遂に波を起こし始める。
それはヴィランへの怒りか、自分自身へ腹が立つせいか。
話には聞いていた、それがいつか、どのタイミングかは知らなくとも聞いていた筈なのにと、目の前のことばかりだったと言われても仕方ない。彼の顔は緩やかに険しくなる。
マッスルフォームの残り時間は、もう少ない。
「…校長の話を振り切ってやってきたよ。飯田少年とすれ違い。あらましも聞いた」
そう言いつつ 、少しでも時間を無駄にしない為に
13号はコスチュームの背中が破けている、つまり背に怪我を負った。生徒は見るからにバラけている、そしてヴィランもいる。
ああ、やはりUSJの件は避けれなかったかとオールマイトは内心思う。では怪我を負うと言われた教師二人、その二人の内もう一人は誰だ?と思った。
イレイザーヘッドは怪我をしていない、緑谷少年とその周りの子も無傷だ。
もう一人は見当たらない、何か変わったのかと彼は思った。だがそれでも、どれだけ子供らが怖かったか、後輩らがどれだけ頑張ったか。
それでも彼は胸を張って言わなければならない、それがNo.1としての、平和の象徴たる務めであるのだから。
それは仲間に向けて、ヴィランに向けて、生徒達に向けて、その場にいる者達に向けての牽制であり精神の平穏である。
「もう大丈夫、私が来た!」
「待ってたよヒーロー、社会のごみめ」
「「「オールマイトォォォ!!!!!」」」
ただでさえボロボロのヴィランはさらに怯え、生徒たちは喜ぶ中、緑谷出久だけは別のことを思った。そう、あのオールマイトが笑っていないと言う事に気付いたからだ。
オールマイトは残りのボロボロのヴィランを瞬時に倒し、とても早いスピードで緑谷たち三人を確保し、死柄木にも軽く一発攻撃を仕掛けた。
「ああああ、だめだ…ごめんなさい…!お父さん…」
オールマイトの軽い攻撃で死柄木の顔を掴んでいた手が遠くへ飛んだ、その手のことを
一方そんな事どうでもいいのか、オールマイトは出方を見ながら、助けた生徒達に向けて入り口へと言葉で誘導する。
「皆入り口へ、早く!」
「え!?あれ?!速い…!!(オールマイト…!やっぱり笑っていな…あれ?オールライトは!?)」
視界がヴィランから外れた緑谷は焦りながらも少し冷静になった、脳無にやられていた筈のオールライトがその場に居ない。緑谷はハッとして、脳無のことについて教えようとした。
「助けるついでに殴られた。ははは、国家公認の暴力だ。さすがに早いや目で追えない、けれど思った程じゃない。やはり本当だったのかなあ?弱ってる話…」
「オールマイトだめです!あの脳ミソヴィラン!!ワンっ…、僕の腕が折れない位の力だけど、ビクともしなかった!それにあいつ…!」
「緑谷少年、大丈夫!…CAROLINA!」
「脳無」
「(違うんだオールマイト)」
緑谷の話を最後まで聞かずに、オールマイトはスマッシュを撃ちに飛び出た。緑谷出久の言いたかった事は自分の力の事だけではない、オールライトがやられたのだと言いたかった。
「マジで全ッ然…効いてないな!それに顔面も効かないか…!」
「効かないのは“ショック吸収”だからさ。脳無にダメージ与えたいなら、ゆうっくりと、肉を抉り取るとかが効果的だね…それをさせてくれるかは別として」
「ならば君に加減をしなくていいな!」
それは彼らの頭上から響いて、聞こえてきた。
その声のトーンに雰囲気は、まるでオールマイトのよう、死柄木は少し驚いたのか肩を上げる。そしてオールマイトは気付いたのである、もうひとりの傷付いた教師が誰であるかに。
「Alabama Smaaaaash!」
脳無はその声と存在感から反射的に腕を上げ、アッパーを繰り出す、そこに頭上から力を込め、飛び蹴りを繰り出し、続いてストンピング*1をその場で何度も繰り返す。
「おいおいマジかよ」
「うわあぁぁ!」
脳無とオールライト、この二人の攻撃はとても激しいものだった。
最初の頭上からの一撃でその場の近くにいた死柄木は風圧で飛び、黒霧も耐えきれず飛ばされてしまった。離れていた緑谷達も例外ではない、風圧に耐えきれずに転がり始めたり、飛ばされてしまう。イレイザーヘッドは辛うじて立ってはいるが、体が軽く風圧で後退をしてしまった。
