仮想と混ざりあったリアル   作:黒牙雷真

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彼は【ビーター】となる

アスナとスイッチやPOTローテーの練習を終えた翌日のボス攻略当日。うん…………何故か分からないが俺とキリトの記憶が昨日の夜、アスナに風呂を貸してから全くないのである。何故かわからないが…………白い何かが頭の中で……。

 

 

アスナ「ハチマンくん!」ゴゴゴゴ

 

ハチマン「ひゃい!?」ビクッ

 

アスナ「今、何を思い出そうとしたの?」ゴゴゴゴ

 

ハチマン「いや、ただ頭の中で『白』って言葉が浮かんで……」ビクビク

 

アスナ「………」シュンッ!

 

 

アスナに『白』と言った瞬間。俺の顔の左側に風が吹いたと思ったら。その風の正体はアスナが鞘から引き抜いた細剣だった。

 

 

ハチマン「ヒィィィ!?」

 

アスナ「それ以上、思いだしたら、命無いわよ?わかったかしら?」ニコ

 

 

アスナは【冷たい波動】を放った……。

 

某クエストに出てくる魔王の波動並みに危ない物を俺はアスナのそれはそれは良い笑顔から感じた。

 

 

ハチマン「い、 イエス、マム」ガタガタ

 

アスナ「よろしい」

 

 

アスナに脅されたあと、俺たちはディアベルが率いる、総勢43人のボスレイドパーティーで第1層のフロアボスである、イルファング・ザ・コボルトロードの部屋の前に集まっている。

 

 

ディアベル「聞いてくれ、みんな。俺からは言うことは一つ、勝とうぜ!」

 

ディアベル「いくぞ!」

 

 

ディアベルが扉を押すと部屋の中は真っ暗で何も見えない。しかし、部屋の中にある柱の四本目辺りまで進む、いきなり部屋が明るくなり部屋の奥の玉座で座っていた、イルファング・ザ・コボルトロードが動きだし、玉座から飛び上がり真ん中に降り立つと、雄叫びを上げた。

 

 

ロード「Guraaaaaa!!」

 

「…………」

 

「…………」ゴクリ

 

 

そのコボルトロードの雄叫びにレイドパーティーの何人かは恐怖心を改めて抱く。それもそのはず、リアルでは絶対に出くわすことがない。本物の化け物とこれから戦うのだから。

 

ディアベル「攻撃開始!」

 

 

ディアベルの戦闘開始の合図でレイドパーティーはボスとその取り巻きである、モンスターに突撃していく。

 

それからはあちらこちらで金属がぶつかり合う音が部屋の中で響き合い、ボスの攻略が普通のフィールドで戦闘するモンスターよりも強敵であることを感じさせる。

 

 

ディアベル「A隊、C隊、スイッチ!」

 

「了解!」

 

「ウオオオオ!!」

 

ディアベル「来るぞ!B隊、ブロック!」

 

エギル「デイッ!」ガキンッ

 

キバオウ「オラアッ!」

 

ディアベル「C隊ガードしつつ、スイッチの準備。今だ!後退しつつ側面の隙を突く用意!D、E、F隊はセンチネルを近づけさせるな!」

 

キリト「了解」

 

 

ディアベルの指示でキリトはセンチネルを近づけさせないためにセンチネルのポール・アックスをソードスキルで跳ね上げさせる。

 

 

キリト「スイッチ!」ガキンッ!

 

アスナ「三匹目!」ガシャン!

