地に落ちた英雄は諦めない   作:風見 桃李

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タイトルのThe Night Has a Thousand Eyesは曲名のではなく英詩の方です。どうしてもサー・ナイトアイ関連のはこれにしたくて内容も無理矢理当てはめた今回はオリジナル回です。性癖もいれた。
人生は瞳から見てる分には長いけど、実際の体感は短い。
生きてる間にやりたいタイトルは今の内にと思って。


No.11 The Night Has a Thousand Eyes

雄英高校マスコミパニックが起こった日の夜である。

八木典花も対応に追われ、帰宅時間が一時間遅れるとメールを送り、実際は一時間以上過ぎて帰宅をしてきた。

「わ、私が帰宅をー、した…!」

 

久しぶりにちゃんとしたマスコミ対応によりヘロヘロで帰ってきたようだ、何より“オールマイト”をしていた時よりマスコミの対応時間が長かった。

“オールマイト”をしていた時ならば制限時間があり、毎回空きを見て抜け出したり、対応を長くはしていなかったからだ。その上今回は、不審なことがあったのだ。

正門の雄英バリアーが破れたのだ、崩壊という形で4枚目の頑丈の壁が同時に。

そして今回はマスコミのパニックなども重なり警察が来た、不審者やマスコミが残されてないか、不審なものはないかと確認する為に校内巡回をしてから帰ってきたというわけだ。

リビングに行くとサー・ナイトアイは椅子に座り本を読んでいたが帰宅に気付き、本を閉じ、声をかける。

「随分遅かったですね、お疲れさまです」

「ただいま、ナイトアイ。いやぁ参った!雄英高校の正門が崩れるというのを忘れていたし、何より久しぶりにマスコミの対応、警察への説明をしたよ」

「正門が崩れる?」

「あ、やっべ(これまだナイショだった!!)」

「…深く聞きません、兎にも角にも由々しき事態があった、とだけは認識しときましょう」

「あ、ありがとう、サー」

「気を緩め過ぎですよ」

 

サーは机に手を当て、トンットンッとリズミカルに叩きながら典花に雄英高校について説き始めた。雄英高校とは、全国の中でもNo.1ヒーロー オールマイトがいる事により稀な高校となっているが、今年はさらに稀である。

八木典花より言い渡されし少し先の未来での問題、これから先の雄英高校のセキュリティ、何より平行世界から来たヒーローのもうひとりのオールマイト。

 

「いくら私の家とはいえ、そう言う事はなるべく口に出さないでください。セキュリティは良くともいつ漏れるかはわからないんですよ」

「そ、それはわかって…」

「それを今、うっかり口を滑らしたのはあなただ」

「気をつけるよ、ごめん」

「…まあ、あなたと住んでほしいと言われた時点でセキュリティはかなり良くしましたが」

「え、そうなの!?」

 

サー・ナイトアイは根津に八木典花について色々言われ、情報をメールで貰っていた、そして八木典花と同居してほしいと言われた時、この先何があるかわからないので彼はセキュリティの良いところに引っ越し、車を買い、バイクを買いと準備をしていたのだ。

「オイオイ、マジで?ナイトアイ、君は正気か?いくら、別の世界の、オールマイトとはいえ、私は君の初対面だったんだぜ?さらに見知らぬ人だ」

「今はもう覚悟は決めていますが、根津校長から何度かメールなどのやり取りをして、話を聞けば聞くほどあなたを見知らぬ人とは思えなかった。…そしてあなたと会い、あなたの未来を見て、自身の確固たる意志で、決めた。なんとしても二人を生かすと、死なせないと」

「…君は、すごいな」

「そもそもアナタ自身が機密情報みたいなものだからな、それに金はある。幾らオールマイトグッズに注ぎ込もうとしても注ぎ込むにも限度がある、オールマイトグッズ専用の部屋をこれを気に作る良い機会にもなった、あなたが気を病む必要はないですよ」

