仮想と混ざりあったリアル   作:黒牙雷真

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ここはゲームであって、ゲームではない

オバサンのパーティーと別れた俺たちは《風見鶏亭》の一階にある、広いレストランで、そのレストランの奥まった席に俺たちは座る。

そして、俺とキリトは宿屋代がもったいないので割り勘で宿屋に泊まることにした。

 

まぁ、数ヶ月前まで迷宮区で野宿していた俺はある程度の固さの壁さえあれば寝られるようになっているのでベッドを使う必要はないのだ。

 

けれど若干体調に影響する。やはり、ベッドと床とでは睡眠の深さが違うのは仕方ないのだろう。

 

 

キリト「チェックインしてきたぞ?」

 

ハチマン「いくらだ?」

 

キリト「250コル」

 

ハチマン「げっ!ここは一泊、500コルも取るのかよ……」

 

キリト「ここの層なら、これくらいだろう?俺たちのホームはもっと高いぞ?」

 

ハチマン「え?俺のところは一泊だと700コルするけど、1ヶ月で借りなら10000コルで済むぞ?」

 

キリト「なっ!?」

 

 

キリトは俺の言葉で口をあんぐりと開けて固まる。

それもそのはず、俺たちがホームにしている50層で宿屋の一泊辺りの金額が700~1200コルするのだ。

なので、キリトが借りているホームは一泊、約890コル辺りなのだろう。

 

 

ハチマン「とりあえず、飯にしようぜ」

 

 

夕飯を食うためにキリトも、あんぐりと固まった状態から元に戻り。テーブルに備え付けられているメニューを取り、メニューの品物を見ていく。

 

それから約10分ほど注文する物を吟味してからNPCのウェイターに注文をする。すると注文したウェイターと違う、ウェイターが湯気の立つマグカップを3つ持ってきて俺たちの目の前に置く。

 

 

キリト「パーティー結成を祝して」

 

 

キリトのその声で俺たちはマグカップをワイングラスに見立てて、【コチンッ!】とカップを合わせる。

 

 

シリカ「あっ、おいしい……」

 

キリト「それは良かった」

 

シリカ「でも、この店のメニューは私、全て試したんですけど、この甘酢っぱい味はなかったはずです」

 

 

シリカが飲んだマグカップには不思議な香りが立つ赤い液体が入っており。それを口に含んだ時にスパイスの香りと、甘酢っぱい味わいが口の中に広がったのだ。

 

そして、シリカの発言を聞いたキリトはニヤリと笑ってから、シリカの言葉に返答をした。

 

 

キリト「ある程度のNPCレストランはボトルの持ち込みが可能なんだ。だから、俺が持ってた《ルビー・イコール》っていうアイテムをカップに入れて温めてもらったんだよ」

 

シリカ「へぇ~、そんなこともでるんですか」ゴクゴク

 

キリト「それと《ルビー・イコール》には特殊な効果があるんだ」

 

シリカ「どんな効果なんですか?」

 

キリト「それはカップ一杯で敏捷力の最大値が1上がるんだぜ」

 

シリカ「え?そんな貴重なものを……良かったんですか?」

 

キリト「ああ。酒のアイテム欄に寝かせてても味が良くなるわけじゃないからね。それに俺は、ハチマンと同じで知り合いが少ないから、開ける機会がなかなか無いしな」

 

ハチマン「俺はボッチだからいいんだよ。誰にも邪魔されず、邪魔をせずに一人でのんびりと飯は食べたいんだ」

 

キリト「お前って奴は……」

 

 

三人全員がカップの中身を飲み終わるとシリカが突然、ぽつりと呟いた。

 

 

シリカ「……なんで……あんな意地悪を言うのかな……」

 

キリト「シリカ、君はMMOはソードアート・オンラインが初めてなのか?」

 

シリカ「はい」

 

キリト「なら覚えて置くといい。どんな、オンラインゲームでも人格が変わるプレイヤーは多い」

 

ハチマン「そりゃ、ゲームならリアルと違って理想の自分を演じることができるからな。内気で陰湿な奴が正義を掲げる善人になる奴、今までの鬱憤をはらすために悪人となる奴までいるだろう」

 

キリト「それをロールプレイと、従来は言ってたんだけどな。でも、俺たちはSAOの場合は違うと思う」

 

 

一瞬だが、キリトの目が鋭くなるのをシリカは見逃さなかった。

 

 

シリカ「…………」

 

キリト「今はこんな、異常な状況なのにプレイヤー全員が一致団結してクリアを目指すなんて不可能なのは解ってる?でも、中には他人の不幸を喜ぶ輩や、アイテムを奪う輩、果てには殺しまでする輩まで、今では存在する」

 

シリカ「えっ!?」

 

ハチマン「シリカ、俺たちの頭の上にあるカーソルは何色だ?」

 

シリカ「緑……ですけど?」

 

ハチマン「そう。普通は緑が当たり前だ」

 