 

キリト「ナイス、スイッチ」

 

アスナ「ねぇ、ハチマンくんは?」

 

キリト「ハチマンなら、あそこ」

 

 

キリトが指で示す方をアスナが見るとそこには三匹のセンチネルに囲まれているハチマンの姿があった。

 

 

アスナ「あのバカ!助けないと!」

 

キリト「その必要はないよ」

 

アスナ「どうして!?あなたはハチマンくんの仲間じゃないの!?」

 

キリト「仲間だから、俺はハチマンを信頼している。それにあんな、たった三匹じゃ、ハチマンは倒せない」

 

アスナ「え?」

 

キリト「始まるぞ」

 

 

再び、アスナはキリトが指で示す方を見る。

 

 

ハチマン「はぁ~、面倒くさいな。なんで、三匹も相手をしないといけないんだよ」

 

センチネルA「ピギィィィ!」

 

センチネルB「ピギィィィ!」

 

センチネルC「ピギィィィ」

 

 

センチネルたちは一斉にハチマンに向かって走りだし攻撃を仕掛けてくる。

 

(センチネルが三匹いるのでABCと命名します。by 作者)

 

 

ハチマン「始めるか」

 

ハチマン「すぅ~、はぁ~」

 

ハチマン「フッ!」シュンッ

 

センチネルA「ピギィィィ!?」キョロキョロ

 

 

センチネルはいきなり、ハチマンが居なくなったことに驚き辺りを見回すがハチマンの姿は何処にも見当たらない。そして…………。

 

 

ハチマン「セイッ!」斬!

 

センチネルA「ピギャアアア!?」ガシャン!

 

 

理由も分からず、仲間のセンチネルが殺られたことに他のセンチネルたちも驚き動揺し始めた。

 

 

センチネルB「ピィギャギャ!!」キョロキョロ

 

センチネルC「ピギャギ!!」キョロキョロ

 

ハチマン「こっちだよ」

 

 

センチネルBは後ろから声がしたので、そちらを振り向くとソードスキルを発動して、こちらに向かってくるハチマンが目の前まで迫っていたことに驚愕する。

 

 

センチネルB「ピギィギャ!?」バッ!

 

ハチマン「セラアアッ!」斬!

 

センチネルB「ピィギャ!?」ガシャン!

 

ハチマン「ラスト!」ガシャン

 

 

センチネルたちを倒したあと、ハチマンはその場で小さく息を吐いた。

 

 

アスナ「一体、何が…………今、ハチマンくんが何回か消えたような」

 

キリト「あれはハチマンの十八番技、ステルスヒッキーだ」

 

アスナ「ステルス?ヒッキー?」

 

キリト「ハチマン曰く、何故か分からないけど、自分の存在感を薄くすることに意識を集中するとシステムがハチマンの事を認識出来なくなるんだと」

 

アスナ「ってことは……」

 

キリト「実質、ハチマンはシステム外スキルを持っているんだよ」

 

アスナ「強い……」

 

 

彼は強い……。きっと、本当はあんなシステム外スキルとかいうものを使わなくても、あっさりとモンスターたちを倒したはずだ。私はそう感じずにはいられなかった。

 

 

ハチマン「ボサッとしてるとモンスターのいい的だぞ?アスナ」

 

アスナ「わ、分かってるわよ!」

 

 

あれから何の戦況に変化はなく、俺たちはセンチネルたちを狩り続けた。レイドパーティーの本体がコボルトロードのHPバーをあと僅かまで削り、コボルトロードが咆哮を上げる。これは行動パターンの変更だ。

 

 

ロード「Gugaaaaa!!」

 

 

咆哮が止むと、コボルトロードはその手に持っていた。斧と盾を投げ捨て、後ろ腰にマウントしてあった、新たな得物を引き抜く。

 

 

キバオウ「情報通りみたいやな……」

 

ディアベル「退がれ、俺が出る!」

 

 

ディアベルは一人、コボルトロードに先行して行き、他のレイドパーティーには下がるよう命令した。

 

 

ハチマン「はぁ?」

 

 

何故、一人でボスに先行する必要がある。ここは、慎重に慎重を重ねて一度、ボスの出方を見てから全員でフルアタックがセオリーなのに…………何故……?