「オールマイトグッズ、専用の部屋(そういえば一回も開かない開かずの間があったな)」

 

オールマイトグッズ専用部屋には保存用、使用用、致し方無い用と買っていると知るのは別の話である。ちなみにオールマイト仲間がいないので布教用は彼は買っていない、オールマイトファンソロプレイヤーである。

彼は今、オールマイトファン募集中だ。

「さて、夕飯を食べて、さっさと風呂に行ってください。今日は話すことがあるんだろう?疲れてもいるんだ、早めにしよう」

「…そうだな、話すことがある」

 

全てを終わらせ、ソファに座る二人、ナイトアイは手帳とボールペンの準備は出来ている。

出来てないと言えば、典花の心の準備が出来ていなかった。

前の世界の事をしっかりと話すのは二度目となる。

「それで、何を話すんだ?肩の力を抜いてほしい」

 

ナイトアイに見抜かれていた、いや、かなり肩に力が入っていたらしい。肩が思いっきり上がっていて、拳もかなり握っていた。

格好は互いにラフだ、既に風呂上がりな為、ナイトアイは部屋着、典花はパジャマである。ラフじゃないのは心である。

「…私が、一度死んだのは言ったね?」

「ええ、根津校長からもあなたからも聞きました」

「…私の、“個性”ワンフォーオールについては」

「いえ、何も」

 

典花はやはりと思った、完全に忘れていたのだ。

ここで典花は記憶を巡らす、オールフォーワンを倒した後、なけなしの“個性”で勝ったとマッスルフォームで立っていたのは覚えている。そしてその時、もうヒーロー活動は出来ないと悟った、あの体型を維持し活動するにはもう力はなかった。

肩から息をするように、フラフラになりながらオールフォーワンがタルタロス行きの移動牢 メイデンに入ったのを見届けた後、八木典花は次は君だと言い、その後救急車内で、息を引き取った。

「やはり、あの時“個性”と共に私も死んだ筈…死んだ、死んだんだ」

「典花さん、落ち着いて、“個性”と共にとは?」

「私は、本来ならばもうワンフォーオールが使えない」

「使えない?しかしマッスルフォームになっていたじゃないか、何人もが目にしている」

 

雄英試験日、彼女もまた試験のようなものを受け、確かにマッスルフォームとなっていた。彼女に直接守られていたサー・ナイトアイはあのパワー、その姿は八木俊典のものと同じだと認識している。

それはもちろん、八木典花もそう認識していた。

「それはわかっているんだ!だが、私は死ぬ前、もうワンフォーオールは残り火となっていた!本当ならマッスルフォームでのヒーロー活動はできない!!オールフォーワンを倒すので使い切ったも同然なんだ!」

「…だが、ここでは何故かマッスルフォームになれるし“個性”は使える…ここではいつからマッスルフォームになれましたか?」

「え、いつから?」

「ええ、それにあなたが言ったんでしょう?メモを取るの手伝ってほしいと。それに考察もしなくては、あなたはただでさえ謎が多い、臓器が戻る、忘れてはないか?」

 

典花はハッとした、もしかした臓器が戻る際に個性も戻ったのかもしれないと、しかし淡い期待のそれはサー・ナイトアイに打ち砕かれる。

「残り火が元に戻るのは無いかと、あなたのその傷跡を見れば戻ったのは本当に体の臓器だけのようだ。それはあなたもわかる筈」

「そ、そうだよね!HAHAHA…ハァ…」

「オールマイトとの不一致は性別、傷跡、臓器の損傷具合、一致は立場、考え、サイドキック、友人関係等。ここに来てからの不一致は立場の変更、臓器の有無、もしかしたら“個性”も不一致なる可能性が…そうか、似た“個性”の可能性もある、あなたは2つ個性を持っていた」

「ワンフォーオールのような、スーパーナチュラルパワーを?それなら早い段階で私ならわかっていた筈だぜ、昔から体は鍛えていたしな…それに私、無個性だったんだぜ?」

「む、無個性!?あ、それは後でにして…」

 

サー・ナイトアイはメモを取り、考え込んでしまった。

その“個性”が何なのかわからない。

何が由来で、何が発動条件なのか、突然使えなくなるのか。

それとも実はホントにワンフォーオールなのか?