キリト「けれど、犯罪を行うとカーソルはオレンジに変化する。その中でも、さっき説明した、殺しを行うプレイヤーをプレイヤーキラー、通称レッド プレイヤーと呼ぶ」

 

シリカ「そんな……人殺しなんて……」

 

キリト「俺もハチマンも、そう成りかけたことが何度もあるよ」

 

ハチマン「ああ。襲われて、防衛していると襲ってきた奴のHPがレッドゾーンに突入しても、そいつは襲ってくる」

 

キリト「だから、そうなる前に手足を切り落とすか気絶させて結晶アイテムで牢獄送りするんだ。でも、あまり後味はよくないけどな」

 

シリカ「キリトさん、ハチマンさん……」

 

キリト「あっ、すまない」

 

 

キリトが謝るとシリカは何かを決したのか急にキリトの手を握り前のめりになり、俺たちに慰めの言葉をかけてくれてた。

 

 

シリカ「お二人は良い人です!私を助けてくれたもん!」

 

キリト「……」

 

ハチマン「……」

 

キリト「俺たちが慰められちゃったな。ありがとう、シリカ」ニコリ

 

ハチマン「ありがとうな」

 

シリカ「///////」プシュー

 

 

シリカの目にはキリトしか映っていなかったのか、キリトが笑顔でお礼を言うと顔を真っ赤に染めて両手で顔を扇いでいる。

別に忘れられて、寂しくなんて思ってないんだからね!ハチマンウソツカナイ。

 

 

ハチマン「本当は寂しいです……」ボソ

 

 

 

あのあと注文したメニューが届く。それぞれ、頼んだ品で舌太鼓を打つ。

食事が終わると俺はキリトたちとは別行動をすることにした。

 

 

ハチマン「それじゃ、ちょっと行ってくる」

 

キリト「ああ。もしかしたら、先に寝てるかもしれないから」

 

ハチマン「分かった」

 

シリカ「ハチマンさん、お休みなさい」

 

ハチマン「ああ、お休みなさい」

 

 

キリトとシリカに挨拶をしてから俺は"鼠"と待ち合わせの場所に行く。

そこは《ミューシェ》の南東にあるこじんまりとした酒場だ。その酒場に入ると扉に備え付けられているベルが鳴る。

 

 

NPC「いらっしゃい」

 

酒場の店主をしているNPCからプログラムされている言葉を聞いてから店内を見渡す。

すると、端の方にフードを被っている一人のプレイヤーを見つけた。

 

 

ハチマン「アルゴ」

 

アルゴ「よう、ハー坊」

 

 

アルゴはその手に持つ、グラスを片手に挨拶をしてきた。

 

 

ハチマン「で、奴の情報は?」

 

アルゴ「ハー坊から送ってもらった情報と照らし合わせても間違いない。当たりダ」

 

ハチマン「了解。それと例のスキルの方は?」

 

アルゴ「ダメだナ。何処の情報屋に聞いても似たような物はなかっタ。多分、ハー坊の線が当たりだと思うゾ?」

 

ハチマン「だとなると厄介だな。アレが他のプレイヤーにバレると俺もキリトと面倒だし」

 

アルゴ「ニャハハハハ!ネトゲ人はそういうのには嫉妬深いからナ」

 

ハチマン「はぁ~。あまり、目立ちたくないのに………」

 

アルゴ「そりゃ無理だナ」

 

ハチマン「は?」

 

アルゴ「なんせ、お前たち二人には既に二つ名が付いてるからナ」

 

ハチマン「うそ……だろう?」

 

 

二つ名、それは攻略組で最も戦績をあげているプレイヤーにいつの間にか付いてる名前だ。

よくある、渾名のようなものだ。

まぁ、俺には【ビーター】という二つ名が既に付いてるが…………。

 

 

アルゴ「二つとも盾無しの片手剣使いのトッププレイヤーだからナ。キー坊は全身真っ黒だから、《黒の剣士》。ハー坊はキー坊と似て、全身灰色だから《灰の剣士》って呼ばれるゾ」

 

ハチマン「な、なんとも安直だな」苦笑

 

アルゴ「なら、《腐眼の剣士》が良かったカ?そっちの方が良いならお姉さんが流してやろうカ?」

 

ハチマン「マジで勘弁してくざい!」土下座

 

 

アルゴに瞬間土下座を見せて、笑われたあと、席に座り直し、何杯か飲み物を飲んでいるとアルゴから声がかけられる。

しかし、その声はいつもとは違い。真剣さが混じっていた。

 

 

アルゴ「そうだ。ハー坊」

 

ハチマン「今度はなんだよ?」

 

アルゴ「少しずつだが、奴らが動き出しているようだゾ」

 

ハチマン「…………」

 

 

アルゴの言う、奴らとは殺人ギルド【ラフィンコフィン】のことだ。

奴らは自分の快楽のために、人を殺す。イカれた奴らの集まりだ。

 

 

ハチマン「そうか……。忠告、サンキューな」

 

 

そう言って、俺は酒場を出る。

 

 

 

 

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