 

 

ハチマン「…………」

 

ディアベル「…………」チラリ

 

ハチマン「ッ!?(まさか、アイツ!)」

 

 

ディアベルはある程度、コボルトロードに近づくとソードスキルの構えをする。しかし、それがいけなかった。何故なら、コボルトロードが新たに手にした得物はガイドブックに書いてあったような、曲刀のようなタルワールではなく……それは刀に似ている、野太刀だ。

 

 

キリト「(あれはタルワールじゃなくて、野太刀!ベータテストと違う!?)」

 

ハチマン「クソが!」ダダダダ

 

 

ハチマンはコボルトロードの武器が違うことに気付き、直ぐに動いた。

 

 

キリト「ダメだ!全力で後ろに跳べ!」

 

 

キリトの叫びはディアベルに届く前にコボルトロードはソードスキルの構えをし、野太刀にはピンク色のような光が灯り、コボルトロードは不規則に柱を足場にして、ソードスキルをディアベルに目掛けて狙う。

 

そして…………

 

 

─────斬

 

 

 

ディアベル「ぐっ!うわあああああ!!」

 

 

コボルトロードは先ず、ディアベルの左肩から左腰まで斜めに一撃を入れて吹き飛ばし、そのまま二擊目を空中で無防備になっているディアベルに叩き込む。

 

 

キバオウ「ディアベルはん!!」

 

 

ディアベルがコボルトロードの攻撃を受け吹き飛ばされたことにより、レイドパーティーに指示を出す者が居なくなり、コボルトロードの一方的な蹂躙がレイドパーティーを襲う。

 

 

ハチマン「おい!」

 

キリト「ディアベル!」

 

 

俺たちがディアベルの元にたどり着くとディアベルのHPは既にレッドゾーンに突入しており、回復ポーションで回復しないと、どんどん削れていく。

 

 

キリト「何故、一人で?」

 

 

キリトがディアベルに回復ポーションを飲ませようとすると、ディアベルはそれを止めた。

 

 

ハチマン「ディアベル、お前!」

 

ディアベル「お前たちもベータテスターなら分かるだろう?」

 

ハチマン「ラストアタックボーナスによる、レアアイテム狙いか」

 

キリト「お前もベータ上がりだったのか?」

 

ディアベル「頼む………ボス………ボスを倒してくれ。みんなの…………ために…」ガシャン!

 

ハチマン「…………」

 

キリト「…………」

 

 

その言葉を最後にディアベルはキリトの腕の中でガラスが割れたような音と共にポリゴンとなり、ソードアート・オンライン、並びに、リアルからも永久退場…………つまり、死んだのだ。俺たちの目の前で、人が死んだのだ。

 

 

ハチマン「行くぞ、キリト」

 

キリト「ああ」

 

アスナ「私も」

 

キリト「頼む」

 

 

俺たち三人は駆け出す。今度こそ、ボスを倒して明日への解放の日のために…………。

 

 

ハチマン「俺がサポートするから、お前らはボスに攻撃を当て続けろ!」

 

「「了解!」」

 

キリト「手順はセンチネルと同じだ!」

 

アスナ「分かった!」

 

 

俺は一人でボスに先行していき、ボスに隙を作らせる。ボスは俺が攻撃範囲に入ったことで野太刀を上段から降り下ろそうとするが俺はスピードを緩めずにボスの股ぐらに向かって入る。

 

 

ロード「Gugaaaaa!!」

 

ハチマン「3、2、1。今だ!」ガキンッ!

 

ロード「Guga!?」

 

ハチマン「スイッチ!」

 

「「スイッチ!」」

 

 

俺はMAXスピードの状態でボスの股ぐらを滑り込みながらソードスキルを発動しボスの攻撃をパリィする。これは常識で考えたらできないが、そんなのはそれを常識として捉えずに普通だと脳で意識すればいい。

 

ナーヴギアは脳から伝達される伝達信号でプレイヤーの動きをリアルのように再現する。故に、人間の脳から伝達される信号に常識という概念があるならばリアルで出来ないものはゲームでも出来ないと認識してしまう。

 

だから、常識を常識と捉えずにゲームならできる理想をイメージするれば、極僅かの可能性だが、アニメのキャラクターのような動きが体現できるかもしれないと俺は思った。

 

 

ハチマン「そのまま、攻撃をし続けろ!」

 

「「了解!」」

 

 

滑り込みでボスの背後を取った俺はステルスヒッキーを最大限に使いながら、ボスの行動を観察し、キリトたちにボスが攻撃を仕掛けるタイミングでソードスキルをボスの無防備の背中に叩きこむ。

 

 

 

 

ハチマン「セラアアッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《sideアスナ》

 

 

ハチマンくんが一人でボスに先行して行き、私たちが追いかけると…………。

 

ハチマン「1、2、3。今だ!」ガキン!