その場にはただ一人、オールマイトが踏ん張り耐え、近くで戦闘を見ていた。
「足技とは言え…!どれだけのチカラを込めているんだ、ヴィランが沈んできてるぞ!?(それにその腕は!その顔は!何故怪我をしている…!それにアラバマ*2だと!?彼女はいったい、何百発蹴る気だ!)」
本来ならばオールマイトの連続殴打技を300発以上打ち込まれ、後にフィニッシュのアッパーで天井を突き破り、空まで吹っ飛ぶ脳無。
その後のオールマイトは、マッスルフォームの持続時間が減る。彼女はそれを経験している。
八木俊典が知らなくとも八木典花は少しでも持続時間を延ばす為に、減るのを防ぐ為、彼女は脳無が退き、皆がトビラが吹っ飛ぶ音と共に、オールマイトに意識が集中した瞬間、あの場からUSJの一番高い所まで飛んだのだ。
そして前回と同じ条件とわかり、そのタイミングを見計らい、脳無の上に狙いを定めて、勢い良く降ってきた。
「…何回踏んでんだよ、それに脳無の腕が短くなってくる。超再生とショック吸収だぞ?」
「死柄木弔、これはマズイのでは?」
「脳無を上回るチカラ?」
ズドンという音が耳に聞こえた、地面が振動で揺れ響いた。脳無は地面に沈み込み、姿が見えなくなる。それは誰もが疑う光景であった、特にオールマイトは内心動揺をした。
その場に立っているのは怪我だらけで、血だらけの左腕で、その腕がひしゃげながらも、笑ってるヒーローなのだから。その顔を見た死柄木は叫び始める。
「…ああ、ムカつくなあ!俺は怒ってるよ!同じ暴力がヒーローとヴィランでカテゴライズされ、良し悪しが決まる、この世の中に!何がヒーロー、何が平和の象徴!!所詮抑圧の為の暴力装置だおまえは!脳無を沈めたおまえも!暴力は暴力しか生まないのだと、お前を殺すことで世に知らしめてやる!」
「めちゃくちゃだな、そういう思想犯は眼に静かに燃えゆるもの。自分が楽しみたいだけだろ嘘つきめ」
「バレるの早…」
オールマイトがそう言えば、死柄木がニタリと笑う、だがしかし、余裕そうに見えても死柄木たちの劣勢は続く。脳無の沈んだ音を聞き、したっぱのヴィランたちを倒した生徒や近くで様子見をしていた生徒が集まってきたのだ。
「攻略された上に全員ほぼ無傷、凄いなあ最近の子たちは。恥ずかしくなってくるぜ、ヴィラン連合!…黒霧、ありきたりの追加だ」
「なに!?」
「俺もあまり好きじゃない追加だけど、仕方ないよな?あの幽霊の言う通り、油断はしない方がいいって助言されてるんだから。来い、脳無」
驚くオールマイトを気にせずに黒霧は個性を使い、灰色の脳無を追加した。だがその脳無は先程の黒い脳無より一回り小さい、先程の脳無と違い筋肉もそんなになさそうだ。
「超再生とショック吸収の劣化版、言わばお試し用脳無か?」
「お試しは必要だったのでしょうか?」
「暇つぶしだろ。脳無、黒霧、やれ。俺は子供をあしらう。クリアして帰ろう!」
会話を聞いていたオールライトは悔しく思う、左腕はひしゃげた、両足は正直立っているのが限界。体が軋み、悲鳴を上げている。
その場からもう一歩も動けず、何も変えられないのかと思う。
一方オールマイトは刻一刻と迫るタイムリミットの中、覚悟を決めていた。
「(確かに時間は一分もない。それに力の衰えが思ったより早い!しかし、やらねばなるまい。何故なら私は、この世界の!)」
「おい来てるやるっきゃねえって!」
「平和の象徴はてめェら如きに殺られねえよ」
「爆破してやらァ!」
「(平和の象徴なのだから!!)」
それは圧、殺気、プレッシャー、様々な名を持ち形容されるもの。
子供たちに向かった死柄木は思わず飛び引いてしまう。そして指示のままに向かった脳無は、オールマイトと真正面からの殴り合いを始めた、その殴り合いによる風は先程よりも凄い。殴っているオールマイトの頬の肉が風圧でベロリと少し削げる程だ。
一回り小さくとも加減を知らぬ脳無は出鱈目な力で殴り掛かる、そして一発一発の一撃全てが、100%以上の出力で撃ち込むオールマイトはその拳へと的確に拳を当てる。
「ヒーローとは常にピンチをぶち壊していくもの!ヴィランよ!こんな言葉を知っているか!!?
