《はじまりの街》でクラインと別れた俺たちはなんとか太陽が完全に沈む前に次の村に辿り着けることができた。途中で何度かモンスターと戦うことになり、俺たちのレベルは3までに上がっている。
ハチマン「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」
キリト「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」
ハチマン「なんとか陽が沈む前に辿り着いたな」
キリト「だな。けれど、今日はもう休もう」
ハチマン「ああ。夜はリスクが跳ね上がるから止めとこう。それに、こんな状態じゃ、無理だ」
キリト「本当な」
今日は色々とあったため第1層で入手でき、一番強い武器のクエストである、《森の秘薬》は明日にすることにした。宿は金の浪費を削減するために二人ともクエストを受けられる民家で泊めてもらうことにした。
そして、次の日。まずは味気ない黒パンで朝食を取り。武器屋で装備の新調、雑貨屋で回復ポーションを購入、鍛冶屋では初期武器のスモールソードの耐久力の回復をさせてから。民家の中で鍋をかき混ぜている、おばあさんに話しかけて《森の秘薬》のクエストを受ける。
ハチマン「それじゃ、二手に分かれてやるか」
キリト「そうだな。ベータテストの時はドロップ率が1/100だった、リトルネペントの胚珠も正式版だとなると1/100じゃなくて1/10000になってたりするからな」
ハチマン「うへぇ、なんかそれを聞いたらやる気が失せてきた」
キリト「つべこべ言わずにやるぞ」
ハチマン「へ~い」
キリトと二手に別れてから、早二時間が経過した。その間に約150体ものリトルネペントを狩っているが、一向にリトルネペントの胚珠がドロップしない。
ハチマン「落ちない……」
ハチマン「セイッ!!」ガシャン
ハチマン「セヤッ!!」ガシャン
ハチマン「ハアアッ!!」ガシャン
ハチマン「デヤアアッ!!」ガシャン
あれから、何時間が経過したのだろうか…………。
365体辺りからリトルネペントの数を数えるのを止めた。そして、今、何百体目になるかわからない、リトルネペントを倒してから一息入れると自分の視界の左上にある、キリトのHPバーが一気にグリーンからイエローゾーンに入ったので嫌な予感がした。
何故、今まで気が付かなかったのだろうか……。何も、この世界で危険な存在はモンスターだけでは無い。そう、最も危険な存在、それは【人】だ。人は時として他者を蹴落とし、自分の都合の良いように物事を考える時がある。それを俺は幼い頃から受けて来たというのに……。
ハチマン「クソッ!無事でいろよ、キリト!」
全力でキリトが居るであろう場所に向かうとそこには何十体ものリトルネペントがキリトのことを囲んでいた。
キリト「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」
ハチマン「キリト!」
キリト「ハチマン?何で!?」
ハチマン「話は後だ。今はコイツらを片付けるぞ!」
キリト「お、おう!」
それから俺たちは、このデスゲームが始まってから初めての死を身近で実感した。まさに、死闘と言っていいだろう。
キリト「ラアアッ!!」ガシャン
ハチマン「セヤッ!!」ガシャン
キリト「セラアアッ!!」ガシャン
ハチマン「ハアアッ!!」ガシャン
途中、キリトと背中合わせになるとキリトが話しかけてくる。
キリト「おい、ハチマン」ハアハア
ハチマン「なんだよ」ハアハア
キリト「一向に減る気配が見えないんだが?」ハアハア
ハチマン「弱音を吐いてる暇があるのかよ、この状況で。そんなことよりも一体でも多く倒せよ」ハアハア
キリト「違いないな」ハアハア
ハチマン「ウオオオオッ!!」
キリト「セラアアアッ!!」
キリトを助けにリトルネペントの群れに突っ込んでから何時間が経過したのだろうか、空はもう明かりがなくなり、真っ暗の夜だ。そして、今はあの大群で居た、リトルネペントを全て倒し切り、二人してその場に倒れ込む。
ハチマン「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」
キリト「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」
ハチマン「キリト、生きて、るか?」
キリト「ああ、なんと、かな」
ハチマン「何で、あんな大群に囲まれてたんだ?」
キリト「
ハチマン「やっぱりか……」
キリト「やっぱり?」
ハチマン「いやな?キリトのHPがイエローに入った時に思ったんだよ。この世界で危険な存在はモンスターだけなのか?って」
キリト「なるほどな。取り敢えず、助けに来てくれてサンキューな」
ハチマン「知り合いが死なれたら、夢見が悪いからな。礼を言われる筋合いはないぞ」
キリト「捻くれてるな」
ハチマン「うっせ」
キリト「それじゃ帰るか?」
ハチマン「だな。早くベッドで寝たいぜ」
重たい体を引き摺りながら、村に戻り、ベッドに倒れ込む。そして、底無し沼のように意識が微睡みの中に沈んで行った。