もし、突然使えなくなったらどうすればと考えれば考えるほどサー・ナイトアイはわからなくなっていた。

「…別に気味が悪い訳じゃない、元は無個性だ。それにこの謎の“個性”のお陰で、ワンフォーオールのような力を使えてる事でまた希望が持てている。今止まるわけにはいけないからね」

 

突然使えなくなったらなんて彼女は考えていなかった、そこには再び希望が灯っているヒーローしかいなかった。

その“個性”がワンフォーオールにしろ、何にしろ、新たな名前が必要だと、サー・ナイトアイは思った。

二人の同じ名前のヒーローはここに居てはいけない、それが世間を揺るがすものなら。ならばその個性も、2つあれば世間を揺るがす。

「…名前、決めませんか?」

「名前?」

「あなたはもう、オールマイトじゃない。そしてその個性は、ワンフォーオールじゃないかもしれない」

「…HAHAHA!ここに来てから名前を考えてばかりだな!」

「笑い事ではなんだぞ!」

「あぁ、わかってる、わかってるよ。…不思議なことに、やっと少し落ち着いたよ。今なら、自分で決められなかったヒーロー名の代わりにこの個性の名前が決められそうだ」

「真面目に考えてくれ、ヒーローならまだしも個性の名前なんて…」

「マジで一生物、だろ?」

 

八木典花は手を開いたり、握ったりした。サー・ナイトアイにはもう“個性”の名前は決めているようにみえた。

「…意味は希望をあなたに、あなたを願っています。Hope youから。一人は皆のために、皆は一人のために、だなんて個性の名前があるんだ。私の個性の名は、ホープ・ユー。この拳で希望の力を振るう、私の願いの力。ヒーロー オールライトには似合いだろ?ナイトアイ!」

「ヒーロー オールライトに個性ホープ・ユー、か。(日本語に直せば、【大丈夫、希望をあなたに】【大丈夫、あなたを願っています】か。率直過ぎる、それだけに)あなたらしいな」

 

 


 

 

事は別に一件落着した訳ではない、むしろ山積みだ。

サー・ナイトアイのメモにはヒーロー名オールライト、個性名ホープ・ユーと書いてあり、不明の欄には本当に個性は同じか?要個性使用時の細心の注意等と色々書いてある。

「細心の注意、ね。そんな突然の電池切れ!みたいにならないと思うぜ?」

「世の中何が起こるかなんてわからないのによく言えるな、オールライト」

 

眼鏡を上げながら鋭い目でサー・ナイトアイに突っ込まれた八木典花は何も言えなかった。むしろ平行世界代表と言っても過言ではない。

物凄くどもり、目を泳がせながらも話を逸らそうとした。

「さ、サーの話、サーもき、共通点があるかもしれないなぁ?!」

「…話の逸し方ド下手か」

 

オールマイトと同じように、そう、同じように上げていくもなんと二つ目で躓くことになるとは二人共思ってはいなかった。

「よし!俊典と同じようにしていくぞ!ヒーロー名!」

「サー・ナイトアイです」

 

「名前!」

「佐々木です」

「ササキィ!?」

「…待ってください、違うんですか?」

「…キシミヒトミくん、じゃないの?」

「…私はササキミライです」

「…解散!おやすみ!」

 

そう言ってすぐにベットルームへ戻るもこの二人、まだ同じベッドで寝ていた。なんせお互いに安眠出来てWin-Winだったのだ。

だが今はそれどころではない、八木典花は混乱中だ。

「集合、起きてください」

「べ、別人なのかぁ?!」

「顔は?」

「同じだよ!」

「性別」

「同じだって!声も体つきも同じだと思うよ!個性予知もそうだ!!」

「…本名の名前だけ、か」

 

