第49層のボス攻略が終わり。既に二週間が経ち、大手三大ギルドの一つである、血盟騎士団が第50層のフロアボスの部屋を発見したらしい。そして、今は血盟騎士団の副団長で鬼の副長ならぬ、【攻略の鬼】のアスナが今回の作戦の指揮をとるらしい。
ハチマン「………… 」
アスナ「それでは今回の第50層のボス攻略ですが、前回の第25層と同じで、レベルが今までのボス攻略とは比ではないことは明らかだと、皆さんも理解していると思います」
アスナ「なので、十分に注意してください。それでは、偵察隊とここにいる攻略組や情報屋の皆さんに集めてもらったボスの情報を一度、整理したいと思います」
それからはアスナによる、ボスの説明がされた。
①,ボスは無数の腕で攻撃を仕掛けてくる
②,HPバーは四段
③,取り巻きがいない
④,ボスは阿修羅像に似ていること
とことだ。
そして血盟騎士団がメインでボスにアタックを仕掛けることになった。そして、ソロである俺とキリトはアスナと血盟騎士団、団長の神聖剣のヒースクリフのパーティーと組むことになった。
ヒースクリフ「宜しく頼む」
キリト「こちらこそ」
ハチマン「うっす」
攻略会議のあと直ぐにボス攻略になって、早くも二時間が経過している。やはり、第2クォーターポイントだからなのか、攻略が思うように行かずに、既に死傷者が3人以上も出ている。
そして、今はやっとのことでボスのHPバーが半分になったところだ。
アスナ「タンク隊、防御陣形!」
「「「オオオオオッ!!」」」
アスナの声でタンク隊はボスの攻撃を防ぐ。しかし、第二クォーターポイントのボスのためかトッププレイヤーのタンク隊が防御姿勢でもボスの一撃でHPが四割ももっていかれている。
それにまだ、ボスの腕が六本中、正面と右の四本しか動いていないのだ。故にボスのHPバーがラスト一本になった時、残りの左の二本も動きだす。
また、ボスの得物は二本の西洋剣と弓矢だ。
西洋剣はまだ、何とかなるが…………弓矢が厄介だ。弓矢はそのまま狙うのではなく、上空に放ち、ランダムに降り注ぐパターンになっている。それにより、3人以上のプレイヤーが餌食となった。
クライン「HPバーがあと二本でこれかよ!」
エギル「愚痴を垂れたって仕方ねえって、今は集中しろ!」
キリト「エギルの言うとおりだ」
ハチマン「だとよ、クライン」
アスナ「そこ!無駄口を叩かないでスイッチの準備!」
「「「は、はい!」」」
アスナ「全体、スイッチ!」
「「「スイッチ!」」」
キリト「セラアアッ!!」
クライン「ウリャアアッ!!」
エギル「ウオオオオッ!!」
ハチマン「ハアアアッ!!」
アスナ「セヤアアッ!!」
タンク隊がボスの攻撃をパリィしてくれたお陰でボスに隙が出来たので、ダメージディーラーの俺たちがすかさずスイッチをして、ボスにソードスキル後のディレイを考えて、単発のソードスキルを命中させていく。
ヒースクリフ「弓矢がくるぞ!全体回避!」
ヒースクリフの掛け声で攻略組のみんなはボス部屋をフルに使い回避運動を取る。そして、ボスはその手に持つ弓に四本の矢を弓にセットし引き絞ると矢が黄色に光る。
ハチマン「なっ!? ソードスキルだと!」
HPバーが半分になってから何の変化も無いと思ったら、弓矢にソードスキルが付け加わるパターンの変更だったようだ。
ハチマン「全体、ボスにパターン変更だ!弓矢のソードスキルがくるぞ!」
「「「「!!」」」」
「弓矢のソードスキルだって!?」
「今まで、そんなソードスキルなかったのに!?」
「クソッたれが!」
ハチマン「くるぞ!」
ボスから放たれた矢はHPバーが三本あった時と違い。威力はそこまで無いものの部屋全体に数の多い黄色く光る矢が雨のように降り注ぐ。
「「「うわあああああ!?」」」
ボスの弓矢系統のソードスキルにより、攻略組の皆のHPがイエローかレッドになっていた。しかし、一人だけ違った。それは、唯一、ユニークスキルである、【神聖剣】を持つ血盟騎士団の団長である、ヒースクリフはギリギリHPがイエローになっていないのだ。
