今回はナイトアイ事務所でわちゃわちゃしてます。
雄英受験の次の日、ナイトアイ宅は朝を迎えた。
もちろん、そこに住んでいるナイトアイと八木典花も朝を迎えた。
チリリリ、チリリリと寝室にアラームが鳴る、朝の6時ジャスト。ナイトアイはよく寝れたのだろうか、未だにまぶたが重く開かずに、意識だけ浮上する。
「うぅん…(あったかい、それになんのにおいだろう。このましく、何だか柔らか、久しぶりによく寝れた気がする)」
意識だけではなく、ようやく瞳を開けるとナイトアイは昨夜を思い出した。八木典花と同じベットで寝ていたということを。
八木典花は腕を伸ばし、ナイトアイの頭を乗せ、空いた腕はナイトアイを抱き締めていた。その彼は彼女を背にして寝ていた。
「…何だか寝慣れている、誰と寝ていたんだ」
やんわりと腕を退かし、ベットの端に座るとギシリとベットが悲鳴をあげる。
寝ていれば普通の女性だ。金糸のようにキラキラ輝く髪、今は閉じているがキラキラと輝く碧眼。
そう、キラキラと輝く、オールマイトのように。
輝きで見えない、影、弱い部分、傷。
「私も、弱味だったのだろうか?」
そう言いながら典花の髪をさらりと撫で、顔を壊れ物かのように撫でる。ナイトアイは寝る前に準備をしていた着替えを取り、部屋を出た。
時間はさっと過ぎ、6時半になる。朝食の準備をし終えたナイトアイは寝室に戻る。
「そろそろ起きても可笑しくないんだが、疲れているのか?典花さん、入りますよ」
ノックをしても返事はない、寝室に入るとまだ彼女はベッドで寝ていた。顔を覗くとどうやらぐっすりと寝ているようだ。
どうやって起こそうか?と考えつつ、平行世界のサー・ナイトアイならどう起こすかと思う。だが“サー・ナイトアイ”とサー・ナイトアイは似て非なる人。
少し間を置き、オールマイトを起こすならこれが一番だろうか、ナイトアイは思った。ただし早朝なので声のボリュームは低めで。
「オールマイトっ!ヴィランだ!」
「どこ!?」
「おはようございます、今度起きなかったらグラントリノにしておきますね」
「嘘かよ、心臓に悪いぞ!ナイトアイ!」
「今度からユーモアある起こし方を考えておきます。それより朝だ、朝食は出来てあるから冷める前に早めに食べてほしい。今日の予定は午前中は私のナイトアイ事務所に君にも来てもらう、今している仕事の進展などが気になる。午後は雄英でリカバリーガールに残りの治療を受けてもらう。時間があったらオールマイトに連絡をして、あなたの荷物を受け取ろう」
「なんか、ハードなスケジュールだな」
「だから朝食を早めに食べてほしいと言っているんだ、支度が済んだら言ってほしい。遅くても8時には家を出る」
そこからはドタバタと不馴れで忙しかった。服は昨日のを着て、髪を手櫛で解かし、朝食を取る。
本日の朝食はこんがり焼けた食パン二枚(マーガリン、ジャムはお好みで)、ほうれん草とベーコンのソテー、目玉焼き(かける物はお好みで)、飲み物について聞くと好きにしてくれ、と言われたので牛乳を。
美味しかったので2杯目の牛乳を飲みながら、テレビを付け、ニュースを見ると、チャンネルを沢山変えた、彼女の知らないニュースばかりだった。
「そういえば、俊典の家では本ばかり読んでたな。…改めて世界が違うな、ニュースキャスターも違う」
「オールマイトの家にテレビはないのか?」
「あるけど見ないね、暇な日は本を読んで日がな一日を過ごしていたよ。見る時は映画鑑賞ぐらいかな」
「そんな生活をしているとは、それが知られざるオールマイトの生活か。もっと、いや、詳しく聞くのは後でだ。早く飲んで、顔を洗ってほしい」
「あぁ、了解、ナイトアイ」
バタバタしてると時間はどんどん過ぎていく、ナイトアイが靴を履き終わる頃に八時前になっていた。
少し玄関前の鏡でネクタイの擦れを直していると典花がやって来た、元より荷物は少ないので手ぶらだ。
ナイトアイはじっと典花を見て思う、着ているものが男っぽい、ボーイッシュではなく男っぽい。
「髪型と服の一部からか、それとも周りの態度からか、または本人が鈍いか」
「ナイトアイ、準備出来たぜ」
「(いや、全部が原因か、少しずつ改善していこう)あぁ、行こうか」
前回八木俊典の車に乗った典花は気を張っていた、彼の運転はなんだか怖かった。ナイトアイの運転は運転し慣れていた。
運転は滑らか、落ち着いていて車内は良いにおい、そして車内の小物はオールマイトだった。
