地に落ちた英雄は諦めない   作:風見 桃李

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題名候補としては『死んだ後に背負うモノの重さを知る』や『君の背負うモノの重さを知る』がありました。
明るくしたかった結果。


No.5 光の始まり

 

雄英入試当日の朝六時、俊典は一人寒そうに、そしてあくびをしながら海岸に向かっていた。

しかしそれは一瞬にして眼が覚める。

「あああああああああ」

 

輝く朝日に照らされて、ゴミの上で叫ぶ緑谷出久。彼は海岸清掃もとい目指せ合格ドリームアメリカンプランを完遂したのだ。

「わあああああああああ!!」

「おいおいおい!指定した区画以外まで!?マジかよ、チリ一つなくなってやがる!!マジかよ!ギリッギリで仕上げやがった!完成以上に!オーマイ、オーマイ…グッネス!!(やっぱり典花を起こして連れてくればよかった!この光景を彼女にも見してあげたかった!)おつかれ!」

 

そして数分後、個性譲渡の儀式という名のオールマイトの髪の毛を食うという緑谷出久的に(そしてオールマイトオタクの意味的に)嬉しいんだか何なんだか複雑な時間が過ぎた。

そんな緑谷出久が急いで受験会場の雄英高等学校に向かってる中、八木典花は起床してリビングで手紙とスマホを見ていた。

「…根津校長からのプレゼントが最新スマホ、そしてそれよりも今日は雄英入試!何故起こしてくれなかった!俊典!少し文句は言っちゃうぞ!」

 

手紙にはこう書いてあった。

 

───────────────

 

八木典花様へ

 

おはよう、これを見てる頃にはきっと、君は一人寂しく朝御飯だろう!

彼には起こさないよう言ったから攻めないでほしい。

隣にあるスマートフォンは君にプレゼントするよ!

まだあげてなかったからね、忘れててごめんね!

それは通院終了祝いとして受け取ってほしい、アドレス帳には私根津、八木俊典、他にも雄英教員の一部が入っている。

 

そして本題だ、君は通院が終了し中身は恐らく万全になった。

そこで君には新たな段階に進んでほしい。

個性のコントロールだ、休養により衰えた体を鍛え直すのと現在の個性の力の把握をしてもらいたい。

そしてそれが途中で、完璧にできなくとも君は人を助けるだろう、だから現在特別なヒーロー免許を作成している。

 

その名は平行線ヒーロー証明免許、と仮にしてある。

平行線ヒーロー証明免許は別世界に置いての正式な免許の提出、個性把握の為の書類、身体検査の書類等を必要として貰っているよ。

君には前もって免許の提出、身体検査も終わってるからあとは我々が個性の把握をすればいい。

 

そういうことだから本日、雄英入試終了後の時間帯、雄英においで!

君には一度入試と同じことをする!

ここからこの世界で、君のヒーロー活動は始まるよ!

 

PS.君に会わせたい人がいる、連絡先も教えてあるからメールか電話が来たら出るようにね。

 

─────────────

朝食を取り、着替え、外に出た典花は緑谷出久も八木俊典も既にいない海岸に向かっていた。

やはり自らの目で一目は見ておきたかった、彼の最初の功績を。目指せ合格アメリカンドリームプランと名は付いているが海岸清掃は海岸清掃だ、ヒーローへの一歩の事を彼はした。

既に輝く朝日に照らされてはゴミの上で叫ぶ緑谷出久も、それを見るオールマイトの八木俊典もいない。

冬の寒い風のみが、彼女の周りを吹き抜ける。

「ゴミが少ないな。ギリッギリで私が知る以上に仕上げやがったのか!HAHAHA!すごいぞ少年!あぁ、ホントに、すごいぞ…!!」

 

典花は緩やかに座り込み、俯きながら今更なことを考える。

皆を救えば良いのか、彼らを伸ばせば良いのか、はたまた何もせずただ口を噛み締めて私は本来いない者だと思い傍観すればいいのか。

前者二つはやるなら一人でやればいいのか、皆と共にやればいいのか。多いような、少ないような、そんな選択肢を選んでいけばならない。

 

この光景を見るまでは、本当に何も考えてなかった。

 

典花にとっての過去が変わった、微弱ながらゴミが減った。恐らくあの時の緑谷出久より少しは力が付いた筈だ。

つまりだ、この先も変わる可能性がある。気付いたのでもなく、彼女はその可能性から目を背いていた。だが確信した、未来は変われると。

「私は行く末を知っている。個性じゃないとはいえ、これも一つの予知になるんじゃないか?…予知、ね。予知か…。ナイトアイ、君は、君はこんなに重いものを背負っていたのか。(あぁ、こんな時に君を思い出すなんてっ!何て最低なヒーローだ!!私は。)」

