地に落ちた英雄は諦めない   作:風見 桃李

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原作ヒーロー達との邂逅、プロジェクト神野始動、そしてサー・ナイトアイとオールマイト。
題名候補として『夜には千の瞳、昼には一つ』と考えてましたけど書いてて違う気がしたので除外に。
いつかその題名を使って書いてみたいですね。



No.7 彼女はヒーロー、オールマイト。

場所はモニタールーム、一人を除いて元気に明るく挨拶をしていた。皆はその人の怪我故に、様々な目でその人を見ていた。

特にベストジーニストは、とても強烈な印象を覚えた。

オールマイトが冬の真っ直ぐとした太陽なら、目の前のオールマイトはギラギラとした夏の太陽のような笑顔だと思った。あと画風的なことも関係があるのか?とベストジーニストはその人を目の前にして思う。

「HAHAHA!初めてだな、私はオールマイト!こことは少し違う世界、そしてその少し先の未来から来たヒーローだ!」

「リカバリーガール!早く彼女の怪我を治してくれ!」

「挨拶なんて後でですよ、オールマイト…さん?治して貰ってください」

「おいおい!二人して背中を押さないでくれ!転んでしまうだろう?」

 

個性使用時に耐えきれなかったヒーロースーツと体はボロボロ、片腕は変色し血を滴らせ、もう片方の腕は変色はしてないものの何故か切り傷があり、少し血を流していた。

動かせないのか挨拶はしているものの腕は動かしていない、背をされてる時も腕はぶらぶらとしていた。足からも攻撃などをしていたのか、足の方もヒーロースーツなどはボロボロであった。

 

そのような状態で、彼女は平然と笑っていた。

 

オールマイト、その世界のオールマイトはもしかしたら自分もそうなのか?、と思うと自分のあり方を少し考えていかないと、そう思った。

リカバリーガールは平行世界のオールマイトに近付くと、やれやれとした面持ちで怪我の具合を見ながら個性を使い傷を治していく。

「典花、随分と無茶をしたね」

「としっ、オールマイト!だがお陰様で、今の私が何処まで力を使えるかわかったよ!およそ半分以下かな。出力で言うと50%まで、100%を越えたり、使うと見ての通りボロボロさ」

「まさか今回のギミックを実験台にしたのかい?」

 

根津が聞くと八木典花は頷いた、力が戻っていた訳では無かった。そしてその怪我の仕方、根津は心当たりがあったが今言うと混乱が生じる可能性があると思い、それは心に秘め、言うべきことを優先し、皆に言う。

「そうか、実験台にね。うん、まずはお疲れ様、君の力、個性はオールマイトと同じだと証明された。個性届けとヒーロー免許のはこちらから出しておくよ、ヒーロー免許が届けば君は無事、ここでもヒーローなのさ。君達、この世界のヒーローにとっては特殊な立ち位置のヒーローとなるだろう、そして平行世界より出現せし君にとっては零からのスタートさ。相澤君の言葉を借りれば正に地に落ちた英雄、物理的にも地位も何もかも、零からの始まり、どうか諦めないで欲しいのさ」

「えぇ、諦めませんとも。私はやるべきことがあります」

「やるべきこととは?」

 

ベストジーニストが聞くと彼女は胸を張って言う。根津の存在は杞憂に済んだのだ。

だが途中で自信がなくなったのか、声は少しずつ小さくなる。

「未来を最善の道に変え、オールマイトを、彼を生かし、私も生きる、かな!!まっ、今の所はね。だけど、私一人では限界がある、一度死、いや限界を知るとその先に行くのは難しくてね。“初対面”の、その、何も知らない君達にいきなり言うことではないんだが…」

 

音もなくスッと、突然手を上げるホークス。

言うことは一つしかない。

「オールマイトさん、手伝いますよ。初対面だからなんですか、大事なことなんですからグイグイ来てくださいよ。それと自己紹介も、俺はホークスです、これで気兼ねなく言えますよね?」