 

ロード「Guga!?」

 

 

うそ…………。スライディングをしながらソードスキルを発動して、ボスの攻撃を弾くなんて、常識じゃありえない!?

 

 

ハチマン「スイッチ!」

 

アスナ「スイッチ!」

 

キリト「スイッチ!」

 

 

ハチマンくんの言葉でボスに出来た隙を見逃さずに私たちはソードスキルを決める。

 

 

キリト「アスナ」

 

アスナ「何?」

 

キリト「遅れるなよ」

 

アスナ「え?」

 

 

キリトくんの『遅れるなよ』の言葉の後から明らかに私たちの行動スピードが上がっている。キリトくんがソードスキルを放てば、直ぐに私の番だと体が動く。

しかし、こんなにハイスピードでやっているのに一回もボスの攻撃が私たちに届いていない。

何で?

 

 

キリト「セラアアッ!」

 

アスナ「ハアアアアッ!」

 

 

そうか…………。今になって気づいた。この、ハイスピードな状態を作り、維持しているのは彼…………ハチマンくんだ。ハチマンくんが私たちにボスが攻撃するタイミングに合わせて、ソードスキルで攻撃を止めているんだ。

 

 

アスナ「…………凄い」

 

 

彼は私に『アンタは強いな』と言ったが私よりも彼の方が、よっぽど私より強いと実感する。

 

 

アスナ「……強いな、君は」

 

 

私は何故、こんなにもハチマンくんが強くなれるのかが疑問に思えてきた。彼は『妹のため』と言っていたが本当にそれだけなのだろうか?

それだけではなく、本当は他にもあるのではないか……?とハイスピードな戦闘の中で、こんなことで思考を巡らせていると、急なイレギュラーに私は対処できなかった。

 

 

キリト「アスナ!」

 

アスナ「え?」

 

 

しまった!?。こんな時に考えてる場合じゃなかった!!。

 

私はキリトくんの声で思考から我に帰ると目の前にボスの野太刀が迫っていた。

しかし…………。

 

 

────ドンッ!

 

 

アスナ「え?」

 

ハチマン「ぐわあああっ!!」

 

キリト「ハチマン!!」

 

 

二度目の驚き、私に迫ってくるはずのボスの攻撃が代わりにハチマンくんに当たっていた。いや、違う……ハチマンくんが私を庇って攻撃を受けたんだ。

 

どうして……?

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

《sideハチマン》

 

 

 

ハチマン「セラアアッ!」

 

 

俺はボスの後ろからソードスキルを当てて、キリトたちに何度も隙を作らせているが…………。

 

 

ハチマン「何、スーパーアーマーだと!?」

 

キリト「アスナ!」

 

アスナ「え?」

 

ハチマン「あのバカ!戦闘中に考え事しやがって!」

 

 

俺は全力でアスナの元に駆け出す。普通に助けたんじゃ間に合わない。アスナに悪いがタックルする。

 

 

アスナ「え?」

 

 

アスナはこちらを『何で?』みたいな顔でみていた。そして…………アスナに当たるはずのボスの攻撃が俺に当たる。

 

 

ハチマン「ぐわあああっ!!」

 

キリト「ハチマン!!」

 

 

あまりのボスの攻撃に何回か地面をバウンドする。これにより、ゲームだが肺の中にある空気が押し出され、視界がグラ付く。

 

 

キリト「おいハチマン、大丈夫か!」

 

ハチマン「ああ、なんとか」

 

 

キリトは吹き飛ばされた俺の元に駆け寄り、回復ポーションを飲ませてくれた。それが隙になりボスが俺たちを襲う。

 

 

アスナ「二人とも、後ろ!」

 

キリ×ハチ「「なに!?」」

 

 

しかし、その攻撃は…………。

 

 

エギル「グゥゥゥゥオラッ!」ガキューン!