そう言うと携帯を取り出し、文字を打ち始めた、そこには漢字で佐々木未来としっかり書いてあった。

「どうやら、しっかり挨拶をしなければならないようです。改めて私は佐々木未来、ヒーロー名はサー・ナイトアイです、と言っても、同じ寝具の上で寝てるのに、本当に今更というかのか…」

「…本当に、ヒトミくんじゃないのか?」

「違います、そんなに信じられないのか?」

「いや、その、体を見て薄々その…」

「体?なにか違うのか?」

 

佐々木未来の携帯を手に取り、キシミヒトミの漢字を打つと、典花はそちらの“サー・ナイトアイ”について話し始めた。

そして佐々木未来は根本的に存在の在り方が違うのに気付く。

「彼いわく、軋んだ未来を視た瞳と書いて軋視瞳、ヒーロー名はサー・ナイトアイだ。彼は私が助けた子だった。ここには、ジカンと書いてトキマ、トキマ個性研究所は此処には無いみたいだね」

 

時間(トキマ)個性研究所、八木俊典の世界では端から一欠片も存在はしていなく、八木典花の世界では彼女がまだ若い時に潰した違法に個性の研究をする組織であった。

当時はまだ、個性は異能と呼ばれる時代で、都市伝説と化しているオールフォーワンも活動していたその大きな時代のうねりの中、孤児院、捨て子、人身売買などから個性未発現の子達を集めては使い、様々な実験をしていた。

 

個性の発現は誘導出来るのか?

遺伝子操作は可能なのか?

 

それが研究所の研究内容だったそうだ。

そのうちデザインベイビーも作るようになり、デザインベイビーでも個性の誘導、操作は可能なのかと実験、研究をするようになっていた。

「その中のデザインベイビーの研究体の一つが瞳くんだった、だから体を見れば違うなあと思って、けどここの瞳くんの傷とかは治ったのかと思って…」

「…少なくとも、私は、その個性研究所には行ったこともなければ、聞いたこともない。予知と言う個性だ、少し色々あったが、そこまでじゃない」

「そうだろう、それに、いい名前じゃないか。未来くん」

「…そちらの私は、名前がなかったんだな。わざわざ実験に使う個体に、名前を付ける筈がない。あっても個体名かナンバーだ」

「感がいいな、彼の名前は私が付けた」

 

そもそも実験や研究には種類があった、既存の従来の産み方の研究体、デザインベイビーの研究体。生きたまま解剖などをする使い捨ての実験体。

個性誘導体は全員失敗に終わっている、生き残ったのは遺伝子操作をされたデザインベイビー達のみである。

つまり寿命や失敗で死んだデザインベイビーを除いては、失敗成功有無関わらず外部から来た子達は死んでいた。

研究所のデザインベイビーには未来予知予測研究体 咲(サキ)と付けられた軋視瞳、他には死の未来予測予知研究体 篠(シノ)、現在遠隔操作予測研究体 枢(スウ)、過去修整研究体 淒(スサ)などが居たと報告されている。

 

報告されていると言うものの、あまりにも多くの子供の死体により生存者は彼女の見つけた子、報告と一致しない生存者の一部を除き、情報が無いのに等しいのである。

何故なら死体より出た腐敗臭によりバレ、逃亡を謀ろうとした研究員達が研究所を爆破、故に紙媒体でしか情報を残していなかった為情報は燃えて皆無。

そこにいた生きた研究体であり実験体を助けた子、その子こそが、軋視瞳、後の彼女の世界のサー・ナイトアイであった。

 

