ニュースはそう簡単に、その事を風化はさせてくれない。
『ヒーロービルチャートJPの時間だ!!不動のナンバーワンの生死!日本のみならず、ヒーローの本場アメリカ、そして世界でも騒然!オールマイト死去!?オールマイト本当の姿ァ!オールマイトの死体は確認されず、しかし救急隊員からは心拍停止を確認済み!事実上オールマイトは死去と警察は発表!』
オールマイトのことは世界が連日報道している、これから先まだまだ報道されるだろう。
オールマイトこと八木典花の死体は行方は知らず、救急車の中には心拍停止を知らせる音が響き、それを隊員は聞いている。
病院、警察、そして一部関係者はオールマイトの生死を事実上死去と認め、世間に発表をした。例えその身があろうとも、八木典花の心電モニタリングは止まった。
電気ショック、心臓マッサージ、他にも、他にも。
彼女の体は恐らく、耐えきれない。
どう足掻いても、あの場での死は覚悟せざる負えない。
彼女の死んだ穴を私は、頼りなくても埋めたかった。
悲しむ行為も、涙を流す行為も、立ち止まってる事も、する暇はない。
そして誰も彼もが気付いた、老若男女共に。
ヒーローも、ヴィランも、市民も、人種や立場関係なく世界もが。
この世界は、あまりにも“オールマイト”に頼っていたと。
時は一夜にして多くのヒーローが大打撃を受けた“神野の悪夢”の後日である。
雄英高校は今回の件とオールマイトの件で家庭訪問をする事となる。
世間では『元はと言えばオールマイトが雄英高校に赴任したのが問題』、『オールマイトが死んだ今こそ再び子どもたちが巻き込まれるのでは?』など少なからず批判意見が出ていた。
故に、雄英高校は新たな段階へと進まざるを得なかった。
それは【雄英高校 全寮制導入】である。
1-Aには相澤消太と軋視瞳が、1-Bには根津とブラドキングこと
オールマイトが抜けた穴を新人教師 軋視瞳として入ってきたサー・ナイトアイは相澤と共に耳郎家、爆豪家へと次々と向かった。
そして間にある、緑谷宅の近くまで彼らはやってきた。
「さて、一応本日より新人教師な訳だが、ここは根津校長の申し出で緑谷出久の家庭訪問は任せるぞ、軋視先生」
「…私一人か?」
「あぁ、一応俺は隣にいるがいるだけにしてくれと言われたが、喋らないのにいるのは合理的じゃないからな。全て任せる」
「もし何かあった時のためにいてくれということじゃないのか?何かあってからではそれの方が合理的じゃなくなるのでは?相澤先生。それに私は、教師になったばかりなんだぞ?場数が少ない、正直家庭訪問の仕方がわからない」
相澤はそれを聞くと少しため息をついて諦めた。確かに場数が少ない、伝え忘れや聞き忘れがあれば合理的じゃない。
「仕方ない、二人で行くか。ダメ出ししながら行くからな」
「よろしく、相澤先生」
「あぁ、よろしく、新人の軋視先生」
歩き始める二人は階段をゆっくり上がり、相澤は改めて軋視に説明をする。場数は少なくとも手本のように見ている。
「とりあえず耳郎や爆豪宅と同じようにすればいい。寮制となること、それに伴う寮生活、それと言ってくる、聞いてくるであろうオールマイトのこと。緑谷は、傍から見てもオールマイトのことを好きだったからな」
「…オールマイトは、あの人は誰よりも自分の命より他人の命を守る人でしたから」
「あんたも確かオールマイトのファンだったか?メルアドにオールマイトって書いてあったし」
「彼女の元サイドキックでした、オールマイトとは喧嘩別れです」
「あのオールマイトと喧嘩別れ?」
「…私の個性は予知、彼女の死の未来を見てしまいました。私はそれを止めようとして、彼女は無断で未来を見た事に、それに伴い、まあ色々」
階段を上りきると相澤は止まった、彼は振り返り、じっと軋視を見た。彼にしては珍しく目を見開いていた。
先に結論が頭を過る、彼は死の未来を見たと言った、そして彼女は死んだ。
「つまり、あの人は、オールマイトは死の未来を…」
「受け入れた、抗おうともせず、真っ直ぐそこへ向かった。…認めたくありませんが」
「あんたそれ、緑谷に」
