仮想と混ざりあったリアル   作:黒牙雷真

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彼女との出会い

 

キリトがMPKをされそうになってから、早くも一ヶ月が経過しようとしていた。そして、俺たちは現在、第1層迷宮区でマップ探索をしている。

 

 

ハチマン「キリト、スイッチ!」

 

キリト「スイッチ!セラアッ!」ガシャン

 

 

キリトは俺とスイッチで立ち位置を入れ替え、それによりモンスターはアルゴリズムが狂い状況認識が遅れ隙が生まれる。そこにキリトが片手剣ソードスキルの《ホリゾンタル》でとどめを決める。

 

 

キリト「あっ、レベルアップ」

 

ハチマン「俺もだ」

 

 

先ほどの戦闘で俺が16でキリトが15にレベルが上がった。また、ステータスの振り方だが、俺がSTRよりのAGI&DEX、キリトは俺と違いSTRよりのDEXだ。

 

 

ハチマン「そろそろ、ボス部屋が見つかってもいいんだけどな?」

 

キリト「そういえば、今日の15時にトールバーナの街でボス攻略会議が開かれるみたいだぞ?」

 

ハチマン「はあ?それを早く言えよ。それを知ってたら、迷宮区に挑まなくて済んだのに……」

 

キリト「そう言うなって」

 

 

愚痴をこぼしながら歩いていると迷宮区の中なのに流れ星を見た。

 

 

ハチマン「ん?流れ星………?」

 

キリト「は?何を言ってるんだ、ハチマン。こんな迷宮区の中に流れ星なんて……」

 

 

また、流れ星が流れた。

 

 

キリト「流れる訳が……」

 

 

まただ。

 

 

キリト「…………」

 

ハチマン「流れたな、それも二度」

 

キリト「……だな」

 

ハチマン「正体を確かめて見るか?」

 

キリト「ああ、何かレアアイテムとか手に入るかもしれないしな」

 

ハチマン「了解」

 

 

流れ星の正体を確かめるために流れ星が流れたところに向かっていると、金属がぶつかり合う音が聞こえだした。それも流れ星の方に近付くにつれて、次第に音がでかくなる。

 

 

キリト「ハチマン、あれ!」

 

ハチマン「ああ、ヤバいぞ!」

 

 

流れ星の正体は細剣を持った、フードのプレイヤーだった。それも運が悪いことに、そのプレイヤーは複数のモンスターに囲まれており、俺たちが着いた瞬間にデバフのスタン状態に陥った。

 

 

ハチマン「セラアアアッ!」ガシャン、ガシャン

 

キリト「ハアアアッ!」ガシャン、ガシャン

 

???「ッ!?」

 

ハチマン「アンタ、そんな戦い方をしてたら死ぬぞ?」

 

???「余計なことを……ッ」

 

ハチマン「…………」

 

???「どうせみんな死ぬのよ!早いか遅いかだけの違いなんだから。戦い抜いた、その先で、せめて満足して死なせてよ……ッ」

 

 

このフードの細剣使いは女性プレイヤーなのか?また、面倒くさいことになりそうだ。けれど、今は…………。

 

 

ハチマン「そうだな。アンタからしたら余計なことかもしれないが、これは俺の自己満足だ」

 

キリト「別に"いのちをだいじに"とか言うつもりはないさ」

 

ハチ×キリ「「けどな、勿体無いからマップデータは遺していけ。死ぬならその後だ」」

 

 

ハチマン「わかったなら」

 

キリト「立ち上がれ!」

 

細剣使い「くっ……」

 

 

細剣使いはなんとか足に力を入れて立ち上がる。

 

 

キリト「その調子だ。細剣使いさん」

 

ハチマン「アンタは自分の身を守ることだけに集中しろ、いいな?キリト、一気に片付けるぞ!」

 

キリト「おうよ!」

 

細剣使い「指図しないで!」

 

 

過去に一度だけ家族と旅行に行った時に本物の流れ星を見た。その時は『小町といつまでも一緒に居られますように』と願った。けれど、こんな迷宮の奥底で今日、何回目になるか分からないが流れ星を見ることになるとは思いもしなかった。

 

 

ハチマン「速い……!」

 

キリト「なんてソードスキルの完成度だよ。それに、突破口が開けた!安全地帯に逃げ込め……っておい?聞いてるのか、細剣使いさん」

 

細剣使い「…………」グラリ

 

ハチマン「あのバカ!」

 

 

俺は倒れそうになった細剣使いを倒れる前に背負い込み、走り出す。

 

 

ハチマン「キリト、走れ!」

 

キリト「お、おい、ハチマン!?」

 

 

全力でモンスターたちから逃げ出し、安全地帯に着いた。そして、背中に背負っている細剣使いをシーツの上に寝かせる。

 

それと、コヤツはなかなかの物を持ちで……ゲフン、ゲフン。

 

そして、約30分くらいだろうか?そのくらい経つと細剣使いは目を覚ました。

 

