俺とアスナはゲームセンターの逃げ遅れた人たちをキリトとリズに任せて、まだ探索していない三階フロアへと足を伸ばす。
ハチマン「ユイ!」
ユイ「はい、パパ」
ハチマン「さっきの話を聞いていた通り、子供たちが見当たらない。だから、どんなに小さい生体反応でも見逃さずにナビを頼む」
ユイ「分かりました!前方、約580m先の映画館に小さいですが生体反応です」
ハチマン「分かった」
ユイの誘導で子供を探していると映画館についた。
アスナ「ユイちゃん、本当にここで合ってるの?」
ユイ「はい、間違いありません!」
ハチマン「とりあえず、探してみよう」
アスナ「うん」
映画館の中をくまなく探しているが全然見当たらない。生体反応はあるが、詳しくはマップにも表示されない。
ハチマン「クソ、見当たらない」
アスナ「こっちも」
ハチマン「何処にいるんだ?」
アスナ「ん?」
アスナは何か物音が聞こえたのか聴覚に神経を集中する。
アスナ「………」
オニチャン、コワイヨ
ダイジョウブダ、ニイチャンガツイテル。
ウ,ウン
ソレニ、アノオネェサンガタスケヲヨンデクレル
アスナ「見つけた!」
ハチマン「本当か!」
俺はアスナの聴覚にはかなりの信頼を置いている。かつてアインクラッド第75層のフロアボスもアスナの聴覚のお蔭で見つけ、初見殺しを回避したからである。
アスナ「うん。そこの倉庫の中にいる」
ハチマン「おい、誰か居るか?助けに来たぞ!」
「僕たちはここだよ!助けて!」
ハチマン「分かった!」
倉庫のドアは横にスライドさせるタイプのようで普通に開けようとするが全然開く気配がない。
ハチマン「クソ!なんで開かない」
アスナ「ハチマンくん、これを見て」
ハチマン「マジかよ……」
アスナの示す方を見るとスライドドアの車輪と溝の辺りが融解したようにドロドロに溶けた跡が車輪と溝を固めていた。
アスナ「多分、モンスターの溶解液だと思う」
ハチマン「仕方ない、ぶち破る!坊主、今からドアを壊すから妹と一緒に物陰に隠れてろ!」
「うん、分かった!」
剣を抜き、肩より少し高い位置で構え、ソードスキルを発動させる。剣の刀身が紫に光りだすと、それと同時にジェットエンジンのような音が鳴り出す。
ハチマン「ハアアアアッ!!」
俺は片手剣ソードスキルの《ヴォーパルストライク》をドア目掛けて、手加減無しでぶちかます。
《ヴォーパルストライク》が当たったドアは【ドガーン!】と盛大な爆発音とともに倉庫の奥に吹き飛んでいった。
幸いにも吹き飛んだ扉の先には子供たちは居らず、俺たちが中に入ると物陰から子供たちが出てきた。
ハチマン「もう大丈夫だ。よく頑張ったな」
少年「うん!」
少女「助けに来てくれて、ありがとう」
ハチマン「これで全員だな」
アスナ「二人だけなら結晶を使わずに避難ができるね」
ハチマン「だな」
子供たちを連れて避難しようとすると男の子の方にコートをクイクイっと引っ張られる。
ハチマン「どうした?」
少年「実は、僕たちをあの倉庫に隠れるように言ってくれたお姉さんが心配なんだ」
ハチマン「そのお姉さんの見た目とか分かるか?」
少年「うん!凄く綺麗な人で、髪が黒くて肩くらいしかないお姉さんだった」
ハチマン「凄く綺麗で、黒髪で肩までしかない、お姉さん……まさか!?」
アスナ「どうしたの?今ので何か分かったの?」
ハチマン「頼むから、この勘だけは当たらないでくれよ!」
俺はアスナの質問に答えずにキリトにメッセージを送り、ある人がショッピングモールの外に居ないかを確認するが、やはりと言うべきか俺の嫌な予感は当たるようだ。
メッセージをキリトに送り、ある人を探してもらったが返信には、そんな人は居ないと送られてきた。
ハチマン「やっぱりか!」
アスナ「ねぇ、どうしたの?」
ハチマン「子供たちが言っている黒髪で綺麗なお姉さんが、もしかしたら雪ノ下のお姉さんかもしれないんだ」
アスナ「それって、雪ノ下陽乃さん?」
ハチマン「やっぱり、アスナは会ったことがあるんだな」