天井を突き破る脳無、フィニッシュを決めたオールマイト。
ズキズキと腕の怪我の痛みを自覚し始めた彼女は、唇を噛み締めた。その手も伸ばせず、その場から足も動けず、その場で右手の拳を握りしめる事しかできないと思うオールライト。
「(…何も、変えれない…!)」
だが変わっている、変えれている。
イレイザーヘッドは怪我をしていない、オールマイトは脳無による腹への怪我もせず、今はまだ血も吐いてない。そしてまだ変わることを彼女は知らない。
「やはり衰えた、全盛期なら5発撃てば十分だったろうに、150発以上も撃ってしまった。(…そして時間切れだ)さてとヴィラン、お互いに決着をつけたいね」
「チートが…!それで衰えた?嘘だろ、完全に気圧されたよ。ああ全っ然弱ってないじゃないか!あいつ…俺に嘘教えたのか!?あの死にぞこないの幽霊も…!」
「どうした?来ないのかな!?クリアとかなんとか言っていたが…出来るものならしてみろよ!!」
「うぅうおぉぉぉぉ…!!」
タイムリミットは既にオーバーをしているオールマイトはその不敵な態度で虚勢を張り、死柄木はゲームクリアが出来ないことに焦り、それをアドバイスしながら落ち着かせる黒霧。
遠目からはそれを見見ながらその場から動けぬ生徒の四人とその側にいるイレイザーヘッド。その中間にはオールライトがいる。
先行き不透明な混沌としたこの場は、正に一触即発の状況である。死柄木が攻めに来るか、撤退するかでこの戦況は大きく変わりかねないのである。
そんな所に明らか場違いな、それもめちゃくちゃ五月蠅いバイクの音が聞こえてきた。USJの扉はすでにオールマイトがふっ飛ばしている、そのままバイクは突っ込んでここに来れる状態だ。
わざと吹かしてるのかと言うぐらいに、音は近付いて来た。
「まさか、もうヒーローですか。死柄木弔、撤退を」
あまりにも甲高く吹かしたバイクは着いてやいなや、階段を飛んだ。
階段にいた生徒達はバイクに引かれてはいないものも目を点にした、それは下にいた生徒達やイレイザーヘッド、ヴィランも同じである。
「と、飛んだァ!」
「死ぬんじゃねぇか?」
「(雄英にバイクに乗ったヒーローなんて居たか?)」
「こっち来るぞ、黒霧。ゲームオーバーだ」
「撤退ですね」
「帰って出直すか。…なんだ?!」
「逃がすと思うか!!」
二人のナチュラルボーンヒーローは目を大きく開いた、この雄英高校に居ない筈の声であったから。何より一度体験していた事によりオールライトは、本来ならば絶対に来ない筈の人物が来た事により心底驚いていた。
その人物はオールライトの方に落ちながら、武器と言えばいいのだろうか、それを投擲し、死柄木の方へ攻撃をした。
その武器は、通常ならば武器にはならない筈のモノである。避けた死柄木は足元の凹みを見て、ボソリとそれを見ながら目を疑う。
「ハンコ?どれだけ重たいんだぐっ!」
時間差で投擲されていた超質量印の攻撃に当たり、そのダメージで唸る死柄木、バイクに乗り攻撃をし、その場に降り立ったのはサー・ナイトアイであった。そしてすぐに死柄木にまたもや何か撃ち込まれる、先程よりも静かではあるが、それは存在感のあり、生徒達は安堵するものであった。
「ごめんよみんな、遅くなったね。すぐ動ける者たちをかき集めてきた」
「1-Aクラス委員長飯田天哉!!ただいま戻りました!」
根津たちが来たことにより、スナイプが銃弾で腕や足を、サー・ナイトアイは超質量印で足下を狙い逃すまいとするも死柄木はダメージのみ。辛うじて個性が使用できた13号はブラックホールで逃すまいと黒霧と死柄木を引き寄せるも抵抗されてしまう。
「今回は失敗だったけど…今度は殺すぞ、平和の象徴オールマイト」
その場には最初っから死柄木と黒霧の二人は居なかったかのように、二人は逃げ去った。残ったのはヴィランに襲われたと言う事実と、怪我をした教師は二名いたという事だった。
変わった事は多数ある事を今の彼女は気付けはしない、緑谷出久は無傷だ、イレイザーヘッドもまた無傷。オールマイトは脳無による大怪我もしていない。
