地に落ちた英雄は諦めない   作:風見 桃李

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ヒロアカ最終回なので頑張って書き終えた…
何故本編と番外編の二本平行して書き進めてるのか。
きっとナイトアイを早く書きたいからなんだろうな。

※可笑しな所があったので18/10/1に修正というか文を変えました。
※※名字の変更をしました19/10/19


No.-2 英雄を尊敬した緑色の二人

部屋に携帯のバイブレーション音が鳴り響く、少年は携帯を確認すると有り得ないという目をして、大きく見開いた。

母に名前を呼ばれたが生返事をして急いで外に出た、それぐらいありえないのだ。

彼女はもういないのに、彼女の名前が携帯に写ったんだ。

海岸に行くと座ってる人影が見えた。

「はぁはぁ、お、オールマイトォォ!」

 

しかしよく見ると違う、スーツは着ていたけど見たことないスーツ、細いけど似てない細身、髪の毛も髪型も違う。

諦めて立ち止まりそうになった時、向こうの人影が走って向かって殴ってきた。

人影の声は男だった。性別も違った、誰なんだろうか。

「スマッシュ!」

「ぅぇ!?」

 

知らない人に、少年はいきなり殴られた。

だが殴った方もあまり殴り慣れてないのかかなり痛そうに座りこんだ。

 

「「っ!」」

 

殴り慣れてはなかった。

だが痛みに耐え、その人は涼しい顔を作り、立って話を始める。

「だ、誰!?」

「オールマイトが話していました。ワン・フォー・オールは無個性の中学生にあげたと」

「なんでそれを、え、あ、あなたは!」

 

オールマイトオタクでヒーローオタクの少年は目の前の人を知っていたし、オールマイトオタクでサイドキックだった彼もまた少年を知っていた。

悲しくもなにくれの運命かな。お互いに出会わず、詳しく知らなくても浅く知っていて、二人はただ一人の共通の人を尊敬していた。

金髪で、碧眼、女性ながらにして性別を隠しナンバーワンヒーローなった人を。

二人の間に風が吹き、異なる二つの緑髪は風に揺れた。

「初めましてだな。雄英高校一年A組の緑谷出久。私はサー・ナイトアイ」

 

そう名乗った彼はオールマイトの携帯の画面を緑谷出久に向けた。

携帯のメモが開いてあり、そこには一つの文章が書いてあった。

 

【もし、私が死ぬようなことがあったらナイトアイ、グラントリノ、相澤くん。緑谷出久少年をよろしく頼む。死ぬつもりはないのだけれど何があるかわからない。どうか彼を見捨てないで、しっかり叱って、誉めて、慰めて。私の事なども全てを教えて欲しい。立派なヒーローにしてほしい。緑谷出久少年、君の周りの人達をいっぱい頼って、だから安心してヒーローに】

 

途切れたメモの月日の時期は体育祭後ぐらいだった。

終わった後考えたんだろう、緑谷出久は思い出した。

出会いを。始まりを。道筋を。

終わりを。最後を。知りうる彼女の全てを。

だけど巻き戻らないんだ、無くならないんだ。

オールマイトが消えたってことは。

「巻き戻らないんだ、無くならないんだ。今までとこれからの事実は。だから私は今、君に会いに来た。緑谷出久、君の意思は聞かないが」

「へ?」

 

「今日から私がオールマイトの代わりに君を鍛える」

 

「え、えぇぇぇ!?あ、あの自分にも他人にも厳しくストイックなヒーローのサー・ナイトアイが!?」

「事務所は重要な案件中の為畳まないが業務は少し縮小する。それと雄英に私はこれから非常勤講師として、オールマイトの穴を埋める」

「えぇぇぇ!?」

「五月蝿い、さっきから話を遮るな。それより緑谷出久、君はわかっているのか。オールマイトはこの世から消えた、引退とも死去共にその情報は世に回った。その力は、ワン・フォー・オールはもうお前しか持っていない。それに…、話を聞いた、毎度飛び出し、何度も体を壊す!」

「っ!」

「今回も再び飛び出した。だが緑谷、君は初めて怪我をせず、この窮地を脱した。彼女ならきっと、そう、喜ぶ筈だ」

 

ナイトアイは緑谷のもとへ行き、ぎこちなく抱き締めた。

ぎこちなくもその温かい腕に緑谷は涙を流した、今の少年には必要なものが、そこにはあった。

愚かと言えば良いのか、無謀と言えば良いのか、是非も置き、今の少年に必要なのは師なのだ。

ナイトアイは彼女ならこう言うだろうと想った。

「この、調子で頑張ろう、緑谷少年」

「うう、あぁ、わあぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」

 