人を乗せ慣れているのか、運転しながら今度服を買いに行こうといい始めたり、あちらのナイトアイの職場には行ったことあるのかと言ったりよく喋る。
そして数十分後、事務所の近くに車を止め、歩いて数分しない内に彼のナイトアイ事務所に到着をした。
事務所に入ると出勤した人達が挨拶をする、挨拶の声は大きくはっきりしていた。二人はナイトアイの執務室に入った、そこに一人、大きく元気にハッキリとした声で挨拶をしてきた女性のヒーローがいる、彼のサイドキックだろう。
「おはようございます!サー!今日もまた地味っじゃないっ!今日は珍しく地味じゃない!!!オシャレスーツじゃないですか!?イタリア系のスーツ!コスチュームじゃなくて、まさかの普通にマジ私服!!?」
「おはよう、バブルガール。ノックを忘れているな、気を付けてくれ。それより例の件、進展は?」
「駄目でした!ここ最近で一番の進展無し!」
「そうか、進展無しか。センチピーダーは?」
「そろそろ出勤の筈です!サー、そこの綺麗な人は?(もしかしてデート!デートですか!)」
「後で話す、先にバブルガール、昨日の書類を。午前中しか私はいないからな」
「また秘密の仕事ですか!」
「極秘だ、そこは声が大きくなくていい」
「じゃあデートってことにしときますね!もう水臭いですね!ご結婚はいつですか?サー、ちゃんと呼んでくださいね!」
「は?」
バブルガールは勘違いを超加速させ、ナイトアイはどう言うことなんだと考え始めた。何故そこなのかと、何故デートから突然の結婚なんだろうかと。話が飛びすぎてよくわからない。
21歳の女の思考は38歳の男には予測出来ない。
上司と言う立場と個性があると言えど限界がある。
確かに今日のサー・ナイトアイはいつもよりオシャレだ、色も派手だ。
バブルガールの言う通り本日はイタリア系のスーツだ、スーツの作りの都合上、胸元がよく見えるのでいつもの水玉のネクタイがかなりアクセントになっている。
濃い赤紫の、ワインレッドのスーツ、何故持っていたのだろう。
昔は黒、今はベージュかグレーのブリティッシュスーツだと言うのに。若い時にでも色が安定しなくて買ったのかもしれない。
そんな風に思考を飛ばしているとセンチピーダーが出社してきた。
「おはようございます!サー・ナイトアイ!うん?ナイトアイ?朝からどうしました?少し疲れた顔をしておられますが」
「おはよう、センチピーダー。何、若い子の話についていけないと思ったんだ。特にバブルガールのはそういう思考はまだ予測が立てられない」
「おはようございます!センチピーダー!サーはこのあとデートですよ!」
「は?」
「そうなるだろう?センチピーダー」
センチピーダーは部屋を少し見渡し、ナイトアイの肩を少し叩くと指を指す、その指の先にいるのは金髪の女性、そう、八木典花だ。
普段連れていない上にまだ紹介もしてない、そしてバブルガールから見て金髪の年上の女性。
「彼女はそういう関係じゃない、出会って一週間も経ってない。それに、私はまだ彼女の事を詳しく知らない」
「ですがナイトアイ、あなたがここに連れてくるということはきっと、それほどの女性なんですね」
「サー!早く紹介してくださいよ!」
「(それほどと言うよりそれ以上の素晴らしい女性だが、彼女もオールマイトをしてきたのだから。しかし参ったな、思ったよりバブルガールのお陰で拗れたか)」
意外とグイグイ迫って聞いてくるバブルガール、それを然り気無く押してくるセンチピーダー、サイドキックはいるし元よりサイドキックに紹介しようと今日は連れてきた。
二人のサイドキックは彼女の紹介を所望している、目を瞑り少し肩の力を落とすとナイトアイは典花を呼ぶ。
「典花さん、少しこちらへ」
「名前呼び!」
「なんだ?ナイトアイ」
「そこはまだヒーロー名ですか!」
「バブルガール、少し黙ってくれ。彼女は八木典花さんだ」
「HAHAHA!ナイトアイのサイドキックだね?実はさっきから気になってたんだ!初めまして!私は八木典花!あーっと、ナイトアイ」
「なんですか?」
典花はナイトアイを呼ぶと近くにより小さな声で話始めた、それはヒーローと名乗って良いのかと言うこと。
まだヒーロー免許がない、手元にない、何と名乗ろうかと二人は悩んだが二人が待っている。アッと思った典花はバブルガールたちの方を見て名乗る。