「俺は沈ませ屋のファットガムや、これで俺も手伝えるやろ?それにあっちのオールマイトが来る程なんや、かなりヤバイやろ。あとほら、飴ちゃんや。無茶しすぎやで」

「あ、飴…はは、難しく考えていた私が馬鹿みたいだ。ありがとう、ホークスにファットガム」

「世界は違えぞ、私はヒーローをしていたと信じる。こちらで初対面だろうと遠慮なく言って欲しい。依然変わりなく、私はベストジーニストだ、どうか頼って欲しい」

 

「君は誰だ!」

 

「「え?」」

「おじいさん、またですか?」

 

ファットガムとベストジーニストが目が点になる中、ホークスはしゃがみこみ話しかける。何故突然とオールマイトの八木俊典も思う、むしろオールマイトの八木典花以外は思っている。

彼女はグラントリノの前まで行きしゃがみこむ、大きくも小さくもない声で真っ直ぐグラントリノを見ながら名乗る。

「私はオールマイトと言います。グラントリノ、どうか力を貸して欲しい」

 

「嫌だ」

 

「えぇぇぇええ!?な、何故ですか!?グラントリノ!」

「煩いぞ俊典!典花って言ったか?怪我治して、体鍛えて、万全になってからそんなことは言え!いきなりバカスカと力を使う奴があるか!」

「あー、確かにそれは正論やな(オールマイトの名前ふっつー!)」

「出来れば服も万全にしたいところですね(オールマイトさんは、まさかの日本人だったのか)」

「治療の続きしてくださいよ、オールマイトさん(二人とも日本人なんすか、ん?典花?)」

 

今回は名前をしっかり聞かれたがホークスは疑問をもった。俊典に典花、つまりそういうことである。

「典花?えっ、あの力で女性!?」

「良い所だから説明に入ろうか!典花くん、マッスルフォームを解いて欲しいのさ」

「根津校長、それはよろしいのですか?それは、つまり…」

 

チラッと俊典の方を見る典花、どちらもオールマイト、つまりはこの仕組みがバレてしまう。

この世界でのオールマイトは現役だ、バラすのは早すぎるのではなかろうか。小声で根津は典花に向けて話す。

「大丈夫なのさ、仕組みがバレたとしても正体を隠せば良いのさ。それに、彼等はむやみやたらと言わない筈なのさ」

「うぅむ、そういうことなら…あ、その前にリカバリーガール!私の怪我はどのくらい治せましたか?」

「複雑骨折、骨にヒビ、至る所切り傷さね。そんなこんな怪我は一日じゃ治らないよ!明日また来るんだね」

「わ、わかりました。お手数掛けます」

「もう良いかい?八木典花くん」

 

根津校長がそう言うと彼女の体からは煙が出た。膨れ上がった筋肉は細くなり、高くピンと立っていた前髪もしなりと垂れ下がる。

見た目の効果はスゴいもので、身長も小さく見える。

ホークスは案外身長が近いことに驚き、グラントリノは本当に女性だったことに悲しみを覚え、ベストジーニストは少し綺麗目の普通の女性じゃないかと思った。だがマッスルフォームを解いても一般女性に比べたら肉付きはよく、何よりあのような怪我を負ってでも笑う、見れば見るほど二面性があるように思える。

「改めて、ヒーロー名オールマイト、名前は八木典花です」

「彼女にはまず、未来のことを教えてもらうのさ。良いかな?」

 

それを皮切りに、長い話は始まった。彼女は雄英を中心に話始める。物事は雄英高校を中心に起きていたからだ。

最初はUSJ、嘘の災害や事故ルームから。ヴィラン連合という組織があり、その時初めて遭遇し、襲撃され、教師二名が怪我を負ったこと。

次に林間学校、また襲撃されたこと、とある少年が拐われたこと、プロヒーローが怪我を負い、拐われたこと。

そしてその流れで決戦になったこと、神奈川の神野区で都市伝説になっている者と戦ったこと、そこにヒーローの卵たちがとある少年を救いに来たこと、ヒーロー達が怪我負ったこと、市民に死傷者などを恐らく出したこと。

最後に、オールマイトは死んだこと。

 

「すまなかった、私の力が衰えてなければ、君も怪我はしなかった…ベストジーニスト」

「あなたが謝るべきことではない。私は脳無というモノの抑えを任されていたのだろう?そこに大元がいて、私が対処出来なかったという話だ。それに、まだ私は怪我をしていない。悔やまないでくれ」