オールマイトとして彼女が手を伸ばし、助けられたのは恐らく生命体として稼働したての彼だけであった。

『君、名前は?』

『…ありません、研究個体名はサキです』

『そ、そうか、研究個体名はなあ…うぅむ、なんて呼べば…あ、瞳』

『ひとみ?』

『あぁ、君のその瞳はキレイだ、よぉうし!瞳くんと呼ばさせてもらおう!私はオールマイト!もう大丈夫だ瞳くん!私が来た!』

 

「そうして彼に瞳と名付けたのは良いが、感情は希薄で話しかけても反応は固定されてるかのように同じ言葉を言うだけ。体には2箇所、個体番号と名が彫られてたし、デザインベイビーとして成功例だった彼を守るのも含め、私が育てた…というか、勝手に育ったというのか。幸い知的好奇心はあったようで、スポンジのように知識を吸い取っていったからね!身体年齢的に高校に入る事もできた。高校までは一緒に住んでいたし、ヒーローになって数年後、また一緒に住んでたよ」

 

サー・ナイトアイは、佐々木未来は気付いた。

佐々木未来のオールマイト愛は根本的にはファンである、そこには敬愛などがあるだろう。だが話を聞くに軋視瞳のオールマイト愛は恐らくひな鳥が親鳥に付いていくものに近いのでは無いかと考察をしていた。

要するに佐々木は反論したかった。

自分は息子ではないと、無意識に重ねないでほしいと。

「…八木典花さん、一つ自覚してほしい」

「自覚?(いやまて、フルネーム?怒ってる?!どのタイミングで!)」

「私は佐々木未来です、あなたの息子ではない。いいですか?あなたは今、男と同じ屋根の下で暮らしている」

「え?ああ、そうだな。いや、瞳くんは息子では」

「軋視瞳ではない、別人だ。よく見てくれ、私を、佐々木未来と言う男を」

 

八木典花と八木俊典は性別が違う、重ねないようにするのは容易な方だと佐々木未来は思った。だが“サー・ナイトアイ”の軋視瞳とサー・ナイトアイの佐々木未来では容易くはない、体が同じ、声が、面影が、個性が、立ち位置が。ふとした瞬間に佐々木未来の奥に軋視瞳を見てしまうだろう。

 

違うものは人生である、だがそれは彼女に証明のしようがない。

彼は思う、このままでは信頼関係も何もかも“軋視瞳”と混ざるのでは無いかと。

「きっと、あなたは重ねているつもりはないだろう。だが違和感がやっとわかったんだ、あなたが変に私に優しいのを。無意識だとしても、私は…」

 

ゆっくりと近付く佐々木に対し、流石の典花も空気が可笑しいことに気付いた。そしてギシリと音を立て、ベッドに押し倒された典花は焦り始める。

「ま、待て待て待て!な、な、何をする気だ!?」

「息子とは、こんなことをしないだろう?」

 

佐々木の顔がゆっくり典花の顔に近付く、危うくもう少しで二人の唇が触れる所で、佐々木はそのまま顔を耳元に寄せた。

彼はキスをしなかった。

「…ッ!?み、みらいくん」

「私は私、彼は彼だ。それに、あなたは魅力的な女性だという事を自覚して欲しい」

「え、あ、み、みらいくん?」

 

「今日は一人で寝てください、私はソファで寝る」

 

気早に彼は寝室を出るとソファに座り、項垂れた。

よく見れば顔から耳まで赤く染まっていた。

「…私の理性、勝ったんだな?(そもそも私はあちらの私に嫉妬していたのか?それとも同一視で嫌悪をしていたのか?)」

 

佐々木は落ち着かせる為、先程聞いた話の事を手帳にメモをして落ち着こうとした、だが落ち着けず、さらに気付いていなかったことにも気付いてしまった。

「…もしかして、私は彼女のことが好き、なのか?」

 

こうして彼はその日の夜を終えた。

 

 


 

 

率直に言えば終えたかったとなってしまった、ソファに寝っ転がるまでは良かった。

だが彼もまた男、佐々木未来38歳なのだ。

 

自覚してしまえばこちらのモノ、だが抜いてしまえば戻れぬモノ。男のプライドじゃない、純粋なファンとしての気持ちを優先したい。

やましい気持ち?男なら当然?裸だって見てるからとても抜きたくなる?

