基礎訓練もなしに?」

「その基礎を知るための訓練さ。ただし今回はぶっ壊せばOKなロボットじゃないのがミソだ」

生徒の呟きにも近い問いかけにも対応しながら説明を続ける。

「勝敗のシステムは?」

「ぶっ飛ばしてもいいんすか?」

「相澤先生みたいに除籍はあるの?」

「分かれるとはどのような分かれ方をすればよろしいのでしょうか?」

「このマントやばくない?」

だが生徒たちによる質問攻めにはさしものオールマイトもひとたまりもなかったらしい。カンペを取り出しつつルールを説明する。

曰く、舞台設定は核兵器が隠されたヴィランのアジト。ヒーロー側はこれを確保するか二人組のヴィランを確保することで勝利、ヴィラン側はこれらを阻止すること、つまりは制限時間まで逃げ切りつつ核兵器を隠し通すことで勝利する。

「ヒーロー側が有利やな」

「そう?」

「ヒーロー側に求められるんはヴィランを捕縛する能力、もしくは核を確保する能力、それらを効率よく実現するための連携能力や作戦能力。対してヴィランに必要なのは戦闘能力だけや。んで、ヴィラン側には連携能力、作戦能力は直接有効になる。ヒーロー側からすれば作戦は空振ったりするかもしれんからな」

「そういうもの?」

モニターに映る様子を見ながら、ポツポツと解説する。意外にもイロハは黙って聞いてくれるため、気づけば色々語っていることに気がついた。

「そういうもんや。ま、ヒーローって存在自体が後手に回りやすい仕事やからな」

「ふーん。あ、始まった」

モニターの中で、ヒーローチームが動き出す。

同時にヴィランチームも動き始めた。とは言っても両チームは対照的だ。二人同時に進むヒーローチームに対して、ヴィランチームは一目見て明らかな爆豪の独断専行。

「サーチアンドデストロイ。実力差がある相手やったら有効やろけど……」

会敵、即爆撃。

奇襲は失敗。だが依然爆豪が有利だ。

「いきなり奇襲か!」

「爆豪ずっけぇ、奇襲なんて男らしくねぇ!」

「奇襲も戦略さ」

「あればええんやけど」

なんて呟いてみる。だがまあ、地力の差は明らか。圧倒的な実力差を伴うのならば、その実戦略なしの方が最も効率がいい対処法だ。

画面では爆豪が追い打ちをかけて次撃を打ち込む。

ーーが。その一撃を予測した緑谷の転身、同時に懐へ潜り込む。

そして豪快な一本背負い。

「やるやんけ」

完全に見切った上での投げ技。爆豪も意表を突かれて無防備に地面へと叩きつけられる。その隙に麗日を逃した。

「地力の差を戦略で埋めたか……。せやけど、それをいつまでも許してくれる相手やなさそうやしなぁ」

一撃の悉くを見切って間隙を縫う反撃。だが全てが有効打になり得ない。一方爆豪は攻撃の悉くを見切られ、完全にペースを持って行かれていた。

一見すると緑谷のペース。だが一度埋まった戦力差が再び地力の差で突き放されていく。

それは緑谷も分かっているらしく、隙をついて逃亡。

だがそれも一時のその場しのぎ。その場しのぎは時間を浪費し、時間の消失はヒーロー側を不利にする。麗日は飯田に見つかり一対一。

時間は刻一刻と過ぎる一方。

そして緑谷もまた、爆豪に見つかった。

こちらには音声が届かないため様子が分からないが、何やら言い合いをしているらしい。

「爆豪少年ストップだ!殺す気か?!」

「は?」

オールマイトの焦った声が聞こえてくる。それまで観戦ムードになっていた生徒全員もその言葉で空気が一変した。

ピンを弾き飛ばし、掌を相手に向ける。

着火、噴出、爆破。

猛烈な勢いで噴出した爆炎は、その直線上にある全てが砕け散るまで止まらない。

その一撃は緑谷の横を掠めて背後の廊下や壁全てをぶち抜き、ビルを半壊させる。

「先生止めた方がいいって!爆豪あいつクレイジーだぜ、殺しちまうぜ?!」

生徒の一人がオールマイトに対してそう言う。だが、オールマイトはそれを止めなかった。

「爆豪少年、次それ撃ったら強制終了で君らの負けとする。屋内戦において大規模な攻撃は守るべき牙城の損壊を招く!ヒーローとしてはもちろんヴィランとしても愚策だそれは!大幅減点だからな!」