「なんてこった…」
「これだけ派手に侵入されて逃げられちゃうなんて…」
「…それよりも今は、生徒らの安否さ」
「それと…」
セメントスはそう言うとオールマイトの方を見る。オールマイトの体からは煙が出ていた、マッスルフォームからトゥルーフォームへと戻りかけている、いや、煙で隠れているがもう戻っている。
緑谷しかり、切島もそちらを見ていた為、セメントスは急いでオールマイトとオールライトの二人が隠れるように壁を作り、囲った。それでホッとしたのかオールマイトは崩れるように座り込み、オールライトは力の抜けたように倒れてしまった。
近くにいたサー・ナイトアイは思わず叫んでしまう。
「オールライト!」
その声を聞いて座り込んでいたオールマイトはそちらに向かいたい、向かいたいが今になって少し咳き込み、手に血を吐き始めていた。今や変わった関係の八木典花、心配で堪らないのだ。
血の付いてない手を使い、四つん這いになりながらオールマイトは向かった。
「典げほゲホッ、のりか、ゲホッゲホッ、典花!大丈ゲホッゲホッ、大丈夫!?」
「オールマイトさん、血を吐いてます。あなたが大丈夫じゃ無いので今は動かないでください」
セメントスがオールマイトに寄り添い落ち着かせる、その倒れたオールライトの方に根津が走って来た。
伝える事がある、彼女の意識が飛ぶ前に。それを伝えるのと伝えないのでは彼女の気の張りが起きた後、眠ってる間と違うはずだから。
「オールライト!気を失う前に聞いてほしいのさ!オールライト!オールライト!」
「こう、ちょう…」
「未来は変わったのさ」
「…そ、です、か」
それだけを言い、オールライトの瞳は閉じた。彼女の体からも煙が立ち、彼女もまたマッスルフォームからトゥルーフォームへと戻った。だが怪我はそのままで、事は急を要する、根津は急いで指示を出す。
「オールライトを病院へ!すまないがサー・ナイトアイ、彼女をよろしくなのさ!イレイザーヘッドは彼等と一緒に生徒を回収しながら外へ、プレゼント・マイクは生徒たちに聞こえるように個性で呼び掛けを」
次々と言い渡される根津の指示、集まる生徒とヒーローたちの雑踏、生徒たちのさざめき、数分もすればサイレンも聞こえ、USJの外には警察官。
八木典花を壊れ物のように抱きかかえ、刺激をなるべく与えないように出口に向かい、階段に登るサー・ナイトアイ。
その後ろを見ながらイレイザーヘッドは思い、考えた。
「(…俺は、鍛えなおさないといけないな。これが今後もあるのなら、毎度これじゃ、毎回これがあるなら…この人は潰れる)」
「今回は事情が事情なだけに小言も言えないね」
そうリカバリーガールが保健室にて、八木俊典に向けて言う。怪我は脳無との殴り合いで少し頬に怪我が、そして血を吐いていたので俊典は保健室へと運ばれていた。そして骨が本当に折れてないか不安だった俊典は、緑谷出久も連れて行った。
「…多分だが、私、また活動限界早まったかな。一時間くらいはほしいが」
「オールマイト…!」
「まー仕方ないさ!こういう事もある!」
よいしょっと言いながら、保健室のベッドで寝ていた俊典は起き上がった。そこに一人の男がやって来た、彼の名は
「ハハッ、何だその紹介。さて、早速で悪いがオールマイト、ヴィランについて詳しく…」
「待った、待ってくれ、それより、生徒は皆無事か!?八木…オールライトと13号、イレイザーヘッドは!!」
「生徒はそこの彼以外で軽症数名、教師3人はとりあえず命の別状なしだ。四人のヒーローが身を挺していなければ、生徒らも無事じゃあいられなかったろうな」
「そうか…しかし、違うぜ塚内くん。生徒らもまた戦い、身を挺した!!こんなにも早く実践を経験し、生き残り、大人の世界を、恐怖を知った一年生など今まであっただろうか!?ヴィランもバカなことをした!!このクラスは、1-Aは強いヒーローになるぞ!!私は、そう確信しているよ」