「にしても神奈川か、俺は関西、ホークスくんも九州や。近場はベストジーニストとグラントリノさん、緊急に手を打つべきは二人やな。怪我をするとわかっとるんやからな」

「今は事前に、そのようなことが起こる可能性があるとわかったから良いですけど、林間学校からその間の神野区までのスパンが短ければ俺は助けに行けませんね。何よりこれを知ったこと、八木典花さんがいると言うことでの未来への誤差が気になります」

「バタフライ効果、か。合理的じゃない、考えた所で終着点の見つからないやつだろ?」

「カオス理論のことだね、それは仕方無いと思うのさ。それに、賽はもう投げられた、考えた所で彼女の知る未来は既にズレ始めているよ。本来ならば君達はここに呼ばれていない筈、それは八木典花の件がなければ私は君達を呼んでいない。呼ぶ理由がないからね」

 

ブラジルでの蝶のはばたきは、テキサスでトルネードを引き起こすか。

それがバタフライ効果の考えの始まりだ。

ここでの蝶は平行世界のオールマイトの八木典花。根津の言う通り、賽は投げられている。

彼もまた、賽を投げた一人。

「まずは雄英だ、警備を今上げた所で無意味だ。ここではまだ接触をしていなく、情報が皆無だ。生徒を守りつつ、ヴィラン連合の接触をした方がいい。私の怪我は…この際、未来に委ねてくれ」

「おいおいベストジーニスト!本気かいな!」

「どうなろうと私は必ず、復帰をし、ベストジーニストとして活動をする。私を必要としてくれる、声があれば」

「ベストジーニスト、私は君も守るよ」

「あなたはあなたのすべきことをしてほしい、八木典花さん。それに君は、本来ならば守られる側だ。来てどのくらい経っているかは知らないが、背負いすぎている。私のことは、私に守らしてほしい」

 

そう言うとベストジーニストは八木典花の手を優しく取り、目を見て言う。

一度死ぬと、(人によるが)他の死に敏感になる、自分の死には疎かになる。それが未来を知っていれば、尚更だ。

「大丈夫だ、私は死なない。安心してあなたの成すべきことをしてほしい」

 

典花は眉間にシワを寄せる、その触り方や言い方に彼女は心当たりがあった、そこに少し不快感を覚えた。

オールマイトを独りでし、性別を偽り、長年してきたからこそ不快感を覚えたのだ。

「私はヒーローだ、守るべきものは多い。それでいて、やるべきことはやるさ。それにベストジーニスト、私を女性扱いしないでくれ、すまないが…不快だ」

「なら自覚してほしいのさ!」

「根津校長?何をですか?」

「君が女性ということをさ。うん、やっぱりヒーロー名オールマイトは一人が良い、君はオールマイトだけど、もうオールマイトじゃないのさ。だから、もし良かったらこの紙の中からヒーロー名を決めてほしい。それとベストジーニスト、君はもっと技や体を鍛えた方が良いのかもしれないのさ。怪我の原因が庇うことだったら、それはどうしようも無いのかもしれないけどね」

「わかってます、しかしそれよりもサポートアイテムも気になりますね。恐らく私は万全でいても殺られている、だからサポートアイテムが気になる、と言っても私の場合布か糸になりそうですが…」

「そうだ、みんな聞いてほしいのさ!この集まり、活動名はプロジェクト神野と言うことにする。それとこれは皆が今後のやることなのさ」

 

根津は紙に書きながら喋り出す、その個性ハイスペックで簡潔に今後必要なことを書き出しているのだ。紙にはこう書いてある。

プロジェクト神野、指針 生存、命を大事に。

一つ、神野区選抜メンバー底上げ。

一つ、雄英生徒保護、ただし生徒の傾向確認してから。

一つ、オールマイトの意識改革。

 