 

ロード「Gugaaa!?」

 

 

なんと、ボスの攻撃をエギルがソードスキルで大きく跳ね上げ、パリィしたのだ。

 

 

エギル「回復するまで、俺たちが支えるぜ!」

 

ハチマン「オッサン……」

 

エギル「ウオオオオッ!!」

 

 

エギルのオッサンが作ってくれた回復の時間をフルに使いHPを回復しているとアスナが…………。

 

 

アスナ「ねぇ、何でさっきは助けたの?」

 

ハチマン「あ?」

 

アスナ「ねぇ、何で?」

 

ハチマン「そんなのパーティーメンバーに死なれたら夢見が悪いだろうが」

 

アスナ「それだけ?」

 

ハチマン「それだけってな!俺の精神衛生上には大問題なんだぞ、ったく……」

 

キリト「ハチマン、HPの貯蔵は十分か?」

 

ハチマン「キリト、それ一応フラグな?」

 

キリト「え?マジで!」

 

ハチマン「マジだ」

 

キリト「マジか…………」orz

 

ハチマン「それよか、行くぞ!」

 

キリト「了解!」

 

 

俺とキリトは再び、ボスを目掛けて走りだす。

すると、ボスかエギルのパーティーに向けて、ディアベルを葬ったソードスキルを発動しようとする。

 

 

キリト「危ない!」

 

ハチマン「殺らせるかよ!」

 

ハチ×キリ「「とどけぇぇぇぇ!!」」

 

 

俺たちはシステムアシストでブーストをかけて、空中でボスに片手剣ソードスキルの《バーチカル・アーク》を決める。

それによりボスは地面に落下する。

 

 

ハチマン「キリト、決めるぞ!」

 

キリト「オーライ!」

 

ハチマン「セラアアッ!スイッチ!」ガキンッ

 

キリト「セラアアッ!」

 

ハチマン「これで……」

 

キリト「お前の……」

 

「「最期だ!」」

 

「「ウオオオオオオッ!!」」

 

ロード「Gugaaaaa!?」ガシャン!

 

 

 

 

 

 

 

俺たちの最後のソードスキルが同時にボスの体にクリティカルヒットする。すると、その体は次第にポリゴンと化し、ガラスが割れる音と共に消滅する。

 

 

ハチマン「…………」ブンブン、カチャン

 

キリト「…………」ブンブン、カチャン

 

 

ボスが完全に消滅するとボス部屋の真ん中には『 Congratulation!!』と表示され、俺たちの前には今回の戦闘リザルトが表示された。それを見た俺とキリトは片手剣をクロス字に払い、背中の鞘に剣を納めた。

 

それを見た、レイドパーティーのみんなの中から、涙ながら歓喜をあげる者、仲間と肩を組み喜ぶ者が出た。

 

 

ハチマン「お疲れ」

 

キリト「おう」

 

 

キリトと拳を合わせる。

 

 

アスナ「お疲れ様、二人とも」

 

エギル「見事な剣技だった」

 

ハチマン「あれは偶々だ」

 

キリト「そうだな、みんなのお陰で俺たちはボスを倒せたんだ」

 

 

俺たちは互いに労いの言葉をかけているとキバオウが声をあらげる。

 

 

キバオウ「何でや!何で、何で、ディアベルはんを見殺しにしんたんや!」

 

キリト「見殺し?」

 

キバオウ「そやろが!自分はボスの使う技を知っとったやないか!最初からあの情報を伝えとったら、ディアベルはんは死なずに済んだんや!」

 

 