そう八木俊典が言うと塚内の携帯が鳴る、メールの受信音だったらしい。それを確認した塚内は俊典に向ってそれを報告した。
「オールライト、八木…えっと、ノリカ?彼女の手術終わったみたいだよ」
それを聞いて緑谷出久はハッとして思い出した、腕はひしゃげていた、顔からも血を流していた。そしてサー・ナイトアイのあの声からして倒れたのだろうと推測が出来た。
「腕が酷く粉砕骨折で破片を少し取り除いてから、また少しずつ治すらしい。足はヒビ入ってるし、顔も骨折、まあ少しの間安静にしといてって感じみたいだ」
「なら破片除いたあとは私も治そうかね、あの子は無茶ばかりするねホント。オールマイト!」
「あ、ハイ!」
「お互いに気を付けなよ。それにあの子は特にアンタより危ういんだからね」
「私より危うい、とは?」
「ちょっと考えてわからないなら、サー・ナイトアイとあの子とあんたの3人で話したほうが良い。ここで詳しく話す事じゃないからね」
そう言われ俊典は少し考え俯き始める。
彼は塚内にはまだオールライト 八木典花のことはしっかり話してはいない。緑谷には詳しく話してはいないが、恐らくヒントを与えれば何者かわかるだろう。
そしてそこから流石のオールマイトもわかるだろう、オールライトの危うい所、似てる所を。
本来ならば、無茶をしたのは八木俊典だ。
八木俊典は考えた、彼女の危うい所を。
思い浮かべた、オールライトとして戦う彼女のことを。
浮かび上がる、アシンメトリーな自分と彼女、お互いオールマイトとしてきたそのヒーローの姿を。
俊典は顔を上げ、ゆっくりベッドを降り、緑谷に塚内と帰ってもらうことに同意を貰うと上半身包帯と裸のまま仮眠室へと向かった。
そこで予備の服を取り、パッと着替えて携帯を手に取り、不慣れな動作でメールを送る。
それはまるで業務連絡のようなメールだった。
――――――――――
Sob 必ず開く事
From 八木俊典
To サー・ナイトアイ
今度3人で話し合う時間が欲しい。
ナイトアイ、君の連絡待ってる。
――――――――――
「ってえ…両手両足撃たれた、完敗だ…脳無2体もやられた。手下共は瞬殺だ、子供も強かった。平和の象徴は健在だった…!話が違うぞ先生」
「違わないよ」
そう声を発したのはバーのTV画面から。
薄暗いバーの床に横たわる死柄木弔、彼はその声を怪我のこともあるのだろうが大人しく聞いていた。
「ただ見通しが甘かったね」
「うむ…なめすぎたな。ヴィラン連合なんちうチープな団体名で良かったわい。ところで、ワシと先生の共作の脳無とあの半透明が勝手に指示した脳無は?」
「回収してないのかい?」
それに答えるのは近くにいた共に帰ってきた黒霧だった。黒霧曰く幾らワープを使う自らと言えど、正確な座標を把握出来なければ探せないという発言であった。
「そのような時間は取れなかった」
「せっかくオールマイト並みのパワーにしたのに…まァ、仕方ないか、残念」
「パワー…そうだ。一人、いい動きする子供。一人、オールマイト並みの動きをするヒーローがいたな…」
「…へえ」
「あのガキ、あのヒーロー、あの邪魔が無ければオールマイトを殺せたかもしれない…くそっ…くそ…!」
「悔やんでも仕方ない!今回だって決して無駄ではなかったハズだ。先鋭を集めよう!じっくり時間をかけて!我々は自由に動けない。だから君のような“シンボル”が必要なんだ、死柄木弔!!次こそ、君という恐怖を世に知らしめろ!」
今回でUSJ編としては終わりですが雄英&USJなので体育祭も同じ編でやると思います。
そして自分でも書いててここにサーが来るとは思わなかった、それに彼が間に合う予定で書いてなかったので…
それではNo.14に向かって!せーの!Plus Ultra!!!
ここまで月日掛けて書いときながら実はまだ【八木典花にどの道を歩ませる】かをまだ決めてないので参考にさせてください。
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