 

その歩みを一度止めても、残酷なまでに時は過ぎる。

無機質な音の電話が鳴り始めた。登録されてない電話番号だった、恐らく根津の言った会わせたい人が会いたいからかけてきたのだろう。

「…空気を読んで欲しかったな。はい、もしもし、八木です」

「…っ」

「もしもし?」

「…サー・ナイトアイです、八木典花さんの番号で合っていますか?」

「サッ!?は、はい、八木典花、です」

 

どちらも震えた声だった。彼は尊敬した人と同じだから、彼女は相棒と同じ人だったから。

互いに見えない表情であっても緊張は確かにしていた。

最初に話始めたのはサー・ナイトアイだった。

「突然お掛けしてすみません、…会いたいのですがお時間はありますか?」

「あ、あります」

「今どこにいますか」

「今、ですか?…海岸にいます」

 

典花はそういうとサー・ナイトアイはそちらに向かいますと言った、細かな場所を伝えると電話は一呼吸置いて切れた。

俯きながら座り込んでいた典花は頭も抱え始めた。器用なことに足も震えていた、まさにバイブレーションオールマイト。

「ああああああああっ!ど、どうしよう!ふ、震えるな!この足めっ!体全体に見えるだろ!!さ、さっ、サー・ナイトアイがここに来る!車か?バイクか?徒歩?タクシー?バス?待ってくれ、性別が違うかもしれ…いや、声は男だった。大丈夫じゃない、あああああああ…」

 

数分後、サー・ナイトアイの見た光景は悩んだ末に足が痺れ、そのまま海岸に倒れ混む八木典花であった。

その場を見たサー・ナイトアイは流石に驚いた、ついて早々に人が、何より探してる人が待ち合わせ場所に倒れてるのは心臓に悪い。だが話を聞くと少しくだらなかったのか呆れた。

「!?だ、大丈夫か!」

「…放っておいてくれ、足が痺れて動けないんだ。情けない…」

「寒空の中、さらに人気の無い海岸であなたは何をしてるんだ…。それはユーモアとは違うのはわかっているのか?」

「わかっているよ、けど緊張感は有り難いのか消えたな」

「有り難くない解け方だ。…ハァ、場所を移動する、すまないが抱き上げる。痺れても我慢してくれ」

「抱き上げっ!?まだ足が痺れてるんだ!うわっ!」

 

サー・ナイトアイは抱き上げたが反応からして何となくわかった、彼女の足は痺れてないと。だが抱き上げた彼女は布越しでも冷たかった、何時間ここに居たのだろうかと思った。

「足、本当は痺れてはないな?まぁ、どちらにしてもこの冬の海岸で一人、何をしてるんだ」

「何をって…海岸を見に来たんだ、この海岸を」

 

サー・ナイトアイの記憶ではこの海岸は海からの漂流物やそれに混ぜては不法投棄、ゴミだらけで新聞の記事になっていた。今はその面影はなく塵一つなかった、倒れていた彼女にも付いているのは砂だけ。

彼女は多くを語らなかったが本当にこの海岸を見に来ただけなんだろう。

「そうか、なら目的は達しただろう?」

「それは君もだろう?私に会えたんだ、降ろしてくれ」

「あなたと話をしたい」

 

サー・ナイトアイは彼女の方を見ないで、空と海の間を見て言った。彼は彼女に触れている。

次に目が合えば個性が発動するからだ。

予知、それは彼の個性。素敵にも思われるが彼にとっては良くも悪くも条件が合えば強制的に未来を見せる。

「あなたの世界の話をしたい、オールマイトとしてのあなたも、普段のあなたも、その、死に際も。私は、居なかったんだろうが」

「誰もいなかった」

「なに?」

「私が死んだのは恐らく救急車の中だ。記憶もそこで終わって、知ってる人は誰もいなかった。グラントリノが近くにいたが死んだときはその場にいなかった筈だよ」

「怖くは、なかったのか」

「気付いたら死んでいた。今考えてもわからない、怖くはないかもしれないけどただ悔しいと後から思ったよ。弟子を叱れず、グラントリノが居たのに看取られもせず、ナイトアイにも会えず、ただ一人静かに死んでいったのを。あ、私ね、心電図の音を聞いて死ん」

 