ハチマン「マジ、そのスキル、チートだろう……」
ヒースクリフ「ここは私が時間を稼ぐ!そのうちに皆、回復を!」
ヒースクリフは一人で攻略組の皆がHPを回復する時間を稼ごとするが、流石にユニークスキル持ちでも1人では無理がある。
ハチマン「一人で行かせるかよ」
ヒースクリフ「君は回復はいいのかね?」
ハチマン「単なる時間稼ぎだろう?だったら、心配するな」
ヒースクリフ「君は素直ではないな」
ハチマン「ほっとけ」
キリト「二人だけで行こうとするなよ。俺にも一囓りさせてくれよ」
ハチマン「お人好しめ」
キリト「その言葉、そのまま返すぜ」
ヒースクリフ「では、行こうか!」
「「おう!」」
それから約10分から15分くらいだろうか?俺たち三人はローテーションをしながらボス攻撃を捌きながらジワジワとダメージを与えていく。
そして、その間に攻略組の皆のHPの回復が終わったのか、アスナから声がかかる。
アスナ「三人とも、皆の回復が大分終わったわ!だから、一度退がって!」
その声で俺たち、三人は一度後方へ退がることにした。また、俺たちと入れ替えに回復が終わった攻略組が前衛に出ていった。
アスナ「三人とも、お疲れ様です」
ハチマン「そんなでも、ねぇよ」ゴクゴク
キリト「ああ。誰かがやらないと被害が増えるからな」
回復ポーションを飲みながら、俺たちはアスナに返答する。
アスナ「まったく、素直じゃないんだから。君たちは」
キリト「このまま、行ければいいが……。それは無いよな……」
ハチマン「当たり前だ。どう見ても、左側の両腕が厄介な物に違いないはずだ」
アスナ「二人の回復が済みしだい、私たちも前線に戻ります」
ハチマン「了解」
キリト「わかった」
ヒースクリフ「承知した」
回復を済ませた。俺たちもボスに向けて走り出す。俺たちがHPを回復している間に攻略組の皆が、かなりボスにダメージを与えてくれていたのかボスのHPバーが残り一本半にまで減っていた。
ハチマン「セヤアアッ!!」
アスナ「ハチマンくん、スイッチ!」
ハチマン「スイッチ!」
アスナ「ハアアアッ!!」
ヒースクリフ「キリトくん、スイッチだ!」
キリト「スイッチ!」
キリト「セラアアアッ!!」
前線に俺たちが加わったことにより、ボスへのダメージ効率が上がり、先程までは違い、目に見えるほどにボスのHPがジワリジワリと減っていく。
ヒースクリフ「残り一段だ。パターンの変更に注意するんだ!」
「「「おう!!」」」
そして、ボスのHPが最後の一段になると左側の両手には三日月が描かれた、片手に収まるくらいの水晶玉と聖杯だった。
そして…………聖杯の方を天高く掲げると空から稲妻が降ってきた。
アスナ「全体、回避!」
アスナの掛け声で皆、回避を試みるが何人か稲妻に当たってしまう。その何人かの中にはアスナも居た。
アスナ「スタン……バフ!?」
ヒースクリフ「動けるものはスタン状態の者を安全なところへ!」
「「「了解!!」」」
俺は幸いアスナの近くに居たため、アスナを安全なところへ運ぶことになった。
ハチマン「アスナ、運ぶぞ?」
アスナ「変なところを触ったら、怒るから」
ハチマン「なら、今回は許してくれよっ!」
アスナ「きゃっ!?」
俺はアスナの背中と膝裏に手を回して抱き抱える。所謂、お姫様抱っこです。なんで、ボッチの俺が出来るのかって?
それは自己暗示をかけているからです。
こいつは小町。こいつは小町。こいつは小町。こいつは小町。こいつは小町。こいつは小町。こいつは小町。こいつは小町。こいつは小町。こいつは小町だ!
目を瞑りながら安全なところにアスナを運び終える……。
アスナ「もう、大丈夫だから、降ろして。////////」
ハチマン「お、おう」
アスナはお姫様抱っこが恥ずかしかったのか顔を赤く染めて、そっぽを向いた。
アスナ「運んでくれて、その……あ、ありがとう。///////」
ハチマン「お、おう。///////」
なに、それ!?そんな反応は反則だ!今まで、そんな反応しなかったじゃんか!いつもはツンツンしてて、怖い感じなのに……。今はめちゃくちゃ可愛いじゃんか!