大幅減点という処置にする。故に戦闘は接近戦へと移行する。

先ほどまでの優位を吹き飛ばすような爆豪の優勢だ。個性を駆使した変則的な挙動、的確な一撃。

「せやけど……」

「爆豪の方が余裕なくね?」

誰かが言った通り、彼にはどこか余裕がなかった。

次の一撃で決まる。誰もがそう思った時、緑谷は何かを叫ぶ。

そして一撃が交錯する。

ーーかに思えた。爆豪の一撃は直撃。だが、緑谷の一撃は。

天蓋を砕き、衝撃が突き抜ける。一息に5階までを撃ち抜く強力無比な一撃。衝撃で折れた柱を麗日が振り抜く。そしてその隙に核を「確保」する。

「ヒーローチーム、ウィーーーン!」

 

ーー

 

「さっきの戦い、すごかったなぁ」

そう言いながら窓の外へゴミ袋に纏めたゴミを捨てる。中身は紙の類、重さはそれほどない。が、量が膨大だ。

「そうだね。ところでこれは何をしてるんだい?」

「緊急用の脱出装置や」

屈伸、その後に更に伸び。準備運動で身体を温めてやる。

俺たちのチームはヴィランを担当している。

「俺は図体デカイから廊下やとマトモに戦えへん。階段で奇襲、それであわよくば一人確保。無理やとしてもこの部屋までの誘導頼むわ」

見取図の四階、大広間を指す。

「?核を守らないのかい?」

「俺らは基本的に接近戦しかできひん。んで、核の前でドンパチやれば、両腕だけじゃカバーできひん。せやったら通路が一つなんやから、そこを塞げばええ」

「そうだね。君の意見に賛成だ」

そう言ったのは尾白猿夫。個性は《尻尾》。尻尾が生えているだけ。

ただそれだけだ。

だが「それだけ」であることが彼の武器でもある。個性は年々、進化するようにより強力に、より派手になっていく。そんな中で雄英に受かった実力者には違いない。

「任せたで」

実戦訓練が開始する。

と、同時に周囲の空気がどんどん下がっていくことに気がついた。やがて冷気は凍気に変わり、凍てつき始める。

「くそっ」

慌てて窓めがけて駆け出し、体当たりで割りつつ脱出。そのまま地面めがけて真っ逆さま。が、ゴミ袋の山がクッションとなり、大怪我を負う心配はない。

「多少無様やけど、脱出完了。ほんで……」

バッと弾かれたようにゴミ袋から脱出する。一拍遅れてゴミ袋が凍りつく。

「屋内戦で範囲攻撃はずるいわ。ホンマに」

ぼやきながらも構える。相手の生徒の名は確か……。

「轟くん、やったっけ?」




というわけでまあ、主人公くんの戦闘シーンは次回へ持ち越しというわけで。キャラ紹介しようにもオリキャラの中で個性が明らかになってるのはヒロイン一人だけ。オリキャラ五人もいるのに……。
というか主人公くん、解説役に徹しちゃダメでしょ、アンタ主人公なんだから。
今回は対人戦闘シーンのリハビリってことで何卒お許しいただきたい。
爆豪くんと緑谷くんの戦闘シーンに登場した「着火、噴出、爆破」は個人的にとある映画のめちゃくちゃ好きなキャッチの上半分をイメージしてます。特に何らかの意味をもたせたパロディじゃないので本当に小ネタ程度の話ですが、まあ変えすぎて元ネタがわからないレベルになっちゃいました。
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