今だけは、彼女の代わりにこの小さくて泣き虫な後継者を守ってあげよう。

あのオールマイトが一人で決めた、このボロボロの後継者を。

 

「(せめて、しっかりと理由を教えてほしかったよ。典花)」

 

その日、緑谷出久は頬に残るきっと、八木典花に殴られる筈だった痛みとオールマイトがもういない事実が“オールマイト”時代の終幕をじんじんと実感せざる終えなかった。

 

 

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 

 

 

数十分が経った今、彼はため息を吐いていた。

 

現在緑谷出久はサー・ナイトアイの背中にいる。

彼は泣き疲れて寝てしまった。

それもその筈、彼は爆豪勝己の救出に動き回っていた、それに元々林間学校での傷も響いて少し寝ていた。それを知らずにナイトアイが起こしたのだ。

ナイトアイは抱き締めて声が止んだのに気付き、腕の中を見ると緑谷は夢の中、怒るに怒れなかった。

ナイトアイは背負うことにして緑谷出久の自宅に向かった。

「小さい、あまりも小さい。やはりミリオに渡せば良かったんだ、ミリオの方が体が大きく筋肉もあり、周りは笑いが耐えない。後継者に良いだろう。だが…未練がましくとも私にはもう、言う権利はない。彼女の意思を尊重しなければ…腹を括らなければならない」

 

ふと思った、彼は今緑谷出久を背負っている。

片手でもこの小さい少年は背負えるが残念だが反対側の手には緑谷出久の携帯。

「インターホン、押せないじゃないか。それより階は何階なんだ?…仕方無い、悪く思うなよ、緑谷」

 

ナイトアイは確かに彼のことを聞いていた。

個性の譲渡の電話を最初として、名前、週に一回は必ず来るメールでの彼の成長、そして彼女が残した彼の今後の鍛える予定に必要な課題と雄英のデータ。

雄英のデータなどそれらは根津によって死んだ連絡と共に言われ渡された。

サー・ナイトアイの個性と仕事の都合上、口は固くなければいけない、そして彼はオールマイトのサイドキックだった。だから彼には真っ先に連絡が行った。

話は戻る、緑谷が来るまでの間に自宅の住所などは把握していたのだが肝心の階を見落としていた。

緑谷出久の自宅は集合住宅だ。

「ロック画面は…オールマイトか、良い趣味だ。だがこれはいつのだ?か、彼女がピースしてカメラ目線など!…ん、スライド式か、ロックの意味は?電話帳、み、みど、みど…これか」

 

緑谷の携帯で彼の母に電話を掛けようとすると寝ぼけてるのかまだ寝てるのか、彼の腕がナイトアイをぎゅっと抱き締めた。小さく寝言も彼には聞こえ、彼は未だに夢の中なのだと知る。

「…私は君の父ではないのだがな」

 

ナイトアイは電話をかけた、もちろん緑谷引子の電話にだ。

電話をかけると引子は急いで家から出てきた、だが小さくとも引子では出久は部屋まで運べない。

背負っていたナイトアイは彼の自宅まで行き、そのままベッドまで運んだ。

「彼はもうこのままで平気なのですか?」

「は、はい!大丈夫です!これ以上お手を煩わせるわけには…」

「いえ、怪我をしているのを知っていた上にオールマイト、…いえ、八木典花の携帯を使い呼び出したのは私です。そこに関しては私は謝らなくてはなりません」

「オールマイトの?」

「…オールマイトの、八木典花の遺言を見て、私は本日、腹を括りました」

「あの、何を言っているの?」

 

緑谷引子は話の流れが読めないが焦りを感じていた。

少し落ち着いてから、さっきから嫌な予感しかしないのだ。それはぞわり、ぞわり、這い寄る。

「緑谷引子さん、どうか彼を、緑谷出久を私に鍛えさせてもらえないでしょうか」

「出久を、あなたに?」

「彼の個性を、彼が使えこなせるように。…貴女がどこまで知ってるか、私には分かりかねます。ですが彼は…」

 

ナイトアイはここで言葉を止めた。引子は不思議そうにナイトアイを見上げる。

一朝一夕の出会い、データで知っているだけ、彼の何が語れよう。

何よりナイトアイ自体は彼を認めているわけではない、ただ彼女が認め残した後継者と言うだけで目を付けようとしている。

口を閉ざしたナイトアイは少しだけ振り返る、次に出す言葉を出す為に。

 

『人を助けられる人間になりたがってる』

電話ではそう言っていた。

 

『彼は成長をしている。いつも怪我だらけなんだけどね』

メールでそう送ってきた。

 

