仮想と混ざりあったリアル   作:黒牙雷真

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全ての始まり

 

全プレイヤーが強制転移をされた後、先ほどまで鳴り続けていた鐘の音が止み。そのまま、少し時間が経つと一人のプレイヤーが言葉を放った。

 

 

「あっ、上」

 

 

その言葉で俺たちは上を、空を見上げると一部だけ赤い何かが点滅しているのを見つけた。

 

 

キリト「あれは?」

 

 

するとその赤い何かは次第に広がり出し、それを埋めつくし、空から血のような赤い液体が流れだし宙で集まり出して、何かを形成し始めた。

 

 

クライン「なんだ、ありゃ?」

 

 

やがて、赤い液体で形成された物が何なのかが分かりだし。完全に形成されると、それはソードアート・オンラインのGMだった。

 

 

「ゲームマスター?」

 

「何で、顔がないの?」

 

「何かのイベント?」

 

 

周りのプレイヤーたちは、これが何かのイベントだと勘違いをしているようだが、俺には到底イベントには思えない。さらに、体が本能的に警戒鈴が頭の中で鳴り続けている。

 

 

???『プレイヤーの諸君、私の世界へ、ようこそ』

 

ハチ×キリ「「私の世界?」」

 

茅場『私の名前は茅場晶彦。今やこの世界をコントロールできる。唯一の人間だ』

 

ハチ×キリ「「!?」」

 

 

「マジで?」

 

「本物かよ……」

 

「あれが茅場さん?」

 

「随分と手が込んでるな」

 

 

茅場『プレイヤー諸君は既にメインメニューからログアウトボタンが消滅していることに気付いていると思う。しかし、これはゲームの不具合ではない』

 

ハチマン「不具合じゃない、だと……」

 

茅場『繰り返す。不具合ではなく、ソードアート・オンライン、本来の仕様である。』

 

クライン「し……し、仕様?」

 

茅場『諸君らは自発的にログアウトすることはできない。また、外部の人間によるナーヴギアの停止、あるいは解除もありえない。もし、それが試みられた場合、ナーヴギアが発する高出力マイクロウェーブが諸君らの脳を破壊し、生命活動を停止させる』

 

クライン「な、何を言ってんだ、アイツ?頭、おかしいんじゃね?なぁ、キリトにハチマン?」

 

キリト「信号素質のマイクロウェーブなら電子レンジと同じだ。リミッターさえ外せば、脳を焼くことも…………」

 

ハチマン「できるだろうな。そのいい例が爆発卵だ。人間の脳には脳脊髄液という、脳室系とクモ膜下腔を満たす、リンパ液のような物が存在するんだ。それが高出力マイクロウェーブによる振動エネルギーで発熱を起こしたら、脳細胞や神経なんかはズタズタに焼かれてしまう」

 

クライン「じゃあよ、電源を切れば……」

 

キリト「いや、ナーヴギアには内臓バッテリーがある」

 

クライン「でも、無茶苦茶だろう!何なんだよ!?」

 

茅場『残念ながら、現時点でプレイヤーの家族・友人などが警告を無視し、ナーヴギアを強制的に解除しようと試みた例が少なからず有り。その結果、213名のプレイヤーがアインクラッド及び現実世界からも永久退場している』

 

キリト「213人も!?」

 

ハチマン「やっぱり、奴が言っていることは本当なのか……」

 

クライン「信じねぇ…………信じねぇぞ、俺は!」

 

 

すると茅場は何個かの画面を開き、そこには現実世界で起きている、SAOのニュースが流れていた。

 

 

茅場『ご覧の通り、多数の死者が出たことを含め、この状況をあらゆるメディアが繰り返し報道している。よって、既にナーヴギアが強制的に解除される危険は低くなっていると言ってよかろう』

 

ハチマン「…………」

 

茅場『諸君らは安心してゲーム攻略に励んでほしい』

 

 

茅場が出した画面の一部に泣き続けている中学生くらいの女の子とそれを慰めている母親の映像が俺の目に入り。頭の中で小町と母ちゃんの姿に変わる。

 

 

 

小町『お兄ちゃん、お兄ちゃん、ごめんなさい。小町の……小町の所為で……ごめんなさい』ポロポロ

 

 

 

ハチマン「クソが!」

 

 

小町を泣かせてたまるか!必ず、生きてい帰るんだ!小町が待っている、あの世界に!!

 

 

茅場『しかし、十分に留意してもらいたい。今後、ゲームにおいてあらゆる蘇生手段は機能しない。HPが0になった瞬間、諸君らのアバターは永久に消滅し、同時に……諸君らの脳はナーヴギアによって破壊される』

 

 

茅場の『破壊される』の発した瞬間、その言葉だけが大広間に響いた。

 

 

茅場『諸君らが解放される条件はただ一つ。このゲームをクリアすれば良い。現在、君たちが居るのはアインクラッドの最下層、第1層である。各フロアの迷宮区を攻略し、フロアボスを倒せば上の階に進める。第100層にいる最終ボスを倒せばクリアだ』

 

クライン「クリア?第100層だと?出来る訳ねぇだろう、そんなの。ベータテストじゃ、ろくに上がれなかったんだろう?」

 

茅場『それでは最後に、諸君のアイテムストレージに私からのプレゼントが用意してある。確認してくれたまえ』

 

ハチマン「プレゼント?」

 

 

俺たちが茅場が勧めるままにアイテムストレージを開き確認する。

 

 

キリト「手鏡?」

 