あるに決まっている!!だが!それよりも!純粋に!憧れているヒーローで抜くなんて!本能が許しても、この理性と憧れが許さない!!

 

そう頭の中で繰り返す事約20回辺り過ぎた頃、萎えることなく立ってきてしまった。そうなると心の声は外にも漏れ始める。

「絶対しないぞ。寝るんだ、寝ろ私。…まずヒーローとしてどうなんだ、ヒーローとして。理性よ、もう一度勝て。そもそもここで抜いてしまえばオールマイトで抜いたことにもなる、元サイドキックてしてありえない、ありえない、だから、治まれ…(情けなくて涙が…)」

 

もう完全に寝れなくなってきた佐々木はついに起き上がりペンを取った、別にペンであれをどうこうしようとするわけではない。

改めて少ない情報の中、“彼と彼女”の在り方がどうだったのか考えようとしたのだ。

「そもそもここまで違うというのに、在り方が同じ、と言うのが…基準はなんだ?それに考えてみれば、彼女のいた世界は昼の太陽、彼女はずっとオールマイトとしてあろうとしている、さらに典花さんなら、典花さんのオールマイトなら後継の心が折れることはないかもしれない。対してこちらは夜、オールマイトを太陽としてたくさんの卵の星が輝いているが…彼のオールマイトではまだ後継の心はすぐ折れる、何より、もしかしたら二人揃って彼女のように強くないかも知れない」

 

八木典花は純粋に接する面が多かったのだと佐々木は考えている。

軋視瞳との生活、写真、ならば後継とも親密に、そして八木俊典よりも接し、育てた筈だと。

対して八木俊典は細かな面では彼女よりも良いだろう(八木典花はなんだかんだ彼と比べると大雑把である)、だが自らとの、佐々木未来との関係を考えるに人との付き合いは苦手なのかもしれない。そうなると後継を育てる際にもこれから色々変わってくるだろう。

そう、彼は一歩引いてしまうから。

 

太陽の度合い(オールマイトのチカラ)星の度合い(ヒーロー/ヴィランのチカラ)、折れぬ心の硬度、燃える愛の熱量。

 

この世界の夜の星は、千を超えるかもしれない。

昼はただ一人により照らされる、けれど、その光はいずれ日暮れ(おとろえ)と共に絶える。

理性は千の星を持つが、心はただ一人の存在にすぎない。

けれども、全生涯の光は、愛の終わりとともに絶えてしまう。

 

「彼女はまだ、終わっていなかった。まだ足掻いている、ここで、生きるのに必死で。だから個性のことを忘れていた。…オールマイト、どうか今からでもいい、足掻いてくれ…!彼女のように死なない為に、私の予知通りにならない為に」

 

佐々木は改めて手帳の書き途中のページから新たなページに文字を書き始める。書いていたページには薄っすらと線を引き、読み難くした。

 

八木俊典と八木典花の違い、在り方、心の強さ、足掻く強さ。

私と軋視瞳の違い、在り方、サイドキックの距離、オールマイトへの厳しさ。

このページは、これから二歩も三歩も抗おうと、足掻こうとするのが遅かった些末な私のメモとする。

願わくば、二人が生きる世界に私もいることを。

佐々木未来




フォント機能、めちゃくちゃありがたいですし、私も長く生きたいね。

次回、USJ!
佐々木と典花はどうなるの!?オールマイトは!?
邂逅、死柄木弔!
更に向こうへ!Plus Ultra!!

ここまで月日掛けて書いときながら実はまだ【八木典花にどの道を歩ませる】かをまだ決めてないので参考にさせてください。

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