根津は思う、難易度順は明らかに逆から難しいと。二人のオールマイトが難関だと思っている。

だから些細なことから始めなければいけない。

「オールマイトの典花くん、君は女性だからこれからそういう服装を周一からでも良いからしてほしいのさ。あ、性別はホントに女性でいいんだよね?」

「いや女性ですよ!?合ってます!偽っていただけですからね!」

「じゃあ、サー・ナイトアイ、これから彼女をよろしくなのさ。あとオールマイトの君は命を大事になのさ」

「わかってます!根津校長、彼女がこれから住む場所は彼の家だったのですか!?」

「適任なのさ。君にも、彼女にも、彼にも」

「…あー、すんません、とりあえず手掛かりなどが無い中、今やるべきこと、未来でやるべきことは決まったんやな?」

 

ファットガムが手を上げ、そういうと根津は大雑把なことはねと言う。ホントに大雑把なのだ、仕方無い、今日が雄英受験日、合格不合格、そしてクラス決めなどはこれから。

雄英教師でこの集まりを知っているのは根津に相澤、そして山田と修善寺の四人。恐らく変に意識をしてクラス決めにはならないだろうと思う。

プロジェクトの一つ、雄英生徒保護はそれが決まってからでないと何も出来ない。それは神野区当日までに響くことだが仕方無い。

選抜メンバー底上げは各自やるとなる可能性が高い、そしてオールマイト意識改革はこれからなのだ。

そうなると、もうやるべきことは今はない。

「とりあえず連絡先を全員交換しといた方がええと思うんですよ、根津さん」

「そうだね!じゃあ、今回は交換次第、各自解散なのさ!」

 

そういうと皆は動き始め、名刺や連絡先の交換をし始めた。俊典はナイトアイに近寄り、何か渡したのを典花は見た、その典花は相澤の方に行くと後で渡すものがあると言ってすぐに俊典のもとに向かう。向かう時にはナイトアイは別の所に居た。

「オールマイト、急になんか、よくわからないが私は彼のもとで暮らすのか?」

「そうだね、うん、そうだよ」

「随分急だな…俊典、大丈夫か?一人になってしまうが」

「HAHAHA!私は子供じゃないんだぞ?」

「そうだけど、一人になる寂しさはわかるから。私は君とほぼ同じ体験をしている、気持ちはわかるからな」

「参ったな。…そう言われると寂しいよ、二人で過ごすのは楽しかったし、姉がいるような、妹がいるような感じでね、暖かかった」

「あとで強く抱き締めてあげるよ」

「君はホント格好いいね、けど、これからは私が君を抱き締めてあげるよ。そして君は可愛くなるべきだ!」

「HAHAHA!オールマイトの君には負けるさ!」

 

「「HAHAHA!」」

 

遠目から見てた彼らは少し心がほっこりしていた。オールマイトが一番好き、と言うわけでもない彼等だが(一部除く)、ちらりと聞こえた会話や雰囲気で離ればなれになるのが寂しいと言うのが伝わった。

そして最後の笑い声、丸く収まったのがわかる。

「オールマイトの世界や」

「笑う時の印象は違うような気が、なんというか姉弟みたいだ」

「別にオールマイトが好きって訳じゃないですけど、ああいう笑える時間、良いですよね」

「ヒーローが笑いあう時間、まさに平和な時間だなぁ」

「お前にしては良いこと言うな、マイク」

 

斯くして各ヒーローは解散し、雄英教師のヒーローとサー・ナイトアイ、二人のオールマイトは雄英高校に残った。

八木典花がナイトアイの車に物を取り入っている間、ナイトアイは仮眠室で八木俊典と二人っきりで部屋に居た。

恐らく明日からは忙しくなる、ゆっくり話せるのは今ぐらいだろう。だと言うのに二人は俯いている、正面にいて顔は合わせてない。

ちなみにこれは根津校長の配慮で二人っきりである。

「(まさかこんなところで彼と二人っきりとは、気不味いな。私から喋るわけにはいかないし、喋るとしても何を喋れば良いか…)」

「オールマイト」

「っ!な、なんだい?」

「彼女の、八木典花の死際は話に聞きましたか?」

「え、あ、あぁ、根津校長からは聞いたよ」

「本人からは?彼女から聞いてないのですか?」

「タイミングを逃してね、私は聞いてないんだ(恐らく自己紹介の時に言ったんだろうけど、私は寝てたなんて…言えないよね!それにあんなに笑って生活してたんだ、聞けもしないよね…)」