『緑谷出久、無個性ながらヘドロ事件にて友を救うために走る。海岸清掃諦めず予定の範囲外もして完遂。諦めない心、タフネス、泣き虫。これからの成長期待。…導いてあげないと』

渡されたオールマイトの書いた書類にはそう書いてあった。

 

『久しぶりナイトアイ、今大事な仕事に当たっているんだ。それが終わったら、話がしたい。譲渡した子についてだ。今更だけど詳しく話したい。これを聞いたらメールか折り返しをしてほしい』

最後の電話で、彼女は話そうとしてくれた。

後先を考えずに、人を救うため前しか見ないヒーローは、立ち止まって頑張って説明をしてくれようとした。

あぁ、そうか、私にはこれしか言うことが残されてないのか。

通形ミリオの師をしているからわかることだ。

 

 

彼もまた、ヒーローの卵。

「彼はきっと、良いヒーローになれます」

 

 

と言ってその言葉が緑谷引子に通じるかと言えばそれは未知数!

それよりもナイトアイは大きなミスを二度犯していた、普段なら絶対、必ずしないミスを彼はした。

彼も疲れていた。(体力的に、精神的に、全体的に)

「(掴みは、掴みは平気か?!資料を見る際彼女はこの流れだと断りそうだが…頼む、断らないでくれ!断られるとグラントリノになってしまう!)」

「…一つ、良いですか?」

「…はい」

「お名前は?」

「…え」

 

一つ目のミス、電話をしたときのことである。

『もしもし、緑谷出久のお母様ですか?』

『はい、そうですけどあなたは?も、もしかしてヴィラン!?』

『落ち着いてください。私はヴィランではありませんしヒーローです。息子さんが眠ってしまって、家の近くまで来たのですが残念ながら階数がわからなく、息子さんの携帯を使い連絡をいれました』

『い、今家出ます!』

 

ここで本日の名乗るタイミングを彼は失った。

二つ目のミス、緑谷出久の家についてからもずっとゴタゴタしていた。

『部屋は?』

『息子がすみません!こ、こちらです!』

 

そしてベッドに寝かし今に至る、盆ミスでは済まされない事態だった。

そんな彼の顔はかなりレアな表情をしていた。例えるなら、そう、チベットスナギツネだ。

「…名乗り遅れました、私はサー・ナイトアイです。電話でも申した通りヒーローをしています、こちら名刺です」

「いえ、こちらも名乗るタイミングがなくて…名刺まで。知っているかも知れませんが私は緑谷引子です。その、先程のお話は出久と話し合ってからでも良いですか?」

「それはもちろん」

「ありがとうございます。あとナイトアイさん、会ったばかりであれですけど泊まっていきますか?ここら辺はもうバスとかもありませんし」

「いえ、歩いて、っ!?」

 

もう一度言うが彼も疲れていた。

ナイトアイの体は実に正直だった、欠伸を我慢した次に腹の虫が鳴いた。

実は彼、神野区からあの後、根津から資料をもらって内容を一通り見て、そして直行で緑谷出久の方に来ていた。

瓦礫の町と化した神野区を走り回り、間髪いれずオール・フォー・ワン邂逅、その後一睡もせず食事も取らず資料を見ては緑谷出久に連絡し緑谷宅に至る徹夜のハードスケジュール。

一夜明け緊張も途切れ、疲れも出てきた。

38歳のその細身の体は空腹を訴えていた。

「ご飯も食べますか?」

「ご迷惑では、っ~!」

 

何度も腹の虫が鳴く、これは流石の彼も恥ずかしい。彼は口元を押さえ、手を出しながら断ろうとするが鳴り止まない。

これはもう腹を括ってお言葉に甘えるしかない。

「…頂いても、いいですか」

「どうぞ、それに隈も凄いですから泊まっていってください」

「ありがとうございます、っ!また鳴ったか…」

 

こうしてナイトアイはあれよあれよと言う間にご飯を、そしてお風呂までもいただいて泊まることとなり、ソファで本人の記憶内では座って寝た。

翌日の朝、ヒーローオタクの緑谷出久は叫びそうになった。

「な、なっ、ナイト、ナイトアイが、自分にも他人にも厳しい筈のサー・ナイトアイが我が家のソファーで横になって丸まって寝てるっ!さらに毛布にくるまって!れ、レアだ…寝癖もある、ナイトアイは童顔なんだ、38歳に見えないよ…!若く見える。凄い写真撮っても怒られないかな、こんな無防備なナイトアイなんて見れないぞ、そうだ一枚だけ角度はこれとあれとそれと、あぁ、これも良いなぁ何枚も撮れちゃうよ。フォルダはサー・ナイトアイぶつぶつぶつぶつ…」