サー・ナイトアイは最後まで話を聞かずに歩き始めた。彼女はこのような経験が無い、暴れようかと思ったがサー・ナイトアイより彼女は強い。

怪我はさせたくはない為、暴れず固まった。

「ど、どこに行くんだ?」

「今日は車で来た、車だ。それよりもだ、悔しいとはなんだ」

「今言ったじゃないか。弟子を叱れず、グラントリノに看取られもせず」

「そうじゃないだろう!」

 

サー・ナイトアイは車の前まで来て、八木典花を降ろすと車のドアを開け、無理矢理助手席に座らせた。

そして助手席に彼女の肩を強く押し付けると目を合わせた。

「いっ!痛いだろっ!」

「あなたが、オールマイトがこうならどこのオールマイトもこうなんだろうな。まるで死に急ぐような生き方だな、ヒーロー」

「ナイトアイ…」

「周りの事を考えたことがあるのか?ただの一般人ならオールマイトが怪我をしてもオールマイトだから大丈夫だ、オールマイト頑張れと思うだろう。だがあなたの近くの人は違う!もう止めてくれと、もう止めてくれと!怪我をしてでも救わないでくれと!そう思うのを知らないのか!!!キミは!オールマイトはっ!いや、あなたという存在は一人しかいないんだ!!替えはないんだぞ!?」

 

彼女は目を見開きながら、場違いなことを思った。

「(君は、そうやって泣くのか、ナイトアイ)」

 

顔にポタリ、ポタリと落ちる涙を見ながら彼女は彼の顔に手を伸ばす、決して目を反らさずに、その瞳と瞳が合わさるように。

海岸に来て、過去が変わった。緑谷出久が成長したということ。

サー・ナイトアイの事を少し、わかった気がした。予知ではないが未来を知っているからこそ避けたいこと、したいこと。

そして彼を目の前にしていい加減決めないといけないこと。

「悔しいと思ったじゃすまないんだ!死とは恐ろしい事を知ってくれ!私は!あなたのファンであるからこそ!言い表せない程の凄惨な死を回避したいんだ!」

 

「それは俊典に言ってくれよ、ナイトアイ」

 

「何を言っている!オールマイト!」

「頼む、落ち着いてくれよ」

「落ち着いている!重ねてるから言ってるんじゃない!八木典花だから言っているんだ!」

「重ねてなかったのか?」

「重ねてなんて言うものか!私はオールマイトを敬服している、それは性別が違えてもだ!存在が同じだからと言ってただ重ねてるなんて、それは侮辱だ!だからと言って同じだとは私は思ってなかった。だがあなたの目は同じだ!死んでも何一つ変わっちゃいない!」

 

そういうとゆるりとサー・ナイトアイの手は肩から顔に向かう、彼の手は目の方に向かい、まぶたを下ろさせないようにした。

その顔は怒りに満ち、いや、完全にキレていた。

「い、いやまて、まてまて!見る気か!?いやいや流石に一度死んだんだ!少しは私だって変わったぞ!?」

「それは上っ面だろう?私は腹を括ることにした。根本的に変えてやる、まずは貴女からだ。その前になんとしてもあなたの次なる死も防いでやる、こうなったらやけだ!したくはなかったが見るしかない!」

 

彼の目が文字通り変わった。個性を使うと彼の目の色彩は反転し、白は黒に、そして模様が浮かび、彼の頭に軽い負荷がかかる。

だが彼の脳内には何も未来のビジョンは浮かばなかった。

見えたのは壊れたフィルムのように、黒、黒、黒、黒、黒、黒、黒、黒、黒、黒、黒、黒。

ずっと真っ黒で、ずっと真っ暗だった。澄み渡る墨のよう。

もう一度見ようと再度意識を向ける、次に見えたのはやはり黒、漆黒だった。

「何故…」

「もしかして見えなかった?」

「…見えなかった。一度死んだ人間を見るのは初めてだった。だが、これはあまりにも黒い」

 

そういうとだらりとサー・ナイトアイは腕を下げ、顔を俯いた。彼の瞳はまだ、涙が流れている。

ただの黒いフィルムを見た彼は、その先にまるで希望がないようだと思った。生きる道もなく、いつ死んでも可笑しくはないようだと。

「…大丈夫!これから見えるようになる!」

「何故そう言える」

「私も腹を括ったんだ。君達を元の世界の人達と重ねないし、未来を変えたい、作りたい。リカバリーガールとも約束したからね、それに見てみたいんだ!八木俊典も八木典花も生きていける未来を!そしてサー・ナイトアイ、どうか私と未来を変える手伝いをしてほしい」

 

手を伸ばし、彼に言う。一人より二人だろ?と。

変わったことの無い未来だった。

過程が変わろうとも結果が変わらないことを強く教えてくる個性、それに未来。そこに、強い意思が加わったらどうなるんだろうか?