「質問されればですが、言いますよ。彼には質問する権利があり、私には答える権利がある。私はもう、八木典花から目を逸らしてはいけないんです」
元サイドキックで彼女のファン、彼女の事を止められず、手を離し、目を逸らした彼の決意は揺るがなかった。
深い後悔なのだろうか、拳を握る彼の手は震えていた。
「…難儀な事だな」
「それでも好きなんです、彼女ことが。…恐らく、だからこそ緑谷出久も彼女に惹かれた」
「似た者同士か」
「似ていませんよ」
震えていた手は開かれ、その声はとても穏やかだった。
済んだことだからか、それとももう本人がいないからなのか。
「私は彼女に手を惹かれ、彼は共に走り抜けた。在り方が違う」
「お節介をするのがヒーローですよ、軋視先生。確かにあなたも共に走っていた、そうだろ?」
「…私は、彼女がいたからヒーローになった。彼女あっての私だ、だが確かに、走っていた筈。…そうか、だから…」
なにかに気付いた軋視の表情は明るく、相澤に話しかける声は軽かった。
「行きましょう、緑谷出久の家庭訪問へ」
ピンポーンとインターホンが2回鳴る、ここは緑谷家のリビング。先生が来る前、異様な空気を出していた。
家庭訪問でヒーローが来るのだ、そして担任、変に緊張をしていた。
「き、キキキ、来た!」
「お湯!カステラ!」
「コーヒーは大丈夫だから、お母さん!げ、玄関!」
「わかったわ!」
ドアの外からもわかるドタバタ音が家庭訪問の開始を告げた。
「「あ、開いてます!」」
ガチャリ、相澤がもう一度ドアノブを回すもドアは開かず、更にもう一度やるが開かない。同じように中もガチャガチャと金具の音を鳴らし、数秒後にドアは開いた。
「す、すみません!相澤先生!開いてませんでした!」
「ささ、あっ!あっ!上がってください!」
「…緑谷、まずは落ち着け」
「「は、はい!」」
「…お二人共、深呼吸して(不安だ)」
ド緊張の緑谷親子と先に家に入った幸先不安しかない相澤消太、そして親子がリビングに向かうタイミングで家に入ってきた軋視瞳によるドキドキの家庭訪問が始まった。
「えっと、相澤先生そこに座って…えぇ!?」
「出久?どうしたの?あぁ!」
「「サー・ナイトアイ!」」
「初めまして、先日雄英高校の臨時の教師となった
「話を遮るな、緑谷。はよ家庭訪問させろ」
軋視は雰囲気的にこれはよくある現象なのかと察し、これからも遮るのだろうと思い諦めた。
相澤の機嫌を察知した親子はスッと音もなく座り、改めて家庭訪問は始まった。
「事前に話は行ってると思いますが、雄英高校の全寮制について、緑谷さん」
「ハイ…えと、その件ですが…私、嫌です」
「お母さん!?昨日はうんって…」
「考えてたんだよ!?でもね!嫌なの。出久は“個性”が出なくて、それでもオールマイトに憧れてきました。でも、
相澤消太はそれを聞いて確かに、どんどんボロボロになっていく緑谷出久を知っていた。入学試験から今の今まで怪我ばかりだ、だがこれ以上怪我が増えると動かなくなるかもしれないという話は知らなかった。
対して軋視瞳は無表情で冷静に、聞いていた。
「先日の戦い、テレビで拝見しました。一人の一般市民としてとても感謝しています、が親として怖かったです。出久はオールマイトに憧れてます。出久の行く末が、あんな血みどろの未来なら私は、私…“無個性”まま、ヒーローの活躍を嬉しそうに眺めてるだけの方が、この子の幸せだったんじゃないかって…思ってしまったんです」
お母さん!と言い椅子から立ち上がる緑谷出久、困惑しながらも母の言葉聞きながら、母や周りに言われた言葉を思い出す。
「出久、応援はするけど、それは心配しないってことじゃないって言ったよね。出久はこのまま雄英に通いたいよね、でも…ごめんね出久。ハッキリ申し上げます、出久の親として、今の雄英高校に息子を預けられる程、私の肝は座っておりません」
ポロポロと、涙を流しながら言う緑谷引子に、相澤消太は厳しい顔をし、軋視瞳は未だに無表情であった。
もとは外部の人間でインターン生を受け持っている軋視はわかっている。雄英高校は幾度の失態を受けている、だがそれに伴う生徒の成長も聞いている。
しかし親ならどうだ?