「おはよう出久」

「おはようってお母さん!?なんでナイトアイが家で寝てるの?!」

「寝た出久をここまで背負ってくれたのよ?凄く疲れてたみたいだから起きたらお礼言いなさいね」

「僕寝ちゃったの!?(記憶は泣いた所で…うわああああ!つまりナイトアイのうっ、腕の中で寝てしまったぁ!?さらに背負われてる!?)」

「出久声が大きいわよ!それにしてもよく寝て…もうすぐ8時よ?あ、ご飯作るから起こしてあげてね」

「え、えぇぇええ!?」

 

そう言うと引子は朝食を作りに行ってしまった。

ソファーの上で寝てるナイトアイをどうしようかと思った。何が最適かなんてわからない、さらにプロヒーロー、寝起きに攻撃されないか心配だった。

そこで出久が行った起こし方は、軽く揺らしながら声を掛け起こすそこそこ一般的な方法だった。

「な、ナイトアイー、朝になりましたよー(起きてぇええ!)」

「んん~…」

「ホッ、手応えありだ。ナイトアイ、起きてください。ナイトアーイ?」

 

ナイトアイは重そうに瞼をあけるとぼやぁとした目で出久を見た。テレビで見たストイックな彼は居なかった。

今の彼は寝癖が所々あり呂律も頭も回ってなくふわふわしていた。まだ頭もぐらついていて船を漕いでいる。

つまり、そう、完全に彼は寝惚けていた。

「お、おはようございます!ナイトアイ!」

「…ぉは、よう?」

「た、立てます?あれ、ナイトアイの眼鏡はどこに?」

「んー…」

 

唸りながらその長身をソファーで器用に体育座りしながら彼はまた寝る体勢を取った。出久は慌ててもう一度起こす。

「眼鏡あったって寝ないで!?も、もしかして低血圧とかそういう!?ナイトアイ起きてくださいよー!」

「さ、むい…」

「寒い?あぁ、そうか、スーツに毛布だけじゃたしかにここは寒い!お母さん!コーヒーとかあったりする?」

 

出久はナイトアイに温かいコーヒーを渡したあと着替えに部屋に戻った。戻って来た頃にはちゃんと起きたナイトアイがそこにいた。

スーツで寝たためかスーツはよれていた。

「おはよう、緑谷」

「やっと起きてくれた!」

「っ、すまない。寝起きの悪さは自覚している、迷惑をかけた」

「そんな!僕の方こそその、すみません!スーツだって濡らしてしまって!」

「あの場ではあれが最適だと思ったからだ。それに服なら着替えれば良い。…それとこれから様々な困難があるだろう、少しずつ乗り越えていこう」

 

その言葉を聞いて出久は昨日のことを思い出した。

オールマイトはもういない。

 

これからヒーローとしても、人間としても、沢山の困難が出てくるだろう。オールマイトの後継者として、ワン・フォー・オールの受け継いだ者として乗り越えなくてはならない。

そう受け取った緑谷出久は大きく返事をした。

「はい!」

「目に見える一つ目の困難はこれだ、先に渡しておこう」

「へ?」

 

ナイトアイの出した紙には雄英高校寮制度化と書かれていた。

確かにこれは大きな困難になりそうだ。

「こ、これって」

「私も今週から非常勤ながら正式な教師になるので詳しくは言えないが、オールマイトが死に、ヴィランも活性化してきたからだろうと思う。それに生徒が誘拐された、接触された。この二つからして手の届く範囲に置き、生徒を守りたいのだろう」

「誘拐と接触…それって、僕とかっちゃんですよね?ナイトアイ」

「かっちゃん?まだ緑谷の資料しか渡されていないのでわからないが、緑谷がそういうならまぁそういうことだろう」

 

ナイトアイが言い終わると引子に朝ごはんが出来たと呼ばれ二人は食事を取った。

数十分後、玄関にナイトアイがいた。

「すみません、お世話になりました」

「いえ、出久もお世話になりましたし、…あの話も話し合わなきゃ、それに寮のことも」

「優先は寮の話し合いで、学業が優先ですので」

「それはもちろん!…あの、ナイトアイさん。出久にも言えることだけど、無理はしないでください」

「お母さん…?」

「無理、ですか?」

「出久もすぐ怪我してきちゃうけど、それは目には見えるわ。けどナイトアイさんは昨日は隈がスゴくて、お腹も減らして、お風呂上がったあとすぐにも寝そうだった。出久がずっと言ってたから、自分にも他人にも厳しいって。そのままだと倒れちゃいます。もし、本当に出久を鍛えさせたいならナイトアイさんも、出久も、二人とも体を大事にして!!」