自分一人より二人、そこに未来を変えたい意思が集ったら。

彼は根津の言葉を思い出す。

『きっと君のためになる』

『会うだけじゃ収まらないかもしれない』

 

確かに、会うだけじゃ収まらないかったし、彼のためになった。

そんな彼は昔、オールマイトに言ったことがある。

『前例が今までなかっただけだ!!未来など私が変えてやる。このままじゃ“予知通り”になるんだよ!!それは駄目なんだ!!!』

 

オールマイトという存在に、サー・ナイトアイの声は届いたかは今でもわからない。

『私はあなたの為になりたくてここにいるんだオールマイト!!』

 

サー・ナイトアイはまだ、彼から離れても足掻こうとしていた。

今なら、前例が作れるかもしれない。あのオールマイトと同じ立ち位置の八木典花と共に!

サー・ナイトアイは手を握り、深呼吸をした。

「よろしく、頼む」

「っ!あぁ、よろしく!改めて私は八木典花!ヒーロー名はオールマイト!君は?」

 

始まりの日のような感覚を覚えた。

彼は泣いたり、怒ったり、笑ったりと忙しい午前だと思った。

ふわりと、笑いながら彼は名乗る。

「ナイトアイ、サー・ナイトアイだ。初めまして、オールマイト」

 

 

 

────────────────

 

 

小休止のお話。

 

ところで時間はかなり経ち昼時となっていた。典花はここでお昼を食べなければ、腹を空かしそのまま雄英に向かうこととなる。

サー・ナイトアイは自らも車に乗り込む時、午後の話を聞き、雄英に行くというのを聞いて昼飯に悩んでいた。

出来れば暖かいものがいい、彼女の体は冷えきっている。

「八木さん、麺類でいいか?」

「な、なんだよ八木さんって、随分他人行儀だね」

「オールマイトは彼の名だろう?そうおいそれと呼べはしない。それにあなたはヒーロー活動時に名前が被るから改名する必要がある、今から考えておくといい」

「考えてなかった…」

「何を今さら。この先も不確定だ、私たちの関係ややるべきこと、それはもちろんお昼やお互いの呼び名もだ」

「典花でいいよ、ナイトアイ。八木は被るしオールマイトは彼のなんだろう?まさかヒーロー名をこの歳からまた考えるなんて思いもしなかった」

「(呼び方が意外と普通だ)とりあえず蕎麦屋に行こう、それを食べたら雄英だ。雄英の件が終わったら今後についてゆっくり話そう、典花さん」

「うんうん!距離が近い!物理的に!主に車体感覚が!」

 

実は彼、 規定速度なのに飛ばしてるような感覚を覚えさせる運転をする。これは後に改善するのだがその理由は運転慣れしてないからだった。

「あぁ、すまない。慣れてないんだ、免許はあっても運転することは少なくて。この車もこの前買ったばかりで」

「新車で事故る気か!?」

「今度はバイクで来よう、事務所に置いてあるんだ」

「意外とお金使うね!?」

 

さらにニコニコとしながら最近引っ越したという、その理由は雄英での試験後わかるのだがそれは後での話。

そしてナイトアイは天ぷら蕎麦、典花はネギと天かすのぶっかけうどんを食べて午後に望む。

果たしてそれで足りるのかと思うのはナイトアイだけではない。

 




雄英に辿り着かないなと書いて思いましたがやっと雄英行けそうですよ!

それと個人的なイメージと欲ですけどナイトアイにはバイクはNinjaに、車は(今調べながら)カマロssとかGT-R、シビックタイプRとかの4人乗りスポーツカーに乗って欲しいです。
まぁ、運転描写などなんて今後原作に出ないから…、彼のイメージや趣味に合うような車やバイクを考えるしかないんですけどね。
食事や感情もなんですけどね!
そんななのに彼が感情的になる描写は少ないし、緑谷出久の前だと顔隠してたりとかなり隠してるからあまり見れないので…

表現力的に恐らくここからが私的に本番ですね、USJが迫ってるので!

ここまで月日掛けて書いときながら実はまだ【八木典花にどの道を歩ませる】かをまだ決めてないので参考にさせてください。

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