「お母さん…」
子はヒーローを、憧れを、夢を目指し傷付き、傷付き、尚進み。
親はそれを応援し、心配し、心配し、子の夢を閉ざしても安心な道を行かせるだろう。
恐らくこれもまた、一般的な親子像だ。
「オールマイトがどれだけ素晴らしいヒーローだったかなんて関係ありません。ヴィランに襲われてまともに授業を続けられない…生徒の大怪我も止められない、そんな学校に通わせたくない、私は」
「緑谷さ…」
「違うよお母さん!怪我は僕がダメなだけだよ!オールマイトは、先生方は何べんも言ってくれていて、それを僕が!」
「結果この現状なら、学校の責任なんじゃありませんか」
「…座れ、緑谷出久」
「モンスターペアレンツ、かもしれません、でもモンスターでいいです。私は出久の夢を奪いたくないんです。どうしてもヒーローになりたいなら別に、雄英でなくてもヒーロー科はたくさんからありますよね」
軋視瞳は思う、オールマイトと共に走ってきたこの少年は、出会う前からオールマイトを追っていた。そんな彼がオールマイトの母校雄英高校で学ぶことに意義があると。
「(そこを断たれると言う事は、彼女の軌跡をなぞれず痕跡を追えないと言う事。私ならば…)」
出久は歯を食いしばりながらリビングを飛び出し、扉を閉めた。引子が呼び戻そうと椅子を立つも、その扉はすぐ開かれた。
「いいよ、雄英でなくったって。見て、お母さん、サー・ナイトアイ、相澤先生。手紙貰ったんだ、合宿の時に救けた子から。ヒーローどころか“個性”すら嫌っていた子が、ありがとうって…くれたんだ。まだめちゃくちゃ心配されてて、それでも…一瞬でも…!この手紙が、この子が、僕をヒーローにしてくれた。嬉しかった…!!雄英でなくたってどこだって、いいよ!僕はヒーローになる…から!」
「(ああ、緑谷出久、君は既に…。
軋視瞳は無言で席を立ち、眼鏡を外す。相澤は彼の顔を見た、それはヒーロー サー・ナイトアイの顔ではなく、まるでヴィランのような顔であった。
「順序が間違っていたようだ、誠に申し訳ない。オールマイトこと八木典花は緑谷出久が後継にふさわしいと、即ち平和の象徴になるべき人間と意思を示していた。そして!戸籍上の息子であり元サイドキックの私は、緑谷出久は第二の平和の象徴になれる可能性があると希望を抱いた」
ヴィランのような顔つきで、彼は頭を垂れた。緑谷親子と相澤は驚き、相澤は思わず椅子を立つも、何も発せなかった。
緑谷出久は驚きながらも静かにそれを聞いた。
「彼女の元サイドキックとして、曲がりなりにも彼女の息子として私の謝罪です。彼の憧れに甘えていたでしょう、教育を怠っていた事に謝罪致します。そして雄英教師としての懇願です。確かにオールマイトの道は血生臭いものでした。女性が歩むべきものではない上、一人の人間としての意思が、何もかも削げていた。だからこそ彼に同じ道を歩ませぬよう、横に立ち共に歩んで行きたいと考えています」
「ナイトアイさん…!」
「今の雄英に不安を抱かれるのは仕方のない事です。しかし雄英ヒーロー達も、このままではいけないと、変わろうとしています。どうか今のではなく、これからの雄英に目を向けて頂けないでしょうか!…緑谷出久くんに、オールマイトのしてあげたかった事の全てを、私の持ちうる全てを注がせてもらえないでしょうか!!