 

ナイトアイは少し顔上げた、ホントはしっかり顔を上げたい。だがオールマイトが上げるまでは見てはいけない、ナイトアイはそんな気がした。

「あなたは一度聞くべきだ、オールマイト。その死の原因が重要というよりも、彼女の為に」

「何度も死ぬ時の話を言わせる方が不味いんじゃないのかい?トラウマモノだろう?取り乱したりしてはないが根深い物の筈だよ、ナイトアイ」

「だからこそです、本当の意味で彼女を救うことができるのはこの世界で貴方にしかできない。同じ立ち位置で、近い経験をしている、オールマイトの貴方にしか!」

「いや、多分だけど、君にも救うことはできるよ。写真、知ってるよね?」

「あれは私ではない、あれはサー・ナイトアイであっても私、サー・ナイトアイではない。まさか同一視しているのですか?」

「してないさ。彼女は私にない強さがある、私がしたこと無い体験もしている。それはサー・ナイトアイ、平行世界の彼が関わっている、だから同じ立ち位置の君にも救うことができると、私はそう思ったんだ」

「平行世界のサー・ナイトアイが?」

「例えば、私は君をサイドキックをしていたけれど、肩を組む事はなかったし、その写真は無い。

けど彼女は肩を組んだし、その写真をずっと持ち歩いていた。それに典花は言ってたんだ、“最高のファンで、最初で最後の最高のサイドキックだったよ”って。彼女の中ではもう、死の予知と君のことが消化出来ている。それは死ぬ前からだったのか、死んでからなのかはわからないけどね」

 

ナイトアイはそう聞くと少し、平行世界の彼が羨ましくなった。

彼はオールマイトとの距離が自分より近いと、確実にわかるからだ。そして今、こちらのナイトアイとオールマイトの距離は物理的には近いのに、精神的には遠い。手を伸ばしても届かない。

ちらりとオールマイトを見て、息をしっかり吸ったナイトアイはハッキリとした声で喋る。

「きっとあなたのことです、気まずくて私に会えないんでしょう」

「え、あの、それは…」

「機会が出来たんです、恐らく本来無かった機会が。未来は変われる」

 

確信を告げるようなしっかりとした声にオールマイトは顔を上げる。少し上げた顔からオールマイトが顔を上げたのがわかった、ナイトアイは顔を上げて、彼の目を見る。しっかりと、今度こそ、この声が届くように。

「ナイトアイ…」

「私は、諦めません。あなたの死も、彼女の死も」

「…うん」

「今度こそ、着いていきます。手を振り払われても、置いていかれても、走っていきます」

「うん」

「絶対、絶対に二人とも死なせません」

「君も、ナイトアイも死なないでね」

「っ!…えぇ、何がなんでも生きます」

「うん」

「諦めません」

「わかったよ」

「諦めませんから」

 

このやり取りは八木典花が来るまで行われた。

場所は変わり職員室、そこには荷物を手に持つ八木典花と椅子に座るプレゼント・マイク、イレイザーヘッドがいた。

「相澤くん、服ありがとう!マイクくんも借りっぱなしでごめんね!ほらほら、服パクったんだから謝って」

「NO!謝らなくて良いぜ!なんならあげちゃうぜ?その上着、俺にしちゃ落ち着いてるし、まだ三回しか着てないから、ほら羽織ってみ?」

 

マイクは上着を典花にかけるとニカリと笑う。

マイクの思った通りだったようだ。

「可愛いぜ」

「え?あー、ありがとう?」

「あぁ、けど綺麗系かも!」

「はぁ…返す物返したんですから仮眠室に向かったらどうです?」

「お前どんだけ帰したいんだよ!」

「マイク、これからクラス分けのために合格者の紙全員分見るんだぞ?」

「あ、居た居た!八木典花くん見付けたのさ!」

 