アスナ「うん、パーティーとかで何回か」
ハチマン「俺は雪ノ下さんを探してくる。アスナは子供たちを頼む」
アスナ「分かった。でも、無理はしないでね」
ハチマン「分かってるよ。ユイ!」
ユイ「はい」
ハチマン「ユイはアスナのお手伝いを頼む」
ユイ「分かりました」
ハチマン「それじゃあ、また後でな」
アスナ「うん、待ってる」
アスナの返事を聞いた俺は映画館を出て三階フロアを走り回る。するといきなりガラスが割れる音と共にショッピングモール内が揺れる。
ハチマン「まさか、もうボスが出現したのか!?」
ハチマン「このタイミングで出現するのは最悪だな」
三階フロアをくまなく探したが雪ノ下さんは見当たらずにいた。
ハチマン「他には……屋上か」
屋上に繋がる階段に向かうが先ほどのボスが出現した揺れで屋上に繋がる階段が瓦礫によって塞がれてしまっていた。
ハチマン「本当、タイミングが悪いって。他に屋上に行けそうなのは……ん?」
俺は他に屋上に行けそうな場所を探して大きな広場に出て上を見ると頭上にはガラス張りの天井で空が見えた。そのガラス張りはあまり厚さがないようでソードスキルで突き破れるか試してみることにした。
ハチマン「あそこからなら屋上に行けるか………?」
俺は助走をつけて走り出す。走り出したら、そのままの勢いで地面を蹴り、体術スキルの《ウォール・ラン》を発動して壁を垂直に走り出す。
《ウォール・ラン》の効果が消え始め、自由落下する前に右手の片手剣でソードスキルの《ソニック・リープ》でガラスを突き破る。
ハチマン「いっけええええ!!」ガシャン!
ガラスを突き破るとそこには、やはりと言うべきか屋上のヘリポートの様な場所の端に雪ノ下さんが居た。そしてその手前には第3層のボス、ネリウス・ザ・イビルトレントも居た。
◇◆◇
《sideアスナ》
ハチマンくんに子供たちを任されて、周囲に最大限注意を払いながらショッピングモールの出口へと歩を進めていると……突如、大きな揺れに襲われた。
アスナ「なに!?」
「お兄ちゃん!」
「大丈夫だ!俺がついてる」
ユイ「ママ!先ほどの揺れはボスモンスターが出現したことにより生まれた揺れのようです」
アスナ「もう、ボスがポップしたの!?」
ユイ「はい。今はパパがボスモンスターと交戦しているようです」
アスナ「ハチマンくん……。(ううん!今はハチマンくんに頼まれた、この子たちを外に脱出させてからキリトくんたちとハチマンくんの援軍に行けばいい!)」
ユイ「大丈夫です!パパは強いですから」
アスナ「そうだね。パパは強いもんね」
それから子供たちを立ち上がらせて出口に向かって進む。
ユイ「ママ!頭上からモンスターが三体、来ます」
アスナ「ありがとう、ユイちゃん!」
ユイが教えてくれた通り、頭上から三体のクモ型モンスターが降ってきた。
クモ「「「キシャアア!」」」
モンスターたちの攻撃を躱し、直ぐにソードスキルを決める。
アスナ「ヤアアア!」
細剣ソードスキルの《アクセル・スタブ》を放ち、モンスターたちを倒す。
ユイ「ママ、ボスが現れたことによりモンスターの数が著しく増殖してます。直ぐにショッピングモール内から脱出してください!」
アスナ「分かった。二人とも、まだ走れる?」
「僕は大丈夫だよ」
「わ、私もがんばる」
アスナ「辛くなったら言ってね」
モンスターを倒しながら二人と出口に走り、やっとのことで出口が見えてきた。
アスナ「もう少しだから頑張って!」
私は子供たちにそう言うと男の子が叫ぶ。
「お姉さん、危ない!?」
ユイ「ママ!?」
アスナ「え?」
後ろを振り向くと目の前にモンスターが迫っていた。それもクモ型で私の顔を目掛けて毒の牙を剥き出しにしていた
アスナ「クッ……。(ごめん、ハチマンくん、ユイちゃん。私、ここまでみたい)」目を瞑る
私は迫り来るモンスターに恐怖して目を瞑ってしまう。目を瞑ってモンスターの攻撃を来るのを待つが一向に何の衝撃もやって来ない。
─────ガシャン!