 

手鏡からアイテムストレージからオブジェクト化してみると、それは何の変哲もない手鏡である。

 

 

クライン「うわあああ!?」

 

キリト「クライン、なっ!?」

 

ハチマン「クライン、キリト!うあああ!?」

 

 

強制テレポートと同じように俺たちを鮮やかブルーの光が包みこんだ。

 

 

クライン「大丈夫か、二人とも?」

 

キリト「俺は大丈夫だ」

 

ハチマン「俺もだ」

 

 

クラインの声がする方に向くとそこには野武士面のオッサンと中性顔の少年がいた。

 

 

キリト「あれ?お前、誰?」

 

クライン「お前こそ、誰だよ?」

 

ハチマン「その声、なるほど、そういうことか……。」

 

キリト「まさかっ!?」

 

キリト「お前がクラインか!?」

 

クライン「おめぇがキリトか!?」

 

「「そして……お前がハチマンなのか!?」」

 

ハチマン「そうだよ」

 

キリト「アバターと違って目が……その……」

 

クライン「腐ってるな、お前」

 

ハチマン「うるせ。自分でも、分かってるよ!」

 

クライン「でも、何で現実の顔が?」

 

キリト「スキャナー……。ナーヴギアは高密度の信号素質で顔をスッポリと覆っている。だから、顔の形を把握できるんだ。でも、身長や体格は……」

 

クライン「ナーヴギアを初めて装着した時に、キャリブレイションとかで、こう自分の体をあちこち触ったじゃねぇか」

 

キリト「あ、ああ……そうか、その時のデータを元に……」

 

クライン「え……でも…でもよ……ええ、なんでだ?そもそも、何でこんなことに」

 

ハチマン「その説明はこの世界をコントロールできる唯一の男が話してくれるだろうさ」

 

 

茅場『諸君らは、今なぜと思っているだろう。何故、ソードアート・オンライン及びナーヴギア開発者の茅場晶彦はこんなことをしたのかと……。』

 

茅場『私の目的は既に達成されている。この世界を作り出し、観賞するためにのみ、私はソードアート・オンラインを作った』

 

ハチ×キリ「「茅場……」」

 

茅場『そして今、全ては達成せしめられた。以上でソードアート・オンライン正式サービスのチュートリアルを終了する。プレイヤー諸君の健闘を祈る』

 

 

茅場はそう言い終わるとGMの体にノイズが走り、次第に大広場から煙のように霧散していく。

 

 

 

 

 

ハチマン「…………」

 

 

この世界は本物だ。もう、ゲームなんかじゃない!生きるためには他者よりも先に、他者よりも上へ、他者よりも強くならないといけない。なら、最初にやることは……。

 

 

ハチマン「キリト!」

 

キリト「ハチマン!」

 

ハチマン「分かってるな?」

 

キリト「ああ!」

 

ハチマン「行くぞ!」

 

キリト「クライン、付いてこい!」

 

 

俺たちは、まだ大広場で叫んで混乱しているプレイヤーたちを置いて路地裏に入り。今後のことについて話し合うことにした。

 

 

キリト「よく聞けよ、クライン。俺たちは直ぐ次の村に向かう。お前も一緒に来い」

 

クライン「え?」

 

ハチマン「アイツの言葉が全て本当ならば、この世界で生きていくにはひたすら自分を他者よりも強く強化する必要がある」

 

キリト「バーチャルリアリティーMMORPGは供給するリソース。つまり、俺たちが得られる金や経験値には限りが存在する」

 

ハチマン「だから、はじまりの街周辺にPOPするモンスターは直ぐ狩り尽くされる。効率良く稼ぐには、今のうちに次の村を拠点にした方が良い」

 

キリト「俺とハチマンは、道や危険なポイントも全部知ってるから、レベル1でも安全に辿り着ける」

 

クライン「え、でもよ……でもよ。俺は、他のゲームでダチだった奴らと徹夜で並んで、このソフトを買ったんだ。アイツら、広場にいるはずなんだ。置いてはいけねぇ」

 

 

俺とキリトでも、三人以上になると流石にリスクが高過ぎる。二人ならギリギリなんとかなるが…………。

 

 

ハチマン「…………」

 

キリト「…………」

 

クライン「わりぃ」

 

ハチマン「ッ!?」

 

キリト「ッ!?」

 

クライン「これ以上、お前たちに世話になる訳にはいかねぇよな。だから、気にしねぇで次の村に行ってくれ」

 

ハチマン「…………」

 

キリト「…………」

 

クライン「俺だって、前のゲームではギルドの頭を張ってたからな。お前たちに教わったテクでなんとかしてみせらぁ」

 

ハチマン「そうか」

 

キリト「なら、ここで別れよう。何かあったらメッセージを飛ばしてくれ」

 

クライン「おう!」

 

キリト「それ、じゃあな、クライン」

 

ハチマン「またな」

 

クライン「キリト!ハチマン!」

 

 

俺たちは一度クラインに呼ばれたが、少し間が空いたので先に進もうとすると……。

 

 

クライン「おい、キリトよ。おめぇ、本当は案外可愛い顔してんな、結構好みだぜ。それとハチマン、お前はその目、初対面の奴らならマジでビビるぞ?」

 

キリト「お前もその野武士面の方が10倍似合ってるよ」

 

ハチマン「うるせ。この目はデフォルトなんだよ」

 

俺たちは軽口を叩いたあと、クラインと別れ、次の街へ走り出した。

 

 

 

 

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