彼が言いきると緑谷引子はゆるりと崩れ落ちた、出久はお母さんと言い心配をする。緑谷引子は数秒下を向くと、顔を上げて軋視瞳にしっかりした声で話しかける。
「…やっぱり、嫌です。だって、死んでしまってもオールマイトは出久の生きがいなんです。雄英が嫌いなワケじゃないんです、私。出久に、息子に幸せになって欲しいだけなんです…だから、あなたの生命に代えないで、ちゃんと生きて、守り育て、アナタの知識を教えてあげて下さい。…ほら、顔を上げて下さい」
ボソリと、緑谷さんと言う彼の眼は泣いてはいないのに充血をし、目を彷徨わせていた。それは泣き出す前の子供のようであった。
「この前も言いましたよ。ナイトアイさん、私は出久に幸せになってほしいだけ、出久を鍛えさせたいなら死なないで。それが約束できるならどうか出久をって。あなたも精一杯務めさせもらいますって。…もう一度、しっかり約束しましょう?軋視さん」
「お母さん…!!」
「…出来る限り、約束します」
「相澤先生」
「っ!はい」
「軋視先生」
「はい」
「無理は、しないでくださいね」
「「…はい」」
「出久も雄英で生活をしていくなら…わかってるね?」
「絶対、心配はさせない!」
思わず涙を流しながら、緑谷出久は涙を傷だらけの手で、零れ落ちないように拭き取り引子に言う。
何も言わず緑谷引子は思う、そんな顔で言わないでよと、本当は嫌なんだよと。だから息子の幸せを同時に考える。
「(出久は、私の知らない間に、憧れのヒーローの息子から、ここまで言ってもらえるようになったんだもんね。これが…あなたにとって、何よりも幸せなことなんだよね)」
流れ的には相澤消太はこのあと謝りなどを言って外に出ようと思っていた。なんだかんだ色々なことがある密な時間だった、後輩教師にも聞きたいことがある。
そんなことは知らない緑谷出久はハッと我に返り、思わず大きな声を出した。
「サー!息子ってどういうことですか!?確かにオールマイトのプロフィールにもサー・ナイトアイのプロフィールにもそんな記述も、ニュースやネット記事、まとめ掲示板にもそんな噂は何もありませんでしたけど!オールマイトからも聞いてません!そこを詳しく!!!」
「空気読めよ」
「そ、そうですよね、メモも持ってないのに…」
「…緑谷?」
「ノート持ってくるので一分待ってください!」
そう言うと(相澤消太の体感的に)約35秒で緑谷出久は戻ってきた、一分もいらなかった。
こうしてこのあとの家庭訪問もある最中、家庭訪問の第二ラウンドは始まった。
そして相澤消太は思った、今日中に家庭訪問は終わらないと。
「(どうすんだコレ)」
まさかまさかの家庭訪問の話二分割、次はほぼオリジナルになる筈…?
そして早ければ恐らく来週投稿できるからある意味タイムリーな話題にブチ当たる?
そこについにやってくるかな!?ハイツアライアンス!
オールマイトが死んだ世界線はいったいどうなるのか?
次回、恐らく軋視瞳のオリジン。
ここまで月日掛けて書いときながら実はまだ【八木典花にどの道を歩ませる】かをまだ決めてないので参考にさせてください。
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