アスナ「へ?」
???「大丈夫だった、アスナ?あまり、気を抜いてると危ないよ?」
ガラスが割れる音と共に目を開けるとそこには全身マントで顔が見えないけど、声からして女性だろうか……。その人が助けてくれたみたいだ。
アスナ「あっ!助けてくれてありがとうございます。でも、なんで……私の名前を?」
???「あっ!そっか、今はまだ言っちゃいけなかったんだっけ。ボクったらおっちょこちょいだな」アハハハ
マントの女性は一人で何かに納得したのか笑っていた。そんな彼女に私は近づくとあることに気づいた。彼女が持っている剣はかつてSAOが存在した世界で妖精の世界がモチーフのゲーム中で共に冒険をした、忘れることのできない大切な仲間が愛用していた剣に非常に酷似していた。
アスナ「ッ!!。アナタ……その剣!」
???「やっぱり、これを見ちゃったら気づいちゃうよね。今はまだ一緒には居られないけど大丈夫…また直ぐに会えるから」
アスナ「まさか、アナタもしかして!」
???「またね、アスナ」ニコ
アスナ「待って!ユウ………
私が最後まで彼女の名前を言い終わる前に彼女は煙幕を張り、姿を消してしまった。
…………キ」手を伸ばす
私の伸ばす手は彼女に届くことはなかったが『大丈夫だよ、直ぐにまた会えるから』とその言葉だけがショッピングモール内に大きく響いた。
アスナ「…………」ポロポロ
アスナ「本当にまた………会えるんだよね、ユウキ」ポロポロ
アスナ「私………ずっと待ってるから!アナタに会える、その日を楽しみに待ってるから!」ポロポロ
「お姉さん、なんで泣いてるの?」
「どこか痛いの?」
アスナ「これはね、悲しいとか痛いからじゃないの、嬉しいからなの。でも、今は外に出るのが先だね、行こう」
「「うん!」」
そうして、私たちはショッピングモールの外に出たのである。
◇◆◇
《sideハチマン》
なんとかソードスキルでガラスをぶち破ることで屋上に到達した俺は直ぐに雪ノ下さんを守るために動き出した。
ハチマン「雪ノ下さん!」
陽乃「比企谷くん、なんで!?」
ハチマン「そんなのは後で話します。貴女はそこから動かないでください!」
陽乃「え!?」
こちらに背中を向けているボスに目掛けてソードスキルを放つ。
ハチマン「セヤアアッ!」
ネリウス「!?」
片手剣ソードスキルの《シャープネイル》をネリウスの背中に当てると上手い具合にクリティカルに入ったのか一度怯む。怯みが治まるとこちらに向き、俺をターゲットにする。
ハチマン「来いよ、相手をしてやるよ」
ネリウスの巨大な木の腕で俺に目掛けて振り下ろし攻撃を仕掛けてくるがネリウスの体は巨体なためスピードはそこまで早くないので容易に回避する。
ハチマン「そんなんじゃ当たらないぞ」
雪ノ下さんにネリウスのタゲが向かわない様に注意を払いながら雪ノ下さんとの距離を空ける。しかし、ヘリポートのような場所のためかネリウスが動くごとに小さな揺れが起きる。
ハチマン「このヘリポートみたいなの、耐久値は大丈夫なんだろな?」
フラグめいたことを口にしながらネリウスの攻撃を回避し、その隙に単発ソードスキルを当てていく。
ネリウス「Uooooo!!」ガサガサ
ネリウスのHPバーが二段目に入ったことにより体をガザガサと揺らし毒煙を出し始める。
ハチマン「毒かよ、うっとしい」
防御ソードスキルの《スピニング・シールド》の要領で剣を指先で回転させて毒を霧散させながらダメージを与えていく。
やがて次第にはネリウスの攻撃が荒くなり始めた。
ネリウス「Uooooo!」
ハチマン「もう激情化したのか?」
ネリウスは激情化により、手当たり次第に木の腕を振り下ろし始めた。ネリウスの攻撃を全て回避すると同時に剣で斬り裂く。
ハチマン「おいおい、手当たり次第にも程があるぞ」
手当たり次第に振り下ろすのが影響したのかヘリポートのような場所が次第に【ギィ~、ギィ~】と嫌な音を立て始め……。
ハチマン「まさかとか思うけど、そんなことにはならないよな」ダラダラ
そして……【ガゴン!】と大きな音が盛大に響いた。
ここで皆さんに質問だ。梃子の原理というもの知っているだろうか?