 

引子の言葉に二人は反論など出来なかった。

日々学校で傷を作ってはリカバリーガールに叱られる出久。緑谷出久の言う通り自分にも他人にも厳しく、そしてストイックにしてしまうサー・ナイトアイ。

どちらもずっと同じことを続ければ体に限界が来て倒れるだろう、あの英雄のように。

だが、それでも彼は答えなければなかった。

「…私はヒーローです」

「ナイトアイ?」

「職業柄、いつ死ぬかはわかりません。そんな仕事ですがヒーローであることに、私は誇りを持っています。私が尊敬し死した英雄がヒーローであったから、憧れたその人が、救ってくれたその人がヒーローであったから。ですので一つだけ、言わせてください。私が、サー・ナイトアイと言うヒーローが活動している時だけは大事に扱うことができない、どうかそれはご理解していただきたい」

 

ヒーロー、それは重くも軽くもなる職業。

そして本質はお節介ということ、それは緑谷引子にも薄々わかってきていた。

息子の怪我はそこに向かうためのものだから。憧れのヒーロー オールマイトに向かう為の、自らがヒーローに向かう為の。

そして目の前の人はプロヒーロー、サー・ナイトアイ。名刺にはサー・ナイトアイ事務所と書いてあった、サイドキックではない、それでいてストイックな人。

「…きっと、出久もそうなっちゃうよね」

「お母さん…」

「ナイトアイさん、私、出久に幸せになってほしいだけなんです、だからどうか、出久を鍛えさせたいなら、死なないでください。それが約束できるなら、どうか出久を、お願いします」

「いつまでの命かわかりませんが、精一杯、務めさせもらいます」

 

 

そう言うとナイトアイは緑谷宅を出た、それを追って出久は外に出る。

二人は無言のまま、下の階まで降りた。

「…緑谷、良い親を持ったな」

「は、はい!」

「…緑谷、先に一つ謝る。私は恐らく、君が卒業するまでには死んでいるだろう」

「え?」

「オール・フォー・ワンに、何かしらの個性をかけられた。生死で発動する類いの物をな。…恐らく八木典花は生きている、どのような形でかはわからないが、あいつの言い方からすれば私は死んだ後そちらに行くのだろう。この事は緑谷、お前と後で根津校長などに話す。死体がなくなっても焦らないでくれ」

「サーも、死んじゃうんですか…」

「それはいつかは死ぬだろう、彼女も死んだのだから。…ヒトなんだ、死んでしまう。だが緑谷出久、私は君のお母さんと約束をした。少しでも足掻いてみるとしよう。それと最後に、君を弟子に取るのだから弟子としてこれは覚えておいてくれ。元気とユーモアのない社会に、明るい未来はやってこない」

 

そうして、ナイトアイは去った。出久は歩いていくナイトアイの後ろを見えなくなるまでその後ろ姿を見続けた。

 

後日、午前の昼前。スーツを着た男が二人、集合団地の前に居た。方やサラリーマン風、方や小綺麗にした男。サラリーマン風の男の方がベテランに見えるが本日がデビューだった。

「さて、一応本日より新人教師な訳だが、ここは根津校長の申し出で緑谷出久の家庭訪問は任せるぞ、軋視先生」

「…私一人か?」

「あぁ、一応俺は隣にいるがいるだけにしてくれと言われたが、喋らないのにいるのは合理的じゃないからな。全て任せる」

「もし何かあった時のためにいてくれということじゃないのか?何かあってからではそれの方が合理的じゃなくなるのでは?相澤先生。それに私は今日、教師になったんだぞ?正直家庭訪問の仕方がわからない」

 

相澤はそれを聞くと少しため息をついて諦めた。

「仕方ない、二人で行くか。ダメ出ししながら行くからな」

「よろしく、相澤先生」

「あぁ、よろしく、新人の軋視先生」

 

相澤先生と新人の軋視先生のドキドキ家庭訪問が始まった。

 




次回は単行本でいう11巻のNo.96家庭訪問の通り家庭訪問が始まります。
ちなみに爆豪の所では軋眼先生はいるだけみたいな感じでした。借りてきた猫。
本編で明かされたナイトアイとこちらのナイトアイ、合うようにしないと…
今更ながら【ナイトアイ】の設定を書き始めてます。

ここまで月日掛けて書いときながら実はまだ【八木典花にどの道を歩ませる】かをまだ決めてないので参考にさせてください。

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