アスナ「…………」
ハチマン「…………」
アスナ「…………」
ハチマン「…………」
暫しの沈黙が気まずい……。
アスナとお互いに照れてしまい、気まずい雰囲気になっているとクラインからヤジる声がかかる。
クライン「そこのお二人さん!イチャイチャするんだったら、ボス攻略が終わってからにしてくれねぇか?こっちの緊張感も抜けちまうからよぅ」
ハチ×アス「「イチャイチャなんかしてねぇよ!!(してません!!)」」
クライン「そ、そうか………?」
クラインに勢いよく、二人で言い返すとその勢いに気押されたのか、クラインは少したじろぐ。そして、何でか知らないがアスナは俺と一緒にクラインの言葉を否定したのにムスッとしている。
ハチマン「な、なんだよ?」
アスナ「別にー」プイ
ハチマン「訳わかんねぇ」
キリト「ハチマン、カバー頼む!」
アスナと何とも言いがたい会話をしていると、キリトから声がかかった。
ハチアス「わかった!」
ハチマン「それじゃ、俺は行くかな?」
アスナ「ええ、行ってらっしゃい」
ハチマン「!?」
行ってらっしゃい、か………。いつ振りだろうな……その言葉は聞いたのは……。
ハチマン「ああ、行ってきます!」
何故か、わからないが…………。今の俺は…………。
ハチマン「負ける気がしねぇ!!」
アスナの『行ってらっしゃい』のあとは、キリトのカバーに回り、ボスにダメージを確実に与えていく。そして…………。
ヒースクリフ「ボスのHPがあと僅かだ!全員、突撃!!」
「「「おおおおおお!!」」」
ヒースクリフの掛け声で攻略組の皆はボス目掛けて、ソードスキルを惜しみ無く放っていく。だが、ほんの数ドットでボスが最後の悪足掻きで、その手に持つ、西洋剣、弓矢、水晶、聖杯を捨て、腕だけで攻撃を始めた。
クライン「クソッ!ここに来てかよ!?」
エギル「どうする!?」
ハチマン「ヒースクリフ、一度だけでいい。ボスに隙を作ってくれ」
ヒースクリフ「それは君がラストアタックを決めるということかね?ハチマンくん」
ハチマン「流石に数ドットとはいえ、無理がある。それにこのままだと、また被害が増える」
ヒースクリフ「フム……わかった。しかし、これは貸し一つだ。ハチマンくん」
ハチマン「仕方ねぇ、それでいい」
ハチマン「キリト、ラスト合わせろ!」
キリト「は?お、おう」
ハチマン「行くぞ!」
俺たち、三人はボス目掛けて走り出す。先行はヒースクリフ、それに続いて俺とキリトが走り出す。
ハチマン「チャンスは一度切りだ!」
キリト「わかった!」
ヒースクリフ「二人ともいくぞ!スイッチ!」
ヒースクリフがそのデカイ盾でボスの攻撃をパリィしてくれたお陰でボスに今までで一番デカイ隙ができた。
ヒースクリフ「スイッチ!」
ハチマン「キリト!」
キリト「おう!」
ハチ×キリ「「ウオオオオオオッ!!」」
俺とキリトはヒースクリフが作ってくれた、ボスの大きな隙に渾身のソードスキルをぶちかます。
そして…………
─────ピシ……。ピシピシピシピシピシ……
─────ガシャン!
二人で放ったソードスキルを決めた後の部分からボスの体に罅が入り、やがて、ボスの体がポリゴンとなり、ガラスが割れた音と共に消滅した。
「お、オッシャアアア!!」
「ついに五十層のボスを倒したぞ!」
「第二クォーターポイントを生き抜いたんだ!」
と攻略組の皆は歓喜の声を上げている。
俺とキリトの目の前には『your last attack Bonus』と表示されていた。
キリト「ハチマン。ボスのラストアタックボーナスは何だった?」
ハチマン「お前は?」
キリト「俺か?俺はこいつ」
キリトはシステムメニューをいじり、剣先から柄まで真っ黒で、シンプルな魔剣のように見える。
キリト「名前は『エリシュデータ』。」
ハチマン「エリシュデータ……解明者か」
キリト「ハチマンのは?」
ハチマン「俺のか?」
キリトに見せてもらったため、俺もラストアタックボーナスを見せることにした。そして、そのボーナスなのだが……。
キリト「俺のとは対照で真っ白な剣か…………。なんか、聖剣みたいだな?」
ハチマン「そういう、お前のは魔剣だがな」
キリト「なんだよ、魔剣だっていいじゃんか!俺の服だって黒だから違和感ないだろう?」
ハチマン「そうだが……。なんか、そのうち、『闇の炎に抱かれて消えろ!』とか言いそうだな」
キリト「うぐっ!」
ハチマン「まさか、キリト……お前……」
キリト「それ以上はやめてください……」
ハチマン「元厨二病疾患か」
キリト「ああ、そうだよ!俺だって男なんだ!ハチマンだって憧れたことくらいはあるだろう!?」
ハチマン「俺か?俺も厨二病みたいなことをやって家族からゴミを見るような目で見られましたが、何か?」
キリト「な、なんか……ごめん」
ハチマン「謝るな、惨めに感じちゃうだろう」
キリト「で、その真っ白な剣の名前は?」
ハチマン「えっと……『reason monster』。この場合は、理性の化け物……か」
なるほど。俺が理性の化け物だからあの時、死に場所を求めて何日も最前線の迷宮区に挑んだに、死ねなかった訳の一つか……。
茅場は俺のことを『理性の化け物』として見ている……。そういうことか。
ハチマン「クッハハハハ!!」
キリト「どうした、ハチマン?」
ハチマン「いや、何でもない。俺は先に行く。じゃあな」
キリト「お、おう」