約2~30mはあるであろう、ネリウス・ザ・イビルトレントの重さは優に100kgを超えると思う。
そして、ネリウスの反対側にいるであろう雪ノ下さんは女性のため、体重が約50kgあるかないかであろう。
それで何を言いたいかと言うとネリウスによって勢いよく傾いたヘリポートは雪ノ下さんを梃子の原理で空高くへと吹き飛ばしてしまうということだ。
陽乃「え……?きゃああああああ!?」
ハチマン「ヤバいっ!?」
俺は雪ノ下さんが落下するであろう軌道に向けてSTRとAGIをフルに使い雪ノ下に向かって飛び上がる。
ハチマン「雪ノ下さん!!」
そして、上手い具合に雪ノ下さんの落下軌道に入り彼女を抱き締める。
陽乃「ひ、比企…谷くん?」
ハチマン「ええ、俺です」
これからどうする?雪ノ下さんを空中で受け止めることはできた。しかし、俺たちは尚も落下している。
俺は平気だとしても、雪ノ下さんは生身だ。
奇跡が起きても無事では助からない、最悪は死だ。
どうする、どうする!
一か八か、神に祈るしかないか。
ハチマン「雪ノ下さん、今すぐ俺に強く抱きついてください!」
陽乃「え?」
ハチマン「雪ノ下さん、早く!」
陽乃「で、でも……」
ハチマン「陽乃、早くしろ!」
陽乃「ひゃ、ひゃい!」ギュ!
雪ノ下さんが強く抱きついたことを確認してから左手でもう一本の剣を抜き、左右でソードスキルを放つ。
ハチマン「まず、一回目!」
一度目は、《ソニック・リープ》のシステムアシストで落下とは逆に上に引っ張られる。
ハチマン「二回目!」
スキルコネクトで二回目のソードスキルでもう一本の剣を空に目掛けて構え、《ヴォーパルストライク》に繋げ、地面との距離を稼ぐ。
ハチマン「三回目!」
三回目は二回目の《ヴォーパルストライク》からスキルコネクトで《レイジスパイク》に繋げ、地面との距離を稼ぐ。
ハチマン「四回目、グッ!(クソっ、頭に負担が……)」
四回目は 一回目と同じ《ソニック・リープ》に繋げる。
ハチマン「あと少し……持ってくれよ!」
無理矢理にスキルコネクトで五回目のソードスキルに繋げる。
ハチマン「上がれぇぇぇ!!」
五回目のソードスキルを試した、俺は………奇跡的に五回目のソードスキルを発動し、高さ約2m辺りまでに自由落下を抑えることができ、そのまま地面に背中を向けて落下する。
ハチマン「グエッ!?」ドゴン!
陽乃「…………」
ハチマン「な、なんとか助かった……」
ショッピングモールの屋上、約40mからのスカイダイビングをソードスキルで落下を抑えた俺は、安堵の息を吐いたのも束の間。ネリウスが執念の如く、こちらを追いかけるように落下してくるではないか。
ハチマン「野郎、あのまま落下してくる気か!?(奴の大きさで落下されたら辺りが大変なことになるぞ!?)」
幸いにも、辺りは大通りのため大きな建物はショッピングモール以外あまり無いが近くにバス通りと駅がある。
ハチマン「上手く当たってくれよ」
雪ノ下さんを抱えながら、落下してくるであろうネリウスに向かってソードスキルを構えると……【ドギュンーンッ!】と銃声が鳴り響き、ネリウスがポリゴンと化した。
ハチマン「は……?今の銃声……まさか!? 」
俺は雪ノ下さんを下ろして辺りを見渡し、ショッピングモール以外で高い場所を探す。
ハチマン「今のは……!」
辺りを見渡し高いところを探していると、あるビルの上に何かが輝いたように見えた。
ハチマン「多分……お前なんだろうな。助かったよ、シノン」