「詳しくは言えないけど訳有りのヒーローだ、ヒーロー名はいつか名乗るから、どうか待っていてくれ」
「まあ、確かに典花さん訳は有りだが、実力は確かだ。バブルガール、センチピーダー、君達には絶対に負けないだろう」
「そんなヒーローが何故ここ?」
「だから訳有りのヒーロー、なのだろう?バブルガール」
「あ、そっか…八木さん!何かあったらこのナイトアイ事務所のサイドキック、バブルガールに相談してくださいね!」
「私に今さっきのは相談する必要はありましたか?」
「あったさ!それとバブルガール、女性としての悩みは君に相談するよ、それにさんはいらない、気軽に呼んでくれ。それと君もよろしくね!」
「…えぇ、よろしく。改めてセンチピーダーです」
「さて、紹介は終わった。典花さんはそこの椅子に座って待っててください、必要な仕事とミーティングを先にしてしまいます」
「あ、外は…」
「土地勘もないのに迷う気ですか?それにあなた、ヴィラン出たら突っ走るでしょう?戦い方からして彼もそうだが服が…あ゛」
ナイトアイは今ピンと来た。バブルガールは言った、『何かあったらナイトアイ事務所のサイドキック バブルガール相談してくださいね!』と、そして自分はナイトアイ事務所のヒーロー サー・ナイトアイ。
本日のバブルガールの業務は確か、そう、午前中は見回り、午後はセンチピーダーと書類を捌いて貰う予定だ。
「バブルガール、午前中の見回りに業務を追加だ。典花さんと一緒に服を、そうだな、上下で2セット買ってきて欲しい。女性物で」
「マジですか!実質午前休!」
「見回りをサボろうとするんじゃない」
「女性物でって、女性物?スカートは嫌なんだが」
「妥協点としてスカート1、ズボン1、上はバブルガールセレクトでどうでしょう?」
「半々か、まぁ服ないのは確かに困る。それにバブルガールセレクトは割りと気になるよ。よろしく頼むよ、バブルガール」
「はい!」
「挨拶も済んだ、本日のミーティングを始める」
八木典花は思う。前の世界では、死ぬ前にいた世界ではナイトアイの事務所には行かなかった、行こうと考えたこともなかった。それよりも行く権利なんて無いと思った。
彼の意思を、全能は未来を跳ね除けた。
束の間の平和を捨てながら後継者を先に探すよりも、束の間の平和を作ってでも後継者を探すことにした。療養をしっかりせずに、寿命を削り、個性を削り、周りの関係を削り、個を削り、ナンバーワンのヒーローをしてきた。
その時には既にサー・ナイトアイの存在はオールマイトの周りからは薄れていた、だからこそ感慨深かった。
今ここに、世界は違えぞこのナイトアイ事務所に居ることに、彼の一人立ちを見ていることに。
「行けば良かったな」
その呟きは、誰の耳にも届かなかった。だがただ一つの存在はその声を間近で聞いていた。
ミーティングが終わり、ナイトアイは書類を捌き、センチピーダーは事務所で仕事をしている中、バブルガールは町の見回り、八木典花はそれに付いて行っていた。
「この付近にはコンビニが二件あるんですよ!さらに同じコンビニ!」
「キャンペーンで欲しいものがある時は良いね」
「目ぼしいキャンペーンはあまり無いですけどねぇ。あっ!典花さん、典花さん!あの道行くと格好いい服を売ってるお店がありますよ!」
「お、早速か」
「ナイトアイに言われているので行きましょー!いや実は私がちょっと行ってみたかったんですよね。けどサイズがでかくて…典花さん、身長高いですし、がたいも良くて似合いそう!」
バブルガールの言う通り向かい、店内に入る。確かにいいと思った。シックな店内に黒と白のシンプルな服が多い、サイズは平気のようなのでここで服を買うことにした。
典花が買ったのは黒の長袖のTシャツ、白い長袖Yシャツ、黒っぽいジーパン、そしてバブルガールが選んだ後ろは長いが前は短い、そんなデザインの白のスカート。
今の姿でさえ青のストレートのジーパンに白いYシャツ、そしてマイクから貰った上着だ、あまり変わらない。
そしてバブルガールがこれも!と言って入れた上下セットの服。
「そういえばお金…」
「大丈夫です!これでも稼いでますから!」
「いや、すまんな。私がヒーロー活動し始めたらご飯でもなんでも食べに行こう、バブルガール」
「大丈夫なのに、あっ!でも戻ったらナイトアイが払いそうですよね!」
「は、ハハー…、そ、そうだな(無くはない)」