 

キリト「おっ、おはよう、細剣使い……「どうして」……ん?」

 

細剣使い「置いてかなかったの?」

 

キリト「どこで有終の美を飾ろうとアンタの勝手だけどさ」

 

ハチマン「言ったはずだ。俺たちはアンタのマップデータが惜しいって」

 

キリト「まぁ、別に相手が寝ててもやろうと思えば色々とできるけど」

 

ハチマン「声からするにアンタは女性だ。だから、そんなことはできないし、俺たちはしたくない」

 

細剣使い「意外と紳士なのね?目が腐っているのに……」

 

ハチマン「いつの間にかこうなってたんだよ。治せるなら治している」

 

細剣使い「ご、ごめんなさい……」

 

ハチマン「謝るな、自分が惨めに感じる」

 

 

そんな、俺の目の腐りを話していると……。【くうぅぅぅぅぅ】と可愛い腹の音が細剣使いから聞こえてきた。

 

 

キリト「…………ぷっ!」

 

「「あははははは」」

 

細剣使い「//////」

 

ハチマン「悪い。まずは腹拵えでもするか」

 

細剣使い「いらないわよ。食べなくても死ぬわけじゃないし」

 

キリト「まあまあ、マップデータの対価と思えばいいさ。それに、アンタが気を失った原因が極度の空腹感が関係ないとは言い切れないだろ?」

 

ハチマン「最善を尽くすと言うなら、尚更、食べておくべきだと思うが?」

 

キリト「あと、これ単純に美味いし」

 

細剣使い「………アナタたちの味覚を疑うわ」

 

ハチマン「まあ、少しはアレンジするがな」

 

細剣使い「アレンジ?」

 

 

俺はアイテムストレージから二本のビンをオブジェクト化させて、細剣使いの前に出す。

 

 

ハチマン「使ってみな?女性なら喜ぶはずだから」

 

細剣使い「なにこれ?」

 

ハチマン「いいから」

 

 

細剣使いは左のビンをタップし、そのまま、タップした指を黒パンに塗る。

 

 

細剣使い「…………クリーム?」

 

ハチマン「半分塗ったなら、もう一つも試してみろよ」

 

 

細剣使いは俺に勧められるまま、右のビンをタップして黒パンに塗る。

 

 

細剣使い「クリームの次は…………これは?」

 

ハチマン「まあ、騙されたと思って食べてみな」

 

キリト「おい、ハチマン。まさか、あのクソクエストをクリアしたのか?」

 

ハチマン「ああ、そのお陰でチョコレートに似た何かを作ることができた」

 

細剣使い「チョコレート?」

 

 

細剣使いは俺のチョコレートの言葉で黒パンを一気にかぶりついた。すると…………。

 

 

細剣使い「!!」ガツガツ

 

ハチマン「美味いだろ?」

 

キリト「ハチマン、俺にもチョコレートをくれ!」

 

ハチマン「ほれ」

 

キリト「サンキュー!」

 

細剣使い「美味しいものを食べるために生き残ってるわけじゃないもの」

 

キリト「じゃあ、なんのために?」モグモグ

 

細剣使い「わたしが……わたしでいるため。最初の街で宿屋に閉じ籠って、ゆっくりと腐っていくなら最期まで全力で戦い抜いて、そして…………」

 

キリト「『満足して死にたい』か?」

 

細剣使い「だって……100層なのよ……?一ヶ月かかってまだ救援や第1層すら突破出来てないのよ?その間に何人が死んだか知ってるでしょ?2000人よ!無理よ………わたしたちはもう帰れない」

 

ハチマン「アンタは強いな」

 

細剣使い「え?」

 

ハチマン「アンタは自分が腐らないように頑張って今を生きてる。俺は、そんな大それた理由で今を生きてる訳じゃない」

 

細剣使い「じゃあ、アナタは何のために?」

 

ハチマン「妹のためさ。こんな、目の腐った、どうしようもない兄貴をずっと支えてくれた妹のために俺は剣を手にする」

 

キリト「…………ハチマン」

 

ハチマン「昔から、俺は両親からあまり愛情というものを受けた記憶がないんだ。でも、妹だけは俺にも愛情ってのをくれたんだ。だから、生きて現実に帰る」

 

ハチマン「だから、お前はスゲーよ」ナデナデ

 

 

俺は何故か分からないが無意識、細剣使いの頭を撫でていた。

 

 

細剣使い「…………」

 

ハチマン「キリト、行くぞ?」

 

キリト「おい、ハチマン!?もし、よかったらなんだけど。トールバーナって街で第一層のボス攻略会議が開かれるからアンタも興味があったら参加してみてくれ、じゃあな」

 

 

細剣使い「…………」

 

 

さっき、あの目の腐った男の人に頭を撫でられた時、胸の奥が少しだけ暖かくなった。あれは小さい頃にお兄ちゃんに頭を撫でられた時に少し似ている。

 

 

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