キバオウの説明で周りのプレイヤーがどよめき始める。そして、キバオウの説明に感化された、一人プレイヤーがキリトに罪を擦り付ける。

 

 

「きっとアイツ、元ベータテスターだ!だから、ボスの攻撃パターンも全部知ってたんだ!知ってて隠してたんだ!」

 

「他にも居るんだろう?ベータテスター共、出てこいよ!」

 

 

なんで、こうなる?なんで、キリトがこんな目に合わないもいけないんだ…………。アイツはまだ、義務教育が終わっていない子供位だというのに…………。

 

なのに、なんで…………。

 

やはり、世界はどこでも、いつもこうなのか?何もしてない奴が、周りよりも功績を上げた奴が、周りより努力してその結果を得た奴が、周りから非難されるのか?

 

なら、俺がその世界を壊す。

 

俺は俺なりに真面目から卑屈に、最低に、陰湿に…………俺は動こう。

 

 

ハチマン「クハハハハハッ!」

 

キリト「ハチマン?」

 

キバオウ「何がおかしいんや…………?」

 

ハチマン「いや、すまない。あんたの言ってることがおかしくてな。そこのガキがベータテスター?そいつは、はじまりの街で俺に土下座をしてまで付いてきた、ド素人だぜ?ボスの攻撃パターンの情報?そんなのは俺が教えたに決まってんだろう」ニヒリ

 

ハチマン「そうすれば、フロアボスにラストアタックを決めて、レアアイテムを手に入れる確率が上がるだろう?しかし、少し誤算だった。まさか、このガキがおこぼれとはいえ、ラストアタックボーナスを手に入れたんだがらな」

 

キバオウ「待てや!アンチャンはあの時、ワイに…………」

 

ハチマン「俺がいつ、ベータテスターじゃないと言った?俺はあの時、『一方的にベータテスターを悪く言うのは間違いじゃないか?』、『それは自己責任』だと言ったよな?誰も、自分がベータテスターじゃないと一言も言ってないだろう」

 

キバオウ「なら、アンチャンはワイらを騙してたんか!」

 

ハチマン「騙すも何もお前らが勝手に俺がベータテスターじゃないと信じ込んだんだろう?自分の意志で俺をベータテスターじゃないと信じ込んだのも、ディアベルが死んだのも『自己責任』だろう?そうだろう、キバオウさん」

 

キバオウ「くッ!」

 

ハチマン「それとな、俺をそこら辺の雑魚のベータテスター共と一緒にしないでほしいぜ。俺は一人で誰も到達したことのない、階層まで上り、上の情報を独占した人間だ。どうだ?情報屋なんて目じゃないだろう?」

 

キバオウ「な、なんや、それ…………。そんなん、ベータテスターどころやないやんか!チートやチーターやろ、そんなもん!」

 

「そうだ、そうだ!」

 

「チーターだ!」

 

「データのチーター、だからビーターだ!」

 

ハチマン「いいな、それ!他のベータテスターと区別がついていいじゃないか!今日から、俺はビーターだ。他の元テスター共と同類にするなよ?」

 

 

俺はキリトと共に手に入れた、ラストアタックボーナスのコート・オブ・ミッドナイトの灰色を装備して第二層に足を進める。

 

これでいい。嫌われ者の役は、いつも損する役は俺だけで十分だ。他の奴ら何かに譲ってたまるかよ。

 

 

ハチマン「ほら、誰も傷つかない世界の完成だ」ボソッ

 

 

アスナ「待って!」

 

 

螺旋階層を登っていると後ろからアスナに話しかけれる。

 

 

ハチマン「なんだ?」

 

アスナ「あなたのさっきの行動……上手く、言葉に出来ないけど。あなたのやり方、私は嫌いだわ」

 

ハチマン「そうかよ。それだけか?」

 

アスナ「いいえ。必ず、アナタに近づいてみせるから」

 

ハチマン「訳がわからん。俺は先に行くぞ」

 

 

 

そのまま、螺旋階層を登り、第2層へと突入した。

 

 

 

 

 

 

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