そして場所はバブルガール達が出て数時間後のサー・ナイトアイ事務所、時間は既にお昼の時間を迎えていた。
「帰ってきませんね」
「あぁ、帰ってこないな。午後は予定があると言ったのだが…」
「サー、お昼はどうしますか?食事はまだでしょう」
「出先で食べる予定だったのだが…仕方ない、帰ってきたら食べてから行くことしよう。さて、書類は見終わったな。急ぎの作るべき書類も作り終えたが、本当に彼女たちは何処まで買い物と見回りしてをきてるんだ?センチピーダー、あとでこれに判子を、それにはバブルガールのこの前の依頼のやつのことを、その紙はまとめ次第封筒に入れて投函してきてくれ」
「メールはしました?あと判子は私のですか?」
「いや、電話をしようかと。判子は君のだ」
「了解です、もう半になりますから掛けてしまいましょうか」
センチピーダーがそういうとサー・ナイトアイは携帯を取り出すとタイミングよく、扉は開いた。
そこには袋を二袋を持ったバブルガールとスカートを履いた典花だった。
「サー、遅れてすみません!見回りの問題なし!ヴィラン無し!例の情報もなし!典花さんの買い物はしました!」
「すまない、私があまり走れずに遅れてしまったんだ」
「怪我してたなら言ってくださいよ!少し遠くまで歩いてしまったんですから!傷に響いてないと良いのですが。それとサー、どうですか!このスカート!」
ナイトアイは目を少し開きながら見ていたが突然立ちあがり、バブルガールの目の前に行くと小声で幾らだと言った。
「いや、先に典花さんを」「幾らだ…!あんなに似合っているんだ、高いだろう!?」
「いやいや、そんなに高くは…え?」
「あぁ怪我さえ治っていれば、彼女はスカートもだが何でも似合う。写真を、いや、記憶に焼き付けよう」
「えっと、ナイトアイ?スカートはやっぱり私には似合わないよな?」
典花は頬を掻きながら、小っ恥ずかしそうにスカートを少し握る。それ見てなかったナイトアイは振り向き、大きな声で言い切った。
「お似合いです!」
「に、似合ってるんだ。そっか、HAHAHA!そっか、良かった!」
笑ってる典花とそれを見て誉めているナイトアイを見ているセンチピーダーとバブルガールは微笑ましそうに見る。
「なんか、サーが褒めまくるのって初めて見ました」
「オールマイトを語るのと同じぐらい、饒舌だからだろう」
センチピーダーは自分でそう言い、改めて一人納得する。彼が突如連れてきた女性 八木典花、その意思の強い目は彼の敬愛するヒーロー、オールマイトと同じ。何なら瞳の色や髪の色も同じ。
何処で出会い、何処で交遊をしていたのかは知らないが彼のサイドキックとしてセンチピーダーは少し安心をした。
「これでようやく、我らがサー・ナイトアイ事務所にも春が来ましたか」
「私も逃さないようにしなくちゃ…!センチピーダーも春を逃さないようにね!」
「それはお互いさまです、バブルガール」
その後ナイトアイと典花はお昼を食べた後、雄英に向かった。
リカバリーガールの個性により、残っていた怪我もその日に全て治り、典花は体の具合を確かめる。
ストレッチをしてみたり、個性を使わずに軽く拳を突き上げたり、回してみたり、それは足も同様。
「うーん、やっぱりこんなものか。鍛え直さないとな、体も固いし解さないと」
「焦るんじゃないよ」
「そ、それはもちろんですよ!リカバリーガールのお手を何度も煩わせる訳にはいけませんからね!特に、そう、特にこれからは」
「それでもするんだろう?怪我を」
「そ、れは」
「なら当たってきな。私がいる間はその怪我、大怪我じゃない限りは治す手伝いをしてあげるさね」
「リカバリーガール…。HAHAHA!そうですよね、怪我を治すのには体力がいる。たくさん食べて、飲んで、鍛えて、寝て。体力を作り、体も作っていきます!そうと決まれば、私は帰ります!リカバリーガール、ありがとうございます!」
治ったばかりの身体で走り去る典花を見てリカバリーガールは思う。
「全く、騒がしい女だよ」
次回、ようやく緑谷出久入学。
脱字修整2019/10/17 似合いよな?→似合わないよな?
ここまで月日掛けて書いときながら実はまだ【八木典花にどの道を歩ませる】かをまだ決めてないので参考にさせてください。
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