職員室のドアには根津校長が立っていた。

根津は紙を持って、手を振る。

「戸籍の話さ、君、先週からオールマイトの血縁者なのさ」

「先週から!?」

「いとこだったかな、姉だったかなんだったかあまり気にしてないから覚えてないのさ」

「校長、その紙は?」

「プロジェクト神野の紙さ」

「校長扱いざっつー!」

「戸籍関連の紙じゃないのかっ!」

「それだけだよ、また何かあったらメールを送るのさ」

 

そう言うと根津は職員室を離れていった。

典花は結局マイクから上着を貰うこととなり、仮眠室に向かうと何だか疲れた顔の八木俊典と真剣な顔をしたサー・ナイトアイがいた。

「二人ともなにしてるんだい?」

「典花さん、渡すもの渡せましたか?」

「渡せたけど、君ら何してたんだい?」

「ナイトアイに絶対死なせませんを連呼されてたんだよ…」

「違います、諦めませんと言ったんですよ」

「同じじゃないか…!」

 

気付いているのか、気付いてないのか。

二人の距離は確実に近付いていた、(どのような経緯でそうなったかは彼女はよくわかってないけど)くだらない言い争いをしている程に。(ナイトアイがぐいぐい行っていて少し一方的だけど)

「仲睦まじいこと、美しき関係かな。ほらほら、二人とも帰るよ。俊典は明日も仕事だろう?この時期だと雄英の仕事も増えてきてた筈だから早く帰らないとな」

「うっ、雄英のは明後日ぐらいからだよ。合否通知の撮影が基本だし、明日は塚内くんの所」

「ならコンディションばっちりにしなきゃな、へまは出来ないぞ」

「そうだね、あっ!典花、来てきて!」

「なんだ?」

 

典花は俊典の方に行くと俊典は典花をぎゅっと抱き締めた。

少し前に言っていたことをしただけ。

「これからは私が君を抱きしめてあげるよ、言ったよね?」

「…HAHAHA!!あぁ、確かにな!あ、そうだ、ナイトアイ、君もおいで」

「無理です、そんな尊い空間に私は入れない」

「今しかないぞ?この空間」

「そ、それは」

 

ナイトアイが少し躊躇った瞬間、典花は俊典の方を見て笑う、俊典は苦笑いしながら頷く。

二人はナイトアイの方に手を伸ばして抱き締めた。ナイトアイは手で顔を隠し、その手で隠した顔は真っ赤で重度のオールマイトオタクを拗らせていた。

「ナイトアイの好きなオールマイトだ!」

「うっ、尊い…」

「な、ナイトアイ!?」

「言ったろ俊典、どんなに酷くしたってオールマイトの動画は見るし、金はオールマイトグッズに貢ぐ男って」

「トゥルー、トゥルーフォームは文字通り幸せだった。我が人生一片の悔いもなし。流石です、オールマイト。オールマイト流石です、流石ですオールマイト」

「何で同じようなこと三回も言ったの!?」

「そう言うものだって前に誰か言ってたなぁ、確か大切なことなので三回言いましたって」

「えぇ、大切かなぁ」

「HAHAHA!きっと大切なんだから三回言うんだよ!」

 

この時が少しでも続けば良いのにと、ナイトアイは思った。

典花は笑い、俊典は首を傾げ、ナイトアイは耳まで赤くしてその日は解散となった。

「(そういえば二人とも良いにおいだった、あとでシャンプーとか聞いてみよう)」

 

その夜、一悶着がやはり(彼の中で)起きた、が潔くナイトアイは折れた。しかし折れたが為に彼は眠れない夜を過ごす。

「わ、私と同じベッド?」

「今日だけだから、ね?」

「…今日だけなら」

 

「(明日はオールマイトに電話かメールで聞くべき事が沢山あるな、そして服などは車で来ていたのだから持ってくるべきだった。別れ際に宅配便にして送るよと、オールマイト!あの人知っていたな!?あぁ、寝言にヒーロー名を言わないでくれ!それに私の服で寝ているのをわかってくれ!)」

 

サー・ナイトアイが無事に寝れたかは別の話。

「(平行世界の私は何をしていた…!)」




誤字脱字がありましたらお知らせください。
更新などは活動報告にそこそこ書いてます。

ここまで月日掛けて書いときながら実はまだ【八木典花にどの道を歩ませる】かをまだ決めてないので参考にさせてください。

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